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異世界魔法、観察してみたら  作者: 猫チュー
第二章 夏休みの雨編

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第96話 新たな迷宮

「さて、順調ならミリアが戻ってくるのはあと2か月ほどか」


 脂ギッシュな、頭髪が後退した男――レハチワの宰相、ツキーズが独白する。

 すると、


 ゴンゴンゴン


「失礼します」


 ひとりの文官が報告書を手に入室してきた。


「報告します。例の迷宮ですが、かなりの規模なことがわかりました」


「そうですか。陛下もお喜びになられますね」


「ええ。迷宮が見つかっただけでなく、その規模が大きいこともわかったのですから」


 二人が話している迷宮はレイのタキンチ村のあるスリリース領、その西側に位置するビッシポン領で最近確認された新迷宮。

 レイとメリアが魔獣と戦ったあの山だ。

 メリアの報告により、国が調査隊を派遣。

 結果、山の麓にひっそりと迷宮の入り口ができているのが見つかった。

 その報告を受けて今度は迷宮の調査隊を派遣。

 今受けた報告はその調査隊からのものだった。

 第一階層を調査した隊はラーンクにある迷宮でも上位の巨大迷宮並との見解を示した。

 

「これで迷宮産の素材等をラーンクに頼らなくてよくなる」


 ラーンクは国の半分程が砂漠だ。

 広大な国土の資源をどうやって賄っているかというと、迷宮(ダンジョン)という存在だった。

 ダンジョンでは高品質な肉や魔物の素材など、他では手に入りにくいものが手に入った。

 その素材やそれによる富を求めて商人が来る。

 そうやってラーンクは成り立っている。


 国王やツキーズはラーンクを滅ぼそうなどとは考えていないが、国で必要になる素材等は商人から足元を見られていた。

 しかしこれからは迷宮運営を国家事業としてやれるなら、風向きは随分と変わりそうだ。


「これから忙しくなりますよ」


 今まで経験にない迷宮運営を始めるにあたって、どんな障害があるかなど全くわからないのだ。

 その上――


「ガガダ山賊団の縄張り……ですしね」


 そうつぶやき、ツキーズは嘆息する。

 奴らが迷宮の存在を知らない理由がない。

 元々縄張りにしていたのもあるが、調査隊を送ってしまった。

 見張り等にはとうにばれているだろう。


「つまり、まずはガガダ山賊団の壊滅。それからようやく迷宮運営ができる」


 今まで何度も討伐に失敗した。

 それは地の利、資金的な問題、奴らの小賢しさ、その他多くの理由があったわけだが、大きな理由の一つだった資金に関しては迷宮運営で元が取れそうだ。


「いえ、むしろこれは討伐の良い機会になりましたね」


 あとはどうやって討伐するか。

 ふたつの山を行き来してこちらを煙に巻く相手。

 ツキーズの畑違いの分野とはいえ、何かしらやれることはないのだろうか?

 その時ふと、一人の人物が浮かんだ。


「彼の者なら……」


 一瞬そう考えたが、

 

「いや、しかし何でもかんでも彼をあてにするのはどうなんでしょう?」


 とりあえずは次の会議で議題に上げよう。

 あの場であれば、王、軍、貴族とそれぞれ揃うので、最も適した場であろう。

 そう一人納得したツキーズはメモのために筆を取った。

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