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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第59話 進化した訓練、成長したパーティー

諸事情により編集しました。

星暦2020年、春の3日、火の日、朝


 短すぎる正月休みが明けて今日から訓練再会だ。いつも通りの時間、いつも通りの場所に向かったのだけど、メンバーは私より先に集合していた。よほど私の訓練が気に入ったのだろう。


「「「「カナタちゃん、あけましておめでとう!」」」」


「うん、あけましておめでとう。みんな来るのが早いね。」


「私は早く訓練したくて待ち遠しかったよ!」


「俺なんてずっと暇だったから毎日ここに来ていたよ!」


 キーちゃんとケマくんは相変わらず元気だ。正月休みの意味などなかったと思う。さて、全員がこんなにもやる気を出してくれているので、さっそく訓練を始めよう。


「おっ、ここにいたのか。」


 気合を入れてやろうと思った矢先、背後から父が現れた。家からずっとつけて来たようだ。


「パ、パパ!?どうしてここに来たの!?」


「えっ、カナタちゃんのパパ?みんな挨拶しよう。」


 そうコルルちゃんが言うとメンバーは父の前に集まる。


「「「「明けましておめでとうございます。」」」」


「はい、明けましておめでとう。流石はカナタ、まさか礼儀作法まで教えているとは。」


 えっ、そんなの一度も教えたことないけど?挨拶するなんて常識的な事だと思うよ?パパ、どんだけみんなのことバカだと思っていたの?まあいい、今はそれより聞くべきことがある。


「パパ、何しにここに来たの?」


「いやなに、せっかく自分の子供たちが頑張っているんだ。大人からのちょっとしたプレゼントだ・・・お~い、ここだ!こっちに持ってきてくれ!」


 父がむしろを向いてそう声を張って言うと、遊び場に入る通り道から大人たちがずかずかと入って来た。みんな何かしらの荷物を担いで、何故か私たちの遊び場に置く。


「ねえカナタちゃん、これは何?」


「・・・私が知りたいよ。」


 頑丈そうな木の箱、大小のサイズがあるダンベル、何枚もあるブルーシート、木刀に盾などが次々に運ばれてくる。父はいったい何をしたいのか全く理解できなかった。そんな呆然とした私とは別で、メンバーたちも驚いていた。


「あっ、パパだ!」


「僕の父さんもいる。」


「母さん!?何しに来たの!?」


「パパにママ!?どうしてここに!?」


 何と運んでくる大人たちの中にメンバーの親が混じっていた。全員初対面だから親だとは気付かなかった。とりあえず挨拶しにいった。


「・・・ふぅ~、よし!どうだカナタ、驚いたか!?」


 軽くメンバー親たちへ挨拶し終わったのと同時に、父が用意した荷物が全て運び終わったようだ。その荷物の量は割と広かった遊び場の3分の1近くを占拠している。父の言う通り当然驚いた。


「えっと・・・パパ、この荷物はいったい何?これから過激パーティーでも始める気なの?」


「ハハハ、見て分からないのか?これは俺たち親がお前たちのために用意した訓練用の道具だ!他の親御さんにこのことを話したら快く協力してもらえてな、みんなで買ったんだ!年越し前に注文しといてよかった、おかげで今日の朝届いたんだ。」


 えっ、これ全部私たちのために、こんなにもたくさんの物を!?それに年越し前って・・・パパがあの晩帰るのが遅かったのはそのためだったんだ!


