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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第70話 訓練内容改善

諸事情により編集しました。

星暦2023年、春の18日、雷の日、朝


 今日の寝起きは最悪だった。昨晩、私はキーちゃんがくれたベッドで早速使い就寝した。低反発のベッドでとてもよく眠れた。だけどそれも束の間だった。

 急遽うちに宿泊することになったキーちゃんは寝室にて私と同じベッドに寝ることになった。ベッドもそこそこ大きいから女の子2人でも普通に寝られた。問題はここからである。私と同時に就寝したキーちゃんは日頃の癖のせいか、寝相で私を抱き枕の様にいきなり抱きついてきた。当然それに起きた私はすぐさまキーちゃんを引き剥がそうとしたけど、体制のせいでもあり、なかなか引き剥がせなかった。しかもこれ以上騒々しくすると同じ寝室で寝ていた両親も起こしてしまいそうだったので、私は諦めてその状態のまま再度就寝する。しかしキーちゃんの寝相はここで終わらなかった。

 鬼人族特有の額の角が、キーちゃんが寝変えで体制を変えるたびに私の体に突き刺さる。深く刺さりはしなかったけどそれでもかなり痛かった。それが数回起きた時、キーちゃんを起こして寝る場所変えようと思ったけど、彼女を寝顔が可愛らしくてとても起こそうとする気が起きなかった。結局私はそのままで、寝ては起こされ寝ては起こされる連続で、気付けはすっかり朝になり顔は寝不足状態だ。

 現在私とキーちゃんは一緒に朝食を済ませてから家を出て、共に訓練所に向かっている。寝不足の私とは対照にキーちゃんはよく眠れたおかげかとても元気が良い。



 しばらくキーちゃんと共に歩くと訓練所に着いた。訓練所には私たちより先にクアルくんとケマくんが着いていて、準備体操を始めていた。やる気があって良い事だ。そして私たちが着いてほんの数秒後にコルルちゃんも到着、これで全員集合した。


「みんな、ちょっと訓練の前に話したいことがあるんだけど。」


 そう言って私はパーティーメンバーの視線を集めた。各々は自分がしていることを一旦止めて、私の方へ近づく。


「いったいどうしたの?」


「冒険者登録試験・・・受けるの2年後にしない?」


 キーちゃん以外のメンバーたちは愕然とした。当然の反応だろう。みんな早く冒険者になりたいという意思が強いのだから。そこからメンバーたちによる質問攻めが始まる。


「えっ、ちょっ、なんでなの!?昨日は頑張るって言ったばっかじゃんか!?」


「そうだよ!10才でみんな冒険者になろうって言ったじゃん!」


「・・・やっぱり私のせい?私のレベルが低いから・・・。」


 クアルくん、ケマくん、コルルちゃんは私に迫ってそれぞれ追及してくる。少しうるさく感じるけど、それほど私の発言に対して不満があるということ。私は一旦、メンバーを落ち着かせる。


「実は昨日、冒険者登録試験についてパパと相談したの。そしたらぐぅの音も出ない正論を言われて・・・説得されちゃった。それでね、あと2年、ここに残って訓練を続けるって言う話になったの。」


「「「2年も!?」」」


「うん、勝手に決めてごめんね。」


 メンバーたちの不機嫌な顔になる。独断で勝手にそう約束してしまったのだから当然だ。本当に申し訳がないと思う。これじゃあ、前世で私を解雇した上司と同じだ。訓練所は一気に静寂と化し、気まずい空気になる。


「・・・ねえみんな、あの時の事を覚えている?」


「「「「・・・?」」」」


 静寂を切り捨ているように先に言葉を発したのはキーちゃんだった。少し意外だ。私たちはキーちゃんの何を問いかけているのか理解できず、返答できなかった。


「ほらあれだよ。去年の秋、私たちが冒険者になった時の当面の目標のこと。」


 私たちは一斉に頷く。当然だ、忘れるわけがない。どうやら他のメンバーもあの時の誓いは覚え続けてくれていたようだ。

 それは去年の秋、いつも通りの訓練後、私はメンバーたちに冒険者になった後、具体的にどうするのか問いかけたことがあった。いうなれば目標だ。武器や防具を集めて強くなるのも良し、ファンタヘルムの絶景スポットに足を運ぶのも良し、貯金して老後に備えるのも良し、ある程度歳を重ねたら恋人をつくるのも良し、返答は何でもよかった。ただ純粋にメンバーたちの知りたくなって私は問いかけた。

