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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第82話 思わぬ収穫

諸事情により編集しました。

星暦2025年、夏の15日、土の日、夕


 談笑と依頼品の採取をしながら森を歩いているうちに一旦森を抜けると今後は川に直面する。窪みを発見したクアルくんの話しではこの川の反対側にあるそうだ。川は幅が広く、そして意外に深い。恐らく私なら臍まで浸かることになるだろう。水の流れは大したことはないにしろ、これを渡ったらかなり体力が持っていかれそうだ。

 そんな川を見た瞬間、私は眉間にしわを寄せる。別に川に対して不機嫌になったわけではない。自然の中なのだから仕方がないと割り切れる。不機嫌になったのは別件。この川の存在の事を知らされていない事だ。


「・・・聞いていないんだけど?」


「・・・忘れたぜ。」


 社会、いや日常生活にとって連絡事項のし忘れは一番いけない。前世でその大切はよく知っている。社畜だったのだから。今度からこの様な事が起きないように訓練で“報連相”について熱く語らなければならないようだ。男子たちには特に。


「どうする、カナタちゃん?泳いで行けとか言わないよね?」


「う~ん・・・。夏だけど服を濡らしたまま一晩過ごしたら風邪ひいちゃうよね?迂回して浅瀬を探すのも面倒だし・・・仕方がない。クアルくん、責任持って1人ずつ反対側(あっち)に飛んで運んで。」


「えぇ~~・・・。」


 クアルくんが露骨に嫌そうな顔を見せる。実は前々から緊急退避方法として彼の『飛翔』を使って、メンバー1人1人を手掴みで運ぶという手段を考えていた。一応普段の訓練では難なく成功しているけど、それは防具を装備していない軽量の時。しかし今は、本気で試験に挑むために胴だけではなくしっかりと肩、肘、膝も装備している。それに加えて武器や先ほど集めた依頼品の入ったバックも含めれば数段体重が重くなっている。つまりは私たちを運ぶのが大変だと言う事。

 だけど仕方がない。私たちは濡れたくはない。こういう力仕事の時こそ男子に頑張ってもわらなければ。



 渋々私の指示を了承したクアルくんは1人30秒をかけて、何とかメンバー全員を反対側に運ぶことが出来た。運んでいる最中の彼はとても危機迫る表情で精一杯翼を使って持ち上げてくれた。想定以上に重かったのだろう。翼と両手に力を入れた彼は最後の寝ているケマくんを運び終えると、四つん這いになって荒い呼吸で息を整えている。


「はぁ・・・はぁ・・・。」


「はいはい、お疲れ様クアルくん。それじゃあ日が暮れる前にとっとと目的地に向かおうか!」


 そう言うとクアルくんは辛そうな表情で私の方を見つめる。彼には申し訳ないがもう夕方。盗賊たちがいつ動き出すのか分からない今、ここでたらたらと無駄な時間を過ごすわけにはいかない。私は彼の腕を掴み立ち上がらせる。


「キーちゃん、またケマくんをお願い。ほらクアルくんしっかりして。」


「うぅ~、またケマくんを~・・・。」


「・・・ねえカナタちゃん。ちょっとあれを見て。」


 移動しようとした時、ずっと川を凝視していたコルルちゃんが呼び止める。彼女の方に振り向いくと、コルルちゃんは川の中に指をさしていた。何かを見つけたようだ。少し気になり彼女の方へ近づく。


「どうしたの?」


「あれって・・・イエロー・メラルフフィッシュじゃないかな?」


 コルルちゃんが見つけたのは私たちの中で一番採取が困難なケマくんの依頼品だった。名前の通り黄色い鱗を持った魚、絵もあるし間違いない。しかも幸運にも群れ泳いでいる。納品数の25匹まではいかないが残念だが見つかっただけありがたい。


