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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
69/96

第67話 冒険者登録について

諸事情により編集しました。

星暦2023年、春の17日、氷の日、夕方


 今日の訓練は久しぶりということもあり、普段より軽めなメニューにしておいた。いきなりハードな訓練をして怪我でもしたら大変だから。まずは脳のトレーニングという事で軽く小テストから始めて勉強をして、念入りに準備運動をしてから街を1周だけをパルクールをして、訓練所に戻り防具を身に付けて模擬試合を行って今日の訓練を終了させた。時間的にいつもより早く切り上げてしまったけど、まあこんなものでいいだろう。明日から徐々に訓練を厳しくしていけばいい。現在、訓練が終えてみんなで道具の手入れと後片付けている。


「はぁ~にしても、これ・・・どうしよう。」


 私は自分が使った木刀を布で拭きながら、キーちゃんからのプレゼントを見つめながら、どうやって持ち帰ろうか悩んでいる。私の筋力ではキーちゃんの様な持ち方はできない。かと言って引きずって帰ることもできない。よし、ならばキーちゃんに頼んで持って帰ってもらおう。ここまで持ってきてもらって申し訳ないけど、それしか方法が思いつかない。


「なあなあ、お土産に押し負けたカナタちゃん。」


「次それを言ったらその羽燃やすよ?」


 私の背後からクアルくんが声をかけてきた。冗談を混えた挨拶に私も冗談のつもりで言ったのだけど、何故かクアルくんは自身の羽を小さく折りたたんで隠した。今改めて見るとクアルくんの羽はとてもよく燃えやすそうだ。本当に燃やされると思ったのだろう。


「それで、いったい何なの?」


「さっきケマに聞いたんだけど、カナタちゃん、勇者様が来ることを知らずにわざわざ王都バースに行ったって本当?」


「うん、そうだけど・・・。」


「バカだね~。」


「はぁ?」


 この子なに、喧嘩でも売っているの?本気でその羽燃やしてやろうか?・・・いやまあ、否定はできない。実際勇者が来ること事態が大事なのだろうし、それを知らなかった私は確かにバカだね。でもクアルくんに言われるとなんか腹が立つ。


「嫌味でもいいに来たわけ?・・・じゃあクアルくんは勇者様が王都バースに来ることは前から知っていたの?」


「うん、結構前にね。有名な話題だったからてっきりみんなも知っているものかと思って何も言わなかったよ。まあそれ以前にカナタちゃんの訓練がハード過ぎて疲れしまって、言う気力がなかったっていうのもあるけど。」


 そこまで厳しかったかな?訓練中のみんなは楽しそうにしていたからてっきり余裕かと思って少し厳しめにしていたつもりだけど・・・もしかしてみんな内心では嫌々だった?・・・少し訓練内容を改善してみよう。


「じゃあなんでクアルくんは王都バースに来なかったの?キーちゃんもそうだし、王都メラルフにも何か特別なイベントでも・・・。」


「呼んだ~カナタちゃん?」


 私とクアルくんが話している中、突如キーちゃんが横から割り込んできた。先までコルルちゃんと話していたはずだが、どうやら私の口から自身の名が出てきて反応したらしい。1人置いて行かれたコルルちゃんは何とも言えない表情でこっちを見つめている。


「びっくりした~!驚かさないでよ!」


「えへへ、つい反応しちゃって。」


「ついって・・・まあ丁度いいや。ねえキーちゃん、少し聞きたいことがあるんだけど。」


「なに?」


「キーちゃんは王都バースに勇者様が来ることは知っていたの?」


「当り前じゃんそんなこと!バカにしないでよ~!」


 キーちゃんはいい笑顔でそう言う。どうやら勇者の話題は当たり前らしい。彼女の返答に私は自分が少し情けなくなった。コルルちゃんの言う通り少しは世情について学ぼう。


「え、えっとねえ・・・じゃあ何でキーちゃんは王都メラルフで神の恩恵を受けたの?勇者様に興味とかなかったの?」


 私の記憶が確かなら2人の冒険者になりたいという動機は“カッコいいから”と“色々な物や場所を見てみたい”だったはず。私が見た勇者は文句がつけようがない程カッコよくて、幻想的な魔法を見せてくれた。これだけでも2人が勇者を見に行く理由としては十分なはず。何で前もって知っていたはずなのに行こうとしなかったのか前から気になってはいた。


