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第一章幕間一 帰郷

 ごめんなさい、今回はちょっと長いです

 ガタゴトと車輪の揺れる音がする。

 またもやあの、上級貴族でも乗れない「揺れない馬車」だ。


「まさか二度もこの馬車に乗れるとは思いませんでしたよ」


 そう言うのは今回の護衛のエナグスだ。

 彼の正体は最初にタキンチに来て知らせを持ってきてくれた、先ぶれの兵士さんだ。


「これに乗るの、緊張しますよね」


 彼はメリアとは違ってこちら側らしい。


「メリアは堂々としたものでしたけどね」


「彼女が特殊なだけな気がしますけどね」


 違いない。

 そう言って二人で笑い合う。

 

 僕たちが向かっているのはタキンチ村だ。

 今回はメリアと通ったルートではなく、その南からのルートだ。

 あっちは山越えが必要なので、ちょっと遠回りだけど今回はこちらのルートになった。


「順調な旅路になるといいですねぇ」


 ちょ。それフラグじゃね?

 まだ王都から出たばかりだ。

 開始早々にフラグ立てるのは勘弁。

 でもこちらの人にフラグとか言っても通じないしなぁ。

 悪気があるわけでもないし。


「そういえばあの件、ツキーズ閣下に伺いましたか?」


 あ、余ったお金か。


「なんなら王様も一緒にいた場で、王様から直々に「好きにしてよい」と言っていただきましたよ」


「陛下からですか!?」


 そうだよね。そういう反応になるよね。

 あ、もしかして王様と一緒にお話ししてたことって黙ってた方が良いのかな?

 まーでもメリアとスルラも知ってるからなぁ。

 うーん?


「威厳のある方ですよね」


 僕が言うと、エナグスは誇らしげに返してきた。


「民から大きな不満も出ずにずっと統治している家柄ですからね。一家系で12世も続いてるのはレハチワくらいなものですよ!」


 師匠も言ってたな。治世が上手い家系だって。

 230年だか240年だか続いているらしい。

 徳川幕府かよ。


 そこから2週間と少し。

 当初の懸念も当たらず、無事にタキンチ村に到着した。


「おい!レイが戻ってきたぞ!村長を呼べ!」


 わー。ヒューおじさんだ。懐かしいなぁ。

 ヒューおじさんはそう言って息子と一緒に村長を呼びに行った。

 待つこと少し。


「おかえりなさい。無事に戻って来られたようで安心しました」


 村長が来た。


「ですが、先にやることをやってきなさい」


 そう言って村長は師匠の家の方を指さした。

 僕は頷き、師匠の家へ向かう。


「夜はささやかながらお祝いをしましょう。皆もレイのお土産話が聞きたいでしょうから」


 そう後ろから声を掛けられた。

 村長に向かって頭を下げ、目的地に向かう。


「ただいま戻りました、師匠!」


 師匠の家の扉を開けて挨拶をすると、師匠は驚いた顔で椅子から転げ落ちた。


「うわ!大丈夫ですか?師匠」


 咄嗟に駆け寄る。

 するとなぜか師匠は全てをあきらめたかのような顔をした。なぜ?


「帰ってきて早々ですが、お話があります。師匠」


 僕がそう言うと師匠の顔つきが締まる。


「国王陛下からの推薦で、学園に入学したいと思っています」


 僕がそう言うと師匠は、

 

「軍属は?」


 と聞いてきた。

 やっぱりその辺りを考えて育ててくれてたんだなぁ。


「軍は僕に合うとは思えません。大人になった時にどうなるかはわかりませんが、今は軍へ誘われているわけでもありませんし、しばらくは安全な学生生活です」


 そう言うと、師匠はあからさまにほっとした顔をした。

 僕は師匠に恵まれていたんだなぁ。


「わかった。学ぶことなんていくらでもある。しっかり学んできな!」


「はい!あ、それと、夜は村長がお祝いをしてくださるそうです」


「みんな寂しがってたからねぇ。思い出話を聞かせてやりな」


 そう言って師匠はにやりと笑った。

 あ、思い出話と言えば。


「そう言えば聞きましたよ。元副師団長だったんですって?」


 僕がニヤニヤと返すと、

 

「はっ!昔すぎて忘れたね!」


 師匠はしらばっくれた。

 教えておいてくれてもよかったのに。


 それからしばし、師匠、エナグスと僕で談笑していた。

 エナグスはどうやら師匠のことを知っていたらしい。


 と、


「あー!ほんとにレイ兄ちゃんだ!」


 お!

 旅立つときにお絵描きをねだってきた子だ。


「元気してたかー?後でお土産やるからな!」


「うん!あ、村長が呼んで来いって」


「あ、もうそんな時間か。呼びに来てくれてありがとう。すぐ向かうよ」


 師匠には先に行ってもらって、エナグスと僕は馬車に移動。荷物を降ろしてみんなが待つ広場まで移動する。

 エナグスには手伝ってもらって申し訳ないけど、「お任せください!」との力強い返事がもらえたので甘えることにした。


「ここは夜でも割と明るいんですね」


 師匠が魔道具を販売しているからね。

 

 広場に荷物を運び終えると、村長が前に進み出てきた。


「改めてお帰りなさい、レイ。土産話、楽しみにしていますよ。何もない村ですが、お客人もごゆるりとしていってください」


 村長が戻ると、そこかしこから「おかえり」の声が聞こえた。

 うれしいなぁ。心が温かくなる。


「ありがとう!みんなただいま!お土産があるからみんな取りに来てくれ」


 そういって一人ずつお土産を渡していく。


「わあ!絵葉書がいっぱい!」


「げえ!本当に激辛じゃねえか!」


 皆の反応が楽しい。

 悩んだ甲斐があったなぁ。


 ラト村で買って、王様にも献上したいちごのリキュールは、村長に。


「ふふ。これを買ってきてくれるとは、わかっていますね」


 そう言って自宅に入っていった。

 あれは……、こっそり隠すつもりだな。

 

「師匠にはこれです」


 師匠に渡したのは魔石がはめ込まれたタリスマンだ。

 師匠ももう69歳だ。

 いつまでも健やかに過ごしてほしいからね。


「年寄扱いするんじゃないよ」


 とか言いつつニヤニヤした顔で受け取っていた。

 喜んでもらえたならよかったよ。


 全員に渡し終えたところで子供たちが話しかけてきた。


「なーなー。どんな冒険してきたんだ?」


 村を出る時は平和に帰ってきたいと願ったけど、結局色々巻き込まれたなぁ。

 気が付くと、全員が集まっている。

 ここからはお土産話の時間らしい。


「そうだねぇ。まず、ラト村に入る少し前くらいで……」


 そうして、二か月程度の旅を土産話としたのだった。


 翌日。


「もう発つのかい?」


「はい」


 師匠は少し悩むそぶりを見せ、

 

「あんたはあたしの子供みたいなもんだ。いつでも帰ってきていいんだからね」


 その言葉に鼻の奥がツーンとなる。

 両親が死んでから4年間、師匠が親代わりになってくれたんだ。


「僕だって、師匠のことは親のように思っていますよ。また、必ず戻ってきます。どうかお元気で」


 そうして僕らは早々に旅立った。

 第9章でオババの元にレイが戻ってきた描写のところで、「数か月後」となっていましたが、

 思ったよりも早くレイが王都に着き、村に帰って来られたので、「二か月後」に修正を致しました。

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