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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第93話 カナタの接待術

諸事情により編集しました。

星暦2032年、冬の40日、無の日、朝


 “笑い合う砂漠人 (ラフィル・デイザー)”のホーム、つまり拠点場所は『王都サンリク』の平民街のある2階建ての一軒家。6LDKの小さな庭付きで、一部屋の広さは日本で言う畳6畳はある。家賃はパーティーの予算ではなく、5当分にして全員で払って住んでいる。

 パーティーの予算は依頼で行く際の消耗品の買い出し費用、馬車の手配、そして依頼達成後の防具の修理費、ついでに宴会代と色々な様で消費しているため、これ以上の負担はかけられない。


「ふぁあ~、今日はよく寝た・・・。」


 昨日の宴会にてたらふく食事をした私たちはホームに帰ると、すぐに各々の自室に入って就寝した。依頼による疲労感とお酒による酔いのおかげで心地よく眠ることが出来た。ベッドから起きるとあまりの気持ちよさでつい背筋を伸ばしてしまう。

 起床した私は軽く朝食を取ろうと2階の自室から出て、居間に向かおうと快打を降りる。その際に足音が聞こえたのか先に起床して朝食を調理していたキーちゃんが声を掛ける。


「あっ、カナタちゃんおはよ~。朝ご飯作っておいたよ~。すぐに準備するから待っててね~。」


「おはよう、キーちゃん。いつもありがとうね。」


 キーちゃんは私の見るとすぐに盛り付け始める。私は彼女に言われた通り自分の席について静かに持つことにする。その間に居間を見渡してみると私とキーちゃんしかいなかった。残りの3人はまだ起きていない。きっと二日酔いでまだ寝込んでいるのだろう。


 あ~ぁあ、だからあれ程一気飲みは良くないって言っているのに・・・。何で若いうちってみんな無理してお酒を飲もうとするのかな?まあ、前世では成人したての私も似たような事をしていたから強く言えないけど・・・。

 それにしてもやっぱり前世の記憶があるのって有利だなぁ~。こうして色々な事を再確認出来るんだから。おかげで前世(まえ)の失敗をふまえて、お酒の飲み方について熟知出来ちゃった!あぁ~、神様マジありがとうッ!

 ・・・っていうか、キーちゃんもそこそこ飲んでいたよね?アルコール度数高い奴、割と飲んでいたよね?何でこの子だけ毎回こんな余裕で言われるの?すごく羨ましいんだけど・・・。地球では鬼はお酒に強いって言うイメージがあるけど、それと関係するのかな?


 テーブルに頬杖ついてそう思いながら数十秒後、盛り付けを終わらしたキーちゃんは私の前に料理を出す。朝早起きして料理をしてくれた彼女には申し訳ないけど、私はその提供された料理に目を疑ってしまう。


「はい、お待ち遠様~。」


「・・・何これ、明らかに量が多すぎ!?何この山盛り!?」


 私の前に出された2枚の皿には、それぞれ大量に重ねられたトーストと野菜が乗せられてあった。早朝、しかも昨日とは言えお酒を飲んだ人に食べさす量ではない。かなりおもい。


「アハハハ、育ち盛りだからね~!これぐらい食べないと強くなれないよ~?」


「私を太らす気なのッ!?ケマくんじゃないんだからこんなにいりません!・・・ってかキーちゃん、今の仕草はわざと?」


「・・・?何のこと~?」


 キーちゃんがそう言った際に、胸を張って私より断然に大きい胸を強調してきた。私も平均的にある方だから別に妬いているわけではない。ただ前世の記憶を持ってしても一生覆す事がない現実を見せつけられたことで、多少なりのイラッとしてしまう。

 無意識による仕草だったせいか、キーちゃんは私が何を言っているのか本当に理解できずに頭を傾げる。意図的にやったわけではないのだから罪はない。だけど尚のこと(たち)が悪い。この話題にこれ以上は止めよう。

 新しく皿を出してもらい、それにトースト2つと野菜を少々移す。キーちゃんも対面して話せるように私の前の席について、自分の分を皿に移して一緒に食事を始める。



ドンッドンッドンッドンッドンッ


 朝食を終えてキーちゃんとの談笑始めて数分後、突如としてホームの玄関扉から激しいノック音が響き渡った。何かに焦っているのか、その者はノックを止めることなく何度も扉を叩き続ける。あまりの騒音に私たちは驚き、扉の方を振り向く。


「いったい誰?今日は来客が来る予定は聞いていなかったけど・・・。」


「また私たちのパーティーへの入隊志願者じゃないの~?」


 本来冒険者のパーティーのメンバー構成は、種族が偏っているケースがほとんどである。例えばここイースト大陸の総人口の7割以上は獣人族である。だからイースト大陸で活動している冒険者パーティーは、そのほとんどが獣人族によって構成されている。

 それに引き替えて私たち“笑い合う砂漠人 (ラフィル・デイザー)”は特に種族的な偏りがないせいか、他の冒険者や一般人から見ても異色の存在として目に映ってしまう。そしてそれとは一方で“種族関係なくどんな奴でも入れる”、“少人数だから誰彼構わず入れてくれる”と勝手な解釈をされてしまっているそうだ。