「別に勇者様に興味がないわけじゃないよ?」


「じゃあ何で?」


「だって王都メラルフはここから一番近いし、なにより冒険者ギルドの本部があるからだもん。私とクアルくんはそれが見たかったから・・・みんなもてっきり来るものだと思っていたよ。」


「冒険者ギルドの本部?」


 また知らない単語が出てきた。ここまで無知だともう恥すら感じなくなってきた。もうここは素直に教えてもらおう。


「・・・冒険者ギルドの本部ってどんなところか、教えてもらえる?」


「いいよ!」


 キーちゃんは満面の笑みで返答してくれた。やっぱりキーちゃんはいい子だ。私の対する異常な固執を覗けば。

 ある程度の道具の手入れと片付けを終えた後、私とケマくんとコルルちゃんの王都バースに行った3人は王都メラルフに行った2人から、冒険者ギルド本部はどういった施設だったのか話を聞いた。


「まずねえ・・・建物が白くて大きかった。」


「「「うんうん、それで?」」」


「それで中はねえ・・・冒険者の人でいっぱいだった。」


「「「・・・だろうね、それで?」」」


「後ねえ・・・何か色々とすごかった。」


「「「・・・。」」」


 キーちゃんは懸命に建物を説明してくれたけど、表現が曖昧過ぎて私たちは全く理解できなかった。学力という面ではキーちゃんはコルルちゃんの次に頭が良い方だ。そんな彼女が言葉に迷うほど、2人が言った冒険者ギルド本部というのがすごかったのだろう。


「・・・なあクアル、クアルの感想として冒険者ギルド本部どうだった?」


 ここでケマくんがクアルくんに話題を振る。せっかく2人が行って来てくれたのだ、せめてもう少し何か情報が欲しい。


「ん?えっとなあ・・・とにかくすごかった。」


「「「それは聞いた。他には?」」」


「・・・鳥人族がいた!」


「「「この街にもいるでしょう?・・・他には?」」」


 私、ケマくん、コルルちゃんは同時に同じことを言い返す。若干呆れてきた。キーちゃんとクアルくんは両腕を組みながら懸命にその日の出来事を思い出している。それほど前ではないはずなのに何をそんなてこずっているのだろう。


「あっ、そうそう!地下にデカい訓練所があった。」


 おっ、ようやくまともな情報が出てきた!へぇ~、ギルドって事務処理とかするだけのイメージだったけど、地下に訓練所があるんだ。冒険者の育成という事で訓練所が設けられているのかな?それにしてもデカいって・・・普通は広いでしょ?


「“広い”じゃなくて“デカい”なの?」


「うん、デカかった!」


「ああ~、確かにデカかった!」


 コルルちゃんも私と同じ言葉の綾だと思い指摘する。しかしクアルくんだけではなくキーちゃんもデカいという表現を肯定した。私とコルルちゃんはたちまち首を傾ける。一体どういう訓練所なのか気になってきた。


「あとはそうだなぁ・・・図書館があった!」


「へぇ~、どんな本があったの?モンスターについてとか?それとも世界の歴史についてとか?」


「興味なかったから部屋に入らずそのまま出た!」


 う~ん、このおバカ!?冒険者のギルドの本部がわざわざ置いてあった本だよ?絶対に重要な書物とかおかれてあるじゃん!一目くらい見てから出てよ!少なくとも私は興味あったのに。・・・いや私も勉強は嫌いな方だから、実際私が行ったとしてもそんなに図書館にはいなかったと思う・・・。


「なんかさあ~、もっと具体的に説明できないの?内装はとても清潔だったとか、ギルド職員の仕事の雰囲気がとても誠実していたとか?」


「じゃあ逆に聞くけど、カナタたちは王都バースで勇者様を見たんだろ?その感想を教えてよ。」


「うんうん!」


 ここでクアルくんとキーちゃんが反発してきた。いいだろう、私たちの方がより具体的に伝わるように、勇者がどんな雰囲気だったのか教えてあげよう。


「まず・・・気遣いのできる良い人だった!」


「圧がすごかった!」


「声がカッコよかった。」


「「勇者って呼ばれるくらいだからそうだろね。それで?」」


 おっとこれじゃあ伝わりきれないか。いや、すでにある程度は予想と想像はしているのだろう。だけど安心して、まだまだ言えるから。


「剣と鎧がカッコよかった!」


「魔法がすごかった!」


「顔がカッコよかった。」


「「うん、知っている。王都メラルフの新聞で見たもん・・・それで?」」


 2人はまだ満足してないようだ。まさか2人が王都メラルフで新聞を読んでいたとは予想外だ。普段から本を読む習慣をつけさせている成果がこのタイミングで出た。それにしてもヤバい、言葉が思いつかなくなってきた。


