第65話 貴族のリアル
午後の授業は政治学だ。
正直、日本にいる頃より難しい内容な気がする。
しかも進みがやたら早い。
これは油断してると置いていかれそうだ。
貴族の子が多いから難しいのかな?
僕は授業後ぐったりしていた。
つ、疲れた。
高校でももっと真面目に勉強していればこんな苦労しなかったかもしれない。
僕が机に突っ伏していると芽結達が来た。
「難しかったでしょー」
「うん。すごく」
「国語と政治は家でみんな習うからね。平民出身の人はみんな苦労しているみたいだよ」
まぁ、平民は優秀でも結局平民のままだから、政治学が成績悪くても困らないのかもしれない。
ただ、僕は芽結との将来を考えておくならちゃんと学んでおいた方が、きっといい。
難しくてもついていけるように芽結に聞きながらでも覚えないと。
「色々わかんないこととかあったからこのあと教えてくれない?」
「もちろんいいよー」
そういうわけでお勉強会の約束を取り付けた。
今日はこれで終わりだから芽結に頼もうと思ったけど、どこ使ったらいいんだろ?
図書室とかあるのかな?
「その前に学校の案内でしょ?」
芽結に言われて思い出した。
そっか。そういえば芽結が案内してくれるんだった。
「じゃあ、悪いんだけどどっちもお願いするね」
「まかせといて!」
というわけで芽結について回ったけど、大体あるのは日本であったようなものばかりだった。
部活とかがないから部室みたいなのはないけど、剣術や魔法の実習で使うから校庭もあるしね。
で、最後に着いたのは図書室だ。
「じゃあ、このまま始めましょうか」
「よろしくお願いします!メイ先生!」
「うむ」
ありがたい。ありがたい。
芽結に色々聞きながら勉強すること一刻ほど。
「治安維持に裁判、領地経営に徴税、軍備に王への報告。貴族の仕事ってかなりやること多くない?アニメとかだとハンコをポンポン押してるだけだから、あのイメージだったけど全然違うじゃん」
「ハンコ仕事になるのは近世からだね。でも、実際はこの国はもうそのハンコポンポンの形になりつつあるよ」
え?そうなの?
「タキンチ村のあるスリリース領なんかはまさにそうでしょ。治安維持とか裁判とか、領主が自ら赴くことなんてなかったでしょ?」
小さい頃は見た事あったかもだけど、確かに領主様を見ることはなくなって久しい気もする。
「さっき言ってた貴族の仕事に加えて、領地内の人口や経済力などの報告、公共事業の報告、物流の管理、エトセトラエトセトラ。これらぜーーんぶ領主がやらなきゃならなくなったの」
「でもそれなら尚更、ハンコ仕事なんてしている余裕ないんじゃない?」
僕は芽結に疑問を投げかけつつメモを取る。
「そこで、平民学校で法学や政治学を修めて卒業した、いわゆる官僚が登場することで、実務を彼らに任せるようになったんだよ。更に紙の普及度が一気に進んだことも後押ししたんだろうね」
ほえー。そうなんだ。
「じゃあ、今はハンコポンポン押すだけの簡単なお仕事ってこと?」
僕は周りの人に聞かれたくなくて日本語で芽結に聞いた。
「あなたそのうち刺されるよ。そんなわけないでしょう」
ですよねー。
「さっき言った報告書やら陳情書やら、官僚から上がってくる報告書とかもぜーんぶ一人で確認して印を押さなきゃならないわけ。座りっぱなしだけどものすごい重労働だよ」
お貴族の皆様、ごめんなさい。
「反省してるならよし!」
あまりの重労働に耐えきれなくて代官に放り投げてなにもしない領主も出てきて問題になってるんだとか。
「監察官とか派遣しないといかんかもって父上が言ってたよ」
陛下も苦労なさってるんだなぁ。
こうして僕は、この世界の貴族の責任と責務をほんの少し知ることができたのだった。
芽結が言っていたハンコポンポンのお仕事をしているのは上級貴族(伯爵、侯爵、公爵)です。
下級貴族は平民学校卒業の官僚と共に上級貴族の元、実務に駆り出されています。
一部剣の腕が良い下級貴族は騎士として国に召し抱えられます。
兵士とは違って対外の兵力というより、内憂の対処に駆り出されることがほとんどです。
ですが、さすがに国の危機には戦争に駆り出される法律になっています。
また、上級貴族がハンコポンポンになるまでは、下級貴族は基本は騎士コースでした。
この時代は普通に兵力として数えられていましたので、戦争があれば参戦しました。




