第89話 結果発表
諸事情により編集しました。
星暦2025年、夏の17日、木の日、早朝
宿屋にて今後は長い睡眠をとった次に日の早朝、全員寝坊することなく朝5時半にギルドの前に到着する。これから冒険者になれるかどうかの発表があると言うのに、私を含めメンバー全員が眠たい目を擦らせながら欠伸をしている。試験がないからといっても緊張感の欠片もない。実に彼女ららしい様子だ。
すでに全開されていたギルドの門をくぐり、到着したことのチェックをしてもらうため、私たちは受付嬢の元へ歩む。先日と同じ人だ。
私たちの姿を見ると受付嬢は席から立ち上がり、何やら名簿帳の手に取って近づいて来た。
「おはようございます!皆さん、お早いご到着ですね!」
うわぁ~、ヤバい・・・すっごい営業スマイル!?朝からやるなぁこの人も・・・。逆に私から“流石です!”って言いそうになったよ。ギルドの受付嬢、ヤバいね。
「それではご本人確認のため、お手数ですがステータスウィンドの表示の方をお願いします。今回もお名前だけの表示で大丈夫です。」
受付嬢は愛嬌ある営業スマイルを見せながらそう指示する。私たちは受付嬢に見やすいように横並びになり、ステータスウィンドを表示する。受付嬢はそれを見ながら手元の名簿帳にチャックを入れていく。
しかし本当に毎回毎回めんどくさいな~。一応私たちの顔覚えているんでしょ?わざわざステータスウィンドで確認しなくても・・・まあ、それが仕事みたいだし文句は言えないけど。
「・・・はい、ご本人様の確認が終えました。ステータスウィンドを閉じて頂いても構いません。それでは皆さんの各部屋の案内をします。ケマ・ヒュジェーラ様とコルル・チェガンバ様は4階の1号室に。カナタ・タユーリ様とキィ・ゾイヤー様、クアル・オルパーク様は5階の応接室までご移動の方をお願いします。」
受付嬢は丁寧に手の平でそれぞれの部屋に刺した。笑顔で説明する受付嬢の言葉に、パーティー内で不穏の空気が一気に流れる。2組に分けられた、つまりそれはどっちか片方が不合格になってしまったという事。そう頭の中で過った瞬間、全員の表情が硬くなる。
「やっぱり・・・私、落ちっちゃったんだ・・・。」
「えっ、それじゃあ一緒の部屋の僕も不合格って事!?」
「いや、逆に俺たちの方が落ちた可能性だってある・・・。やっぱりあんな手で試合に勝ったのが問題だったか・・・ッ!!」
「う~ん、これって後から詳細聞いてもいいんだよねぇ~?もしそれで非常之事を言ったら・・・。」
ヤバいヤバいヤバいヤバいッ、みんなが不安になり始めた!?どうしよう、まさかこんなことになるなんて!?どうして、何で、何がいけなかったの!?・・・認めない!そんなの・・・認められないッ・・・!!