「・・・男の人だった。」


「獣人族だった!」


「若い人だった。」


「「・・・。」」


 2人は何も言い返さず、ただ私たちを見つめている。言いたいことは分かる、それももうすでに知っているのだろう。キーちゃんとクアルくんは一度お互い顔を見合わせる。


「ねえねえ、もっと具体的に教えてくれな~い?勇者様の事?私たちと違って実際に見に行ったんでしょ~?」


「そ~そ~、もっと詳しく聞きたいな~?少なくとも俺たちが知らないことをさ~?」


 今後は2人そろって私たちを煽ってきた。同時に首を傾けてこちらをのぞき込むその表情はかなり憎たらしい笑みを見せる。この2人、キキラの街から王都に向かう前は少し険悪な雰囲気だったはずなのに、いつの間にか仲良くなっている。嬉しい事なのだけど、そのせいでウザさが倍増している。


「ま、まあ、勇者様も冒険者ギルド本部も私たちが冒険者になった時、いくらでも見られる機会があると思うし、今後の楽しみ・・・って事で?えっと・・・ごめんね?」


「・・・それもそうだね!でも勇者様ってそんなほいほいと人前に出てくる人だっけ?」


「少なくともイースト大陸の勇者様は何かと忙しいらしいから、滅多に人の前には出て来ないと思うよ?」


「へぇ~じゃあ、あの時、見られたのは本当に運がよかったって事!?僕、王都バースに行ってよかった~!」


「そっちはどうだったのかは知らないけど、王都メラルフもなかなか良かったぜ!ギルド本部もそうだし、街の雰囲気や食べ物屋とか!」


 少し強引ではあったけど何とか話題を逸らすことが出来た。子供だから単純なのか、それともこのメンバーばから容易に逸らさせられたのか、どっちにしても助かった。


 それにしても、もうちょっと冒険者ギルド本部について色々と聞きたかったな~。いや、調べてきてほしかった。どうやったら冒険者になるとか、冒険者に必要な技能とか。まあ2人も、もともと神の恩恵で行っていたわけなんだし、そこまで贅沢は言えないか。ずっとみんなの訓練で考えていなかったけど・・・そろそろちゃんと調べておいた方がいいかな・・・。


 冒険者、私たちはみんなそれをよく耳にするけど、実際にはよく調べていない。だからよく知らない。今そのことに気付いているのは私だけ。前世の記憶があるという理由でお姉さん気取りをしていた。そんな私にみんな今まで信じてついて来てくれた。みんなの信頼に応えなきゃいけない。私は私なりに頑張っていかなければならない。


「それで王都メラルフにはカッコイイ剣や防具が沢山売って・・・ああっ!!すっかり忘れていた!」


 しばらくみんなで談笑していた最中、クアルくんが何かを思い出したのか急に大声を出す。全員がその声に驚き彼の方を向く。


「どうしたの急に?とうとう本当の鳥頭になったの?」


「違うわい!えっと確か・・・ああこれだこれ!ほい、カナタちゃん。」


 そう言いながらクアルくんはポケットの中から1枚の紙を取り出す。とてもしわくちゃだ、最初はゴミかと思った。私に見せたかったものらしいけど、恐らく朝から訓練中ずっとポケットの中に入れていたのだろう。普通はすぐに気付くと思うのに。クアルくんは付いてしまったしわを、懸命に紙を広げて読める程度に直して、私にその紙を手渡す。


「なにこれ・・・って『冒険者登録について』ッ!!」


「いるかな~って思ってギルド本部に行った時にギルド職員さんから貰ったんだ。俺からのお土産ってことでいいかな?」


「グッジョブクアルくん!!」


 私の中でクアルくんの評価がかなり上がった。丁度今、私が欲しかった情報を持ってきてくれたのだから。これはむしろキーちゃんのプレゼントより嬉しい。だけどこれは声に出さないでおこう。キーちゃんがどういう反応をするのか、本当に予想ができないから。私はクアルくんから紙を受け取ると、その書かれた内容を読む。


