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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第81話 まずは採取から

諸事情により編集しました。

 総合適正の試験が開始してから10分が経過した。あれからパーティーメンバーは私の指示で、いまだに泥の山の前で待機させている。正確には唯一空を飛べるクアルくんだけ別行動してもらって、残りの4人は先の騒動で服に付いた泥を掃いながら休憩中。


「ねぇ~カナタちゃん、まだ~?」


「もう少しだけ待って。他の参加者たちの様子を見たい。」


 何故私がこのような指示を出したのかというと、他の参加者たちの様子を窺いたいからだ。流石の前世の記憶のある私でも高山で野営をするのは初めて。しかも競争相手がいるのだから、よりどうすればいいのか分からない。とりあえず他の参加者のパーティーはどういった作戦を考えて動くのか参考にしたい。

 今の所は、約8割の他パーティーは急いで依頼品を採取しようと躊躇なく森へと駆けて入る。ほとんどの他の参加者が獣人族だからその走る速度は以上に速く、あっという間にその姿は森へと消える。残った他パーティーというと、しっかりと念入りに計画を立ててから行動に移るようだ。どうやらこの他パーティーにはサバイバル経験者がいるようだ。しっかりと聞き耳立ててどういった方針で行くのか観察しよう。


「確かに他の人たちの行動も気になるけど・・・私たちも早く動いた方がいいと思うよ?このままだと私たちの依頼品、先に取られて私たちの分がなくなっちゃう・・・。」


 あれから私たちはお互いにそれぞれの依頼内容を確認し合った。すると見事に全員の採取する依頼品が別々であった。その内容は私が『青りんご』を20個、キーちゃんが『グリーン・メラルフキノコ』を13個、クアルくんが『バイオレット・ホルル草』を17個、ケマくんが『イエロー・メラルフフィッシュ』を25匹、コルルちゃんが『レッド・チェリーフラワー』を15個の採取。それぞれの特徴や詳細についても書かれており、ここ『メラルフ高山』ならどこでも採取できるモノばかりらしい。丁寧にその絵もある。

 しかし問題は追記で“同じ依頼内容の参加者がいますので採取は早めに”と書かれてある。つまり作物・魚には限りがある、早い者勝ちと言うこと。コルルちゃんはそれを危惧して心配そう尋ねている。


「大丈夫だよ、コルルちゃん。確かに依頼も大事だけど、それよりも優先すべきことがあるの。分かってくれる?」


「・・・カナタちゃんがそう言うのなら信じるけど・・・本当に大丈夫?特に・・・ケマくんの依頼品集め。」


 そう一番の問題は、ただ今絶賛爆睡眠中のケマくんの依頼品の採取である。何故か彼の依頼品の数が異様の多い。恐らく先の武術と魔術の試験で失敗してしまい、それの挽回の機会として依頼品の量を増やしたのだろう。嬉しいようで全く嬉しくない。一見、魚なのだから川に雷魔法を使えばいいと考えたけど、何でもこの『イエロー・メラルフフィッシュ』の皮膚は雷に抵抗でき、強い雷魔法でなければ感電死しないそうだ。


 しかも魚かぁ・・・嫌だなぁ。絶対ぬるぬるして触りにくいだろうなぁ。私、こんなんだけど一応“今”は女の子だし、これ以上手が荒れる様なことはしたくな~い!だったら冒険者になるなって話になっちゃうけど・・・。


「まあ最悪、キーちゃんとクアルくんの本気の雷魔法同時発動してもらえば何とかなると思うよ?」


「“何とかなる”って・・・そこは不確実になっちゃうんだ・・・。」


「アハハハ!任せてよカナタちゃん!クアルくんなしでも私一人で十分だから!」


 コルルちゃんが徐々に不安を募らせる気持ちは分かるけど、初めの事・・・特にみんなの事になると流石の私も大胆な指令は出せない。こういう時、リーダーは辛いなぁ~・・・ってか何時まで私は仮リーダーをし続けなきゃいけないんだろう?いやまあこうして頼ってくれるのは嬉しいけど・・・私は頭を使って考える柄じゃないんだよなぁ。う~ん、このまま私が正式にパーティーリーダーになっちゃったらどうしよう・・・パーティー名も私が考えるの?