「あっ、早とちりしないで下さい!?部屋が分かれたからと言って、必ずしも片方が不合格だとは限らないんです!」
「「「「「えっ?」」」」」
受付嬢のこの言葉で、先まであった不穏の空気が瞬く間に消え去り、全員が呆然とした。その拍子で変な声もそろって出た。どうやら私たちの頭の中で、合格か不合格かという2択の未来しか考えていなかったため、変に早とちりしてしまったようだ。
どうやら毎年、ギルド側の気遣いで結果発表の際に参加者1人1人の評価と改善点を話してくれるそうだ。しかし毎年、登録試験の参加者が多いため1人ずつ言っていくときりがないから、10~20人で部屋を分けている。今年の場合は8部屋に分けられているそうだ。不合格の者はその者同士で同じ部屋に集められるらしいけど、部屋を分けられただけで片方が不合格とは限らない。
つまりまだ全員が冒険者になれる可能性はあると言う事。受付嬢からそう聞くと、力んで張り詰めていた糸が緩んだように、クアルくんとケマくんとコルルちゃんは安堵のため息を出す。
「「「よ、よかった~・・・。」」」
「アハハハ!みんないい感じに試験に臨んだんだから、落ちるわけないじゃん!」
「はい。どの部屋が不合格者の部屋かは把握しておりませんが、皆さんの活躍ぶりは我々の耳にも入っています。何でも数年ぶりの逸材たちと呼ばれていましたので、自信を持って大丈夫ですよ。」
受付嬢の言葉で尚の事自信がつけた。先程まであった落ち着きも取り戻して、次第にメンバーから笑顔が出てきた。でもだからと言って安心はしきれない。合否を聞くのはこれから。もしかしたら本当に数名が不合格になるかもしれないし、最悪全員が不合格になるかもしれない。
説明を受けて受付嬢から離れた後、私たちは階段で登り指定された部屋へと向かった。4階に着くとケマくんとコルルちゃんが指定された部屋である1号室の前に着く。実技試験の部屋だ。
「えっと・・・この部屋かな?もう他の人たちも来ているみたい。」
「それじゃあみんな、後でね。お互い合格することを祈っている。」
ケマくんとコルルちゃんはそう言いながら1号室へと入って行き、残った私たちは軽く手を振って見送る。先の受付嬢との長く会話したせいで、6時まで残り僅かまで迫っていた。それに気付いた私たちは急ぎ足で階段を上り、指定された5階の応接室の前に向かう。
いざ応接室の前に着くと、扉の材質の時点で違和感がある。先ほどは無視してしまったけど、何故私たちはこの部屋なのだろう。名前から察するにここは重要な来客との対話する部屋。そんな滅多に入る機会がないであろう場所に、何故指定されたのか不可解でしかない。
「なあ、ホントにここなのか?なんか場違い感があるんだが・・・。」
「アハハハ、珍しくクアルくんと同感だね~。私も~。」
「でも5階の応接室ってここしかないんだし・・・とりあえず入ってみよう。」
そう言いながらその重々しい扉を開く。
応接室の模様は、床全体に真紅の絨毯が敷かれてあり、壁には装飾用の大小と様々な武器が飾られてあり、椅子はギルド内で初めて見たであろうソファが置かれてある。
そんな貴族専用と思うような部屋の風景に私たちの目は食い付けになってしまった。まさか冒険者ギルドにこんな豪華な部屋があったとは。他にもどんなものが置かれているのか興味が湧き、そのまま入室する。
「すっごい、何この部屋!?ヤバい、すごくカッコいいッ・・・!」
「そのイスもふかふか~。こんな初めて、気持ち~。・・・シワになりそうだから、やっぱり座らない方がいいかな?」
「見ろよこの武器、滅茶苦茶イカしてないかッ!?スゲェ~欲しい!貰えねぇかな?」
部屋の模様に私たちはまるで子供の様に大はしゃぎ。いや、年相応の反応をすると言った方が正しい。私はともかく2人はこれほど豪華な部屋に招集されたのは初めて。興奮するのも無理はない。因みに私はと言うと、前世ではありえない装飾品や珍しい部屋の模様で気持ちが高揚としている。
応接室に入って数分間、眺めるように部屋の中を歩き回ると、再び扉が開いて新たな来客が入ってくる。先日の試験で代表役を担った強面ギルド職員だ。私たちは彼と目が合うと、口を止めて軽くお辞儀をする。
「おはよう、若きチャレンジャーたち。早く来るとは感心だな。丁度いい・・・少し早いが、冒険者登録試験の結果発表をしよう。そこのソファにかけたまえ。」