「ほぉ~、こりゃまた大量なこった。」


「コルルちゃん、ナイス!それじゃあ早速捕まえよう。クアルくん、雷魔法よろしく。」


「また俺の働かす気か!?雷魔法ならキーちゃんだろ!?」


「キーちゃんのは音がデカすぎるから盗賊たちに場所を特定されちゃう。いいから早く、ほら。」


 私がそう指示しながらクアルくんの背中を押す。彼は小さくため息を吐きながら川に片手を入れる。そして入れた手に雷の魔力を集中させた魔法を発動させる。


【雷魔法:フル・サンダー】


 これは使用者の熟練度に応じて威力が上がる雷魔法。現在クアルくんの雷魔法の熟練度はレベル8。他の数値と比べたら少し劣っているけど、それでも普通の魚なら感電死する程の威力はある。

 クアルくんの手に沿って川の表面に電流が走った。もちろん表面だけでなく、中にも確実に電流が流れた。しかし流石は指定された魚、いまだに悠々と泳ぎ続けている。心なしか少し元気になっている様にも見える。自身のあった雷魔法で1匹も仕留められなかったことにショックを受けたのか、クアルくんはそっと川から手を放して固まる。


「・・・。」


「・・・あはは、どんまい。」


「うるさいなぁッ!しょうがないだろ?まだ発展途中なのだから!?」


 慰めようと思い声をかけるが、どうもクアルくんからしたら皮肉に聞こえた様で急に逆ギレしてきた。別にそんなつもりじゃなかったのに。

 しかし困ったものだ。まさかあの魚がここまで雷に対する抵抗が高いとは思いもしなかった。手持ちに釣竿も網もない。どうやって採取しようか顎に手を当てて考える。


 私の火魔法で直接攻撃する・・・いや、残念だけど私のはそこまで火力がないからすぐに鎮火されちゃう。『小花火』を使えばいけるかもしれないけど、あれも音がデカいしこっちにも火種が来ちゃう。どうしたものかな・・・。


「じゃあここは私に任せて!」


「「「えっ?」」」


 そう思案を巡らせている中、キーちゃんが手を上げる。どうやら彼女が魚を採取するようだ。しかし彼女の雷魔法は1つしかない。それを知っていたパーティーメンバーは彼女がその魔法を発動する瞬間、すぐさま飛び込むように川から身を離して両耳に両手を当てる。


【雷魔法:光雷の鳴激 (エルコル・スパァダ)】


「「「うぅわああああぁぁぁぁ!!」」」


 キーちゃんの指先から一筋の雷が川に花立てた瞬間、爆音が響く。それに生じた爆風が近くに樹木の葉っぱを散らし、川には水と雷による大きな柱が盛り上がる。その柱は瞬く間にまた川の水へと戻ると、川の表面に逆らが浮かび上がる。それは1匹や2匹ではない。10単位の量だ。しかもイエロー・メラルフフィッシュだけじゃなく他の魚たちもちらほらと見える。


「うわぁ~!見てみてカナタちゃん!これでたくさん採れるよ!・・・あれ?」


 ここでキーちゃんのように大喜びするべきだろう。しかし今の私たちはそれどころではなかった。彼女が嬉々として私の方へ振り向くと、そこには耳を塞いで起き上がろうとしない私とクアルくんとコルルちゃんの姿だった。


 これだよッ!?こうなるのが分かっていたから使わせたくなかったのよ!あぁ~耳だけじゃなくて頭も痛ッ!?