「カナタちゃん見て、剣や盾、槍なんかもあるよ!」


「うわ、すごい量の紙・・・まさか勉強用?」


「すっげー新品のダンベルだ!すっごいキレイ!」


「防具もあるよ!重いけど、でもすごい!」


 メンバーは様々な道具に目が食いつき大喜びであった。そんなメンバーの一方で私の内心は少し複雑であった。ここまでの物を用意してくれたのはとてもうれしい、だけどそれと同時に貰い過ぎて申し訳がないと言う思いもある。


「パパ、どうしてこんなに・・・。」


「初日の出を見た時に言っただろう。“父さんは応援するぞ”って、だから早速行動に移っただけだ。それにお前たちの夢を応援したいのは俺だけじゃない。ここにいる大人全員がお前たちの夢を心から叶えたいと思っているんだ。」


 父に視線誘導されて運んでくれた大人たちの方を見ると、全員が誇らしくそして清々しい程に笑っていた。父の言っていることに嘘はない。大人たちの表情を見て私はそう感じ取れた。


「・・・ありがとう、ありがとう・・・ございます・・・!」


 私はこの場にいる大人たち全員に向かって深く頭を下げる。道具を用意してくれた感謝、私たちに対して信用してくれたこと、私たちの夢を認めてくれたこと、全部の意味を込めての一礼をする。前世を含めて私はこれほど嬉しい気持ちになったことがなく、眼から大粒の涙が1摘2摘と流れ出る。


「お、おいみんな!何か知らないけどカナタちゃんが頭下げているよ!?」


「えっと、私たちも下げた方がいいよね?」


 ある程度道具を見終わったメンバーたちは私の横に並び、私の真似をして同時に頭を下げる。5人の子供のうちの4人はこれからの訓練の楽しみに下げた顔が笑顔のまま。残りの1人はあまりの親切さに涙が止まらない。


「私は、私たちは・・・絶対に冒険者になります!なって、絶対になって、頑張ってみせます!」


 仮リーダーの私がそう大きな声で宣言した。大人たちは私たちの礼儀さのせいなのか、それとも覚悟の大きさのせいなのか、私の宣言よりも大きな拍手を送ってくれた。そして何人かの人たちが応援の声を送ってくれた。その拍手の音に、その応援の声に、パーティーメンバー一同は笑うのを止めて、涙を流すのを止めて、各々で意志を強く固める。

 ここは遊び場、私たちが自由に遊べられるからそう名付けた。だけどそれももう改名する必要がある。大人たちが周囲の人たちに事情を話しくれたおかげで、ここは本格的に私たちが占拠することになった。今後からここは訓練場と改名する。もう遊びではなく本気で冒険者へ目指したいから。



星暦2023年、春の5日、火の日、昼


 あの日からもう3年が経った。私たちは大人たちが支給してくれた道具を駆使して毎日訓練に明け暮れる日々だった。時には大人たちに、または街に立ち寄った冒険者に指導を乞い、武器や魔法の使い方なども習った。最初は低レベルの体育技を教えていたのが、今では嘘の様に訓練内容が進化してきた。

 勉強、全員が文字と数字の暗記及び低レベルの漢字や計算術を記憶した。今は自分で文章を書かせたり、数学の文章問題を解かせている。

 武術、教えてくれた冒険者や街の大人たちの参考に自主訓練をして独学で身に着け、今では自分たちで毎日模擬試合をしている。自分で言うのは少しおかしいけど、かなり高レベルな闘いをしている方だと思う。

 魔法、私は火魔法、キーちゃんは雷魔法、クアルくんは氷魔法、ケマくんは木魔法、コルルちゃんは水魔法といった各々の髪の色で分かる程度の適正魔法の訓練をしてきた。最初は親同伴でしか許されなかったけど、今では全員上手く魔法を使いこなして親の眼なしでも使用している。

 最後にアクロバット、現在ちょうど行っている。メンバーたちに教えたのは前世で私が一番好きだったパルクール。私たちは今、キキラの街の密集した建物の上で、屋根伝いにパルクールを駆使して移動している。


