第63話 小さな発見、大きな余波
「例えば風の魔法を使う時って、直接空気を動かすというより、魔法で発生した別の力で空気を使う感覚なんだよね。で、その感覚がドライヤーの風量調節の操作感覚と近い気がするんだ」
今は魔法の授業後の休み時間だ。
僕は芽結の元に赴き、力説を開始した。
芽結は僕の話に考え込みながら聞いてくれている。
「だから、ドライヤーの風量調整の感覚を養うことで、魔法の習得が簡単になったり、習得率が上がったりするんじゃないかと思ったんだけどどうかな?」
興奮した僕の提案に芽結はゆっくり頷き、
「うん。あたしも魔法を使えるからちょっと今から試してみようかな」
「うん。お願い。……え?使えんの?」
「これでも神童って言われてたんだから」
これでもかっていうくらいのドヤ顔である。かわいい。
転生者って何か特典があるのかな?
僕も魔法に関しては特異体質っぽいし。
「メイ様ー。できればわたくし達も練習したいと思いますのー」
おっとりさんが芽結に相談。
「それなら各家にドライヤーを送っておきますね。ああ、でも扱いは本当に気を付けてくださいね。あと、近くに誰か待機させること!」
「「はい!ありがとうございます!!」」「はーい。ありがとうございますー」
みんな意欲が凄いなぁ。
でも魔法って夢とロマンであふれてるからなぁ。
気持ちはめっちゃわかる。
「では、始めますね」
そう言ってドライヤーを起動させる芽結。
「風量調整、風量調整……」
つぶやきながら集中する。
芽結は自分の手かざして風量の確認をする。
ちなみに日本のドライヤーみたいな音は出ない。
モーターで動かしてるわけじゃないからね。
「あ、強くできた。じゃあ次は弱めて……」
独り言をつぶやきながら芽結が風量調整を繰り返す。
少し続けたのち、ドライヤーを止めて一息つく。
「確かに似てるね。確かにこれなら練習にもなるかも。女の子との親和性も高いし」
え?女性との親和性?
まぁ、確かに男性は魔道具と相性が悪いけど。
「ああ、違う違う。髪型をもっとアレンジしたい子はいっぱいいるんだよ」
芽結の言に得心する。
あー。オシャレしたい系か。なるほど。
「てか、よく気づいたね。これ」
「ローン達のグループで風量調節の説明をしようとして気づいたんだよね。彼女に説明しようとする機会がなければ気づかなかったかも」
本当にただのたまたまで気づけただけだからね。
あ、そうだ。
「ねえねえ。ヘアアイロンとかも作れないかな?」
「あーそっか。こっちに生まれてからあたしには必要ないからヘアアイロンの存在とか忘れてたわ」
地球の皆さんにボコられそうなこと言うじゃん。
確かにそれだけ綺麗なサラサラストレートなら必要ないかもしれないけどさ。
本当にどうなってるの?食べてるもの?
ブラシやコームだけでそんなになる?
「確かに異世界のお約束をまだ見てないもんね」
うんうん。
「お二人は本当に仲がよろしいのですねー」
何回目だっけ?
「確か4回目。まぁ、長い付き合いですし」
他の3人は怪訝顔。
「さて、そろそろ次の授業です。戻りましょう」
それを気にせず芽結は解散を指示し、去っていった。
次は薬学かぁ。
楽しみだ。




