第63話 説教からの驚愕
諸事情により編集しました。
大衆食堂『チョーダさんの御馳走へ』、内装は飲食店にしては清潔でとても居心地がいい。私たちが入店してしばらく経った時には全てのテーブルが埋まり、お店は満員御礼の大繁盛している。客は年に1回の記念日である神の恩恵だからなのか、全員がとても楽しそうに飲み食いしている。私もこの場の空気に流されてはしゃぎたい気持ちなのだが、今はそういうわけにはいかない状況になってしまった。
「カナタちゃん・・・世情ついて疎い事は仕方がないとして、勇者様の話しは世間一般的な知識なんだよ?私たちのために色々と尽くしてくれるのは嬉しいけど、もう少し自分のために勉強とかしてください。」
「・・・はい。」
あまりの世間知らずである私は今、コルルちゃんに説教されている。パーティーの中で一番しっかりとしている子だとは思っていたけど、まさか教える側だった私を説教するほどまで成長するとは思いもしなかった。現在、箸の手を止めて淡々と責められている。
うぅ、まさかこんなことになるなんて・・・。別にいいじゃん、少しくらい知らなくて。日本では少しおバカな女の子の方が可愛いって言われていたんだよ?いやファンタヘルムでそれを言っても仕方がないか。何か段々自分がみっともなく感じてきた、早くこの説教何とかしないと。・・・ってここの子、こんなキャラだったっけ?もっとおっとりな性格だと思っていたけど・・・。
「ね、ねえ、コルルちゃん・・・話は後でもいいじゃない?今はほら、食べ物があるんだし、冷める前に食べちゃおうよ、ね?」
「・・・話を逸らそうとしていない?」
意外と鋭いなこの子。いや、私の誘導があからさま過ぎたのかな?
「そ、そんなことないよー!ご飯が冷めたら勿体なーと思って・・・。」
「ご飯ならケマくんが全部食べてくれたよ?」
「えっ?」
そう言われて今一度テーブルの上を見てみると、皿の上にはすで全ての料理がなくなっていた。今後はケマくんの方へ振り向くと、彼は膨らんだ自分のお腹を撫でながら満足そうな表情を浮かべていた。先ほどから急に喋らなくなったと思えば、どうやら私たちが話している間ずっと1人で黙々と食事をしていたようだ。よく食べるな~と思いそれほど気にしていなかったけど、まさか全部食べられるとは思いましなかった。
「ふぅ~、大満足・・・げっぷ。」
「ケマくん何してくれてんの!?急に喋らなくなったと思ったら、私が残しておいたものまで全部食べちゃって!」
「えっ、もう食べないから残したのかと思って・・・ゴメン。」
「ゴメンじゃないよ!えっ、ちょっ、えー・・・本当に全部食べちゃったんだ・・・。」
ケマくんは大食漢だった。まさかこのタイミングでそれが披露されるとは思わなかった。美味しいと思い残しておいた料理まで食べられて私は少しガッカリとする。
「はぁ~・・・。」
「えっと・・・もっかい同じ物を頼もうか?」
「もういいよ。お腹も膨らんできたし、次頼んでも食べきらないよ。」
「えっと・・・本当に、ゴメン。」
はぁ~、今日はせっかくの記念日なのになんかついていないなぁ。訳も分からずに急に走らされて、何か後ろから押されて潰されそうになって、挙句にパーティーメンバーから説教される。せっかくの神の恩恵なのに、何か気分悪く・・・あっ!!
「そうよ、今日は神の恩恵だったじゃない!」
「ど、どうしたのカナタちゃん、急に大声出して・・・!?」
「・・・やっぱり料理注文する?」
コルルちゃんの反応は分かるけど、ケマくんのはボケているのかな?私、別にそこまで食べ物が好きってわけじゃないよ?ケマくんの眼に私はどういう風に映っているのか気になるけど・・・まあいい、それより早く2人に聞いてみよう。
「2人とも今日は神の恩恵よ!今日から私たち、ステータスウィンドが使えるようになったんだよ!」
「あぁ、そういえばそうだったね!」
「今日色々あって忘れていた!」
どうやら2人も私と同様に今日がどういった日なのか忘れていたようだ。そう、今朝、私たちは教会であの怪しい白いお菓子を食べたことにより、両親や大人たちの様にステータスウィンドが開けるようになっているはず。
「ねえねえ2人とも、せっかくだし同時に出して見せ合いっこしようよ。」
「おっ、いいね!誰がどの位多く乗っているのか見比べようぜ!」
「ふふっ、何かいざ出すと思うとなんかドキドキしてきた!」
2人は乗り気で承諾してくれた。やはり2人もステータスウィンドが開けることを楽しみにしていたようだ。
「誰の合図でやる?」
「やっぱりここはカナタちゃんでしょ?」
「オーケー。それじゃあ“せ~の”で一緒に開こう!いくよ・・・せ~の!」
ステータスオープン!
心の中でそう演唱すると、突如私の目の前に半透明の板が出現した。これが私の現時点でのステータスだ。
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カナタ・タユーリ
種族:人族
性別:女
状態:健康
『称号一覧』
『適性魔法一覧』
『スキル一覧』
『熟練度一覧』
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すっごい!これが私のステータスウィンド!?
