第56話 防音壁の中の密談
「あ、その前に」
そう言って意識を集中させる。
例の防音用の結界だ。
ゆっくり空気の壁を5つ作っていく。
「これは……」
芽結が目を丸くする。
ふふん。どうよ。
「何が起こった?」
「魔法の同時発動ですね。5つ同時に発動しているようです」
ちょっと違うけどね。
しかし、本当に女性はこういうのを感じ取る能力が高い。
メリアもスルラもすぐに気づいていたし。
「それで、何をした」
少し鋭い目で王様がこちらを見てきた。
威圧する感じではないけど、下手な発言は身を滅ぼしそう。
「あまり大っぴらにする内容ではないので、風の結界を防音用に貼りました。この中の音は外には漏れません」
僕が説明すると王様は顔を天井に向け、
「なんと。このような魔法が存在したとは」
そう感心したように言った。
ごめんなさい。一応オリジナルの魔法です。
しかし、芽結はそのあたりはさすがだった。
「これ、オリジナルでしょ?」
「過去に他の使い手がいなければね」
王様が「おりじなる?」と疑問符を浮かべているけど、まぁこの話は関係ないし、話を進めよう。
「僕と芽結……さんは地球というところで生まれ、こちらの世界に生まれ変わった転生者です。転生者というのは……」
そうして、メリアとスルラにした説明をもう一度した。
「にわかには信じがたいな」
でしょうね。
むしろこの反応の方が普通な感じがする。
「彼の言っていることは本当です」
芽結が援護してくれる。
「それでは、そちらの世界でぬしとメイは面識があったということなのだな?」
「あーえっと。そのー……。大変いいにくいのですが……」
「申してみよ」
出た。申してみよ。
やっぱ王様なんだよなぁ。
なんで今僕なんかと話してるんだろう?
「僕と芽結さんは幼馴染で恋仲でした」
「こいなかとはなんだ?」
貴族とか王家とかだとやっぱ恋愛なんてしないのだろうか?
いや、全くないってことはないはずだよな?
そう思っていたら、芽結が爆弾を投下した。
「お互いに愛し合っていたということです。父上」
ちょ!言い方!
「……ほぅ」
ぎゃーーーー!
めっちゃ圧を感じますがな。
「あ、あの。あの違うんです」
なんか言い訳をしてる人みたいになっちゃったじゃないか!
芽結ー!助けてー!
僕の祈りが通じたのか、芽結が助け舟を出してくれた。
「清く正しいお付き合いです。父上」
まぶたを閉じてしれっと言いやがった。
なんてリラックスした表情!
なんなら膝の上の猫を撫でていやがる。
僕はこんなにドギマギしてるのに。
くそう。
助け舟を出してくれてありがとうございますぅ!
心の中でそう言ったら、芽結はウィンクをしてきた。
くぅ。
可愛いから許す!
「本当に仲がよいのだな」
それ、今日で何回目ですか?王様。
「2回目かな?」
心の声を読まないでください。芽結さん。
「まあ、二人の関係性は理解した。多少、不服ではあるがな」
不服なのかーい!
でも、そもそも、僕と芽結は身分が違うわけだし、こっちでも一緒にいるのって……あれ?もしかして、無理?
じわっ。
「父上。わたくしは鈴と結ばれたいと考えています」
「よいぞ」
…………?
えっ?いいの!?
「今のは、親としてではなく、王としての発言だがな」
どういうこと?
「はい。父上」
芽結は理解しているみたい。
「では、次の質問だ」
そう言って王様は話を進めてきた。
芽結は鈴の前では前世の一人称ですが、それ以外の場面では今世の一人称です。
芽結が撫でている猫はタキシードです。
つまり、そういうことです。




