第75話 明日から夏休み!
明日から夏休みだ。
ターツとは少し前からそれなりに話すようになった。
彼も敬称なしで良いと言ってくれた。
貴族であることに誇りを持っているみたいだけど、それを鼻にかけることはないみたいだ。
知れば知るほど、尊敬できる男なんだよな。ターツ。
まぁ……気軽なノリの男友達って感じじゃないんだけどさ。
それでもそれなりにターツからは信用してもらえてると思う。
他のクラスメイト相手よりも、僕との方が多く話してるし。
僕とターツが普通に話してるのを見て、クラス中がざわついたのは少し面白かった。……なんて言ったら怒られるかな?
「お二人が仲良くなれて良かった……」
サクラはそう言って顔をクシャっとした。
泣きそうになるくらいに僕とターツのことを考えてくれてたんだなぁ。
いや、これはまさか……。
「ねぇ、もしかしてサクラってさ――」
ポカッ。
僕が隣のシノカに小声で確認しようとしたら、いつの間にか後ろに回ってたカホクにグーで叩かれた。頭を。
「カホクさん、GJ」
芽結がサムズアップをする。
「ちょっとこっち来る」
そう言って引っ張られる。
「でりかしー」
「はい、すみません」
「ん」
そう言ってカホクは顎をクイッとやった。
戻れってことらしい。
はぁ。
いや、本当にノンデリだったわ。
こういうところ、ターツとかはきっと自然体で配慮できるんだろうな。
同じ男として勝てる気が全然しないわ。はぁ。
「鈴には鈴のいいところ、いっぱいあるから。でも、今回は反省」
はい。
本当に気を付けよう。
さて、僕たちはサクラの家の別荘に行く日のための、最終確認だ。
とはいえ、そんなに必要なものはないみたいだし、最悪忘れてもなんとかなるでしょう。とのこと。
あ、使用人さん用に菓子折りでも買っておこうかな。
「いいね。私も買おうかな?」
「いや、王女様からの差し入れは重過ぎるでしょ」
「だよねー」
ですよー。
「あ、馬車はうちの馬車出すから」
芽結がそう言いだした。
「もしかして、あれ?」
「そう、あれ」
あの揺れない馬車、めっちゃ乗せてくれるじゃん。
「あ!!!」
「な、なに!?レイ!」
「シノカ落ち着く」
カホクはいつも冷静だなぁ。
「いや実はさ、ブイニシャにあの子がいるなって思って」
僕は村から王都に来る途中で馬車に接触した女の子の話をした。
「なんかめっちゃかわいらしくてさー。すっごい懐いてくれるんだよー」
「また会えるといいね。そしたら私にも紹介してもらおうかな?」
芽結にもきっと懐くよ。
「でも会えるかなー?ブイニシャ広いしなぁ。あ、でも師匠のタリスマンが導いてくれたり……いや、さすがにそんなに都合よくないか」
「随分と楽しそうだな」
なんなんだろうね?
村のチビ達もかわいかったんだけど、あれとはまた別なんだよね。
「そんなことよりボクはそのポーションに興味があるんだが」
あっ。
そういえば、あんまり世に出さない方がいいかなって思ってたんだった。
まーでももうケミ村で大勢の前で使っちゃったしなぁ。
今更か。
でも一応。
「あんまり公にして他国に技術が流れて、それで量産されたりしたら嫌だなって思ってるんだよね」
「利益ではなく?」
「カホクの言う通り、利益ではなくて国防的に。みんなのことは信用してるけど、どこから漏れるかわからないからね」
「私は鈴のお師匠様にも会ってみたいなー」
「お姫様連れてったら師匠椅子から転げ落ちちゃうかも」
前例もあるし。
まぁ、芽結のことは少しだけ話してあるけどね。
その後も、最終確認が終わった僕たちは、会話に花を咲かせたのだった。