「ああああぁぁぁぁ、耳がぁぁぁぁッ!」


「キーンってする・・・。あぁ・・・。」


 いくら耳を塞いでもそれ程距離が近ければ関係ない。例え様がない爆音に私たち3人は耳を傷めている。まさかアイディアを提供した私がその魔法で苦しむとは。本当にとんでもない魔法を創らせたものだ。


「アハハハ・・・ごめんね?でも早く魚集めないとみんな流れて行っちゃう・・・ん?」


 キーちゃんがそう言いながら右側の方を見つめる。言葉の言いかけもあり少し気になった私たちは彼女の視線の先を見る。彼女が見つめていたのは他の参加者たちだ。人数は9人、こちらに向かって来る。対応できるように私たちは体を起こした。


「俺らに用があるみたいだなぁ・・・一体なんだ?」


「カナタちゃん、どうする?」


「・・・コルルちゃん。確認だけど、確かこの試験は参加者同士に争いは禁止事項だったよね?」


 コルルちゃんの方を向いてにそう問いかけると、彼女は静かに頷く。

 この試験では参加者同士の暴力、及び他の参加者の依頼品の略奪は禁止となっている。理由は冒険者と言うのは縦と横の友好関係は、仕事場において協力し合うこともあり根強い関係をつくる必要がある。だからこの試験でも、参加者同士でコミュニティを築きく方法を学び、明朝まで頑張ってほしいのこと。


 見るからに相手は全員年上。向こうも喧嘩は禁止って知っているはず・・・一体何しに来たの?表情がとても硬いし、とても友好的にも見えない・・・。あっ・・・もしかしてさっきのキーちゃんの魔法で怒っているのかな!?あっちは全員獣人族っぽいし、音に驚いて怒っちゃっているのかな!?


「・・・少しいいかな?」


 そうこう考えている間に相手パーティーがある程度まで接近して、パーティーリーダーの役割を担っている男性が前に出てきて問いかけてきた。それに対して私のパーティーメンバーは私を凝視する。様子で分かる。つまり私が代表で会話をしてほしい様だ。


「はい、何ですか?」


「君がこのパーティーの代表?」


「まあ、一応わたしが代表(リーダー)を任されています・・・。」


「さっきここですごい爆音が聞こえたんだが、もしかしてこの浮いている魚はみんな君たちがやったのか?」


 正確にはキーちゃん1人でやったんだけどね。でも正直にいう必要はないし・・・ここは黙っておこう。


「はい、そうですけど・・・この魚に何か?」


「頼むッ!浮いている魚の何種類かは俺たちの依頼品なんだ!都合のいい話かもしれないが、(それら)を分けてくれないか!?」


 私の返答を聞いた瞬間、相手のリーダーが食い気味に頭を下げてお願いしてきた。それに続いて後ろのパーティーメンバーたちも頭を下げる。どうやら交渉のため赴いた様だ。これはついている。私は前世で多少なりの交渉と取引には慣れている。今回に関しても、次にどう言うべきか、もういくつか頭に浮かんでいる。

 だけど私の独断で全て決めて良いわけがない。リーダーであるがメンバーの意見も尊重する必要がある。とりあえず私は後方を向き、メンバーたちに確認をとる。ケマくん以外は私と視線が合うと頷いてくれた。


 “カナタちゃんに任せる”ってことか・・・。まあ向こうも友好的だし、邪険に扱うこともないか。


「・・・それじゃあ、交換ってのはどうですか?」


「こ、交換?」


 急に口調が礼儀正しくなったせいか、私の唐突な提案に相手のリーダーが戸惑った表情を見せる。言いあわ草をするつもりは毛頭ないから安心してほしい。


「はい。実は私たちも日が高いうちに依頼品を集めきることが出来なかったんですよ。だけどその代わり、晩餐様にと依頼品とは別の物を採取しているんです。腹が減っては何とやら・・・ですから。そちらも同じ事を考えていますよね?」


「・・・ああ、いくつか果物などを採ってはいる。それが?」


「もしその採っている中に私たちの依頼品があるのでしたら、交換しようかと。後、見ての通り魚の数が尋常じゃないので、採るのを手伝ってほしいんです。」


「・・・もし君たちの依頼品を俺達が持っていなかったら?」


「その時はまた別の提案をさせてもらうだけ・・・どうしますか?」


「・・・少し待ってくれ。」


 そう言うと相手のリーダーはパーティーの元へと戻り、話し合いを始める。表情はさほど不機嫌ではない様子。前向きに考えてくれているのだろう。話し合いは10秒程度で終わり、相手のリーダーが再び前に出る。


