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エリート社畜、異世界でニートを目指す。  作者: う●こ味のカレー


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6話 職探し


 過度にコンプライアンスを押しつけられてきたせいか、食べたあとのゴミを始末しないと、どうも気持ちが落ち着かない。


 ピザの入っていたケースや、フライドポテトの紙容器は燃えるゴミとして宿屋に引き取ってもらったが、ビールの空き缶だけは断られた。


 まあ、燃やしても灰にならんし、(かまど)の燃料にもならんからな。


 そんなわけで、ビールの空き缶を鍛冶工房らしき店に持ち込んだ。


「あのう、これ処分してもらえますか」


 奥から機嫌の悪そうな男ができてた。背の低い小男だ。

 しかし、筋肉だけは一流。こんがりボディーのムキムキマッチョ。口のまわりに髭を蓄えていて、ノンケには近寄り難いオーラを放っている。

 怪しい匂いのする脳筋系のおっさんだ。


 不測の事態に備えて、必要以上に距離をとった。


 おっさんが、不快感を隠すことなく言う。


「なんだぁ、こんなガラクタ買えっていうのかよ」


「いえ、処分していただければそれで…………」


「前置きはいいんだよ、前置きはッ」


 いまにも怒りそうなおっさんだったが、空き缶を手にとるなり表情が変わった。


「…………軽い。おまけに薄い」


 空き缶の側面を指で押している。適度にヘコんだ空き缶から指を離すと、元の形に戻った。


「なんだこりゃあ、見たことねえ金属だぞ! 兄ちゃん、どこでコレを手に入れたんだ?」


「いやぁ、手に入れたというか、買ったというか、ゴミになったというか……処分に困っている」


「処分に困るだぁ。馬鹿言っちゃいけねぇ、こりゃあ、すげえお宝だぜ。軽くて薄い均一な形の筒、おまけにすんげぇ細かい色づけましてしてやがる」


 おっさんは、たかが空き缶を大切そうに抱きしめた。それどころか愛おしそうに頬ずりを始める。


 この人ヤバくないか?


 おっさんがまともかどうか観察していると、銅貨を突き出された。


「これで買ってやる。また手に入ったら売りに来い」


「あ、ああ、分かった」


 ついでだから質問しよう。


「仕事を探しているんだが、どこへ行けば仕事を斡旋(あっせん)してくれるんだ?」


 おっさんは空き缶に夢中で、俺のほうに顔を向けることなく、


「だったらギルドに行け。何か見つかるだろう」


「どこのギルドだ?」


「腕っ節に自信があるなら冒険者ギルド、魔法なら魔術師ギルド、手先が器用なら工業ギルド、読み書き計算ができるなら商業ギルド。登録して仕事をもらうなり、職員として雇ってもらうなり好きにすればいい」


 なるほど、その手があったか。

 俺のスキルとステータスから判断するに商業ギルドだな。

 前世で(つちか)った社畜スキルもあるのでなんとかなりそうだ。

 給料が折り合えばの話だが。


「商業ギルドの場所を教えてもらえないか」


「この店を出て右に行って、三つ目の角を左だ。分からんのなら、適当に人を捕まえて聞け。どうせ、この時間帯にほっついている連中は、暇人ばっかりだからな」


「ありがとう」


「いいってことよ。おもしろいガラクタがあったら持ってきてくれよ」


「約束する。じゃあな」


「期待して待ってるぜぇー」


 おっさんに言われた通り進むと、大きな建物にたどり着いた。役所を彷彿とさせる威圧感があった。

 入り口の上の、天秤の看板があがっている。

 天秤の秤皿には積み上げられた硬貨らしきものが載っていて、如何にもお金を扱っていますって感じだ。

 ここで間違いないだろう。


 建物に入る。


 まるで役所みたいな受付窓口があって、そこに受付嬢が立っている。

 その奥には書架が立ち並び、職員らしき人々が行き交っている。


 役所に似ているのは建物の造りだけで、働いている職員は忙しいらしい。

 受付嬢も屋内にいる客たちの案内や説明で忙殺されている。


 急ぐことでもないので建物内を見てまわることにした。


 日本の役所よりも規模はちいさいが、それなりに広い。

 来訪者が自由に歩けるスペースはかなり広い。観光バスが四台くらい停められそうだ。


 それにしても古い造りだな。


 あのクソマズ飯の宿屋や個人経営の鍛冶工房は普通に思えたが、大きな箱物が洋館めいた造りというのは、どうも受け入れがたい。

 人気のある昼間だから違和感は湧かないが、夜になるとゾンビが徘徊(はいかい)していそうだ。


 俺は幽霊は信じないタイプだが、ゾンビは信じるタイプだ。

 なんせ、いままでリアルな社畜ゾンビを山ほど見てきたからな。

 始発電車でも、たまにゾンビを見かける。

 最終電車になると奴らは覚醒し、ため息をつきながら、すし詰めで生産地に送り返されていく。

 かくいう俺も、一時期そこにいた。


 ああいう生活は()()りだ。早くニートになりたい……。

 そのためにも資金を調達せねばッ! 早く仕事を探そう!


 情報収集を始める。


 端っこのほうに大勢の人がいたので、俺もそっちへ行った。

 掲示板に募集のビラが貼りつけられている。みんなそのビラを真剣な表情で読んでいる。

 日雇い労働者が仕事を探しているようだ。

 応募したい案件があればビラを()ぎ取り受付に持って行くシステムになっている。


 俺もお世話になるかもしれないので、掲示板にあるビラを読んでみた。

 変わった象形文字のようだが、不思議と読める。

 前世で持っていたTOEICの影響か?


 掲示板に貼られているビラを読んでいく。

 予想していたような日雇い募集ではなく、委託業務が多い。

 月単位の清掃や配達、書類整理の手伝いなど雑用がほとんどだ。

 単価も拘束期間もバラバラで、この世界の平均賃金を算出しづらい。

 それでも、大体の感覚は掴んだ。

 平均的な日当は銀貨一枚だ。


 隣町への配達業務もあるが、土地勘が無い。

 そこそこの報酬だが、どれだけ日数がかかるか分からないので候補から外した。

 欲張っても良いことはない。単価が良くても拘束時間が長いと嫌になってくるからな。


 自分にできそうな仕事を探す。


 鍛冶屋のおっさんが言っていた、職員募集のビラを発見した。


「何々、日当が銀貨三枚。食事、寮完備か……」


 昨夜の夕飯を思い出す。あんなクソマズ飯はもう懲り懲りだ。

 料理が苦手なわけじゃないので、これを機に自炊でも始めよう。


「寮完備なら通勤時間も短そうだ。飯は……寮のキッチンを借りればいいだろう。しかし、職員だけやけに単価がいいな、待遇もいいし……高いスキルを要求されそうだ」


 まあいい、駄目で元々だ。この世界の面接練習も兼ねて応募してみよう。

 職員募集のビラを取った。


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