友人も斜め上が好きらしい。
あの後。
自分の中に存在する恐ろしい感情に見ないフリをしつつ、英司の想い人に意識を完全に持っていかれた私は課題など手につかず放棄した。
進捗は悪くないし、少しくらいサボってもまだ十分挽回の余地はある。
そして。
「え?橋爪君って紫帆のことが好きなんじゃないの?」
新たなる爆弾を投げてくるのは向かいの席で優雅に紅茶をいただいている絢子である。
翌日である今日、学校近くの喫茶店に集合して課題を片付けていた。
こぢんまりしたお店は父と同じくらいの年齢のオジサマが1人で経営している。寄り道したときに見つけてから通い続け最早常連だ。休み中のバイトをここでやらせてもらえないか密かに狙ってもいる。
「また随分斜め上…。」
「まぁ私がそう感じただけだから確定ではないけど。」
目処がついたところで昼食をと思い、休憩がてら昨日の話(私が翔を云々は伏せて)をしてみたら先程の台詞である。
「ちゃんと分かってる、なんて昔から仲のいい人かなんかでしょ。私、英司と話すようになったの今年入ってからだし。」
「でも橋爪君って紫帆ほど仲のいい女子がいたって聞いたことないけど。」
「別に他校にいるかもしれないじゃない。」
自分で話題として出しておきながら、終わりとばかりに頼んだハヤシライスを掻き込む。
「それにしても国立君がねぇ…。ファンが聞いたら阿鼻叫喚…。」
「立場上先生が言うこともないだろうしバレないとは思うけど。国立君ってやっぱり人気なのね。」
「この辺りでは有名でしょうね。イケメンだし、ベース持たせたら更にイケメンだし。馬鹿だけど。」
「それは絢子の彼氏にも当てはまる気が…。」
無駄に"馬鹿"を強調してたことには気付かなかったことにする。
そして社君を馬鹿にしてごめんて。謝るから睨まないで。綺麗な顔が台無しよ。
「でも、絢子の恋が叶って良かったよ。」
「うん、今凄く毎日が充実してるわ。あの日に告白されなくても、合宿中に言おうとは思ってたらしくて。」
「ノロケですか?」
「ノロケですよ。」
うーん。本当にキラキラしててちょっと羨ましい。私も開き直って青春するべきかしら?
「私も彼氏欲しくなってくるわ。」
「個人的に橋爪君をオススメするわ。」
「まだ言うか。」
「普通にお似合いよ?紫帆も無理してない感じだし、橋爪君も肩の力か抜けてるというか。勿論、数本君とのセットが一番安定感あるけど。」
「セットって…。」
なんでこの世界ってこうも色々と違うんだろう。私と相澤さんというイレギュラーがいるにしても歪み過ぎな気がするんだけど。
もしかして先生も実は転生してきた人が中身だったりーなんてことも考えた方がいいのかな。確認する為には先生と接触するしかないんだけど、正直遠慮願いたい。
「あ、航太からだ。」
「ん?これからデート?今日は解散する?」
「そんな予定はないけど、何かあったみたい。」
じゃぁ今日は解散だねぇなんて言えば絢子は申し訳なさそうにしつつ荷物を纏め始める。部活の方で何かあったのかな?
「じゃぁ行くね。バイトない日にまたお茶しましょ。」
「勿論。気を付けてね。」
さて私はオジサマに交渉しましょうか。




