第58話 向き合う覚悟
「ぬしの師は誰だ?」
王様に聞かれたので師匠の名前を答える。
二人の反応を見る感じ、二人は師匠を知っているようだ。
「まさか彼女だとは……」
「そうだな……」
「お二人は師匠のことをご存じなのですね?」
師匠は研究職をしていたって言ってたけど、この二人に覚えられる何かをしていたのかな?
「彼女は魔法師団の、元副師団長です」
えっ?
いやいやいやいやいや。
「師匠が軍に所属していたなんて聞いていませんよ!?」
「優秀な魔法使いだと聞いております。魔力総量は並でしたが」
うっそぉ。
「魔力の師団長、技術の副師団長などと呼ばれておったわ」
なにその双璧みたいな二つ名。格好いい。
「まぁ、割と早くに引退してしまったのですがね」
「その後は魔法の研究に精を出してな。それなりの数の魔法を開発したものよ」
なにそれ?どっちでも実績残してんの?
習った師匠がチートだった件。
あ、でも。
「あのー。師匠が持っている魔法書の中に、師匠の名前とか見た事ないんですけど……」
そもそも僕は著者が誰とか気にしていなくて、大して見てはいないのだけど、師匠の名前はなかったはずだ。
「本名ではないからな」
ペンネーム的な?
そんなのあるの?
「割と多いのですよ」
まじかー。
まぁ、そういうことをあまり自慢する人でもないか。
そんなことを考えていたら、
「昔話に花を咲かせるのも乙なものではあるが、最後の質問だ」
王様が表情を引き締め、そう言ってきた。
「ぬしはレハチワに、どれだけの愛着を持っておるか?」
そうだよね。気になるよね。
だって戦略兵器扱いだもの。
でも、どうしよう。
本当に嘘は苦手なんだよなぁ。
真面目に答えて機嫌損ねたりしません?
僕は一呼吸入れて、覚悟を決める。
「正直、国への帰属意識はそこまでありませんでした。せいぜい村のみんなが危険に晒されるなら立ち向かおう程度のものです」
王様も宰相も黙って聞いてくれている。
芽結は穏やかな表情で猫を撫でてる。
いいなぁ。僕も撫でたい。
「ですが、今は芽結……さんと再会しました。彼女を危険から守るためなら、何でもします」
芽結の指がピクリと一瞬止まる。
すでにラーンク軍に被害出しちゃってるしね。
嫌だけど、戦争に駆り出されるのだって、受け入れよう。
「それに……メリアやスルラ師団長ともそれなりに仲良くなってしまいましたからね。今更見捨てられませんよ」
静かに聞いていた二人だったけど、宰相が息を吐き、王様はも肩がわずかに下がったのが見えた。
この二人でも緊張してたんだなぁ。
僕もちょっとは自覚しないといけない……のかな?
あ、そうか。
さっき「結婚したい」って言った芽結に対して、王の発言として「よいぞ」って言ってたのはこれか。
個人の判断で言ってもらえたら一番だけど、お姫様もらうのにそれはあまりにも贅沢か。
「それを聞いて安心した。では、最後に提案だ」
なんだろう?
やっぱり軍属かな?
嫌だなぁ。
一度、村にも帰りたいし。
「ちょうどよい歳でもあるし、学園に通ってみる気はないか?」
全然違ったー。恥ずかしい。
でも学園かー。
学校じゃなくて学園かー。
確かあそこって……。
「お貴族様のご子息、ご息女か、かなり優秀な方にしか入学は許されないと聞いていますが」
僕の疑問に、宰相は苦笑。王様は鼻で笑った。なんで?
芽結は相変わらず猫を撫でてる。名前なんていう子なんだろう?
「ぬし以上に優秀な魔法使いがこの国におるか?」
あ、そっか。
いや、そっかって納得しちゃうのも勘違いしてるみたいで恥ずかしいけど。
「どうした?押し黙って」
どう返事をしていいか悩んでいると、王様に急かされる。
わかりました!って言うと、うぬぼれてるみたいだしなぁ。
「彼は理解と了承、謙遜の間で揺れているのです。父上」
そうだけど!理解と了承のところ言っちゃらめーーーーー!
僕の沈黙無意味になっちゃうじゃん!
王様はフンと鼻をならし、
「謙遜など不要であろう。すでに実績もあることだしな」
そう言って悪い顔になった。
ラーンクから受けてきたうっぷん、実は結構溜まってます?
「私が推薦状を出してやろう。それで、返答は?」
「ありがたく受けさせていただきます」
こうして、僕の入学が決まった。
レハチワ内には学校と学園があります。
学校は王都に2つありますが、学園は1つだけです。
学校は国の公共事業で、一部の裕福な、もしくは優秀な平民が通っています。
学園は王+その賛同者の貴族の個人資産で運営されている事業で、基本は貴族のみ、もしくは一部国でも類稀な才を持ったものが入学します。




