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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第92話 7年後

諸事情により編集しました。

<カナタ視点>


星暦2032年、冬の39日、風の日、昼


 ここは『サンリク大樹林』。『王都サンリク』から十数キロ離れており、『メラルフ高山』とはまた違った緑豊かな深い森である。

 私たち“笑い合う砂漠人 (ラフィル・デイザー)”は『魔獣討伐』という依頼、つまり仕事を受けてこの森にやって来ていた。その詳細は“ここ近年で繁殖してきたブラウン・バッファローの20体の討伐”。つまり1つの群れを壊滅させろという訳だ。

 20体という数値は一般的に見て多い方だけど、私たちには全く問題はない。自分で言うのもあれだが、それ相応以上の実力は持っている。


「最後の1匹そっちに行った!多分そいつがボスだよ!」


「クアル~僕足が疲れた~。飛んで連れて行って~。」


「バカかお前はッ!?テメェーみたいな肉ダルマ持って運べられるかッ!」


「アハハハ、大丈夫だよ~。私の一撃必殺の魔法で倒しちゃうから~。」


「ちょっ、キーちゃん待ってッ!?どの魔法使う気か知らないけど止めてッ!?この距離で発動されると私たちも巻き沿い食らっちゃう!?」


 現在19体のブラウン・バッファローの討伐に成功した。元々下級モンスターということもあってそこまで苦ではなかった。残るは群れを先頭にいたボスのみ。

 だけどボスだけあって体格は他の個体より一回り大きく、しかも足が速い。『俊敏化』を発動すれば追いつけるけど、それよりも良い案を思いついた。


「でもこのままじゃ逃げられちゃうよ~?」


「クアルくん、私を運んで!『軽量化』で軽くなるから、早くッ!」


「・・・まあそれならいいか。ケマ、俺の槍を頼む。」


「はいはい~。」


 何故一瞬迷ったのかな?『軽量化』使って軽くなるって言っているんだよ?まさかあれかな、『軽量化』使っても元々が重いって考えたのかな?仕事中だから今は聞かないけど、後から今の間について深く聞こうじゃないか。


【スキル:軽量化】

【スキル:飛翔】


 クアルくんは指示に従い、私の背後に回って鎧の上から私を抱き着いて天高く飛翔した。その際にキーちゃんが羨ましそうにクアルくんを睨んでいたけど、それについては触れないでおこう。

 『サンリク大樹林』の樹々よりも高く飛翔した私たちは、上からブラウン・バッファローの後を追っていく。するとそのブラウン・バッファローは森から抜けて平地へと出て行ってしまった。


「おいリーダーどうする!?あいつ森から出てきちまったぞ!?」


 この先には小さな村がある。もしブラウン・バッファローがそこへ侵入でもされたら、たちまち大混乱になってしまう。クアルくんはそれを危惧している。

 そんなクアルくんの問いかけに対して、私は冷静に討伐策を考えていた。すぐにその策を思いつくけど、それは一般的に見ればあまりに危険で狂った策だった。だけど、この7年間で成長した私たちだからこそできる策でもある。


「・・・クアルくん、エクストラスキルで私を蹴り飛ばして。」


「また“あれ”をやる気か!?カナタちゃんの魔法で何とかならんの?!」


「この距離じゃ届かないし、そもそも当たりっこない。このままだとあの魔獣、村に衝突しちゃう!・・・早くッ!」


「これでもしカナタちゃんが怪我でもされたらまた俺がキーちゃんに怒られるんだが・・・まあいい、仕方がない!いくぜッ!」


 渋りながらもクアルくんは私の考えに妥協してくれて、その策を実行する。大きく展開された翼を彼は再び強く仰ぎ、私たちはさらに高く飛翔する。するとその際に彼は空中で私を手放す。


「そうっらッ、飛んでいけ!」


 そう言いながらクアルくんは私にダメージが行かないように手加減をしながらエクストラスキルの発動体勢に入った。それに合わせて私もスキルを解除する。


【軽量化:解除】

【武技:ウィンド・キック】


 互いに足裏を合わせた状態でクアルくんはエクストラスキルを発動すると、私はブラウン・バッファローに向かって一直線に飛んで行った。彼の武技のおかげで急加速を得た私はすぐに全力疾走しているブラウン・バッファローの背後に追いつけた。因みに風圧でかなり顔面が痛いけど我慢している。

 ブラウン・バッファローに一気に近付き、腰にある鞘に収まった片手剣に手を添えて、その背中に強烈な一撃を入れる。


【剣技:抜刀廻火(ばっとうかいか)