強面ギルド職員にそう言われ、私たちはソファに着席する。立ったまま話を聞くつもりだったけど、まさかこんな豪華なソファに座らせてくれるとは。
「えっ・・・私たちだけなんですか?」
「ああ。この部屋は俺と君たちだけだ。気にすることなく座ってくれ。」
受付嬢から、10~20人で一部屋ずつ区切られると聞いた。流石にこの部屋に10人以上が入れないのは見て分かっていたけど、まさか私たちだけとは思いもしなかった。何故私たちだけなのかと当然疑念を抱く。しかしその疑念も別の事で意識が持っていかれてしまい、すぐに消えてしまう。
強面ギルド職員は私たちと対面して話せるように、テーブルを挟んだ反対側のソファに着席すると、手元の封筒から紙を取り出して、それぞれ1枚ずつ私たちの前に裏返しにして配る。間違いなく試験の評価の詳細についてだろう。
そう理解した途端、私たちは固唾を呑んで強面ギルド職員の話しを耳にする。
「君たちの気持ちはわかるが、そう肩に力を入れなくていい。もっと気楽になれ。」
緊張を解そうと強面ギルド職員がそう言うけど、私たちは言う事を聞けれなかった。自分たちの夢が実現できるかもしれない瞬間なのだから、変に力んでしまうのは当然だ。
一向に様子が変わらない私たちの様子を見て、強面ギルド職員は小さく嘲笑する。決してコケにしていてわけでは。緊迫する子供の様子を見てつい笑ってしまったのだろう。
「すまない、失礼した。本来なら先に、行ってきた試験での欠点を言っていくつもりだが、先に合否が知りたいか?」
どうやら話す順序を選ばせてくれるようだ。見た目のわりに融通が利く人のようだ。当然、先に聞くのは合否の確認。基本私は要点を後回しにされるのは好まない。
強面ギルド職員の問いかけに私たちは一度お互いに目で語り合い、そして彼の方へ振り向き、静かに頷く。
「・・・分かった。なら先に言わせてもらおう。君たち3人とも・・・。・・・合格だ。」
悪戯に長く溜めを作って私たちの心境を弄び、次の一言でそれらを一転させた。たった一言、短い一言、だけどその一言で心境を大きく変動させた。確かく、間違うことなく、“合格”と聞いた。そう耳に入った瞬間、私たちは時が止まっていたかの様に硬直していた身体を、大きく跳ねるかのように声を上げる。
「よっしゃああああ!!やったぜ、合格だ!!」
「アハハハ・・・何でだろう、分かっていたつもりなのに・・・すごく嬉しい!やった、やったんだねえカナタちゃん!!」
心身共になってその気持ちを表現するクアルくんは、両手を強く叩いてから歓喜の声を上げる。ずっと平然と余裕の笑みを見せ続けて、実は内心不安であったキーちゃんは、やや涙目になりながら私の抱きつく。
合格することを疑わないつもりだったはずなのに、いざその言葉を聞くと嬉しくて仕方がない。2人の様に声は出さなかったけど、内心は感激している。キーちゃんにつられてしまい、私も涙目になりそうだ。
「あ、あははは・・・長かった。私たち、冒険者になれたんだ・・・。」
「ああ、おめでとう。今日から君たちも晴れて冒険者だ。まさか泣くほど喜ぶとはな。何時振りだろうか、君たちの様な合格を聞いて顔に出るほど喜んだ奴は。・・・今こうして喜び合いたい気持ちは分かるが、まだ話の途中だ。いいかな?」
「えっ、あっ、すいませんッ!?お願いします。」
注意されてしまい、私たちは再び話を聞く体勢に戻る。今すぐに飛び跳ねたい身体を静止させて、昂ってしまった気持ちを必死に落ち着かせる。まさかここまで高揚するとは。いや、この5年間の努力が報われたんだ。歓喜してしまって当然だ。これで後はケマくんとコルルちゃんの朗報を聞くだけ。今からもう楽しみだ。
「さて・・・次に君たちの前に出したその紙を裏返してくれ。それは君たちの筆記試験の成績だ。今後の登録試験のために渡すことが出来ない。だから確認できるのは今日だけだ。自分たちの成績をじっくり見ておくんだな。」
説明を聞き私たちはそれぞれの紙を受け取り、そして裏返す。表面は確かに私の筆記試験の回答だった。問題の上から赤色で付けられた〇と、右上に数字が付け加えられている。〇は解答の正解の意味で、数字は点数を表している。私はその点数を確認すると、眉間にシワを寄せる。
おお~、〇がいっぱい!前世では中々貰えなかったのにこんなにも・・・。まあ、問題自体が簡単だったからね。たくさん正解できて嬉しいけど、当然っちゃあ当然だから・・・んッ?!
