第4話 異世界の怪物③
本日も遅くなりました。
連日となってしまい申し訳ありません。
今後の予定を立てながら落ち着いて壁にもたれかかり、顔を上げた瞬間レオンの表情が凍りつく
霧が漂う中から、銀髪の少女が現れた
「……?」
月明かりに照らされ、リセルは静かに佇んでいる
その姿には戦闘の痕跡すらなくただ、レオンを見つめている
「どうして……」
レオンが周囲を見渡す
(ここは旧聖堂区の外縁、先ほどの聖堂からはかなり離れている。転移は成功した)
そう確信していた。
「俺は確かに転移したはずだ」
「そうね」
リセルが頷く
「転移は成功してるわ」
「なら、なぜここにいる」
「あなたがここに来るようにしたから」
「……何?」
レオンの顔が強張る
その瞬間、足元に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
地面だけではなく、周囲の建物や壁に淡い光の線が走り、一つの巨大な術式を形作っていく
「これは……」
「転移先の固定術式よ」
リセルが淡々と答える。
「聖堂で転移魔法を使うと、指定された転移先に行くの」
「……転移先の指定?」
「そう」
レオンの瞳が揺れる。
「つまり、あの結界は……」
「被害拡大がメインじゃないの」
リセルが一歩近づく
「転移指定がバレないための結界」
レオンの表情が歪む
――認識阻害
――魔力探知妨害
――外部への情報遮断
――転移封じ
先ほど自分が解析した結界は全て、防御のためではなかった。
敵の行動を限定し、逃走先すら掌握するためのもの。
「……最初から全て計画通りだったというのか」
「そうよ」
リセルが答える
「あなたがどこまで気づけるのか見たかったから」
レオンの額に冷たい汗が浮かぶ
「……怪物共が」
「よく言われるわ」
リセルが小さく笑う
その直後、レオンが動く
「――ッ!」
魔力爆発によって一気に距離を詰める
(武器はないが魔法使いなら素手でも十分殺せる)
白い魔力を纏った拳がリセルの顔面へ迫る
――ガキンッ!!
見えない壁に阻まれ拳が止まる
「な……」
リセルの前にはいつの間にか結界が展開されていた
レオンは即座に後退し、魔法陣を展開するが
「……魔力が」
魔力が流れない
いや、正確には流れているが術式を構築する前に散らされる
「あなたの魔力を吸収して結界を維持するの」
リセルが説明する。
「結界の中にいる限り大きな魔法は使えないし、使おうとすればするほど強固になる」
「……いつの間に」
「あなたが転移してきた直後ね」
レオンの顔から血の気が引いた。
自分が逃げてきた一瞬さえもこの少女は利用していた。
「くそッ!」
レオンが再び突っ込み、拳や蹴り、 体当たり様々試すが全て結界によって阻まれる
――ドゴッ!!
――ガンッ!!
――バキィッ!!
何度叩き込んでも届かない
そして、リセルが手を掲げるた空中に幾重もの魔法陣が重なる
「もう終わりにしましょう」
「待て……待ってくれっ!」
「どうして?」
「俺は――」
レオンが言葉を探し、打開策を考える
「まだお喋りをご所望?それともこの空間の解析?」
リセルの瞳が冷たくなる
「……!」
「それじゃあ死にゆく貴方に自己紹介」
少女が微笑む
「『星霧の魔女 リセル』周囲に漂うこの霧そのものが私の魔法よ」
レオンが息を呑み、周囲を確認する
(確かに霧が漂っている…)
つまり、自分を逃がすつもりなど最初からなかった
あの場所で出会ったその時から
「……なぜ、シアにやらせなかった」
「シアに?」
「そうだ……」
レオンは周囲を見る
「なぜあいつ自身が俺を殺さなかったんだ。彼女の実力ならこんな面倒なことしなくても殺せたはずだ」
リセルは少しだけ考えた後、淡々と答えた
「それはね、死体を綺麗に残したいから」
「…………は?」
「異世界人の身体は貴重研究対象なの」
リセルがレオンを見る
レオンの顔が引き攣る
「でもシアと戦ったあとは身体が残るかどうか…」
リセルが手元に魔力を集める。
「腕や脚がなくなるだけでも調べにくいもの」
「……」
「だからなるべく私が殺すように言われてるの」
「特に、シアと戦いながら私の結界を解析して転移する猛者なんて滅多にいないもの」
その言葉には、一切の迷いがない
慈悲でも、情けでもない
ただ効率のために、それがシアとリセルの結論だった
「……ふざけるな」
その言葉と共に解析が完了した結界を破壊する
レ最後の力を振り絞って身体強化と魔力爆発を組み合わせて得た速度を全て脚へ集める
――ドンッ!!
一瞬でリセルの目前へ迫り、脚を振り抜こうとする
「死ねぇぇぇッ!!」
レオンが近づくその瞬間もリセルは動かない
ただ、指先を一度弾く
――パチン
周囲の霧が収束し、胸部に一本の光槍が突き刺さる
世界が止まったように静かになる
レオンの身体が空中で停止した
「――終わり」
「――ッ!!」
血が溢れる
だが、身体は吹き飛ばない
光槍は内部で止まり、必要以上に身体を破壊することなく心臓だけを正確に穿っていた
レオンの身体から力が抜け、そのまま静かに倒れた
――ドサッ
リセルはしゃがみ込み、レオンの身体を確認する
四肢は傷がついているも残っている
身体も大きく損壊していない
流れ出した血だけが、石畳を赤く染めていく
「……これなら大丈夫かな」
空間魔法を使用していた痕跡がある
「これはリュネが大喜びしそう」
短刀片手に小躍りする同僚の姿を思い出し、そう呟く
聖堂の方角から轟音が響く
――ズゥン……
リセルが視線を向けると土煙が高く舞い上がっている
「シアは大丈夫かな?」
その顔には、先ほどまでの戦闘の緊張すら残っていない
旧聖堂区に、再び静寂が戻った
現在は話が完成次第投稿しています。
「曜日や時間指定の投稿の方が読みやすい」
という方がいれば感想にて教えていただければ嬉しいです。