 確か『キキラの街』にいた冒険者の話しじゃあ“リーダーは依頼の手続きや書類の確認、あと毎日パーティーメンバーの状況チェック等の全責任を負わなきゃいけない”って聞いたことある。うっわ~・・・リーダーは続けたいけどめんどくさぁ・・・。何でこの世界に来てまでそんな前世の社畜みたいなことしなくちゃいけないの?そう言えばコルルちゃん、計算とか早く解けるようになって来たっけ?・・・書類とは全部コルルちゃんに押し付けちゃお。


「・・・何でそんな悪い顔で私を見てるの?」


「ん?ううん、別に~。」


「絶対今、悪い事考えていたよね?・・・まさか他の参加者の依頼品を盗もうって思っていない?」


「おっ、それはいい案だね!そうだなぁ~、私の火魔法でボヤ騒ぎを起こして、参加者が騒いでいるその隙に・・・。」


「いやいやいやいや!?森の中で放火とか止めてよ!?流石にそれは盗賊役の人たちでもびっくりだから!」


 コルルちゃんに説教を兼ねたツッコみを入れられてしまった。実はここ数年、コルルちゃんは私たち以外の友人を多くつくり、そのおかげで彼女の語彙力が高くなったのだ。彼女の反応と言葉が面白く、だからなのか私もついついボケてしまう。まあ、その後に説教されるのは勘弁してほしいけど。そんなガールズトークもとい今後の行動について話し合いをしている中、1人別行動をしてもらっていたクアルくんが空から帰ってきた。私が出した指示を終えたのだろう。彼は器用に地面に着地して私の方へ歩み寄る。


「たっだいま~。」


「遅い。んで、どんな感じだった?」


 クアルくんに2つの指示を出した。

 1つ目は“『メラルフ高山』の大まかな様子”。要は森の中にモンスターがいるのかどうかと言う事。正直、私の中でこれだけの量の依頼品を集めることは半分諦めている。ケマくんを除いて4人でこれだけの量を探し出すのは結構骨が折れる。それに比べてモンスター2体討伐だけで1人分の依頼の免除というのは非常に楽な話だ。だから私はまだこの森にモンスターがいないか、それを上空で確認してもらっていた。


「すまん、木々の枝や葉っぱで上からじゃあ森の中は良く見えなかった。唯一分かった事と言やぁ、確かに森の中にはモンスターらしきモノは見当たらなかったぜ。せいぜい動いていたのは、先に入った参加者たちぐらいだった。」


「間違いない?」


「上空からの偵察だったからなぁ、絶対とは言い切れない。」


まあ、それしか言いようがないよね。仕方がない、諦めて青りんご20個探そう・・・めんどくさ~。でも無理に危ない事しなくていい手考えれば幾分マシかな。それでもめんどくさいなぁ~・・・。


「分かった、見つからなかったんならしょうがないね。じゃあ、もう1つの方は?」


 2つ目に出したのは“最低3人が寝られる安全そうな場所の捜査”。支給されたバックの中には野営用の寝袋は入っているけど、組み立て用のテントはない。つまりギルド側は地面にそのまま寝ろと言っているようなもの。私たちは別に一向に構わないけど、せめて盗賊役の冒険者から隠れられるような場所は必要だと考えた。

 ケマくん以外のパーティーメンバーは気付いていたようだけど、先の武術の試合では相手の冒険者は手加減をしてくれていた。それがもし盗賊役として本気の実力を出されたら、5人がかりでも勝てるどうか分からない。しかも今回は複数人いる。正面で闘ったら恐らく負けて依頼品を奪われるであろう。

 そんな盗賊対策を考えた私たちはそこで“盗賊とは戦わず、隠れて過ごそう”という結論に至った。“逃げまわる”という案も出て来たのだけど、恐らくその時間帯になると私たちもケマくんの様に睡魔に襲われてしまい、意識が朦朧として捕まってしまうのだろう。だから隠れて一夜過ごそうと考えた。