「へっへ~、見ろよ!俺、98点も取ったぜ!」
「アハハハ、甘いね~!私は99点!」
「クソッ!、キーちゃんになら勝てたと思ったのにッ!?」
クアルくんとキーちゃんが私を挟んで点数の見せ合いを始めた。良い成績を修めたら自慢したくなる気持ちはよく分かる。私も2人の様に精神が子供であれがそうしていたに違いない。少なくとも良い成績だったらの話しだが。
2人が盛り上がっている中、私は納得のいかない点数にぷるぷると身震いをする。様子がおかしい事に気付いたキーちゃんが、私の肩を叩いて声をかけてくれる。
「カナタちゃんは何点だった~?・・・カナタちゃん?」
「な、なによこの点数配分ッ!?」
「ど、どうしたの?!」
「見てよ、これッ!?明らかにおかしいじゃない!!」
声を荒立ててそう言い放ちながらキーちゃんに私の答案用紙を見せた。
「いったいどうしたって言うの・・・うわぁ・・・。」
「どうしたどうした?俺にも見せ・・・うわぁ・・・。」
キーちゃんも最初は驚いた表情を見せるが、私の点数を見ると次第に唖然となる。クアルくんも気になり立ち上がって、私の答案用紙の見える位置に移動してから見ると、キーちゃんと同じ表情になる。
私の筆記試験の点数は、70点だった。100点近くは確実に獲れると自信があったはずなのにこの点数とは。今までパーティーメンバーに勉強を教えていた私の面目が丸つぶれだ。
漢字と算数の問題にミスはない。ケアレスミスがないか何度も確認したから間違いない。なら何故こんな点数になってしまったのかと言うと、最終問題への点数配分が大きく偏っていた。
「君が答えられなかった最終問題、『五芒星勇者』に関する問題は学問が怠っている者への、一種の救済処置みたいなものだ。どんなに学業が出来なくてもある程度、世情を知っていればそれなりに容赦するつもりだった。だから1名答えるごとに“10点”与えるような点数配分した。大抵の奴らはこれで点数を稼ぐのだが・・・まさか、逆に君の様な点数を落とす子が出てくるとは予想外だった。」
強面ギルド職員の説明で理解できた。確かに最終問題、私は4問のうち3問解けられなかった。最終問題が1問10点だから、私は30点落としてしまったという訳だ。そう理解できたけど納得できるわけがない。
うわぁ・・・ヤバい。まさかこんな点数取ってしまうとは、異世界舐めてたぁ。まさか転生して初めて食らう精神的大ダメージがテストの点数とは・・・。
もう2人の表情が何とも言えない顔になっている・・・。そりゃあそうでしょ、今まで自分たちを教えてくれた人より高い点数取っちゃったんだから。うわぁ・・・試験やり直したい。
私の点数を見て気まずく感じたのか、キーちゃんは視線を合わせないようにして、クアルくんは何も言わず静かに元の位置へと戻る。逆にその気遣いが私の心にダメージを与える。明らかな励ましでもいいから何か言ってほしい。
因みに後からキーちゃんに答えを見せてもらった。
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〇ファンタヘルムの守護する5人の勇者、通称『五芒星勇者』。各大陸の3代目勇者のそれぞれ正式な勇者の名と、その本名を答えよ。センター大陸の勇者は除く。
・イースト大陸 ・星剣の勇者 ロッシュ・R・リリクク
・ウエスト大陸 ・星盾の勇者 エコロ・S・ベルージェ
・サウス大陸 ・星槍の勇者 プリアン・E・ホルヴィア
・ノース大陸 ・星槌の勇者 ギルガージ・J・アイスギガ
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どの人も名前が独特過ぎて覚えれるわけがない。
不自然な点があれば、是非ご指摘してください。




