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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第88話 初めての宴会

諸事情により編集しました。

星暦2025年、夏の16日、木の日、夕


 冒険者登録試験は無事終了した。『メラルフ高山』から『王都メラルフ』へと帰還した私たちは、強面ギルド職員からその後の詳細について説明を受けた。

 冒険者登録試験の合否は明日の早朝6時にギルド内で発表される。参加者はその時間までにギルドの受付嬢にチェックしてもらい、各指定された大部屋に移動しておく。もし6時を過ぎても到着しなかった場合、その者は無条件で不合格とする。もし合格であれば、その瞬間からあえて冒険者の仲間入りだ。

 それらの説明が終えると、強面ギルド職員から“解散ッ!!”と言う掛け声と共に、参加者たちは一斉にギルドから出て帰路に就いた。


 改めて思うけど、時間厳守過ぎない?いやまあ、社会人として指定された時間通りに動くことが大事だけどさぁ・・・いくら何でも“無条件で不合格”はやり過ぎじゃない?ヤバいでしょ、24時間頑張ったのに全部水の泡って・・・。せめて評価を下げるとかそれぐらいの容赦があってもいいと思うけど。

 まあ、要は時間通りに着けばいいんでしょ・・・朝6時は早すぎると思うけど。


 ギルドから出た私たちは、一旦宿泊している宿屋に戻って、シャワーで軽く体を洗う。全身にこびり付いていた汗や土の汚れを洗い流し、少女たちは生命を吹き返すように極楽とする。

 その後、無事に冒険者登録試験を終えた事を祝うため、宿屋で一番近くにあった大衆食堂の『食事バンザ~イ♪』に入店した。現在、私たちの親族たちが用意してくれた資金は残り半分切ってしまったけど、こういう時こそ遠慮せずに使うべきだ。後に“資金の使い過ぎでしょ!?”とコルルちゃんに説教されて、パーティーの財布役から免除されたのは余談である。

 円形状の1つのテーブルに座る5人の子供たち。片手にそれぞれ好んだ飲み物が入ったグラスを持ち、宴会が開こうとしていた。一応このパーティーの代表役(リーダー)である私が席から立ち上がり、口上を述べる。


「え~、コホン・・・とりあえずみんな、冒険者登録試験頑張ったね。中には自信がある人、後悔している人、本調子になれなかった人、不安を感じる人と、各々思うところはあると思う。だけど今年の試験はもう終わった。今さら何を思おうと結果は変えられない。」


 少し冷酷で現実的な事を言いと、パーティー内の空気が少し重くなった。とてもこれから宴会を開こうという空気ではない。しかし誰も視線を下に向けず、今の結果に向き合おうと真摯に私の言葉を受け止める。

 そんなパーティーメンバーの様子を見て、多少なりともあった心配がなくなり、ここから笑顔になって口上を続ける。


「だけど私は・・・信じている!みんなで合格する事を。みんなのこれまでの努力はこの中で私が一番見てきた。そんな私の言葉を信じて、今は楽しもう!どうしても後悔しているなら愚痴ろう!何か感じているなら無我夢中になって食べよう!とにかく今はただ、思い切って笑い合おう!」


 今を楽しんで募った不安を忘れようという、一時的な現実逃避と言われるかもしれない。だけどこれが案外、次は上手くやろうというモチベーションの向上にも繋がる。それに何より、パーティーメンバーが笑顔になり切れないまま食事を始めるのは私個人すごく嫌だ。

 納得してくれたのかパーティーメンバーの表情が笑顔になっていき、最後にお茶の入ったグラスを上にあげて締めを言う。


「ちょっと口上が長くなっちゃったね。それじゃあみんな、グラスを持って!・・・冒険者登録試験お疲れ様でした!乾杯!!」


「「「「乾杯(かんぱ~い)!!」」」」


 少年少女による宴会の開始を合唱して、それと同時にグラス同士がぶつかり合う音が響く。パーティーメンバー全員がとてもいい表情、笑っていた。硬かった表情が砕けて、ゆるく笑ってくれていた。みんなの不安を少しでも取り除けて本当に良かった。



