第104話 晴れの雨
僕らは全員で花屋さんに来ていた。
とは言っても店内に入ったのは僕とレッタだけだ。
「献花用の花束を2つ。花束の内容は多めにしてくれ」
レッタが注文してくれる。
僕らは人数が多いから全員で2つということになった。
支払いは僕がしたいと言った。
みんなは気持ちを汲んで出させてくれた。
少しでも何かをしたいんだ。
これはあの子たちのためじゃなくて、僕のための儀式なんだ。
店員さんが手際よく花束をまとめてくれる。
「これくらいでどうだい?」と見せてくれた。
二人で頷く。
お会計を済ましたのち、馬車で墓地まで移動する。
郊外にあるため、歩きだと少し遠い。
用意するのは花だけみたいだ。
礼服とかないけど大丈夫かな?って心配したけど、大丈夫みたい。
行くのが平民の共同墓地だから。
僕の父さんと母さんの時も、全員漏れなく私服だったし。
そもそも、平民は礼服なんて持っていない。
ただし、今回芽結だけは礼服を着ることになった。
一国の王族がお墓参りに行くのはちゃんと意味があるらしい。
というか、僕以外のみんなは合同葬儀に参加している。
その際は、同盟国の王女という立場での参列だったみたいだ。
礼服なんて持っていなかったはずだけど……。
「急いで仕立ててもらったから」
ということらしい。
5日目に合同葬儀だったらしいけど、間に合うんだ……。
「質は問わなかったもの」
王女なのにそれでいいのか?
でもまぁ、主役なわけじゃないしそういうものなのかな?
しばし進んで馬車が止まる。
共同墓地に着いたようだ。
馬車から降り、みんなが集まったところで芽結が管理人に声をかける。
「献花に参りました」
「どうぞお入りください」
管理人さんは芽結と僕が持っている花束にチラリと目線をやってからそう言い、通してくれた。
案内はない。
共同墓地は広さはあるけど、お墓は大きな碑1個だけだ。
先頭の芽結の後に続く。
やがて碑の前に着くと、そこには沢山の献花が積まれていた。
僕が思ってたよりも多くの方が亡くなっていたんだ……。
芽結と二人並んで花を手向ける。
僕は更に木彫りの猫も手向けた。
一歩下がり、下を向き、みんなと一緒に亡くなった方たちの冥福を祈る。
一分程の黙祷を終え、元来た道を戻る。
でも、その前に――。
「きっと、また来るよ。それと――」
献花した場所に戻り、タリスマンも添える。
「君のことは忘れないけど、薄情って思うかもだけど、僕は前を向いて生きていくよ。約束、まもれっ……まもれなくて、ごっ……」
喉が詰まって最後は言葉にならなかった。
照りつける太陽の日差しが、僕を責めているように感じた。
「今日はひどい雨だな」
「……はい」
アルソとサクラの僕を気遣う声に、僕は返事ができなかった。




