第67話 せっかくのご飯が美味しくなくなるだけだよ
「それで……そうそう、ターツさんの話でしたわね」
クイザが話を戻す。
ん?
気のせいかな?
一瞬サクラさんがピクって反応したような?
「彼は家も、彼自身も優秀って話だった」
カホクが補足してくれる。
「わたくし、ターツさんがあんな風に誰かに突っかかるの、見た事がございませんの」
クイザが頬に左手を当てて首をかしげる。
そうなんだ。
なら何故僕にだけ?
尚更謎が深まった気が。
「な!」
急な声に、僕らはそろって声の主を見た。
「何か事情がおありなんだと思います!」
「サクラさん、分かったので落ち着いて!」
「そ、そうよ!落ち着いて!」
「レイ、シノカ。あなたたちも落ち着きなさい」
さすがカホク。落ち着いてるーぅ。
しかし、僕に突っかかるその理由とか事情が結局わからないんだよな。
あ、そういえば――
「男爵子息の方は、どうなんです?」
僕が質問すると、クイザは困った顔をした。
「残念ですが、彼のことはよく存じ上げませんの」
クイザ以外の三人も同じらしい。
え?そんな影のような子、いる?
幻のシックスマン的な人なの?
他の三人も似たり寄ったりらしい。
マジかよ兄弟。
誰にも覚えられてないって、それはそれで結構しんどくない?
「名前だけは分かる。ドゥーム」
「そういえばそんなお名前でしたね」
カホクは覚えていて、クイザは思い出したらしい。
「覚えてないわ!」
シノカらしいな。
しかし、よりによってドゥームか。
不吉な名前に見えるけど、この世界に英語はないし関係ないか。
うーん。
結局どちらも理由はわからなかったなぁ。
僕はまたウンウンやりだすと、シノカが声をかけてきた。
「悩むのもわかるけどさー。……やっぱわかんないけどさー。わからないことでいつまでも悩んでても、せっかくのご飯が美味しくなくなるだけだよ」
ごもっともだ。
「いただく命に感謝するって言ってた」
カホクの指摘にぐうの音も出ない。
「確かにそうでした。すみませんでした。食事の時くらいは楽しく食べましょう」
「せっかくサクラさんが混ざってくださったのですからね」
クイザの指摘も最もだ。
「わ、私はずっと視線を感じているなら気になるのも、その、仕方ないと思います」
「サクラちゃん!甘やかしちゃだめだよ!」
シノカは厳しいな。
「シノカの言う通り、みんなに甘えすぎてた。みんな、ごめんね。サクラさんも助勢してくれてありがとうね」
「い、いえ。私はそんな大したことはっ」
そんなに慌てなくても。
「あ、それと、その。私の名前にも敬称はいりませんよ」
「いや、でも……」
「もっと気楽に呼んでください」
本人がそう言うならサクラって呼ばせてもらおう。
その代わりに、
「では、僕のこともレイでお願いします」
「はっ、はい!よろしくお願いします!」
「「私も」」「わたくしも」
シノカ達もお互いに呼び捨てで呼ぶことになった。
「これでより友だちらしくなりましたね」
僕がそう言うと、シノカも続いた。
「サクラもまた明日も一緒に食べましょう!」
それにツッコミを入れるのはやはりカホク。
「明日は休み」
クイザはクスクス笑ってる。
サクラも静かに微笑んでる。
学園生活、期待と不安どっちもあったし、実際に悩みもあるけど、こうやって友達ができて良かったなぁ。
この縁を大事にしていこう。
そう思えたランチタイムだった。
たぶん、すぐには答えに辿り着けないと思いますが、ダブルミーニングです。
気づけた方は教えてください。




