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異世界魔法、観察してみたら  作者: 猫チュー
第二章 夏休みの雨編
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第98話 見えない炎

 ゆるく楽しめたログハウス生活も終わりを告げ、僕らは既に馬車にて帰路の旅人だ。

 今日は芽結とローンの二人と同じ馬車になった。


「そういえばブイニシャの王都であの子に会っていくんだったね」


「うん、約束したからね」


 それに、みんなの了承も取ってある。


「お土産も用意いたしましたわねー」


 木彫りの熊……ならぬ、木彫りの猫だ。

 でもあんな風にリアルな造りではなく、ゆるーくデフォルメしたねこちゃんだ。

 でも、僕は器用な方じゃない……いや、はっきり言おう。不器用だ。

 だからこれを作ったのは僕じゃない。

 なんと以外なことにメリアが作ってくれた。

 しかも僕の分まで。


「喜んでもらえるといいんだけど……」


「大丈夫ですわよ」


 そうだといいな。

 もうすぐブイニシャの王都に着く。

 本当はもっと喜んでもらえるものを探したかったんだけど、場所が場所だけに見つからなかったんだよね。


 因みにメリアにはレハチワの王都、ケイノカヴィアまで戻ったらポーションをいくつか作って渡す約束をした。

 僕の分まで作ってもらったのは、あの子とお揃いにするためだ。


 しかしメリアって本当に何でもできちゃうな。

 そんなことを考えていた時、


 ――ドォーン!!!


 馬車の中にいて、それでも中まで聞こえてくる音。

 でも、そこまで近くじゃない。

 僕らは顔を見合わせる。

 すると、


 ――カランカランカラン。

 

 この音はメリアのベルだ。馬車がゆっくり止まる。

 僕は馬車から急いで飛び出し、メリアのいる先頭の馬車に移動しようとして、


「……えっ?」


 間抜けな声が出た。

 進行方向に大きな炎の柱が見える気がする。


 ――ドォーン!!ドォーン!!!


 更に音が聞こえてくる。

 これまさか、ブイニシャの王都が攻撃されてる?

 ラーンクってそこまでなりふり構わない国なの?


 意識を戻して慌ててメリアの元に駆け寄る。

 

「状況見えます?」

 

「んー。たぶん爆薬……ですかね?そういうので建物とかを爆破してるんじゃないかな?」


 いくらメリアでも視線が届かない死角なんかの状況までは見えない。

 しかし、そうか。

 てっきり大砲かと思ったけど、この時代の大砲に建物を燃やすような効果はないか。


「とりあえず姫様に判断を仰いで、迂回するか戻るか決めましょう」


「その必要はないわ」


 横を向くと芽結が来ていた。


「このままブイニシャ王都まで向かいなさい」


「それは無理ですね。あたしは護衛なのでむざむざと姫様を危地に向かわせることなんてできません」


 当然だ。

 僕も芽結には逃げて欲しい。

 ここだって危なくなるかもしれないし。


「同盟国の王都が襲われているというのに見過ごすなど王家の恥です」


「でも、姫様に何ができるというわけでもありません」


 このままでは甲論乙駁(こうろんおつばく)だ。

 そこへ――

 

「私とレイで向かおう」

 

 振り向くと、そこには帯刀したアルソが立っていた。

 本当に刀を使うんだ。

 

「メリア、君はメイ様と皆の護衛を頼む」


「鈴は行かせません」


「メイ様の我儘を通すにはこれは譲れません」


 芽結の気持ちは嬉しいけど、アルソだけ向かわせるのもまた違う気がする。

 芽結がこぶしを握りながらぎりりと奥歯を噛む。

 芽結も本当はわかってるんだ。

 理屈に合わないことを自分が言ってるのが。


「鈴。必ず無事に戻ってきてね」


「大丈夫。守りに関しては僕はかなり強いはずだよ」


 これは本当に。

 油断さえしなければ僕を害する手段ってあんまりない気がする。

 不意打ちとかには弱いけどさ。

 いや、油断慢心はダメか。

 気をつけなきゃ。


「アルソ。鈴のことよろしくね。あと、あなたも無茶はしないで」


「はい」


 みんなが乗った馬車が元来た道を戻っていく。


「じゃあ行こうか、レイ」


 僕は頷き、アルソについていく。

 断続的な爆発音はずっと止まず響いていた。

 

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