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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第75話 休憩ついでの観戦

諸事情により編集しました。

 私の試合が終わり1時間近くの時間が経った。過激な攻防とスキルの連発で減少していた体力や魔力は、次の試験までの休憩時間とギルド側が支給してくれた魔力回復薬により完全回復できた。今はキーちゃんと共に他の参加者たちの試合の様子を傍観しながら談笑している。


「いや~それにしても、他の参加者たちもみんな頑張るね~。劣勢なっても制限時間10分まで粘るわ~。」


 現在の試験の進行は8番のカードを持っている人が試合をしている。今までの人もそうだし、この人も諦めずに必死に食らいつくように闘っている。例え武器が手放したとしても即座に体術で闘った人もいた。みんなそれほどまでにこの冒険者登録試験に対して本気だという事なのだろう。すぐに降参を認めた1番のポールとは大違いだ。


「アハハハ、きっとカナタちゃんの影響だと思うよ?」


「私?何で?」


「さっきのカナタちゃんの試合本当にすごかったもん!普段訓練でカナタちゃんの強さを知っている私でも、カナタちゃんのあの行動には驚かされたんだもん!」


「“あの行動”?・・・あぁ~、あれか。」


 それは私が冒険者の遥か高い頭上に剣を投げ捨てた事だ。キーちゃんの曰く、あんなとびぬけた発想は思いついても行動に移せないそうだ。彼女も他の赤グループの人たち全員が釘付けだったらしい。


「みんなカナタちゃんの闘う姿を見て闘気が上がったんだと思うよ?みんな鳥肌立てていたんだもん!」


「正直に言って賭けだったけどね。もしもあの冒険者さんが私の作戦に気付いていたら、私が接近する前に迎撃して倒されていたもん。今思うと・・・本当に危ない作戦だったなぁ~。」


「でも勝てたんだから結果オ-ライじゃん!まあ、そのせいで私の出番が先延ばしになっちゃうけど。」


 キーちゃんの手元にあるカードの数字は11番。赤グループにいる参加者は全員で31人、真ん中より少し早めだ。その人の試合が終わり次第、次の人の試合を行う形式のせいでキーちゃんはいつ自分の番になるのか明確に把握できない。精神的に少しきつい状況だ。


「試合、そこまでッ!!」


 ここで8番のカードを持っている人の試合が終了する。キーちゃんとの会話であっという間に終わっていた。この調子なら彼女の番もすぐに来るだろう。


「あと2人かぁ。・・・そろそろ身体を暖めておこうかな。」


 同じく考えたキーちゃんはそう呟きながら立ち上がり、背筋を伸ばし始める。前もって身体を動かして気合を入れなおす、普段ゆるい感じだけど彼女はここぞという時はちゃんとしている。彼女の集中の妨げにならないように私も立ち上がって離れた場所へ移動しよう。


「どこに行くの?」


「暇だからクアルくんたちの様子でも見に行こうかなって。次の魔術の試験まで自由にしているって言われているから。」


「でも流石に他のグループの所に行くのはまずいんじゃないの?」


「壁の向こう側まで行かないよ。それじゃあこっちの様子が分からなくなるし。壁際で見ているつもりだよ。キーちゃんもしっかりと身体をほぐして頑張ってね。あと試合になったらどんな状況でも絶対に気を抜いちゃダメだからね。油断すると私みたいに奇襲を食らっちゃうよ。」


「“油断大敵”ってやつだね。アハハハ、大丈夫!私はこれでもカナタちゃんほど抜けていないから!」


 おっとそれはどういう意味かな?それは私の方が普段、気が抜けているって言いたいのかな?・・・いやまあ否定はできない。さっきのあの試合での私のバカっぶりを見られたんじゃあ何も言えない。


