第92話 枕投げ
「それでは第一回、チキチキ枕投げ大会をここに開催したいと思います!」
パチパチパチ。
まばらな拍手。
そうそう、どうやら淑女は拍手の仕方も気を付けなければならないらしい。
僕が初登校で挨拶した時に拍手がまばらだったのは、そういう理由もあったらしい。
それにしても、こういう大会とかゲームで「チキチキ」ってつけるのには何か理由があるのだろうか?
そもそもチキチキの意味って何?
あ、てか「ピローファイト」じゃなくて「枕投げ」になってるじゃん。
なんていい加減な……。
「まぁ、ルールや勝敗はないので怪我だけしないようにはしゃぎましょう」
身も蓋もねぇ!
「あ、家具も壊さないように」
それは大事。
「それと、枕はこの日のために用意しておいた枕投げ用の枕を配布します。必ずこちらを使ってください」
特別に柔らかくできてるとかかな?
「サクラちゃんちの枕をダメにするわけにはいかないので」
配慮の方向性そっちか。
でも大事なことだね。
「じゃあ、準備はいーい?開始ー!」
芽結が言い終わらないくらいのタイミングで、視界が揺れた。
ぐぅ……。
後頭部に強烈なのを食らった。
こんな威力を出せるのは……。
「やっぱりか、メリア」
「先手必勝でーす」
風の魔法で強化しやがったな。
アリなのかよ、それ。
と、その時――
おおーっと!坂本君の顔面ブロックだー!
「隙ありだ」
アルソにもやられた。
いや……。
あれ?四面楚歌?
くっ。ガッツが足りない。
何とか部屋の角に移動してやり過ごさないと。
あっ。野生のシノカが飛び出してきた!
「アハハハハハハハハハハハ」
シノカは笑いながら枕をぶん回す。
楽しそうですねえ!シノカさん!
てかそれはもはや枕投げじゃねえ!
くっ。
なんとか移動を……。
スッテーン。
僕は足をもつれさせて転んだ。
見ればさっき僕がいたところに枕が並べておいてある。
「作戦成功」
くぅ。カッカカカホクか。
さすがすぎる。
「今がチャンス!畳みかけろー!」
芽結の号令が入る。
oh!なんてこったい。
こうなったら秘技を出すしかない。
「ゼロイチニーゼロイチマルナナキューニー――ふべっ」
「自分で甘いとは思わないのかい?」
ばかな!?
僕のゴロゴロはレッタが置いた1つの枕で止められていた。
横腹で枕に乗り上げたからめっちゃ痛かった。
そこに――
「ごめんなさいっ!」
サクラ、君もか!
回避も間に合わず顔面に受ける。
すると今度は左右からの強打。
メリアとシノカっすね。この威力は。
ちなみに、ローンとクイザは投げるけど飛距離が全然足りてない。
足らないというか、足元に落ちてるし。
そんなことある?
飛ばないことを不思議に思ってか、二人並んで頬に手を当てて首をかしげてる。
君らだけが癒しだよ。
その後、僕は大の字になって甘んじてみんなの攻撃を受け続けた。




