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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第62話 イースト大陸の勇者

諸事情により編集しました。

 勇者様は銀色の髪の毛を持つ獣人族。見た目は20代前後の美青年。頭にある丸い耳、ケマくんにはない毛並みが綺麗な尻尾、種類は狸種。その身形は勇者と呼ぶにふさわしい真紅の鎧をまとい、腰には鞘に納められてもその溢れ出る神々しさを感じさせる片手剣。まさに文句の付けどころのない勇者がそこにいた。


「カッコいい・・・!!」


 勇者のあまりに風貌に私は思わずそう呟く。溢れ出るカリスマ性に私たち観衆は釘付け、彼から目線を離せれない。いやむしろ近づいて来たことにより熱狂がさらに上がった。


「きゃああああ、勇者様ぁぁぁぁー!!こっちを見てぇぇぇぇ!!」


「お願いします、もう少し、もう少しだけこちらの方へ寄って来て下さい!!」


「ちょっとアンタどきなさいよ!?勇者様が見えないじゃない!?あっ、勇者様ぁぁぁぁー!!」


 私たちの後方で何やら女性たちが騒ぎ始める凍絵が聞こえてくる。それと同時に突如として私の後ろに立っていた両親が私たちの背中を押して、前にいる騎士たちの鎧に押し当てる。


「うわっ、ちょっ、なに!?イタイイタイ!!パパママ、痛いよ!!」


「ごめんカナタ、急に後ろの人が押して来たのよ!」


「おい、子供たちがいるんだぞ!!ちょっ、これ以上押すな!!」


 どうやら勇者を見たいがために後方の人たちが前に詰めようとしているようだ。整列している騎士たちも必死に観衆たちを制止させようとするけど、そのあまりに多い数に声を張って止めようとしても誰も止まろうとしない。まさか早く来て最前列に並んだことがこんな風にあだになるとは。私たちは肉厚に押されて痛み苦しむ。


「みなさん、押さないでください!危ないので押さないでください!おい、絶対に誰一人この先に通すなよ!」


「りょ、了解!!」


「痛い、痛いよぉ・・・。」


「く、苦しいぃ・・・。」


「2人とも大丈夫!」


 ケマくんとコルルちゃんもかなり苦しそうに声を出す。友人に辛い思いをさせて私は今にキレそうになった。そんな観衆たちの騒動に気付いた勇者は馬を停止させて、私たちの方をじっと見つめる。その後、腰にある剣を抜いて空に大きく掲げた。


【炎魔法:シュサーカス・セブニードル】


 掲げられた剣は日光で眩い光り放つと、剣先から7つの炎の針が四方八方へ飛び散る。7色に分かれた炎の針たちはそれぞれ異なる動物へと変化して、観衆たちの上空に舞い、そして踊り始めた。動物たちは上や下、右や左へと動き回り、まるでサーカスのようなショーを私たちに見せる。

 勇者の色鮮やかな魔法により観衆たちの騒動を一瞬にして制止させた。観衆たちが魔法に目移りしている間に、勇者は1人の側近に拡声機を受け取る。


「あ~あ~、本日は晴天なり・・・。」


 勇者が拡声機にそう呟くと周りへ一気に声が広がり、観衆たちの視線は勇者様へ注目する。


「え~とですね、みなさん・・・今日は確か神の恩恵でしたよね?だから今日はここ王都バースにも、いつもより多くの子供たちが集まっていますよね?今もここ沢山の子供たちが来ていますよね?ここからでも十分に見えていますよ?自分勝手な大人たちによって苦しそうに押しつぶされそうな子供たちが・・・ここからでも十分見えていますよ?少し大人気ありませんか?少しみっともありませんか?少し・・・下がってもらえませんか?」


 勇者優しい笑顔でそう拡声機に声を吹き込み、騒ぎ出した観衆たちに注意した。それに堪えたのか私たちの後ろを押していた観衆たち、主に女性たちは苦々しい表情を浮かべながら一歩二歩と後退し始める。しばらくすると私たちの周りには先のように余裕があるスペースが確保できるようになった。


