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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第79話 リーダーとしての失態

 総合適正の試験についての説明を聞き終わった私たちの参加者一同は、12時までの昼食をはさんだ休憩時間を設けられた。だいたい1時間半だ。私とパーティーメンバーたちは一度落ち着けられる場所へ移動しようと地下訓練所が出て、冒険者ギルドの1階のフロントで手足を伸ばして休んでいる。


「とりあえずみんな試験お疲れ様。」


「お疲れ~。」


「本当に大変だったぜ!特に武術の試験は。」


「・・・。」


「私とカナタちゃんを見ていたよ、クアルくんの試合。最ッッ低なだったけど、勝ったんだから良いじゃん。」


 取り敢えずメンバー全員、特に大きな怪我がなくてよかった。中には魔力を消費してやや疲労気味な者もいるけど、この休憩時間で何とか回復できるだろう。こうして無事に集合できたことに心底安堵する。


「それじゃあ早速だけど、試験はどうだった?まずはクアルくんから。」


「んぁ、俺?まあそうだなぁ・・・結構よかったと思う。武術の試合には勝って、魔術のなかなかいい反応してくれたぞ。」


 クアルくんは魔術の試験では2つは攻撃魔法で、1つは補助魔法を披露してそうだ。3つとも彼の得意な風の魔力を含んだ魔法で、彼曰く、担当のギルド職員の表情はかなり驚いていたそうだ。高評価は間違いないらしい。


「試合に勝つなんて本当にすごいと思うよ。・・・勝ち方は最ッッ低だったけど・・・。」


「コルルちゃんまだそれ言うの・・・。仕方がないだろ?紳士的な闘い方じゃ勝てない相手だったんだから。俺だって必死だったんだから。」


「まあまあ。それで、コルルちゃんの方はどうだった?」


 武術の試験はクアルくんの試合を静観する際に聞いていたから知っている。問題は次の魔術の試験だ。コルルちゃんの魔術の試験では、3つとも補助魔法を披露したそうだ。2つは回復系統の魔法で、残り1つは妖精族特有の魔法を使用した。とても物珍しいのかギルド職員だけではなく、他の参加者たちからも歓声が起きたそうだ。確かに今思い出してみると、隣の青グループで一回だけ大きな歓声が起きたことがある。恐らくそれがコルルちゃんによるものだろう。


「アハハハ!流石はコルルちゃんだね!」


「ありがとう。でも武術の試験で負けちゃったからねぇ・・・。次の最後の試験で何とか挽回しないと。」


「だね。それにしてもやっぱり需要ある回復魔法はいい反応受けるんだねぇ。」


「・・・そういえばさっき、すんごい爆音が聞こえたけど・・・あれ絶対にキーちゃんのだよね?」


 ここでクアルくんが私たち赤グループの様子を問いかける。それを私が淡々と順を追って説明した。クアルくんの予想通り地下訓練所中に響かせたあの爆音の正体は、キーちゃんの魔法によるものだ。話を聞いたクアルくんとコルルちゃんは予想が的中して思わず苦笑いをする。気持ちはわかる。もし私が2人の立場だったら、私もそんな表情をしてしまうだろう。


「アハハハ!どう、びっくりした?」


「ああ、かなりなぁ。参加者のほとんどが獣人族だから、みんな音に敏感でぶるぶる震えていたぞ。」


「私の所は真隣だったから、どっちかって言うと光に驚いたよ。いきなり眩しい光が来たから一瞬身構えちゃった。」


「何の前ぶりもなく急に来たらそれぐらい驚くよねぇ。・・・ところで、私の魔法もキーちゃん程ではないけど結構、音も光もしていたと思うよ?何で私のにはノーコメントなの?」


 今度は私からそう問いかけると、2人はそっぽを向いた。眼を合わしてくれない。分かっている、キーちゃんと比べる以前にそれほど派手ではないと。隣の青グループには目に入って多少なりと驚いてくれたらしいけど、壁の向こう側にいた2グループには全く気付かなかったそうだ。せいぜい耳障りな音が聞こえてきた程度のようだ。


「何それ・・・ひどっ。」


「いやいやいやいや!?そもそも聞こえる方がおかしいじゃん!?」


「アハハハ!・・・ん?ちょっと待って、それじゃあ私がおかしいって言うの?」


「キーちゃん・・・少しは自覚した方がいいよ?他の参加者の魔法を見て再度思ったけど、私たちの歳であの威力は本当におかしいと思うよ?」


 コルルちゃんがここでキーちゃんを慰め、もとい説教が始まる。正確には私の入れ知恵であのような魔法を完成させたのだが、我ながら本当にすごい逸材を育ててしまったものだ。このまま前世のアニメの技等を教えていくとどれぐらい覚えられて、それをどうアレンジするのか楽しみだ。