 十分すぎる程ブラウン・バッファローに迫ると、空中で身体をねじりながら、新たに開発したエクストラスキルを発動した。鞘の中に密集させていた火の魔力が、抜刀と同時に一気に噴出。それにより剣に火力による速度と熱、そして荒々しい火を纏う。更に体をねじることで抜刀の際に遠心力を付けて、刃の推進力を上乗せする。

 ブラウン・バッファローを捉えた私の武技はそのまま背中の肉を深く切り裂く。唐突な背後からの痛烈な一撃にブラウン・バッファローを重い鳴き声を上げる。間違いなく致命傷、討伐成功だ。

 しかしここで問題が発生した。込める魔力量を間違えてしまい、剣に纏っている火が想像より大きく、爆発と言えるほどの火柱が経った。私の身が火の中に隠されながら、地面に衝突する。


「ほら見たことかぁッ!?ぜってぇー怪我しているって!ああ、もうまたキーちゃんに翼引っ張られるじゃん!お~いカナタちゃん、大丈夫かぁー!?」


 地面に衝突の際に土煙が上がり、遠目からでは私の姿は目視しづらかった。クアルくんは急いで私の元へ向かい安否の確認をする。しかしそんな彼の心配は無用だった。


「あちちち、魔力量間違えちゃった・・・。流石に今回はヤバいって思ったわぁ・・・。」


 土煙が収まり中から出て来たのは、この7年間で成長と発達をした私、カナタ・タユーリであった。その姿は髪の色こそ違えと全く前世と瓜二つ。身長、声色、チャームポイントの八重歯、まさかここまで前世と同じ顔になるとは思いもしなかった。

 クアルくんの心配を裏切るように、土煙の中から平然と立ち上がりながら体に付いて土を掃う。身体には特に外傷はない。私の体術の熟練度はレベル30。宙に浮いた体勢とは言え、あの程度なら容易に受け身を取ることが出来る。予想外だったのかクアルくんは私の様子を見ると呆れた目で話しかける。


「んだよ、心配損じゃねぇか。つうか本当よく無事だったな。」


「舐めないで、昔みんなにパルクール教えたのは誰だったと思うの?」


「よく言うぜ。前回はあれで片手首脱臼したくせに。」


「それは垂直落下だったからでしょ!?逆によくそれだけで済んだって褒めてもらいたいもんだよ!」


 クアルくんと少し談笑した後、討伐したブラウン・バッファローのボスの解体を始める。討伐した証明として頭部に生えている鋭利な角と、防具などの加工品として毛皮を剥ぎ取る。大きい個体だけあって高く売れそうだ。

 因みにそれら全てクアルくんにやってもらっている。正真正銘の淑女になった私にはそんな血生臭い作業はしたくない。私の指示に彼は多少渋ったけど、そこはパーティーリーダーの権限で強制させた。

 ある程度作業を終えると、残った肉は持ち帰らずその場で私の魔法で焼却する。冒険者の暗黙のルールで、討伐したモンスターの部位全てはその者が処理しなければならない。もし放置するとアンデット化してしまうからだそうだ。


【火魔法:フル・ファイア】


「おお~、すっげぇ~煙。」


 私の魔法により死体は一気に炎上。草木一本生えていない平地にて黒い煙が舞い上がる。意図的ではなかったけどそれが一種の狼煙となり、離れていた他のパーティーメンバーに私たちの位置を教えることが出来た。

 他のブラウン・バッファローの死体の処理を終えたパーティーメンバーはその狼煙を目視すると、『俊敏化』を発動して私たちの元へ向かってきた。『サンリク大樹林』から出てきた3人を確認すると、私は場所を主張する様に大きく手を振る。


「お~~い!こっちこっち!・・・ん?」


 そう呼び掛けた瞬間、3人のうちの1人がかなりの速度で向かって来た。私の声に反応して急加速するのは1人だけ。まだ顔はよく見えないけど誰なのか容易に推測できる。


「カ~ナ~タ~ちゃ~~~ん!!」


 それは私同等の身長はあるキィ・ゾイヤーだ。彼女は満面な笑みを浮かべながら、いつもの様に私を抱き着こうと走ってくる。予想通りの彼女の様子に私は呆れながらも両手を広げて、傍から見て受け止めようとする体勢に入る。


 またかぁ・・・本当に懲りないなぁ・・・。


「ハグゥ~~~!!」


「とうッ!」


 キーちゃんが私の胸元目掛けて頭から抱きつこうと飛び込んで来た瞬間、私は宙に浮いた彼女の体を跳び箱にして上に回避した。目の前から私が消えたことでキーちゃんの勢いを止める手段は無くなり、彼女はそのまま顔面から地面に衝突する。