「あっちの方で小さな窪みがあったぜ。ただ本当に3人か4人入れるかどうかのサイズだった。どうしても1人か2人は余っちまう。」


 クアルくんはそう言いながら北北東へ指をさす。4人が入れるのなら上等な方だ。その窪みの形や周り地形、深さなどの詳細を確認する。


「正確にはデッケェ木の根っこに間に出来た空間って感じだった。斜め掘りで1回中に入ってみたけど、頭が当たってしまう程の深さだ。周りは草や茂みが生え並んでいた。」


「他に周りには特徴的なモノはなかった?例えば川があったとか、大きな岩とか。」


「いいや。本当に森に一部って感じだ。目立つ場所と言やぁ、その窪みくらいだったぜ。」


なるほど・・・うん、悪くないかも?いやむしろ良いかも!最悪木の上で隠れようと考えけど、それと比べたら全然良い!窪みの出入り口も周りの茂みや草、木魔法とかでカモフラージュすればいいし。


「うん、そこにしよう!クアルくん、ここからだとどれくらいの距離にあったの?」


「う~ん、ここから・・・10キロあるかないか程度だったかな?」


 意外と遠いなぁ・・・いや、ここから出来るだけ距離を取って盗賊たちに見つけにくい方がいいか。それに『俊敏化』を使えばすぐに着けるし、問題ないか。


「よしみんな、とりあえずそこに向かおう!クアルくん、案内よろしく。」


「はいは~い。」


「うぃ~っす。」


「すぴぃ~・・・。」


「了解。・・・ってケマくんはどうするの?」



 出発してから数十分が経ち、現在私たちはクアルくんの案内で隠れ家になりそうな窪みに向かい歩き続けている。この方向には他の参加者たちが通らなかったのか、道中でそれぞれの依頼品が多く見つかり移動途中で採取もしている。最初以来の紙を見た時はその数に多いと思ったけど、この調子だと盗賊出現前には依頼品を集めきることが出来そうだ。強いと言えばケマくんの依頼品が1つも手に入れられていないが、まだ一度も川が見つからないから仕方がない。因みにその肝心なケマくんはというと、キーちゃんにおんぶしてもらって運んでいる。


「すぴぃ~・・・すぴぃ~・・・。」


「本当によく寝るね・・・。ってか何で私なの?」


「しょうがねぇだろ。俺じゃあ翼が邪魔で背負えないし、カナタちゃんやコルルちゃんはそいつ運べるほどの筋力はないし。」


「まあ消去法よね。頑張って、キーちゃん。」


 鬼人族は他種族の中で一番の怪力と言われる。例え女の子のキーちゃんでも、それは例外ではない。彼女の力の強さはパーティーの男子を抑えての一番。現にケマくんを背負って移動していること数十分経っているけど、彼女の呼吸は全然乱れていない。多少の疲労は感じているようだけど、まだいける様子。

 因みにキーちゃんがケマくんを背負っているせいで彼女は自身のバックを持てなくなった。だから私が彼女の分も一緒に運んでいる。背中に自分のバックを背負い、全面でキーちゃんのバックを付けている状態だ。非常に動きにくいけどキーちゃんと比べれば弱音は言えない。

 歩いている道中にまたしても依頼品が見つかった。木の枝に生えている“青りんご”、私の依頼品だ。自分で採取しようと思い一度運んでいるバックを下ろして、身軽な状態になって木に登る。訓練でパルクールをしてきているからこの程度の高さの木など怖気づ悠然と“青りんご”を採取できた。すると私が離れている間にパーティー内でちょっとして問題が発生した。それは寝ているケマくんが涎を垂らして、運んでもらっているキーちゃんの防具についてしまった。それを先に気付いたクアルくんとコルルちゃんは恐る恐るキーちゃんの表情を窺うと、眉がびくついていた。


「すぴぃ~・・・すぴぃ~・・・。」


「・・・アハハハ。みんな~、早速晩餐が決まったよ、熊鍋。美味いかどうかは保証できないけど。」


「それはこいつの食生活によるな。確かこいつ甘党でいつもお菓子とか食っていたよな?肉も甘ったるいんじゃないのか?」


「考え方が外道過ぎる・・・。もう、ふざけてないで早く行こう。」


 冗談交じりの談笑を続けて私たちは目的地へと歩き続けた。ケマくん以外の依頼品の着々と採取が出来ている。その後も晩御飯にしようと他の果物もかなり手に入った。幸先が良い。因みに、ケマくんに対する仕返しなのかキーちゃんは移動中ずっと体を大きく揺らしていじめていたのは余談である。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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