 その後、各々の好みの料理を注文して、各々のペースで食事を進めた。様々な料理を注文して堪能する私。時間を少し挟みながらゆっくりと食べるキーちゃん。男の子らしくガツガツと食べるクアルくん。そしてそれ以上の量をドカ食いするケマくん。唯一女性らしく淡々と静かに食べるコルルちゃん。まさに5人5様、見事にバラバラ。

 そんな食事をしながら、各々で試験中に起きた事について話し合いを始める。


「そしたらチョトさん、俺の胸ぐらを掴んで地面に叩き付けたんだよ。マジで痛かったんだぜ?だからそのやり返しと思って、チョトさんのアソコを思いっっっ切り、握ってやったんだよ!」


「アハハハ!それで勝てたんだ!本当にすごい方法だね!」


「いやいや、キーちゃん何を笑っているの?最ッッッ低な勝ち方なんだよ?男として急所を狙うなんてありえない。」


「コルルちゃんも何回それ言うの?別にいいじゃん勝てたんだから。それに一緒に見たでしょ?あんなヤバい状況なら、私もしていたと思うよ。」


「もぐもぐもぐもぐ!!むしゃむしゃむしゃむしゃ!!」


 クアルくんの武術の試験についての話題。どうやらコルルちゃんは卑怯、もとい非紳士的な行為が酷く好まないようだ。確かにあの方法を使って敗北したのなら否定してもいいけど、別の勝てたのだからそこまで言う必要はないと思う。

 コルルちゃんに否定され続けたことによってクアルくんが落ち込む様子を見せ始める。若干涙目でもある。彼は意外にもメンタルが弱いのだ。



「私が使ったのは『氷柱の雨 (アット・レイア)』と『黒い旋風 (ジュベル・バラーク)』と『光雷の鳴激 (エルコル・スパァダ)』。どれもきれいに決まって気持ちよかったなぁ~!アハハハ!」


「あぁ~、そういえばスゲェー風切り音も聞こえたなぁ・・・あれもキーちゃんの魔法(しわざ)だったのか。」


「何回見ても本当にすごい魔法よね。しかも魔法だけじゃなくて、エクストラスキルも何個か開発しているんでしょ?その才能、少しは恵んでほしいもんだよ。」


「コルルちゃんの回復魔法も十分すごいと思うよ。っていうか才能云々で言うのだったら、私なんか適性魔法2つしかないんだよ!?私の方が恵んでほしいよ。」


「もぐもぐもぐもぐ!!むしゃむしゃむしゃむしゃ!!」


 キーちゃんの魔術の試験についての話題。どうやら彼女の魔法による騒音が思っていた以上に、ギルドの地下訓練所中に響いていたようだ。影の向こう側にいたクアルくん曰く、“他の参加者の魔法を聞こえなかったけど、カナタちゃんとキーちゃんの魔法だけはこっちまで聞こえた”そうだ。

 私の魔法も反対側まで音が響いていたのか。まあ間違いなく宴会芸用の『小花火(こはなび)』だろう。宴会芸用で驚かれてもあまり嬉しくはない。



「でも“ケマくんが来るまで頑張って何とかしなきゃ!?”って思ったんだよ。だからニーナさんに適当な話題を振って話を盛り上げて、時間を稼いだんだよ。」


「何で盗賊相手に世間話を振ったのよ・・・。色々な意味で本当にすごい・・・。」


「アハハハ!カナタちゃん、最高~!ある意味、大胆不敵~!」


「ホントよくそれで時間稼げれたな。・・・俺も同じ状況になったらそうしようかな?」


「もぐもぐもぐもぐ!!むしゃむしゃむしゃむしゃ!!」


 ニーナさんとの戦いに敗れた時の事について話題。みんな私の話を聞いて4者4用の反応を見せて返答する。だけど仕方がないと思う。今だから頭が冷静に考えられるけど、当時は睡魔に襲われて良い案が浮かばなかったのだ。