 しかし返答は意外にもすぐに返って来なかった。全員が両腕を組みながら思案を巡らす。パーティー結成前は各々で幼稚ではあったけど、ちゃんとした目標があったはず。メンバーたちは訓練していくにつれて各々の目標が変わってしまい、それを言葉で上手く表現できない様子だった。私の問いかけから数秒後、逆にケマくんから“カナタちゃんは何かあるの?”と質問された。まあ聞かれたのだから当然聞き返してくだろう。だけど私の冒険者になった後の当面の目標は当時すでに決めていた。

 それは、私たちの訓練のためにあらゆる道具を用意してくれた保護者の皆さんに恩返しすること。正確には報酬の一部を返上することである。親の立場からしたら子供からお金をもらうことは嫌かもしれないけど、今の今まで私たちの意思を尊重して自由にさせてくれた。例え拒んだとしても嫌でも受け取ってもらう。私の中でそう誓っていた。

 私の目標について話すと、メンバーたちは私の考えに賛同してくれて“自分たちも当面の目標はそれが良い!”と言い出した。みんなもみんなで保護者の皆さんに感謝していた。そしてこの時、私たちは“自分たちのために使ってくれたお金以上を、冒険者の仕事で稼いで返そう!”ということにした。今思えばこの時から、メンバーたちの訓練に対するやる気が上がった。


「それがいったいどうしたの?」


 今後はケマくんが問いかける。今さら再確認するほどではないと思う。


「私ね、昨日カナタちゃんの家に泊めてもらったんだ。だから私もカナタちゃんとカナタちゃんのおじさんの話しもその場で聞いていたの。おじさんはね、意地悪で2年って言う時間を言い出したんじゃないの。ちゃんと考えがあったんだよ。」


 そこからキーちゃんは私の代弁で、私と父との会話をメンバーたちに分かりやすく、一言一句すべてを話してくれた。本来私が言うべきだろうけど、全てキーちゃんが話してくれた。メンバーたちは昨晩の私たちの会話を聞いて、再度私の方を向く。


「そうだったんだ・・・カナタちゃんとカナタちゃんのお父さん、ちゃんと私たちのこと考えてそう決めたんだね。色々と勝手なことを言ってごめんね。」


 コルルちゃんを初めクアルくん、ケマくんが私に頭を下げる。まさか逆に頭を下げられるとは思いもしなかった。


「ううん、私の方こそ本当にごめんね。私たちの事なのにみんなに何にも相談もせず勝手に決めちゃって。」


 メンバーたちが優しくて本当に良かった。全員私の考えに賛同してくれるようだ。これで心置きなく私と父の案を言い出せる。


「それじゃこれからあと2年間、同じ様に訓練していくって事でいいのか?」


「ううん、実は訓練の事についても昨日パパと相談したの。それで、パパが考えてくれた案の方が確実に全員のレベルが上がると思うから、これからはそっちの訓練方法にする。」


「へー、どんな訓練なの?」


 昨晩の食卓で父は、これからの訓練について長く語ってくれた。流石はこの世界で長く人生を歩んでいるだけあって参考になった。私はメンバーにそれをまとめて分かりやすく説明する。


「まず最初に、私たちがこうやって集まって訓練するのを5日に1回にする。」


 最初の改善点を言うと、見事に全員驚いた表情を見せる。私の横にいるキーちゃんも同様に。これは私一人で考えていた事だから彼女にも話していなかった。


「私たちって思い返せばいつも一緒にいるよね?でもそれって逆に言えば、私たちは私たち以外の人と仲良くないよね?」


 訓練を開始して3年、みんな毎日のように訓練所に集めって私の指示に従ってついて来来てくれた。休みの日なんてその前の日の気分次第で、ほぼ毎日のように来てくれていた。だけどそれが逆に、みんなの道徳やモラルを養う機会を奪っていた。


