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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第71話 更に訓練

諸事情により編集しました。

旧タイトル「私に説得は向かない」

 モンスター、それは地球でも聞いたとこある言葉。空想上の生物、非科学的存在、化け物、これらのまとめた意味で地球では使われていた。しかしここファンタヘルムには、モンスターという人ではない生物たちが存在する。ファンタヘルムの住民からのモンスターへの客観的な視線は地球の住民と変わらず、恐れられて、嫌われている。そんな化け物たちとこれから先、戦い自分たちの糧にすると私が言った瞬間、パーティーメンバーは嬉々とした表情を見せてはしゃぎ始める。


「うおおおお!ついにモンスターと戦えるのね!」


「マジでか、やった!こりゃ気合が入るわ!」


「僕、前々から戦ってみたかったんだ!楽しみだね!」


「うん、モンスター相手なら手加減しなくてもいいもんね!」


 あれ~・・・何この反応??予想ではぷるぷる震えながら“怖~い”とか“そんなの無理だよ~”とか言い出すのかと思っていたけど・・・何でみんなそんなに戦えることに喜んでいるの?みんないつの間にそんな戦いに飢えた子に育ちゃったの?みんないつの間にかサイコパスになっちゃったの?こんな軽い気持ちで大丈夫かなぁ・・・ま、まあ、怖気づいて戦う気力がなくなるよりかはマシ・・・なのかな?


「それでそれでカナタちゃん、いつからモンスターと戦えるの?」


 目をキラキラと輝かせたケマくんが問いかけてくる。取り敢えず動揺を隠しつつ答える。


「別に明日からでも構わないよ。さっきも言ったようにパパがその人たちに前もって話をつけてくれたから、水の日と風の日以外なら連れて行ってくれるって。」


「・・・何で水の日と風の日はダメなの?」


 今後はコルルちゃんが質問してきた。“その日以外なら”という言葉に何か理由があると祇年に思ったのだろう。そこに気付くとは流石だ。


「私たちって普段、街の外の砂漠をあまり見ないから気付かなかったけど、毎週水の日と風の日になると砂漠の環境が荒れるんだって。歩き慣れた大人なら大丈夫らしいけど、私たち子どもじゃ無理だし危ないからその日だけはダメって言われた。だから合同訓練の日を水の日と風の日にしたの。」


「へぇ~、合同訓練の日もちゃんとした理由があったんだ。」


「あぁ~、そう言えば母さんから聞いたことがある。」


「私も。普段、壁の外なんか見ないから気付かないよね~。」


 この街に生まれて早くも10年、それなのに私たちは周辺の環境である砂漠について全く知らない。そんなものがあるな程度で認識していた。父の言う通りもう少し外の世界に興味を持った方がいい。


「これでようやくあの門をくぐれるって事よね!?あぁ~楽しみだなぁ~!」


「モンスターと戦うって事は本物の武器を使うって事だよな!?前から本物の剣とか槍とか振ってみたかったんだ~!」


「街に出るって言うことは砂漠に入るんだよね?えぇ~キキラの街は魔石があるから涼しいけど、砂漠って想像以上に暑いんだよね?僕、熱いのは苦手だな・・・。」


「それも訓練の一環って事でしょ?環境になれるのも冒険者としても素質だと思う。それに2年もあれば、私でもみんなに追いつけるはず!」


 ようやくの実践訓練にメンバーたちはもう一度はしゃぎだす。モンスター対峙と言う殺伐とした内容さえなければ、年相応の楽しい会話に見える。そんなメンバーたちに悪いけど、私はまだ大事なことを1つ伝えていない。


「あ~・・・でもね、みんな。そのモンスターを狩りに行けるのは・・・1日1人までなの。」


「「「・・・えっ?」」」


 クアルくん、ケマくん、コルルちゃんはその言葉を聞いて呆然とした表情で固まる。恐らくみんなで行けると想定していたからだろう。それでは5日に1回、合同訓練にした意味がない。


「それとパパには昨日、私から“私たちが1人ずつでお願いをしてからじゃないと、連れて行かないでほしい”って伝えておいたから。このまま誰もその人たちの所に行ってお願いしに行かないと、誰一人モンスターを狩りに行けないよ。」


