第102話 声
暗い。
どれくらい時間が経ったのだろう?
僕は暗い闇の中を漂い続けていた。
最初は何か悪いことがあった気がするけど、今は何もない。
体は動かない。
何かを考えようとすると頭が痛むから、この暗い空間をなるべく何も意識しないで漂い続けている。
「――お兄ちゃん」
何か、聞こえた気がする。
「――お兄ちゃん」
気づくと目の前にはあの子がいた。
「やくそくまもって、あいにきてくれてありがとう!」
違う。違うんだ。
僕は何も約束を守れていない。
僕が守れなかったのは約束だけじゃない。
君も、君のお母さんも、あの街も、何も守れなかった。
力だけ無駄に手に入れても、僕はずっと無力だ。
女の子の声はもう聞こえなくなっていた。
代わりに聞こえてきたのは狂気じみた憎いあの男の笑い声だ。
「ふっひゃっひゃっひゃっひゃっ」
やめろ。
「ふっひゃっひゃっひゃっひゃっ」
やめろよ。
「ふっひゃっひゃっひゃっひゃっ」
……やめろ。
「ふっひゃっひゃっひゃっひゃっ」
何が可笑しい!!!!!!!!!!!!!!
「ふっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ」
黙れえええええええええええええェェェェ!!!!!!!!!!!!
「ふひっ。お前は何も守れない。何も。何一つとして。ひゃっひゃ。無能。無能。役立たず。無能無能無能無能無能無能――『人殺し』」
ああ……ああっ……ああああああ……ああああああああああああああああああ!!!!!!!!
「ふっひゃっひゃっひゃっ」
「あーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「落ち着け!レイ!落ち着け!」
「はなっ!はなせ!はなして!」
「落ち着け!落ち着けって!」
「鈴っ!!」
ふわりと、優しい感触と優しい香りに包まれる。
「め……い……?」
何が?何?どういう、こと?
「ようやく正気を取り戻したか」
「あるそ?」
「うむ」
芽結の拘束が緩む。
周りを見渡すと避暑し隊の全員が居た。
「どこ?ここ?」
僕は聞きつつも、聞くべきではない気がしていた。
「ここは――」
ダメだ。
言わないでくれ。
「ブイニシャの――」
駄目だ駄目だ駄目だダメダ!
「王城の一室だよ」
瞬間、目の前が真っ暗になった。
そうだ。
思い出した。
僕は――――――。