初めてのステータスオープンに私は思わず絶句した。夢にまで見た幻想的な出来事に感動して、その感情は無意識に表情に浮かび上がっていた。
称号一覧に適正魔法一覧、そして熟練度一覧・・・パパやママとの一緒で色々なものが表示されてる。確か意識するとその一覧の詳細も表示してくれるんだっけ?よ~しそれじゃあ、まずは称号一覧から!
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『称号一覧』
・転生者
・神との対面者
・平民の娘
・駆け回る者
・見習いの火魔法使い
・若手を導く者
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私がステータスウィンドの称号一覧を意識すると、ステータスウィンドはその詳細を開きなおした。最初は多くある称号に対して私は喜びを見せるが、それも束の間、すぐにステータスウィンドに対して驚愕する。
おお、私って意外に多くの称号を持っていたんだ。ふふ~ん、どれどれ・・・ん?!ちょっと待って何この称号!?
私は“『転生者』と『神との対面者』という文字を目にした瞬間、すぐにステータスウィンドを閉じた。今の今まで完全に忘れていた。私は転生者、他の人とは違って前世の記憶を持っている者。そしてステータスウィンドはその魂の現時点の状態表示してくれるもの。転生に関連する情報が載っているのも当然であった。
ヤバい・・・どうしよう。多分あれって、すっごく希少な情報だよね?もし誰かに見られていたら・・・ん?問題になるのか・・・な?問題・・・かな?私が知らないだけで案外この称号もそんなに希少じゃないのかも?・・・ヤバい、本当にどうすればいいのか分からなくなってきた!?
「・・・ねえ、カナタちゃん。」
私が必死に思案を巡らしている時、突如ケマくんが訪ねてきた。もしかして彼にあの称号が見られたのかもしれない。
「どどど、どうしたのケマくん?!」
「何をそんなに焦っているの?それよりカナタちゃん、カナタちゃんは何でステータスウィンド閉じているの?」
「いや、これは、その・・・ってそういうケマくんだってステータスウィンド閉じているじゃん!?」
ケマくんの方を振り向くと彼も私と同様にステータスウィンド閉じていた。何故ケマくんも閉じているのか理解できないけど、私は何とか誤魔化そうとそれを指摘する。
「・・・?何言っているの?ちゃんと僕の目の前で開いているじゃん。」
「・・・どこにあるの?」
そう言ってケマくんは自分の前に指をさすけど、そこには何もない。一応ケマくんの周りをしっかり確認したが、それでもステータスウィンドらしきものはない。
「ほら、ここにあるじゃん!・・・って、コルルちゃんも何でステータスウィンドを閉じちゃっているの!?」
「えっ?ちゃんとここにあるけど・・・私からは2人ともステータスウィンドを閉じて見えるけど・・・。」
ケマくんにつられて私もコルルちゃんの方も向いて見ると、彼女もケマくん同様にステータスウィンドらしきものはどこにも見当たらない。話しがかみ合わず全員は一瞬困惑した。
「カナタ、さっきから何騒いでいるんだ?」
隣の大人たちのテーブル席から父が話しかけてきた。丁度いい、分からないことは大人に聞いてみよう。
「それがねえ、今みんなでステータスウィンドを見せ合いっこしようって話していたんだよ。だけど2人はちゃんとステータスウィンドを出しているって言っているけど、私には何も見えないのよ。パパは2人のステータスウィンド、見えている?」
「いいや、俺にも何にも見えていないぞ。みんなたぶん、ステータスウィンドを周りの人に見えるように意識していないからじゃないのか?」
「えっ、どういうこと?」
「ステータスウィンドってのは他の人に見られたくない時は自分だけに、他の人に見せたい時は相手に見せるってイメージして表示すると、そう思った通りにできるんだ。知らなかったのか?」
全く知らなかった。何なの今日は、初めて知ることばかりじゃない!?あれ、もしかして私・・・本当におバカなの?
この世界は私が思っていた以上に何かと都合が良い世界だ。先の私のステータスウィンドを表示する時、当然そんなことは一切意識していなかった。ということはこの2人に、周りの人たちには私のあの2つの称号は見られてはいないってことになる。私は張っていた気が緩み、安堵のため息をつく。
ふぅ、とりあえずよかった・・・多分見られてはいなかったんだよね?・・・やっぱり隠しておいた方がいいのかな?希少じゃなかったらなかったらで、またその時にみんなに話せばいいし。うん、これで1件落着・・・かな?
「へ~、そうだったんだ!ありがとうございます、カナタちゃんのお父さん!」
「いえいえ。試しにそう意識して開いてみたら?」
「今私は開いたままですけど、一回閉じた方がいいですか?」
「いいや、そのままでも問題はないはず。その状態で“相手に見せる”ってイメージしながらもう一度“ステータスオープン”って心の中で言ってごらん。たぶん出来るはずだから。」
「「は~い。」」
ケマくんとコルルちゃんは父にそう教わると、試しにもう一度ステータスウィンドを開きなおした。するとそれぞれの目の前に2人のステータスウィンドは表示された。今後は私にもはっきりと見えた。
不自然な点があれば、是非ご指摘してください。