「な、何でそんなめんどくさい事を・・・!?」


 3人の表情は変わり、今後は戸惑いを見せる。私は頭が良くないけど、この状況になるのは何となくだけど予想がついていた。

 私たちはパーティーという枠のせいで、誰か1人、他の人にお願いをするまで決して行動しようとしなかった。子供だからか、それともパーティーに依存しているせいか、メンバーたちから誰かにお願いすることはなかった。今、思い返してみると、メンバーたちは常に私に頼ってばかりいた。こんな言い方をしているけど、決してメンバーたちが悪いわけではない。気付かなかった私の責任だ。だから私はあえて、自主練習という形でメンバーたちが自然に他者との交流を図れる機会をつくったのだ。


「え・・・知らない人と話すの?知らない人と狩りに行くの?1人で?・・・無理だよ・・・。」


「カナタちゃん、何でそんな事言ったんだよ。みんなでモンスターを狩りに行った方が楽しいじゃんか?」


「お願い、もう1回カナタちゃんのお父さんと話してみんなで行けるようにできないの?」


 メンバーたちは不安げな表情で私に要求してくる。無理もない、今まで他人と接しようとしなかったのだから。それを急に赤の他人にお願いしに行く、しかも一緒になってモンスターを狩りに行くなんて、少し酷は話だ。だけど今ここで、この問題を解決していかないと後々になって本当に取り返しのつかないことになる。具体的にどうなるのかハッキリ言って予想がつかない。だからこそ私はみんなを必死に説得する。


「さっきも言ったけど“話す程度でも人と仲良くした方がいい”って、これを機会に色々な人と話せるじゃない。それに流石に初対面の人と1対1何かにしないよ。最初はみんなで一緒に行って軽く挨拶をして、それから後日、各々でお願いしに行けばいいから。それにその人たちの仕事の貢献具合によってはお金ももらえるらしいよ。ほら、冒険者登録試験には結構なお金が必要だったでしょ。これだと自分で稼いだことになるし・・・だから・・・。」


 自分なりに上手く説得しているつもりだけど、誰一人不安げな表情から変えない。理由は明白、納得させられていないから。それでも私は諦めずに何度も説得に言葉は言い続けた。そんな時、またしてもキーちゃんが私の話を遮るようにメンバーたちに語りかける。


「みんな・・・もう少し真剣に聞いて。カナタちゃんが困っているでしょ。」


「・・・キーちゃんは、カナタちゃんの考えでいいの?みんなと一緒に居る時間が減って、知らない人と一緒なんて・・・嫌じゃないの?」


「・・・その事も、昨日カナタちゃんにうちに泊まって一緒に居たから知っていたよ。もちろんその後にね、カナタちゃんを説得しようと考えたの。“なんでわざわざ1人にならなきゃいけないの?今まで通りにみんな一緒に居ようよ?”って。でも、みんな知らないと思うけどその時のカナタちゃんの顔、至極真剣だった。1人で私たちのために考えてくれたことを、何も考えていない私たちが何かを言うのは、すごく・・・おかしいじゃない?」


「確かにそうかもだけど・・・。」


「・・・確かに私も最初は嫌だと思った。けど・・・昨日の夜、カナタちゃんと一緒のベッドで寝て・・・カナタちゃんを抱いて寝たからそれでもう吹っ切れた!!」


(((何言っているんだこの子・・・!?)))


 何言っているのこの子・・・!?このタイミングでのそのカミングアウトはいらないでしょ!?ってかあの夜、妙に抱きついて来るかと思ったら意図的な行動だったの!?知っている、あれのせいで私寝不足なんだけど?キーちゃんを起こすのは悪いと思ってずっと我慢していたんだよ?・・・あれがわざとだと思うとイライラしてきた・・・。


 キーちゃんの突然の発言に、私も含めメンバー一同は同じことを心の中で呟く。この後どんなことを言えばいいのか分からなくなり、訓練所はまた別に意味で静寂へと化した。キーちゃんのせいで私も言葉を失う。


「・・・ふっ、あははは!もう、キーちゃんったら!」


 ここで唐突にコルルちゃんが笑った。彼女が何もない場面で笑いだすのは珍しい。それ以前にこんな風に大きく笑い出すことすら滅多になかった。だけどそんな彼女の笑顔のおかげか、他のメンバーたちも表情が緩くなり始め、次第に笑顔を見せる。


