第97話 ハンモックってすごく気持ちいいね
ここ数日は実に平和に過ごしている。
今も大自然の音楽に耳を澄ませながらゆったりとハンモックに揺られているところだ。
ハンモックはあらかじめ芽結が用意させていたみたい。
相変わらずやりたい放題してるよね。
しかしこのハンモックってすごく気持ちいいね。
前世でも現世でも経験なかったけど、これは段々眠く……
――グラグラグラグラ
いや、揺れすぎじゃない?
目を開ければそこには――
「何をしてるの?シノカ」
「気持ちよさそうだからもっと揺らしてあげようかと思って!」
揺らしすぎなんだよなぁ。
「加減って知ってる?」
「知ってるわ」
「知識は得るだけじゃなくてちゃんと活かそうね」
「わかったわ!」
なにこれデジャヴ?
てか、これシノカ絶対分かってないやつ。
「で、本当はどうしたの?」
「だってさー。せっかく遊びに来たのにレイはずっと寝たままだしさー」
そうは言っても――
「シノカ、僕らがここに来た目的覚えてる?」
シノカはこめかみに人差し指を当て、首をかしげる。
はぁ。やっぱりね。
「僕らはここにチルい時間を過ごしに来たんだよ」
「えー。でもつまんないー」
まぁシノカだしな。
馬車の中でも一人だけテンションの高さが違ったしな。
「他のみんなのところには行ったの?」
「みんなレイのところに行けって」
オイイイイイイ!?!
「はぁ。わかったよ。じゃあかくれんぼしようか」
「さんせー!」
よしよし。
「じゃあ僕が鬼役するからシノカは隠れてて」
「わかったわ!」
そう言い残し、シノカは隠れに向かった。
僕は静かに目を閉じる。
「さすが鬼畜ですね」
ビックーーーン!
不意の声に僕は飛び起きた。
――その勢いでハンモックから転げ落ちる。
「あいったぁーーー!」
したたかに頭を打ち付けた。
大丈夫?僕の頭割れてない?
「大丈夫です。割れてるのはお尻だけです」
「な、なにー!?お尻が!?!??!?」
って
「ベタか」
声の主はメリアっだった。
僕はたんこぶのできた頭をさすりながら立ち上がる。
「鬼役買って出たのにそのまま寝ようとする鬼畜に何かを糾弾されたくないですねー」
「ちゃうねん」
思わず似非関西弁が出ちゃったじゃん。
「いや、ほら。ね?隠れるところが見えないように目を閉じただけでね?」
僕はメリアのジト目に屈した。
あ、でもさー。
「そんなに言うならメリアが相手すればいいじゃないですか」
「あたし、シノカ様とはお友達ではありませんし。というより平民ですし。多少打ち解けましたが、立場的には無理ですよ」
んー。
言われてみればそっか。
貴族と平民の垣根。慣れてきたけどめんどくせー。
なんかみんなが気安く接することを許してくれてるから忘れがちになるけど、本来僕もこの輪に混ざれる立場じゃないんだよね。
そんなお嬢様を放置するわけにはいかないか。
「じゃー探しに行ってきます」
そう言って立ち上がると、すぐにシノカの赤いツインテールの先っちょが見えた。
てか、よくそこ登ったね。
お嬢様ぇ。
「シノカみーつけた!」
僕はログハウスの屋根に向かって声を張り上げたのだった。




