第52話 堰き止めたその後 -side Esencia-
俺はエセンシア。
これでも一応王国長弓隊の隊長を任されている。
メリアがレイ青年のもとに駆け付けるのを見届け、警戒態勢を整えることにした。
「警戒を強めろ。小さな変化を見逃すなよ。どんなくだらん変化でも構わん。俺への報告を怠るなよ」
メリアは大した被害ではないと言っていた。
また攻めてくる可能性は低いかもしれないが、可能性があるうちは警戒する必要がある。
俺は目を細めて対岸を睨んだ。
半刻ほど経った頃、おずおずと部下が声をかけてきた。
「隊長……」
「おう、どうした?」
こいつは細かい所に気が利くが、内気なのが兵士に向いてないところだ。
が、細かい所に目がいく性質が、今回は功を奏した。
「いえ、気のせいかもしれません」
「何でもいい、言ってみろ」
「えっと……、川の水位が減ってる気がします」
「川の水が?」
そういちいちビクビクするなっての。
しかしこのタイミングで川の水が減るってのが気になるな。
あいつらとの関連性を疑わないっていうのは愚策だろう。
可能性があるとすれば……なんだ?
毒はありえない。
まず、毒で水が減るわけでもない。
そして、あの川はハナアカ領では貴重な水源だ。
わざわざ自領を危機に陥れる物好きでもないはずだ。
あとは……。
そうか、渡河のために堰き止めたか。
たまたまかもしれんが、一応確認した方がよさそうだな。
ここの守りを減らすのも怖いが、氾濫はもっとまずい。
捜査隊を編成する必要があるな。
「よく気づいた。お手柄かもしれんぞ」
そしてそのまま人を集めてくるように指示を出す。
集まった面々の前で地図を広げる。
「アモリスが川の水位が下がっているのに気づいた。たまたまの可能性もあるが、渡河のために堰き止めた可能性もある。今からそれを確認するための隊を編成したい」
こいつらは俺の直接の部下ではなく、この要塞の常駐兵だ。
俺の隊は今はナウォック向かっている最中だ。
「だがその前に、もし堰き止めるならどこの可能性が高そうか、分かるものはいるか?」
普段ここにいるわけではない俺よりも、常駐兵の方が地理にはより詳しいだろう。
「俺ならこことここを止めますね。ここらなら自領への被害もでない」
「俺も同意見です」
やはりこちら側の川を狙う方が都合がよいか。
しかしそれだとあいつら国境を越えたってことだぞ。
奇襲と言い、まったく何でもありだな。
「よし、ではとりあえずこれらの場所を確認しよう。ハナアカ領側は……まぁ、こちらに被害は出ないだろうし気にしなくても良いだろう」
杞憂であればそれが一番なんだがな。
「では、隊を編成する。」
メンバーは今、意見を言った二人、アモリス、それとフィジカルの強いもの2名だ。
「確認するのが主目的だが、その場で対処できるなら対処してしまえ。対処が遅れるほど取り返しがつかない事態になりかねないからな。対処不可能な場合は急いで戻って来い。いいな?」
彼らは4日後に戻ってきた。
幸い彼らだけで対処可能な規模だったらしい。
「よし、風呂に入る許可を出す。ゆっくり休んで来い」
彼らは我先にと走り出した。
他の者たちには食事の用意をさせる。
今回はアモリスの手柄だったな。
今回のことと合わせて、報告しないとな。




