表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白い雨  作者: ぽんこつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/23

乱れた心

朝の空気は冷たく張りつめていた。

吹き荒ぶ風が身を縮こませる。

「寒いね~」

助手席に座るなり。

コートを脱いで。

送風口に両手をかざした彼女。

メイクをしているせいか。

アップスタイルの髪型のせいか。

昨日より、どことなく大人びて見える。

服装もニットにミニスカート。

女性らしさを感じさせるものだった。

どこか。

彩音が、成長した姿を見ているようでもあり。

心音という女性の未来を映し出しているようでもあり。

覚めない夢の中にいるような。

不思議な気分だった。

「優さん、今日の私はどうかな?」

しおらしくはにかむ彼女。

「どうって?」

「はぁ。私を見てどう想う?」

吐息をつきながら。

首をかしげ。

横目でこっちを見ていた。

「いいんじゃない」

彼女は、また、ため息をついて。

不服そうにシートに凭れた。

「本当に優さん、彼女いなかったんだね」

「ん?」

「もう。こういう時は、かわいいとか、きれいだねとか。似合ってるね。とか言うんだよ」

「はあ」

「恋人なんだよ。私のこと好きなんだよ。ちゃんと見て」

「はい」

「じゃあ、やり直し」

彼女は顔を付き出す。

「ねえ?」

てかてかした唇をすぼめて。

長い睫毛越しに見つめてきた。

「なんか大人ぽくってきれいだと想うよ」

「そう? ありがとう。優さんも髪型、今日は決まってるね」

特に何をした訳でもないけど。

悪い気はしない。

というか。

安請け合いしたものの。

よくよく考えたら。

そもそもデートというものをしたことがない。

一抹以上の不安がよぎる。

おかしなものである。

死ぬことへの恐怖はないのに。


ん!?

頬に柔らかいぬくもりが触れて。

僕はみじろいで彼女を見た。

するすると何事もなかったかのように。

シートに身を委ねた彼女。

僕は頬に手を添えた。

指先にぬるっとした感触。

「あっ。ごめん」

彼女は僕の手を退けて。

ティッシュで拭う。

「あの、心音。こういうのは、どうかと」

「何が? だって恋人同士でしょ?」

「いや、でも」

「私のお願い聞いてくれるって約束したでしょ?」

「したけど……」

「なら、いいよね? 優さん」

「……それで、今日はどこに行くのかな?」

「瀬田港に向かって。高松に行きます」

「高松に?」

「うん。お買い物デートだよ」

「なるほど」

僕はアクセルを踏んだ。

「何を買うの?」

「うーん。欲しいものはないんだ。本当は島を案内しようかなって想ったんだけど」

「けど?」

「人目を気にしないで。優さんと最初で最後のデートしたいなって」

「……そっか」

キスをされた動揺を誤魔化そうと。

会話を変えたけど。

今まで感じたことのない。

鼓動の乱れと。

心の痛みに戸惑っていた。

道路に沿う凪いだ水面が。

ゆりかごのように。

豊かな光を受け止めていた。

お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