==============================

『冒険者登録について』

冒険者として活動するためには、各王都に設備されている冒険者ギルドにて、毎年執り行われる冒険者登録試験に合格していただけねばなりません。我々冒険者ギルド本部は、皆さまの生命の安全を第一に考えておりますゆえ、試験では冒険者としての適性があるのか厳しく査定させていただきます。冒険者登録試験についての詳細は以下に記しております。我々冒険者ギルド本部は“有能な人材”を心よりお持ちしております。


『冒険者登録試験の日程』

・星暦2023年、夏の15日、土の日

・場所:各登録した冒険者ギルドにて、夏の15日の6時までに来ること。到着後、ギルド職員の案内に従い速やかに移動せよ。

・試験は24時間(丸一日)執り行う。

*6時以降になっても到着されない場合、その者は不参加とさせていただきます。


『冒険者登録試験の申し込み締め切り』

・星暦2023年、夏の10日、無の日、23時まで

・“各王都の冒険者ギルド”へ申請した者のみ、試験に参加できる。

*指定の場所以外の冒険者ギルドへ試験の申し込み、締め切り日以降での申し込みは無効とさせていただきますのでご注意を。


『冒険者登録試験の参加条件』

・参加費用として1人40万ストン。ギルドへ申請する際にお支払いしていただきます。

*なお、一度支払った資金は払い戻しが出来ませんのでご注意を。

・年齢10歳以上(神の恩恵を受けた者に限る)及び、以下の2つの条件のどれかに適した者のみ参加を認める。登録の際、ギルド職員にステータスウィンド(「スキル一覧」または「熟練度一覧」だけの表示でも構わない)を提示してもらう。

1、ステータスウィンドのスキル一覧、種族スキルを除き、2つ以上のスキルを取得してあること。

2、ステータスウィンドの熟練度一覧、3項目以上レベル10以上であること。

*なお、エクストラスキルを取得している者の場合、1と2の条件を無視して参加をよしとする。


『冒険者登録試験内容』

・筆記

・実技


『持ち込み』

・試験を行う際に必要な道具等は全てギルドが用意します。個人で必要な道具等があれば、事前にギルド職員に伝達して許可が下りれば持ち込みはできます。しかし、その道具等の使用による試験中の不正行為が発覚した場合、強制的に試験は不合格とする。

==============================


 うわぁ、思っていたよりガチじゃん・・・。“6時まで到着”に“試験は24時間”に“強制的に不合格”・・・何かもう読んでいるだけで疲れてきた。えっ、なに、冒険者登録って国家資格みたいなものなの?いやまあ命の関わる職業らしいから納得はできるけど。“10歳以上”ってことは一応私たちも今年から参加できるってことよね?だけどこれ・・・私たち合格できるの?読むかぎり試験もしっかりしていそうな感じだし。いやそれ以前に参加できるかしら・・・意外と条件が厳しい。


「ねえねえカナタちゃん、私たちにも見せてよ。」


「クアル、お前も見たんだろ?なんて書いたあったの?」


「文字が多くて途中から読むのやめた!・・・別に読めなかったからじゃないからね?本当に面倒くさかっただけだらけね?」


 私が夢中に読んでいる中、メンバーたちも気になるのか何度もその内容について伺ってくる。もちろんメンバーにも教えるつもりだ。メンバー一緒で冒険者になるのだから、情報をできるだけ共有したい。だけどその前に確かなければなわないことがある。


「ねえみんな、お願いがあるんだけど・・・みんなのステータスウィンド、今ここで見せて!」


 ステータスウィンド、それはいわゆる個人情報。この世界では他人のステータスウィンドを見せてもらうようにお願いするのは失礼な行為であることは、世情に疎い私でも十分知っている。子供でも嫌がることだ。それでも私はこのパーティーの現段階の状況を把握したいため、勇気を振り絞ってメンバーにお願いをする。その直後、一瞬の間が開いた。メンバーはお互い顔を見合わせてから、返答してくれた。


「「「「いいよ~!」」」」


 メンバー一斉に、何の疑いもない真っ直ぐな眼で、私の無茶なお願いを承諾してくれた。私は本当に、いいメンバーに恵まれた。今日この瞬間、これまで以上にそう感じたことはないだろう。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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