「分かった。その話、のった。」


「ありがとうございます。それじゃあ早速、魚が川で流される前にとっとと採りますか!」


 そう言いながら私はブーツと靴下を脱ぎ、出来るだけ濡れないように上着を捲り上げて川に入る準備をする。パーティーメンバーも入水するように指示を出す。


「んだよ、結局濡れる羽目になるんじゃねえか・・・俺の苦労は?」


「アハハハ!まさに無駄骨だったね!」


「文句言わないの。思わぬ収穫だからいいじゃない。」


 浮いている魚はざっと30匹。川の流れは穏やかだけど早くしないと全て流されてしまう。


「あっと、ちょっと待った。」


「ん?」


 私たちが入水しようとした途端、相手のリーダーが制止する。すると相手のパーティーメンバーから1人の獣人族が、先のクアルくんの様に片手を川に入れる。そして魔法を発動する。


【水魔法:ウェーブ・コントロール】


 すると川の流れが変わった。彼の手を中心の波がうち、それに流されるように魚たちが集まってきた。どうやら水魔法のようだ。魚たちが彼の手のもとに集まると、相手のパーティーメンバーは魚をすくい上げて私たちの前に運んでくれた。私たちはそれをただ傍観し続けた。


「はぁ~、便利な魔法。」


 クアルくんがそう呟くと、魔法を使ってくれた人はクスっと笑う。魚を運ぶ終えると今後は相手のリーダーがパーティーメンバーに指示を出して、パンパンに詰められた1つの麻袋が運び込まれた。中身は果物や草花だった。


「これは俺たちが集めた果物や薬草だ。この中から好きなだけ取って言ってくれ。」


「ありがとうございます。みんな。」


「「「了解。」」」


 そう言うと私のパーティーメンバーは麻袋の中身をあさり始め、各々の依頼品は確保する。なんと幸運にもケマくん以外の依頼品が大量に入っており、この交渉で私たちは依頼を達成した。

 提供された麻袋から依頼品を取り出して相手パーティーに返す。そして今度は相手側もキーちゃんが捕獲した魚たちから各々の依頼品を取る。こうして交渉は終わった。


「今回はありがとうございました。」


「いいやこっちこそ。おかげで苦労すると思っていた魚を楽に採取できたんだ。というかむしろお礼を言いたいのは俺たちの方だ、ありがとう。」


「いえいえどうも。・・・試験、頑張ってくださいね。」


「ああ、お互いにな。じゃあな。」


 最後の締めの会話を終えると、相手パーティーは来た道を戻り、そのまま森の中へと戻って行った。私たちはそれを見送り、相手パーティーの姿が完全に消えたのを確認すると、パーティーメンバーは気が緩み方の力を抜く。


「はぁ~、緊張したぁ~。どうなるのかひやひやしたよ。」


「アハハハ!まさか交渉するとは思わなかったよ、カナタちゃん!」


「だな。あれは流石に肝を冷やしたぜ。流石は俺たちのリーダー!」


 コルルちゃん、キーちゃん、クアルくんの順で私を褒める。


 あ~、やっぱりみんな緊張していたんだ。やけにだんまりとしていたと思ったらそういう事か。・・・まあ、冒険者になったらこういう事もあるかもしれないし、良い経験になってよかったかも。


「さてと・・・みんな、ちゃんと依頼品まとめた?それじゃあ早いところ寝床に向かうよ。」


「「「了解、リーダー。」」」


 現在、太陽は沈み始めて空は少しずつ赤色になっていく。夏の太陽は沈むのが遅いけど、のんびりとするわけにはいかない。私たちも急いで目的地へと向かった。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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