「まあ、キーちゃんらしい納得の仕方だな。分かった、俺もカナタちゃんが考えてくれた事に従うよ。」


「そうだね!どうせあと2年間この街にいるわけなんだし、せっかくだから色々とやってみよう!まだ正直に言って不安だけど・・・頑張ろうっかな。」


「分かればよろしい!」


 ・・・本当に分からないな、子供の気持ちって。正直に言って精神なかみが大人の私には、さっきまでのみんなの心境がはっきりと理解できなかった。だけど、キーちゃんのちょっと何気ないふざけた言葉が、みんなの心を揺るがせてくれた。やっぱり当事者こどもには子供が対応した方が一番なんだね。・・・もしかしてキーちゃん、こうなるようにわざとあんなこと言ったの?だとしたら意外にキーちゃんってムードメーカーの質があったりして?なんにせよ、またキーちゃんに助けてもらえた。


「・・・じゃあみんな、これからの訓練は・・・これでいいんだね!」


 最後に私は恐る恐るメンバーたちに再確認をする。メンバーたちは同時に私の方へ振り向き、揺るがない瞳で頷く。各々まだ思うところがあるだろう。しかしメンバーたちは、己のため、そしてパーティーのためだと思い、何も聞こうとしなかった。


「みんな・・・ありがとう。じゃあ早速、今日の夕方にでもパパの仕事場に行って、モンスターの狩りに連れて行ってくれる人たちに挨拶しに行こうか!」


「夕方?」


「うん、その人たちは朝から街から出てモンスター狩って、夕方頃に帰ってくるんだって。だから今日はいつもより早く訓練を切り上げるよ!」


「あはは、今日はいつも通り訓練するんだ。」


「当然!自主訓練は明日からだよ!言っておくけどこれからの合同訓練は今まで以上に厳しくするから!まずは・・・はい、テスト!身体だけじゃなくて頭も頑張っていくよ!」


「ひぃぃぃぃ!?この訓練だけは無くしてほしかった・・・。」


 こうして私たちは冒険者登録試験に向けて、本格的な訓練を行うようになった。この時、私は理解した。このパーティーの中で一番成長しなければならないのは私だと。今まで通りパーティーを引っ張らなければいけない私が、誰よりも成長しなければならないと。この時から私は、力だけではなく、知恵も欲するようになった。



 訓練内容を改善したあの日から私たちのパーティーは大きく変わった。いや、正確には良い方向へ変われた。私と父の思惑通り、パーティーで一緒に居る時間を減らしたことによりメンバーたちは他者と関わる機会が増え、社交性やコミュニケーション能力を自然と育んだ。更には自分がしたいという“欲”も明確に判断できるようになり、誰かに頼らず自分だけで行動するようにもなってきた。

 またモンスターの狩りの件では、その後、私の言う通り各々で父の仕事場まで足を運び、自ら1人で頭を下げてお願いすることも多くなった。最初は人見知りのせいかなかなか声を出す勇気がなかったけど、次第に内気な気持ちがなくなり気楽に声をかけられるように。しかもモンスターの狩りに行くだけではなく、私たちのわがままを聞いてくれたお礼という事で、メンバーたち自ら他の仕事も手伝いたいと言い出すようにもなった。まさか周りの人の気を遣うなんて、これは嬉しい誤算だ。

 もちろん学問も怠ってはいない。合同訓練のたびに抜き打ちチェックでメンバーたちの学力をある程度まで保ち続けてきた。冒険者登録試験では筆記試験がある。どんな内容が出るのか調べようがない。だからある程度こたえられるように常識程度の知識をつけさせた。

 そして私は私で自主訓練という時間を使い、メンバーたちには内緒で父とある秘密の訓練をしてきた。冒険者登録試験で使う機会があるのかは分からないけど、きっといつかパーティーの役に立つと思う。

 メンバーたちは私の指示に従い、人と会話したり、モンスターを狩りに行ったり、お金を稼いだり、勉強をしたりして、時間の経過と共に成長していった。そして父が提示した2年という長い時間が経った。成長した私たちの姿を見て、父もその保護者たちにも認めてもらえ、私たち遂に冒険者登録試験に受けに行く許可をもらえたのだ。しかも祝いにと父たちから大量の資金を私たちのために用意して渡してくれた。感謝の言葉しか出ない。こうして私たちパーティー5人は、王都メラルフに向けてキキラの街から去った。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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