表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔法、観察してみたら  作者: 猫チュー
第二章 夏休みの雨編
106/113

第99話 燃ゆる王都 -side Arsaux-

※注意※

 とてもとても残酷な描写があります。

 苦手な方はブラウザバックを推奨します。

※注意※

 とてもとても残酷な描写があります。

 苦手な方はブラウザバックを推奨します。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 レイと共に街道をひた走る。

 私は身体強化をするか考えたが、レイがついてこれない可能性と、魔力の消費のことを考えて温存することにした。

 それでも私は足の速さに自信があるのだが、レイはその私についてきている。

 必死なのだろうな。

 私もあの子の笑顔に癒された口だ。

 間に合うのならば守ってやりたいが……。

 

 すでに何人もの人とすれ違っている。

 うまく逃げることに成功した者たちだろう。

 同じように逃げていてくれていればよいが……。


 ブイニシャ王都にはすぐに着いた。

 しかしこれは……。

 家々は燃え、人の怒号が響き、子供の泣き声がそこかしこから聞こえる。

 しかし敵と思わしき影は見当たらない。

 やはりメリア嬢の睨んだ通り個人によるものか。


 くっ。

 これだけの爆薬。どこで調達したのだ。

 ただの一般人が集められる量なのか?これは。


 一瞬の思考の末、とりあえず近くにいる者の救助に乗り出そうかと考えたその時、レイが凄い勢いで飛び出した。

 風の魔法を自身に当てたか。

 無茶をする。

 しかしメイ様にレイのことを頼まれているのだ。

 私は身体強化をしつつ、レイと一緒に行くことにした。


「ふっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ」


 見覚えのある……いや、変わり果ててしまった広場に出ると、そこには襤褸をまとった男が高らかに笑い声をあげていた。

 彼の周りには焚火と玉のようなものが山と積まれている。

 この国の兵士が包囲しているようだが、近づけずにいるみたいだ。

 ――この男が下手人か。


 男がしゃがみ込み、煤に塗れた腕を動かす。

 場に緊張が走るが、男は何かにかぶりつき、吸い始めた。

 なんだ、あれは?

 

 ――瞬間、怖気立った。

 その男がかぶりついていたのは人の――子供の腕だった。

 子供の腕にかぶりつき、その血をすすっていたのだ。

 急激に襲ってくる吐き気をなんとか耐える。

 

 すると今度は腕を捨て、近くの何かをまさぐった。

 そのまままさぐって引き抜いた物。――あれは……眼だ。

 眼を口に入れ、咀嚼しだした。

 男がまさぐった瞬間、私は見てしまった。

 男の近くの何か――子供が死してなお抱え続けていたものを。

 あれはレイが師からもらい、女の子にあげたというタリスマンだ。

 特徴のある文様。間違いない。

 耐えられなくなった私は思わず胃の中の物を吐き出してしまった。

 ひとしきり吐き、手巾(しゅきん)で乱暴に口元を拭ったところで思い出した。

 そうだ。レイ!

 レイの方を振り返ると、私が見た事のない表情をしていた。――いや、表情がなくなっていた。


 次の瞬間、男が叫び声をあげた。

 そちらに視線を向けると、男の右手の小指がなくなり、血が噴き出していた。

 すぐに後ろから底冷えするような声がし、男の悲鳴が聞こえなくなった。


「楽に死ねると思うなよ」


 そこからレイによる惨殺劇が始まった。

 遠くの小さな瓦礫が飛来すると一瞬だけ男の声が聞こえる。

 すぐに男の耳がそぎ落とされるが声は消される。

 おそらく、例の結界を巧みに使っているのだろう。

 そんな光景が繰り返され、男は少しずつ体積を減らしていった。

 途中、男が少女の亡骸に手を伸ばそうとしたが、その指は跳ね返されていた。

 少女は、たとえすでに息がなくとも、レイが守っているに違いない。


 私は……私は何もできなかった。

 男の狂気も、レイの怒りも、私には恐ろしすぎた。

 メイ様の護衛を申し付けられることもあるが、今の私はただ震えていきさつを見守るだけの無力な存在だった。


 やがて男が動かなくなってもレイの怒りは収まらなかった。

 どういう意図があったのだろうか?

 男の耳はそぎ落としたが、頭部だけは狙っていなかった。

 それ以外はズタボロで、最早人の形をとどめていなかった。

 それでも少しの間、レイは男を削ぎ落し続けた。


 少しして、ようやくレイは手を止めたが、その表情には晴れやかさの欠片もなかった。

 抜けた表情で少女の亡骸に近づいて、膝から崩れ落ちた。

 しばらく呆然とした後、不意に涙をこぼし、静かに泣いた。

 慟哭することはなかったが、静かに泣く姿が、なぜか妙に私の心を締め付けた。


 どれくらい時間が経っただろうか?

 大量の護衛を引き連れて現れた人物に、私は慌てて頭を下げた。

 ブイニシャ国王その人であった。

 国王はこちらに目礼した後、頭部だけとなった男を見た。

 少し目を見開き、そして目をつむった。

 静かになった周囲に、国王の小さな声が響いた。


「ラーンクの貴族、レイゾン・ミカコルス……か」


 小さな響きが、私にはとても遠くに感じた。

 街の焼ける臭いが、レイの姿が、私の心を締め上げ続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