 同性とは言え女の人をこんな扱いするのはおかしいと自覚はしているけど、こうでもしないとキーちゃんのこの癖は治らないと思ったから。一応毎回この対処法で試みているけど、一向に治る気配がない。


「おうおう、今回も派手に言ったなぁ~。もうしばらく抱きつかせていないんだから今日はいいじゃないのか?」


「あのね・・・忘れたの?キーちゃん、前に思いっ切り抱きついて私の防具に穴を空けたんだよ!?あの時、本当に泣きそうになるぐらい痛かったんだよ!?そんな子があんな勢いで飛び込んで来たらどうなると思う?私、本当に死んじゃうよ?」


「アハハハ!もう、カナタちゃんったら~。大袈裟なんだから~。人はそんなに簡単に死なないって~。」


 顔面から落ちたはずなのにキーちゃんは何事もなかったかのように楽しそうに立ち上がりながら、私たちの会話に介入してきた。これには私もクアルくんも苦笑いするしかない。

 キーちゃんとそうこう話しているうちに遅れてケマくんとコルルちゃんも私たちの元へ合流する。ケマくんがクアルくんの槍で通して運んできたリュックは不自然に膨れ上がっている。ちゃんとブラウン・バッファローの角と毛皮を回収したようだ。


「はぁ、はぁ・・・もうキーちゃん、急に走らないでよ!?私、この中で一番鈍足なんだから、追いつけないよ・・・。」


「だーっはっはっは!キーちゃんって本当にカナタちゃんの事が好きだね!見ていていつも面白いよ!」


「おいバカケマッ!?俺の槍を雑に扱いな!曲がったらどうするんだ!?」


「カ~ナ~タ~ちゃ~ん、顔がひりひりするよ~。癒して~。」


「キーちゃんの真似て言うと“自業自得”、だよ。ほらみんな、最後の1匹も片付けたことだし早く帰ろう。」


 “笑い合う砂漠人 (ラフィル・デイザー)”のメンバーは今年で全員20歳を迎えた。その背丈と格好は、7年前の冒険者成り立てから大きく成長している。口調や話し方はあの時のままだが、これはこれでよしと思っている。

 依頼を達成した私たちは、活動拠点である『王都サンリク』へ戻った。今回は誰にも迷惑をかけずに依頼を終わらせて良かった。



星暦2032年、冬の39日、風の日、夜


 『王都サンリク』に帰ってギルドに依頼報告を終えた後、私たちはとある食堂にて宴会を開いていた。集団のモンスター討伐と言った、達成難易度の高い依頼を終えた後は毎回開いている。今回の依頼はさほど苦ではなかったけどかなり疲労はした。宴会で発散しないとストレスが溜まってしまう。


「にしても、今回の依頼も疲れたなぁ~。まさかあの牛、あんなに逃げ足が速かったなんて・・・誰か予想できた?」


「アハハハ!あれは本当にびっくりしたね~。」


「いつも思うがカナタちゃん、度胸あり過ぎないか?あんな上空でよく自分が飛ばされて行くっていう発想と実行が出来るよな。男の俺よりも肝が据わり過ぎている。」


「もぐもぐもぐもぐ!!むしゃむしゃむしゃむしゃ!!」


「ケマくん・・・もう少し味わって食べたら?はぁ・・・これじゃあまた報酬金の殆どが無くなっちゃう・・・。」


 パーティーの資金管理を任せているコルルちゃんが頭を抱えている。この様な宴会は1週間に2,3回のペースで行っているから、パーティーの予算が全然貯まらずいつも彼女に負担を抱えさせてしまっている。リーダーである私が自重するように注意すれば改善されるだろうけど、言うつもりはない。私個人も宴会が好きだから。

 大人になった私はジョッキに入ったお酒をごくごくと飲み干す。前世では控えめだったけどこの世界のお酒はうまく、喉越しがいいからついつい飲んでしまう。店員にジョッキを渡してお代わりを頼み、クアルくんの言葉に返答する。


「別に?あんなのパルクールと一緒だよ?身体が宙に浮いてハラハラするけど、ちゃんと受け身を取れば問題ないし。」


「えっ、いや・・・問題・・・ないのか?」


「アハハハ、カナタちゃんの行動力は今さらでしょ~?縦横無尽に走り続けるのがカナタちゃんだよ~。」


 ちょっと待って、私ってそんなイメージなの!?横はともかく縦まではそんな動き回れないよ?いやまあ、最近そんな感じの魔法も開発はしたけど・・・あれ?もしかして私・・・人族っていう枠から超えちゃっている!?

 そういえばこの最近、キーちゃんやケマくんに負けず劣らずの魔法やエクストラスキルを創ってきたようなぁ・・・まあいっか!人は飛べて損することはないし!

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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