第66話 人数が多い方が食事は美味しくなる
翌日も、翌々日も、更にその翌日も僕は2つの視線に晒され続けた。
なんだろう。
どちらも心当たりがないのがなぁ。
平民のくせに生意気なって感じなのかなぁ?
隣の子に関しては芽結の発言が助長させた可能性もなくはないけど、そもそも最初からだったしなぁ。
うーん。
僕はウンウン唸りながら学食でランチをしている。
ランチのメンバーはすっかりいつものメンバーになったシノカ達だ。
「レイはまた例の視線?」
「です。心当たりがないんですよねー」
「そんなの気にしなければいいのに」
僕の悩みはシノカには気にするほどのものじゃないらしい。
「侯爵子息と、男爵子息ですわね」
クイザが言うには、僕の隣の席が侯爵子息、もう片方が男爵子息らしい。
「ターツは有力貴族ユニオ侯爵家の長男。家も彼も将来有望」
カホクが更に補足してくれる。
――そこに、
「あの、私もここよろしいでしょうか……?」
すごく遠慮がちな声が聞こえた。
見るとそこにはクラスメイトが。
確か彼女は……
「サクラさん、でしたよね?」
「わ、私のこと覚えていただけてたんですか?」
すごく自己評価が低そうな人だ。
まぁ、彼女の低い自己評価は、周りからの評価故かもしれないけど。
太くボサボサな眉、小さな目、鼻先は上向きで小鼻が広がっていて、たらこ唇。
体系はややぽっちゃり気味か?
僕はまだ見た事がないんだけど、特に男子から強く当たられることがあるんだとか。
でも彼女、所作が凄く美しいんだ。
流れるような動作は貴族の見本になってもおかしくないレベルだと、僕は思ってる。
ちなみにシノカは肩甲骨まで伸びた赤い髪のツインテール。
少しつり目だけど、小さくて運動量も多く、ちょこまかしてて可愛らしい。
クイザは暗赤色の髪を腰まで伸ばして、三人の中では一番お嬢様感が強い。
性格もお淑やかって感じ。
カホクは蜂蜜色のワンレンボブで、前髪は分けずに耳は出すスタイル。
身長はシノカより少しだけ高い。
性格は他の二人曰く、「実は尽くすタイプ」。
少し気は強いけど、頭の回転が速そうなイメージがある。
三人とも全員特徴は違えど、皆美少女だ。
この世界は美系率高いんだよね。謎に。
特に男子の美形率は凄い気がする。
だからサクラさんは余計に悪目立ちしちゃうのかも。
「当り前じゃないですか。僕らは同じ授業を受けるクラスメイトなんですから」
と格好つけて言ってみたけど、実はほとんど覚えていなかったりする。
「レイは級友の顔と名前、ほとんど一致してない」
カホクさーーーん!それ言っちゃまめー!
「ああ、いえ、サクラさんは所作が美しいなぁと思ってたので覚えたんですよ」
ナンパ野郎みたいで嫌なんだけど、本当のところを白状する。
「わ、私が?」
「はい」
「ど、どうも」
消え入りそうな声でそう返ってきた。
たぶん、こういう場面で「調子に乗るな」とか言われてきた過去があるんだろうなぁ。
だからこんな小さな声で言わなければならなかったんだ。
そう言えば、声も綺麗だな。この子。
僕は三人の顔を見る。
全員が頷くのを確認して口を開く。
「ぜひご一緒してください。人数が多い方が食事は美味しくなる……というのが通説ですから」
「なんです、それ。聞いたことがございませんよ」
クイザがまたクスクスと笑う。
こうして、一緒に昼食を取るメンバーがまた一人増えたのだった。
クラスメイトっていう単語はレイが三人に教えました。
サクラちゃんは最初はハテナでしたが、カホクの暴露で理解しました。
頭も結構回る子です。