 キーちゃんは満面の笑みでそう返して、私の心を深くえぐる。きっと彼女自身無自覚で行ったのだろうけど、今の言葉は今日一番の精神的苦痛を受けた気がする。



 キーちゃんと離れた私は、彼女の言った通り地下訓練所の中央にある巨大な壁の端にて他のグループの試験の様子を窺っている。赤グループと壁をはさんだ反対側は緑グループだった。ということは緑のカードを受け取ったクアルくんがいるはず。私は遠目で大勢の参加者の中からクアルくんを探し始める。


「・・・何処にいるのよあの烏・・・。」


「なに不審者みたいなことをしているのカナタちゃん。」


「うっわ!!」


 クアルくんを集中して探す私の背後から女の子の声が聞こえた。思わず私は変な声を上げて振り返る。声の主は青グループにいるはずのコルルちゃんだった。


「コルルちゃん!?何でここにいるの?試験は?」


「私は7番目だったから丁度今さっき終わったところ。」


 私の質問にコルルちゃんは淡々と答えてくれた。そう返答されて彼女の肌や服を見てみると汗をかいた後の様子が見える。きっと激戦をした後なのだろう。


「そうだったんだ、お疲れ様。それで、試験はどうだった?」


 そう私は何も考えず続いてコルルちゃんに質問をした。すると彼女は少し顔を伏せて落胆した様子を見せる。忘れていた、彼女の得意な戦闘スタイルは魔法を軸にした中遠距離による闘いだと。今回の武術試験では魔法の使用は禁止、しかも彼女は近距離戦闘が苦手、結果なんて目に見えていた。


「・・・ごめん、負けちゃった。」


 コルルちゃんは笑顔でそう答えてくれた。眉が少し下がっている、必死に作り笑いしているのが分かる。もう少し考えてから発言すればよかった。聞いてしまった私は彼女と目が合わせづらかった。


「ふふっ、でも次の魔術の試験じゃあ絶対に合格するから!私の中では武術は最初から捨てていたし、何とか挽回してみせるよ。」


「コルルちゃん・・・。」


 てっきりコルルちゃんの心境は悔しさや後悔で満ち溢れているのかと思っていた。しかしそんな私の思い込みはただの杞憂だった。彼女はもう次の試験の事を冷静に思案している。今回がダメだったのなら次を頑張ればいいと真摯に現実と向き合っていた。この2年間の訓練で彼女は心身ともに強くなった。


「カナタちゃんは勝ったんだよね?おめでとう。現役相手にすごいよ。流石は私たちのリーダーだね。」


「えへへ、ありがとう・・・ってあれ?何で私が勝ったって知っているの?キーちゃんから聞いた?」


「私のグループからでも十分見えていたんだよ、カナタちゃんの闘い。あんな派手な剣技を使ったら誰だって気付くよ。」


 コルルちゃん曰く、どうやら私は先の試験で2つの剣技を使ってことで青グループからも注目されているそうだ。黄色に燃える剣に派手な爆音、しかもそれを使用したのが12歳の女の子というのが一番の驚愕的だったそうだ。青グループの参加者たちの話題は私で持ち切りらしい。ここまで注目されると逆に恥ずかしくなってきた。


 そんなに珍しいかな・・・エクストラスキル?確かにあれらを完成させた時は一緒に居合わせていたパパやママにすごい褒められたけど、そこまで釘付けじゃあなかったと思うけど?・・・都会と田舎による価値観の違い・・・かな?


「ところでカナタちゃん、やっぱり向こう側の男子たちが気になってこんな所にいるの?」


「えっ、ああ、うん。あの2人は魔法なしでも問題はないと思うけど・・・一応ね。コルルちゃんも?」


「うん。最初は黄グループのケマくんの様子を見ようと思ったけど、向かう途中でカナタちゃんを見かけてからこっちに来ちゃった。」


「大丈夫なのここまで来て・・・今は他の人の番とは言え試験中だよ?勝手に離れちゃあまずいじゃないの?」


「ちゃんと職員さんに確認を取ったよ。グループ全員の武術の試験が終わるまでに戻ってくるなら大丈夫だって。」


 ああ、いいんだね自由にしてて。ってかおもったんだけどこの登録試験って、ところどころゆるい所があるなぁ・・・普通の試験じゃあこんな風に自由にしてていいなんて言わないよ?・・・まあこれは地球ぜんせでの経験譚だけど。