「イタタタ・・・カナタちゃん、コルルちゃん、大丈夫?」


「うぅ、何とかね、コルルちゃんは?」


「大丈夫なようで大丈夫じゃない、本当に痛かったよ・・・。」


 とりあえずはケマくんとコルルちゃんは無事のようだ。大切な記念日に大事がなくてよかった。2人の様子を確認した後、私は再び勇者の方へ振り向く。すると勇者も私の方を何故か見ており、2人は目が合った。

 その途端、勇者は微笑みを見せた。私たち子どもの身の安全を確認が出来たからであった。どうやら勇者は私たちの危機を感じて魔法を発動したり、拡声機で注意をしてくれたようだ。勇者の意図が伝わり、私は思わずもう一度同じ言葉を言う。


「か、カッコいい・・・!!」


 見た目だけではなくその善良な心遣い、まさに世界を救済する人格者、勇者であった。前世も含めて私はこんな人として素晴らしい人は間近で見たことはない。勇者は私たちの安全と騒動が落ち着いたのを図り、もう一度拡声機を口元へ近づける。


「私の勝手な要望に応えてくれてありがとうございます。そのお礼と言ってはなんですが・・・私からのささやかなプレゼントです、どうぞご覧のほうを!」


 そう言うと勇者はもう一度剣を上に掲げた。それと同時に観衆たちを自分に注目させるため空で制止させていた炎の動物たちが再び動き出した。動物たちは再び観衆たちの真上を舞い踊ると、1匹ずつ天高く跳ね上がり、大きな音と共に派手に爆散した。その模様はまるで前世でよく見てきた花火。7匹の動物たちはそれぞれの色の花火として消滅して、最後にこの広場を大いに盛り上げてくれた。


「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉー!!」」」」」


 花火はこの場にいる全員に大好評。勇者はそんな観衆たちの笑顔を見て微笑み、その神々しい剣を鞘に納めて再び馬を進ませる。


「いや~、突然止まってすいません。僕、ああいうの見るとつい気になってしまってしまうんです。」


「いいえ、むしろ我々の仕事を手伝っていただいたことに心から感謝をしていますッ!」


「そう言ってもらえると助かります。それじゃあ早く王様の下へ向かいましょうか。いつまでもここにいては他の人の邪魔ですし。」


「はっ!総員、進め!」


 勇者一行をそのまま北へと進み、観衆が最も集まっている広場から去って行った。取り残された観衆たちはその後も、もう一度戻ってくるわけでもないのにいつまでも勇者の後姿を見つめ続ける。それは私たちも同様であった。



星暦2023年、春の10日、無の日、夕方


 勇者が広場から立ち去って数分後、私たちも人混みをかき分けて広場から離れて、普段着に着替えるため一度宿屋に戻った。正装した自分の姿も気に入ったけど、やっぱりいつもの格好の方が落ち着く。その後、ケマくんとコルルちゃん、その両親たちともう一度宿屋のフロントにて集まって一緒に夕食を食べに出た。幸運にも父がここの王都の出身のおかげで、種族が統一されていない私たちでも全員が美味しくご飯を済ませられるお店が見つけることが出来た。現在私たちは父が勧めてくれた大衆食堂の『チョーダさんの御馳走へ』と言う大きな建物の中で食事をしている。


「どれもこれも初めてだけど・・・おいし~い!」


「カナタちゃんカナタちゃん、こっちの料理も美味しいよ。」


「どれどれ。」


 注文して出てくる料理は両親の言う通りどれも美味しかった。私はケマくんとコルルちゃんと一緒に食べている。流石に9人同時に座れるテーブルがなかったため、大人と子供でそれぞれ分かれて食事することにした。同年代の子との食事はやはり楽しいものだ。


「それにしても、さっきのあれは本当に酷かったね。」


「ん?あれって?」


「さっきの広場でのあれだよ。本当に苦しかった、勇者様を見たかっただけなのにあんな目に合うなんて・・・。」


 ああ、あれのことか。


 どうやらケマくんは先の広場での騒動を思い出しているようだ。確かにあれは酷かった。良い大人が周りのことを気にせず自己満足のために行動していたと思うと、もう一度当時の苛立ちがよみがえってくる。