 だから“笑い合う砂漠人 (ラフィル・デイザー)”が活躍と同時に知名度が上がっていくにつれて、ホームの前にその入隊者が訪問してくる。人気者になるのは悪くないし、私たちに慕ってついて来てくれるのは多少なりと嬉しく感じる。だけど申し訳ないけど、私たちはこの幼馴染(メンバー)でパーティー活動していきたいから、丁重に断ってきている。もし今回もキーちゃんの言うようにまたしても入隊志願者だったら、適当に対応してご帰宅を願おう。


ドンッドンッドンッドンッドンッ


 この騒音にいい加減鬱陶しく感じてきた。あまりに失礼な訪問者に、私はやや辛辣気味に対応しようとテーブルから立ち上がろうとした瞬間、扉の向こうから声が聞こえ始める。その訪問者のものだった。


「“笑い合う砂漠人 (ラフィル・デイザー)”の皆さま、誰かいませんでしょうか!?私は冒険者ギルド受付担当のハーラです!至急お知らせしたいことがありまして、こちらに伺いに来ました!」


 訪問者の正体は、毎回私たちへの依頼を発生してくれる、冒険者ギルドの受付嬢のハーラさんだった。私たちより3つ年上だけどとても親しみがあり、冒険者関連以外でも交友を深めている。

 そんなハーラさんが激しくドアを叩くほどの急用を持ち込んでくるのは初めてであった。彼女の声から本当に急いでいる事を察して、私はすぐに玄関へ向かって扉を開ける。


ガチャッ


「ど、どうしたんですかハーラさん。そんなドドドっとドアを叩いて・・・。」


 扉を開けて声を掛けると、訪問者はハーラさんだけではなかった。彼女の後ろにもう1人、紳士服を着こなした男性が立っていた。その者の見た途端、私は言葉を止めて少し思考を巡らす。


 そういえばさっきから敬語だったなぁ・・・そういうことか。


 私の記憶が正しければその男性は、冒険者ギルドサンリク支部の重役の1人。そんな人が受付嬢と共にわざわざホームまでやって来た理由は馬鹿な私でも分かる。依頼だ、しかもかなり重大なモノのようだ。親しみがあると理解していてハーラさんを選んで連れてきたがなにより証拠だ。


「“笑い合う砂漠人 (ラフィル・デイザー)”のリーダー、カナタ殿。いきなりの訪問に申し訳ない。私は冒険者ギルドサンリク支部支部長のオウダ・ユンバンドだ。」


 あっ、支部長・・・あのギルドで1番偉い人だったんだ!?知らなかったぁ・・・何回か見たことある程度の人だったけど、まさかそんな人だったなんて・・・。

 これコルルちゃんが知ったらまたお説教されちゃうかな?・・・うん、知っていた(てい)でいこう!


「もちろん、知っていますとも!むしろそんな方とこうして対面してお話が出来るなんて豪栄でございます!」


 上の者を待たせてしまい機嫌を損ねてしまったかもしれない。大きな仕事を回してくれるかもしれないと理解した瞬間、私は手もみをしながら屈託のない営業スマイルで対応をする。元社畜の技術(スキル)をフル活用する。


「そ、そうか・・・。自分ではそれほど地位を公表しているつもりではなかったんだが・・・覚えていてくれていたんだな。それにまさかそんな明るく歓迎されるとも思いもしなかった・・・。」


「それで、本日はどういったご用件でお越しくださったのですか?あっ、立ち話するのもなんですので、ホームの中でお話をしましょう!キーちゃん、“お客様”の入るよ~!飲み物用意して~!」


「な、何という柔軟で丁寧な対応力・・・。流石、注目を浴びている“笑い合う砂漠人 (ラフィル・デイザー)”のリーダーと言う所か。」


「も~、そんな褒めても大した物は出ませんよ~!キーちゃん、おつまみも出しておいて~!」


 何とか支部長に好印象を持たせようと、私は明るく接待をしながら2人をホームへ招き入れる。これぞまさしくデキる女、先ほど抱いたかもしれない不快感を帳消しにする程の対応を見事に披露する。

 しかし何故か振り返ってみると、2人は丁重にもてなされ過ぎたのかやや困惑した表情を見せる。礼儀や言葉遣いは間違っていないはず。解せぬ。



 支部長とハーラさんを居間へ招き入れて、落ち着いて会話をするためテーブルの席へ座ってもらった。キーちゃんに2人に飲み物とおつまみを出す指示を出した後、寝ているクアルくん、ケマくん、コルルちゃんを起こしに行ってもらった。重役が訪問しているというのに呑気に寝ていては失礼の極み。頭痛や吐き気があって無理に起きてもらう。

 キーちゃんに叩き起こされて3人は眠気と気分の悪さを我慢してもらいながら今へ集合する。長方形のテーブルで2人は隣同士で座ってもらい、その反対に私と背後にパーティーメンバーを立たせている状態でようやく対談が始まる。


