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エリート社畜、異世界でニートを目指す。  作者: う●こ味のカレー


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9話 体力と腕力


 勤務初日とあって、寮を案内してもらった。


 案内してくれたのは、俺と同じ経理課で働いている女性職員のルディスだ。

 年齢は二十歳そこそこだろうか、定番の金髪碧眼で、JKを思わせるポニテ。

 拘りなのか、もみあげ部分を縦ロールにしている。

 新鮮味は無いものの、まあまあの美人だ。

 鼻っ柱が強そうな女性で腰に剣を吊している。

 幅がないことから細剣(レイピア)だと分かる。

 重そうな金属の鎧まで着込んでいて、まるで異世界ものにありがちな冒険者のような出で立ちだ。


 縦ロールの金髪部分がコロネみたいだな。つい指を入れたくなる……。

 不機嫌そうにプリプリと尻を振りながら、まあまあの美貌が言う。


「一度しか言わないから、ちゃんと聞いておけ。いいな」


「はいはい」


「返事は一度だけ、良く聞こえるようにハッキリと!」


「ハイッ!」


「フンッ、これだからお上りさんは困る」


 訂正、冒険者というより職業軍人だ。いちいちうるさい。

 教えてもらう手前大層な口は利けないが、一応反論した。


「物覚えが悪いほうでして……確認するかもしれませんが、許してください」


「チッ、仕方ないな。今日だけだぞ」


 お高くとまってツンツンしてやがる。

 間違いなく男を見下している。婚活で苦労するなタイプだな。

 いや、こういう強キャラを装っている女子ほど、好きな男の前じゃ猫を被る。ルディスもそのパターンだろう。

 恋愛過程は甘々だが結婚したらとたんに強気に出るタイプだ。

 ……お相手が可哀想でならない。


 まあ、俺とは関係のない話なのでスルーして、説明に意識を集中した。


「一階は職員の警護も兼ねて、元冒険者を泊まらせている」


 寮はギルドの裏に建っており、三階建てとまあまあ豪華だ。

 正面から見るに間口は狭く、奥行きが長いものの部屋数は多い。

 間取りというか、建物内部は長い廊下に沿うように片側に部屋があるだけ。


 一番奥が曲がり階段になっており、それが屋上まで続いている。屋上は共有の物干し場だ。各フロアの階段近くが共有スペースになっていて、個室には無い設備がある。

 一階が厨房兼食堂。二階が風呂と脱衣洗濯所で、三階が談話室となっている。


 トイレは各フロアの階段脇に備え付けられており、朝の混雑は無い。

 食事は各自で料理することになっている。

 安価な調味料や日持ちする食材はギルド支給で、生鮮食品や足らずは自分で買ってくるシステムだ。

 ちなみにギルドのすぐそばに肉屋がある。

 提携を結んでいるので、注文すれば仕事帰りに受け取れるようになっている。


 気になる寮の住人だが、俺を含めて七人。

 案内してくれたルディスに、同じ経理課のリネットとエルスタシア。法律関連の仕事をしているアレクシオ、それに元冒険者をしていた職員のファッツとローザ。

 俺とアレクシオ、ファッツ以外は女性となっている。

 男女比三:四で、ラノベならイチャラブハーレム展開なのだろうが、俺はニートに徹したい。

 というか、(わずら)わしい女など不要! 自由な独身生活を謳歌(おうか)するつもりだ!

 そのためにも、引きこもり資金と(つい)棲家(すみか)を手に入れねば。


 突然の採用なので、親睦会などは皆無。

 部屋に荷物(といっても手提げ袋に入ったスーツと鞄)を置いて、稼いだばかりの日当で食材を買いにいくことにした。

 初見だと、肉屋の店主に断られると、ルディスも着いてきてくれた。


 なんだ、態度はツンツンだけどいい奴じゃないか。


「私も、取り置きを頼んでおいたからな。ついでだ、ついで」


 評価を改める。性格の合わない女だ。仕事だけの付き合いに留めよう。

 途中で、女神からもらった金を部屋に置いてきたのを思い出した。


「日当の銀貨五枚がある、支払いには困らんだろう」


「何ッ! 新入りの分際で銀貨五枚だと! 私の倍以上あるじゃないか! 一体何をしたんだ、白状しろ!」


 ルディスがものすごい剣幕で詰め寄ってきた。コイツ金の亡者か?


「白状って言われても、面接の時に試験を受けて、その結果、日当が銀貨五枚に決まっただけだ。疑われるようなことはしていない」


「嘘だッ! 私でも銀貨二枚なんだぞ! 正直に答えろ、一体何をした! まさかランプート統括を(おど)していないだろうなッ!」


「おいおい、変な誤解はよしてくれよ。こっちは仕事を求める側だぞ。そんなことしたら犯罪だ。雇われる以前の話だろう。それに、初対面の相手を脅す奴がどこの世界にいるんだよ」


「私の目の前にいる!」


 とんでもない言いがかりだ!


「そんなに言うんなら、いまから行って聞いてこいよ!」


「それには及ばん、この場で決着をつけるまで」


「決着だと?」


「そう決着だ! 正義の名のもと――アルハンドラの家名にかけて! ヤシロ・チクマ、お前を成敗する!」


「上等だ! やれるものならやってみろッ!」


 リアルなガチバトルに発展した。

 体力と腕力の評価がFなのは伊達ではない。抵抗も虚しく瞬殺された。


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