「そういえば、ずっと黙っているけど、ケマくんの方はどうだった?」


 最後にケマくんの試験の具合を聞こうと彼の方を振り向くと、彼は椅子に座りながら顔を上に向けて寝ていた。視界の端で姿だけは見えていたけど、寝ている事に全く気付かなかった。見事な鼻ちょうちんを呼吸と共に収縮させている。何ともまあ器用な子だ。ギルド職員に防具の着用を強制されて今も私たちは防具を装備しているけど、彼はそんの気にせず気持ち良さそうに仮眠している。いや、ここまで安らいでいると最早熟睡とも言える。


「すぴぃ~・・・すぴぃ~・・・。」


「やけに静かだと思っていたが、ずっと寝ていやがったのか・・・。」


「どうするカナタちゃん、次の試験が試験だし・・・起こす?」


「今朝から眠そうにしていたし、きっと試験で一気に疲れてきたんじゃないの?休ませた方がいいと思う。」


 面目上いまだにリーダーである私にキーちゃんとコルルちゃんが問いかけてきた。確かにコルルちゃんの言う通りケマくんは今朝から眠そうに何度も目元を擦っては欠伸を見せていた。その原因は、ケマくん曰く今日の試験に気持ちが高揚して眠れなかったそうだ。男の子にはよくある現象だ。このまま寝かせてあげたいのはやまやまだけど、それでスロースタートになっては困る。総合適正の試験では彼の力が必須。ここはケマくんの機嫌を損ねてしまうかも知れないけど、起こすことにしよう。


「クアルくん、お願い。」


「よぉし、任された!スゥ~・・・起きろぉおおおお!!」


「あわわわわッ!!」


 クアルくんに起こすように頼むと、彼は寝ているケマくんに近づいて、その丸い熊耳に向かって大声で叫ぶ。するとケマくんは何かの異常事態だと思い、手足をドタバタと上下に振って眼を空ける。一体何事かとケマくんは頭をぶんぶん振り回して周りの状況を確認する。


「えっ?えっ?な、何?何?!」


「グッモーニン~グ。いってぇッ!?」


「“グッモーニン~グ”じゃないわよ。声デカすぎ。周りの人に見られているじゃん。」


 コルルちゃんがクアルくんの頭を叩いた。限度なく大声で叫ぶものだから他の人たちにちらちらと見れている。これは流石の私でも少しは恥ずかしいと思う。とりあえず眼を覚ましたケマくんに、試験の様子を伺った。


「えっ、僕の試験の具合?だーっはっはっはっ、それが聞いてよ!これまた見事に2つとも大失敗しちゃったよ!」


「「「「えっ?!」」」」


 ケマくんの思いもしない発言に私を含むメンバー全員が目を点にして同じ台詞を言う。ケマくんの話しでは、実技試験の際にグループ別に分かれた後、黄グループで1人になった彼はすぐさま寝てしまったそうだ。どうやら武術の試験で自分の番になるまであまりにも暇すぎるため、寝て時間を潰していたそうだ。そしていざ自分の番になると、当然寝起きの彼は冒険者相手の試合に手も足で出せずにそのまま場外負けとなった。間違いなく評価は最悪だろう。次に魔術の試験では、これも自分の番になるまで寝ていたそうだ。そして自分の番になると、これも当然寝起きの彼には集中力がないため、魔力を安定して発動することが出来ずに上手くアピールすることが出来なかった。これも間違いなく最悪な評価にされただろう。つまりケマくんは、このパーティー内で最も低評価を受けていることになる。


「だーっはっはっはっ!やっちまったよ!」


「「このおバカー!!」」


 最悪な状況なのに高笑いするケマくん。それに対して激しく彼の頭を叩きながらツッコみを入れるクアルくんとコルルちゃん。先のクアルくんの大声と同等の大きい声だったけど、今はそんなこと気にする場合ではない。


「アハハハ!これは笑えないね!」


「そう言いつつも笑っているじゃねえか。はぁ・・・本当にどうするんだよ?」


「まあまあ、次の試験で汚名挽回してみせるから!」


「汚名を挽回してどうするの!?返上して!」


「・・・まあ確かに、最後の総合適正の試験での活躍次第じゃあ挽回できるかもしれないけど・・・本当に大丈夫なの?」


 総合適正の試験。

 それは間違いなく冒険者登録試験の最後に相応しい、最大難解の試験である。その内容は、参加者の同士で話し合って5~9人のパーティーを組んで王都メラルフを出てすぐにある『メラルフ高山』にて、明日の早朝6時までサバイバルをする。その際に、指定された種類の植物、鉱石、果実を指定された量と数を出来るだけ採取して、試験終了の際に報告する。万が一、モンスターと対峙した時、無理な戦闘を強要されていない。むしろ逃走するようにと勧められている。