 どうやらメンバーたちは当事者の心境をよく理解できないようだ。これは近々、訓練の一環で一度メンバーたちにも夜更かしさせる必要がある。どんな顔になるのか、今から楽しみだ。



「そこですかさず僕は音魔法を使ってもぐもぐもぐもぐ!!盗賊みんな倒しちゃむしゃむしゃむしゃむしゃ!!いい感じに活躍が出来たもぐむしゃもぐむしゃもぐむしゃもぐむしゃ!!」


「「「いや食べるか喋るかどっちかにして(せい)ッ!!」」」


「アハハハ!何言っているのか全然聞き取れない~。」


 ケマくんが援軍に来て時の事についての話題。今思うと彼の活躍できた場面が出来て、ある意味良かったとも言える。盗賊役である冒険者のニーナさんたちで彼の足の速さや潜在能力の高さを証明することが出来たのだから。

 本当にうまくいって良かったのだけど、お願いだから物を食べながら話すのは止めて欲しい。行儀が悪い。礼儀正しいコルルちゃんに頼んで矯正してもらおう。



星暦2025年、夏の16日、木の日、夜


 会話と食事が思っていた以上に進み盛り上がっている。冒険者登録試験でも出来事がそれほど酷で神経を使い、新鮮な体験だったからだろう。気付けば外はすっかり暗くなり夜になっていた。そろそろ切り上げようとする前に、最後の話題で締めようとする。

 それは当然、何故キーちゃんがまだ私が戻って来ていないの、寝床の出入り口を塞いだのかという事。問いただすと彼女は弁解するわけもなく、全くもって正論を述べる


「えっ、だってケマくんも木魔法使えるんでしょ~?だから私じゃなくてもケマくんがやってくるのかと思って塞いだんだけど・・・。」


 そう、実はケマくんはキーちゃん同様に木魔法が使えるのだ。例えキーちゃんによって生えた枝や草でも、彼でも自由に形を変えられるのだ。

 すっかり忘れていた。パーティーメンバーの能力を覚えていなかった私も悪いけど、それを知っていてやらなかったケマくんも悪い。いや、彼の方が十二分に悪い。キーちゃんからその事を聞いて、すぐさま彼の方へ振り向く。


「そうだよ!?ケマくんも木魔法使えられるじゃん!?本人だから忘れているわけないよね!?何で黙っていたの!?」


「だっはっはっは!マジでごめん、完全に忘れていたよ!でももういいじゃん。こうして無事に終わったんだから。」


 ケマくんのくせに結果論で物事を言わないでほしい。自身の適性魔法を本当に忘れていたことがそんなに面白かったのか、満面な笑みでそう言う。

 今思い返してみると、音魔法を会得してからケマくんは、他の魔法の訓練を一切してこなかった。確かに音魔法を自在に扱えるようになれたら強力な戦力になると考え、あえて何も言わなかった。しかしその結果、己の適性魔法を忘れてしまうという事態になってしまった。

 まさかここまで頭のネジが飛んでいたとは。これはケマくんと言う人物を把握してこなかった私のミスとも言える。勢いよくテーブルに膝を立てて、その手の上に頭を乗せる。


「あはははは!ケマらしいっちゃ、ケマらしいな!自分の適性魔法を忘れていたなんて!あはははは!」


「でしょぉ~?だっはっはっは!」


「ほんっと最悪ッ・・・!それじゃあ何?私は無駄に森の中で堂々と一晩寝ていたって言うの?これで肌が荒れたら呪ってやる・・・!」


「あっ、カナタちゃんでもそういう所には気をかけているんだ。」


「アハハハ!コルルちゃん、何気に辛辣~!」


 最後の話題で大笑いした後、宴会をお開きとして店を出た。お腹は満腹になり、機嫌も良く、全員が楽しい時間を過ごせた。

 このまま二次会と行きたいところだけど、明日は起きるのが早いからもうここまで。明日寝坊して不合格になったら笑えない。私たちはそのまま宿屋までの帰路に就く。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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