「すいません、大変お待たせしました。」


「いや、急に押しかけて私に非がある。むしろ頭を下げるべきなのは私の方だ。それと・・・無理に全員で起きてもらう必要はないと思うのだが・・・。」


「いえいえ、お気になさず。これが私たちの作法みたいなものですから。」


 当然そんなのは嘘、妄言である。少しでも支部長に贔屓してもらえるように、こういった私生活でもちゃんと気を遣っているというアピールだ。少し浅はかな作戦だけど、やらないよりマシだ。

 私のそんな発言の後、後ろで控えているクアルくん、ケマくん、コルルちゃんからの鋭い視線を感じる。何故嘘をつくのかという疑念の意味なのか、はたまたそんなくだらない理由で叩き起こされたのかという怒りの意味なのか。どっちだろうと関係ない、気にせず対談を続ける。


「そ、そうか・・・後ろの者たちの視線が気になるが、まあいい。それでは本題に入らせてもらおう。ハーラくん、あれを。」


「はい。皆さん、こちらを拝見してください。」


 ハーラさんは手元にある封筒から3枚の紙を取り出して、テーブルの上に並べる。私たちはそれを覗き見るように確認すると、1枚は手紙でもう2枚は何処かの街の周辺の地図であった。

 イースト大陸に住んでいるけど、この大陸の土地勘がまだ身に付いていない私たちには、その地図が何処なのか皆目見当がつかなかった。とりあえず手紙の方を先に黙読をする。


「・・・“救援要請”・・・ですか?」


「はい。場所は『ツウギの街』、ここから南へ向かって先にあり、王都と同等に敷地を有しています。」


 1枚の地図を指しながらハーラさんが返答する。どうやらこれが『ツウギの街』と近隣の地図のようだ。

 そして手紙は上部に大きく『救援要請』と大きく強調されている。7年冒険者してきたけど、このような紙は見たことがない。下の詳細についても目を通す。

 『近隣の山郭地帯で“超自由快楽殺芸団(ちょうじゆうかいらくさつげいだん)”という大規模な盗賊団が身を潜めている。その盗賊団がここ数週間、急速に団員数を増やして近隣の街町を襲撃しているという事件が多発している。そしてここ数日『ツウギの街』でも毎晩の様に夜襲を受けており、何とか追い返せているが防戦一方という現状である。近隣の街町の住民の保護と避難があるため、『ツウギの街』冒険者では対応に間に合わない。至急各地の冒険者ギルドから招集を願う。』

 他にもその被害状況や、現段階で確認されている魔獣の種類と数についても書かれてある。その字の荒々しさから相当焦っているという心境がうかがえる。そんな物騒な手紙を読み終わると、クアルくんが何かお思い出したのか言葉を出す。


「『ツウギの街』?あぁ~、確か盗賊にメッチャちょっかいをかけられている街らしいぜ。俺の友達みんな“報酬が良いから”って言って向かってけど・・・それでも足りていないのか?」


「確かにあそこは王都ほどではないが、活動している冒険者の数は街の中では多い方だ。しかしその手紙にも書いてあるように、それでもすでに手一杯な様子。恐らく襲撃の度に被害が増えて人出が減っていく一方なのだろう。」


 オウダさんの予想は命中しているだろう。冒険者と言うのは普通のシド途を同じように基本は陽が昇っているうちでの依頼を達成させるがほとんど。今回も街町の警護も朝から夕方まで行っているのであろう。

 しかしその後毎晩、真夜中の闇に隠れて襲われれば体力の限界が向かえてしまうのは必然。例え体力自慢の冒険者でも次々に倒れてしまう。


「すでにギルドの方でも他の受付嬢たちが冒険者に『ツウギの街』へ向かってくれるように呼び掛けている。私たちがここに来たのは君たちにも是非、救援へ向かってほしいからだ。」


 ここで素直に“はい!分かりました!”と返事するべきだろうけど、どうしても腑に落ちない点がある。恐らくメンバーの何人かは気付いているだろう。


「1つお聞きしてもいいですか?」


「・・・何かね?」


「何故支部長さんが直々に私たちの元へ?分かっていると思いですが、私たちと受付嬢であるハーラさんは親しみがあります。そのハーラさんに言伝を頼んで行かせれば済むと思うのですが・・・。」


 どうにも気になって仕方がないんだよねぇ・・・だって支部長でしょ?1番偉いんでしょ?そんな人がわざわざ一介の冒険者パーティーのホームまで足を運ぶなんて・・・。何か裏がありそうで怖いんだよなぁ。


 私がそう問うと、支部長は少し困惑したような表情を見せる。当たり前な質問をしたつもりなのに、その反応はおかしい。予想通り、何か企てていたようだ。黙り続ける支部長の様子にメンバーも少し疑いの視線へと変える。

 場の空気に気まずく感じたのか、オウダさんは観念したかのように話す。


「・・・そう警戒しないでくれたまえ、君たちには他の者とは別のルートで向かってほしいのだ。・・・少し危険だと承知の上だが。」


「・・・教えてください。」

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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