「あの時は本当にイラっとしたね。・・・イライラのあまり私、思わず火魔法発動しようかと思ったよ。」


「だっはっはっは、もうカナタちゃんったら、またまたそんな冗談言って!・・・冗談よね?」


 何故かコルルちゃんは最後に疑問形で言った。私なりの冗談に決まっているでしょ。あんな人口密度多い場所でボヤ騒ぎでも起こしたら捕まってしまうわ。


「で、でも、勇者様の起点のおかげでそこまで大事にならなくてよかったね。今思うと流石は世界を救済する人だね、心遣いが普通の人とは全然違うね。」


「確かに。それにあの魔法もすごかったねえ。火が動物に変わって上空で飛び回るなんてねえ、あれはすごかった。見る限り火魔法に似ていたけど・・・カナタちゃん、真似できないの?」


「絶対に無理。まず火をあんないろいろな色で発動する事すらしたことないもん。あれは相当レベルの高い魔法よ。真似なんて出来っこないよ。」


 まあもっとも、勇者のあの魔法が火魔法なのかすら怪しいレベルの魔法だった。私はこの3年間、魔法の訓練に関してはパーティーの中で誰よりも頑張ってきたつもりだ。それでもあれ程の魔法に近づける自信が持てない。


「ていうか勇者の魔法を真似しろってかなり無茶ぶりだよ?」


「いや~、カナタちゃんなら頑張ったらいけるかな~って思って。」


 ケマくんは何故そんなに私のことを期待しているの?無理だからね?私は君と一緒の10歳児だよ?そりゃあ勇者と同じくらいの年になったら分からないけど・・・あれ?


「・・・ねえ、そういえばイースト大陸の勇者様って思ったより見た目が若かったけど、歳はいくつ位なの?」


 私がそう聞くと2人は何故か食べていた料理を詰まらせてむせた。思いもしない質問に驚いたようだ。とりあえず2人に水を飲ませて落ち着かせた。


「え、えっ!?カナタちゃん、それ本気で聞いているの?」


「大丈夫?最近勉強していなかったから俺よりアホになったの?」


 なんだとケマくんコラ。私は別にアホではない、ただ単に世情に疎いだけ。それにしてもまさかここまで驚かれるとは・・・もう少しこの世界の世間一般的な知識を学んだ方がいいわね。とりあえずここは素直に教えてもらおう。


「うん、全然知らない。お願い、教え~て。」


「・・・まさかカナタちゃんに何か教える日が来るなんて思いもしなかったよ。」


 私なりに可愛く要求したけど、コルルちゃんはそれよりも私の意外な一面を知ったせいなのか、少し呆れ顔になった。こんなコルルちゃんを見るのは初めてだ。


「えっとねえ、まずカナタちゃんがどこまで知っているのかな・・・昔この大陸にいた魔王の話しは知っている?」


「それはあれでしょ、数百年以上前に出現した魔王が全種族を集めて無理矢理奴隷にして働かして、自分の王国を造ったイースト大陸の経済を独占したっていう話のことでしょ?」


 これは勇者の話しをしてもらった時、両親から何となくだが教えてもらった。内容は曖昧だけどそれくらいは知っている。


「とりあえずそれで合っているよ。それでねえ、長く暴挙を続けたその魔王に挑んで倒したのが、さっき見た勇者様とその当時パーティーなの。確か倒したのが今から100年以上前の話しだったかな?」


「へぇ~・・・んっ、100年ッ!?」


 いやいやいやいや、いくら何でもそんな年には見えなかったよ!?どう見ても20歳前後にしか見えなかったよ!?獣人族特有の若作りとか?いやそれでも・・・あり得るのかな?!


「ま、まあ落ち着いて。それで勇者様が魔王を倒した際に、魔王の体から大量の返り血を浴びたんだって。その血が勇者様の体に染み込むとなんと、突如『不老』っていう特別なスキルを習得したんだって。」


「・・・じゃあ勇者が今日までずっと若いままだったのはそのスキルのおかげってこと?」


「そう言うこと。どんなのかは知られていないけど他にも多くのスキルを獲得したんだって。結構有名な話だよ?本当に知らないなんて・・・カナタちゃん、私は少し不安になって来たよ。」


 コルルちゃんは再び私に少し呆れた表情を見せる。言い返せる言葉が出ない。仮とは言え私はパーティーリーダーである、もう少しこの世界のことを学ぶべきだろうか。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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