「それで、カナタちゃんはさっき何であんな変な動きをしていたの?」


「クアルくんを探していたの。1人だけ鳥人族だからすぐに見つけられると思ったんだけどなかなか見つからなくて・・・。」


 そう返答するとコルルちゃんも壁際に立ち一緒にクアルくんを探し始める。ここから緑グループの参加者まで20メートル以上の距離がある。赤と青グループ同様に試験している者以外の全員が座って観戦しているせいでクアルくんを見つけられなかった。何とか見つけようと睨むように目を凝らして探し続ける中、隣に立っているコルルちゃんが指をさす。


「・・・もしかしてあれじゃない?」


「えっ、どれどれ?」


「ほらあそこ、1人だけ前屈している人・・・間違いなくクアルくんじゃない?」


 コルルちゃんが指摘した場所を見つめると、確かにそこには座位前屈をして身体をほぐしているクアルくんがいた。背中に生えた翼が訓練所の地面と同じ茶色のせいで同化して見えてしまって全く気付かなかった。彼はその後立ち上がり、ギルドが提供してくれた槍を持って今後は上半身の柔軟を始める。


「準備体操・・・ってことはまだ終わっていないみたいだね。どうする?近付いて応援する?」


「・・・ううん、ここにいよう。変に私たちに意識してクアルくんの試合の邪魔をしたくないから。」


 私の意見を納得したコルルちゃんはその返答に頷き、この場で静観することにした。ちなみに私たち2人とも武器や防具を装備しているため体が少し重いため、クアルくんの試合が始まるまでその場に座ることにした。距離があるけどここからでも十分見えるから特に問題はない。


「そう言えばコルルちゃんの言う通り、確かに厳しい試験だったね。」


「・・・?私何か言った?」


「ほら、グループ別に分かれる前に言っていたじゃん。“多分次に試験は思ったより厳しいかも”って。忘れたの?」


 それは先の休憩時間で冒険者のチョトさんと対面した後の事である。コルルちゃんはチョトさんに質問した後、何かを勘づいたかのような様子で私にそう話しかけた。今になってようやくその言葉の意味が理解できた。


「あぁ~・・・いや、確かに言ったけど、私が思っていたのよりかは・・・。」


「いやいや、十分厳しかったでしょ。逆にあれ以上って・・・一体どんな試験だと想像していたの?」


「参加者1人VS多数の冒険者での試合。」


 何それ恐ッ!?ファンタヘルムならではのリンチ方法!?すごいバイオレンスな想像をするようになったんだねぇコルルちゃん・・・。


「想像するとなかなかシュールな光景だね・・・だからあんなことを言ったんだ。」


「冒険者登録試験だからそのぐらい厳しめにされるのかと思って・・・まあ負けた私が言えたことではないけどね。・・・カナタちゃんならその状況でも勝てるんじゃないの?」


「いやいやいやいや、無理だよ?どう頑張っても瞬殺だから?!私でもそれは泣いて逃げるよ?・・・ヒット&アウェイ戦法ならワンチャンあるかな?」


「ふふっ、ちょっと勝てる自信が出てきているじゃん。カナタちゃんだった放火魔みたいに燃えている剣を振り回す光景が思いつくけど。」


「・・・それもありかな?」


 クアルくんの試合までまだまだ先だとそう予想した私たちはここで談笑を始める。傍から見たら微笑ましいガールズトークに見えるがその会話の内容は少し殺伐としている。それでも私たちはその話題で十分盛り上がった。そんな私たちの様子を親指の爪をかじりながら羨ましそう眺めるキーちゃんの視線に気付くことはなかった。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

投稿が遅くなり誠に申し訳ございませんでした。

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