「・・・えっ、それって何か問題あるの?」


「ああ、そうだよな?俺は別に無理して他の人と仲良くする必要ないと思うけど?」


「私も別にみんながいればそれでいいけど・・・。」


 メンバーたちの反応がこれである。完全にパーティーという枠に依存している。これじゃあ、いざ1人になった時、個人で考えてどうすればいいのか上手く行動できない。まさかみんなためだと思ってしてきた事が、こんな残酷な現状を作ってしまうとは。


「いいみんな、私たちはパーティーだけど以心伝心じゃない。ちゃんと1人1人個性を持った人なの。パーティーメンバーとの仲も大事だけど、他に友達を作ったり、話す程度でも人と仲良くした方がいいと思う。視野を広げる事で、私たち5人だけじゃ知ることが出来なかった事が、誰か1人を通して情報を得られることにもなるから。」


 後半あたりから少し友人作りの目的からズレているような気がするけど、特に問題はないだろう。もしメンバーたちがこれを実行してくれれば、何かを固執することなく、正常に自分たちで物事を判断して行動することが出来る。私としてもメンバーたちとも距離をとってしまうことは、寂しく感じてしまうけど仕方がない事。私がある程度言い終わるとメンバーたちは、今後は呆然とした表情で私の方を見ている。


「どうしたの?」


「えっ、いやっ、その・・・カナタちゃんってこういう事に関しては頭のいいことを言うんだなって・・・。」


「俺もそう思った。この中で一番世の中について知らないくせに、言うことは達者なんだよなぁって。」


「本当にすごい、見直しちゃったよ、カナタちゃん!」


「流石はカナタちゃんだね!」


 おぉ・・・ここまで頭の悪い子認定されていたとは・・・つらっ。これも日頃の発言のせいか・・・やっぱりもう少し常識について学ぼう。でもまあ、みんな理解してくれたみたいだし、最初の説得は成功。次は大丈夫かな?


「でも訓練は5日に1回って逆にそれ、訓練って言うより休みじゃないの?それにそんなに間があったら身体が鈍っちゃうよ。」


「べつに残りの4日間は休みというわけじゃないよ?ただ出来れば、さっき言ったように友達を作るだけじゃなくて、自主訓練もしてほしいかな。普段私たちが合同でやる訓練とは別に、各々に向いた訓練法を。合同で訓練する日はその自主訓練のせいかと、お互いの実力の確かめ合いってところかな。それ以外はどう過ごすのかはみんなに任せる。」


「自主訓練?各々に向いた訓練法?それって具体的に何をすればいいの?」


「それは自分で考えて。“考えて自分たちで強くなる”・・・これも一種の訓練でもあるから。」


「う~ん・・・僕、考えるのは苦手なんだよね~。・・・あれ、もしかしてこの訓練が今までで一番難しい?」


 早速ケマくんを始めにメンバーたちがどうすればいいのか思案を巡らす。真剣に考えるメンバーたちを傍観して、気持ちを高ぶらせた。


 これだ、これなんだよ!私はみんなのこんな姿が見たかったんだ!ああ、こうして自分たちで何かを考えるなんて・・・なんか感激!


「それじゃあみんなが集まる日、合同訓練する日はいつにするの?」


「水の日と風の日にしようと思う。丁度4日間ずつで離れているけど、どうかな?」


「問題はないけど・・・何でその日になの?それにも理由があるの?」


「それは順を追って説明する。で、ここからはパパが考えてくれた案だけど、パパの仕事の関係者に元冒険者と冒険者志願者が大勢いるの。その人たちは仕事でキキラの街周辺の魔獣を討伐するんだって。その時に、私たちも同伴させて魔獣の狩り方を教えてくれないか、パパが前もってお願いしてくれていたんだ。」


 話の内容に察したメンバーたち。その眼はあからさまにキラキラと輝いている。


「えっ、それってつまり・・・。」


「そう、これからは本格的なモンスターでの対戦訓練をしていく。」

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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