「ケマ、しっかりと頼むぜ!この試験、お前の『索敵』と『直感』のスキルがカギを握っているんだからな!」


「分かっているって。流石にみんなの足を引っ張りたくはないし、俺も頑張って眼を開けるよ!」


 この総合適正の試験では、当然私たち5人でパーティーを組んで挑むつもりだ。その場合はクアルくんの言う通り、モノや気配を探す事に特化した獣人族であるケマくんの活躍がかかっている。こんな阿呆ではあるけど、獣人族としての役割を果たせるほどの索敵能力を持っている。彼がいればモノの採取はからモンスターの発見まで容易に行えると言っても過言ではない。正確にはこの2年間で鍛えたと言った方が正しい。


「・・・ねえ、ケマくん。そういえばあんた、昨日何時に起きて何をしていたっけ?」


 ここで私の中にとある疑念が浮かびケマくんに問う。彼は先ほど“頑張って眼を開ける”と言った。それはつまり、あれほど長い時間寝ていたにも関わらず、まだ眠気があると言うこと。


「えっ?え~と・・・何時だったっけ?」


「昨日は6時に起きていなかったっけ?ほら、昨日も“わくわくが収まんねー!”って言って、1日中何処かに行っていなかったっけ?」


「あーそうそう!昨日は今日のために1日中訓練していたんだ!」


 キーちゃんの言葉で思い出したケマくんは、手をポンと叩いて昨日の行動を話す。昨日は私の指示で自由行動にしていた。試験に対する緊張をほぐすための遊びの時間として設けたつもりだったのだが、まさか訓練をしていたとは知らなかった。昨日は何事もなく普通に宿屋に帰っていたから特に気にせず聞かなかったけど、こうなるのなら聞いておけばよかった。


「・・・ちなみにどんな訓練をしたの?」


「魔法で木をたくさん生やしたり、その木を“武技”でドサドサって倒したり、王都の外周を走ったりした!」


 あぁ、なるほど・・・。それだけ動き回って、魔力をめちゃくちゃ使って、疲労感全開なのに一睡もしていない・・・そりゃあ眠いに決まっているわッ!!ヤバい、本当にどうするの・・・!?


 私なりの推理でケマくんの眠気の原因を理解できた。昔から体力の限界を知らない子ではあったけど、まさかここまでとは思いもしなかった。2年間で身体は逞しくはなったけど、中身はあの時のまま。ケマくんのコンディションの悪さにようやく気付いた私はたちまち頭を抱える。


「お前、何気にスゲェー事していたんだな。」


「言っている場合じゃないよ?コルルちゃんの回復系統の魔法で何とかできないの?」


「流石にそんな都合のいい魔法はないかな・・・。出来るとしたらせいぜい、鼻に向かって水をぶっかけることしか・・・。」


「イヤだよ、そんな拷問みたいなことされるの!?試験中ずっと、ちゃんと起きているから大丈夫だって!」


 ケマくんはそう見栄を張るが、恐らくそれは無理だろう。24時間活動し続ける辛さや怠さは私も知っている。正確には前世で数多く経験した事がある私だから良く知っている。まだ会社にいた頃、嫌がらせの様に上司から1人ではこなせない量の仕事を渡された事が何度もあった。その度に近くのネットカフェで一夜にして何とか全て終わらせた。当然ものすごく身体が怠くて悲鳴を上げていたけど、次の日も仕事。休むわけにはいかず結局そのまま休む暇もなく会社で働いた。今思い出すと苦い経験だ。

 そんな経験者の私の推測では、ケマくんは間違いなく総合適正の試験中に眠ってしまうだろう。これは私の中だけで理解するのではなく、本人にも認めてもらわなければ困る。私は椅子から立ち上がり、ケマくんに近付く。


「ケマくん、正直に答えて。まだ眠いでしょ、しかもかなりに?」


「・・・うん。正直、めちゃくちゃ眠いかな・・・。」


 今後は少し圧を込めてケマくんに聞いた。私は真剣だと気付いた彼は、申し訳なさそう笑いながら正直に答えてくれた。これは仕方がない事だ。私たちはまだ12,3歳、世間から見ればまだまだ成長途中の子供。そんな子が24時間活動し続けて、たった1時間程度の仮眠では、いまだに眠気に襲われてしまうのも無理はない。

 こうなったのは私の責任だ。私がもっとみんなに気を配っていればこのような事は起きなかったはず。

リーダーとして、何とかパーティーのこの状態で総合適正の試験を乗り切る策を考える。私は勉強もできなければ、よい作戦なんてパッと浮かんでくるはずがない。それでも私は懸命に思案を巡らし続けて、1つの案が浮かんだ。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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