「ぃいやっほおおおおぉぉぉぉいい!!」


「おいケマ、お前飛ばし過ぎだ!ミスって落ちても知らないぞ!?」


「いいよいいよクアルくん、そのままにしといて。もし落ちたらそれはそれでいい経験になる。それにあいつは1回痛い目を見ればいいし。」


「あはははは!カナタちゃん、きついこと言うね!まあケマくん、1回も落ちたことないから今日も大丈夫でしょ。・・・コルルちゃん、大丈夫?」


「うん、ありがとうキーちゃん、何とかね!今日は、みんなについて行けているよ!」


 背丈と手足がやや伸びて、心も体も大きく強くなった私たちは3年はとは見違えるほどに成長した。まさかメンバー全員がここまで成長するなんて教えようと考えた私すら予想できなかった。これも全て私たちを応援してくれた地元の大人たち、そしてここまで頑張ってくれたメンバー自身のおかげだ。私はこの恵まれた環境に感謝してもしきれない。



星暦2023年、春の5日、火の日、夕


 円形型であるキキラの街を2周したところで今日の訓練はここまで。明日待ちに待った神の恩恵を受けるために王都へ向かう日だ。いつもより早く切り上げよう。


「はい、じゃあ今日はここまで。みんな、早く道具の片付けしよう。」


「ウィ~ッス。」


「了解。」


 訓練場に戻った私たちはしばらくここを空けるため、道具が雨などで汚れるのを防ぐためにブルーシートで全てを覆い隠す。このように道具に配慮したおかげか、あの時大人たちがくれた道具はそこまで傷ついていない。3年間よく大切に使ってきたと思う。


「・・・そういえば、みんなどこの王都に行くの?」


 片付けの最中クアルくんがとある疑問を聞いてきた。確かに今までそういった話はしたことがなかった。丁度いい、仮リーダーとしてみんなの動向を把握しておこう。


「私は王都バースって所に行くけど、みんなは?」


「えっ、カナタちゃん、王都バースに行くの!?私は王都メラルフに行くことになっているけど・・・。」


「俺も王都メラルフだ。」


「僕もカナタちゃんと一緒で王都バースに行くよ!」


「私も王都バースに。3対2できれいに分かれたね。」


 王都バースには私とケマくんとコルルちゃん、そして王都メラルフにはキーちゃんとクアルくんが向かうことになっているそうだ。確かにコルルちゃんに言う通りきれいに分かれたな。私個人は知らない土地で同い年の友人が居てくれることに嬉しく思う。


「ねえ~カナタちゃん、カナタちゃんも王都メラルフに行こうよ!寂しいよ、別れたくないよ、一緒に来てよ!」


 キーちゃんが甘えるように私に抱きついて一緒に向かうように要求し始める。当然毎度のことながら姿勢を低くして抱きついてくるため、今回も額の角がグスッと刺さる。しかも角自体も成長して前よりも少し長くて鋭利になり、痛みが尋常ではない。


「痛い痛い痛い!!キーちゃん、刺さっている!?今日も深く刺さっているから、早く離して!?」


「離さない、絶対に離さないから!!一緒に行くって言うまで離さないから!!」


 なんでこの娘ちょっとヤンデレ思考になっているの!?痛い痛い、そして怖い!固執されるのはちょっと嬉しいけどここまで来たらもう恐怖すら感じる!だ、誰か、誰か助けて!?


 私がそう眼で他のメンバーに救援を出すと、何故か男性陣は無視するかのようにそっぽを向く。飛び火を受けたくない気持ちはわかるけどそれあまりに塩対応すぎる。情けない男2人に対して一瞬怒りを覚える。


「あはは・・・キーちゃん、カナタちゃんも事情ってものがあるんだからさ。こればかりは仕方がないよ。」


 唯一私の救援に応答してくれたコルルちゃんは私からキーちゃんを引き剥がして説得をする。だけどキーちゃんは、よほど私と一緒に居たいのか中々引き下がってくれない。


「うぅ~・・・一緒に行こうよ、カナタちゃん。絶対に王都メラルフの方が楽しいと思うよ?」


「ごめんね、ずっと前からママと約束していたから。もう今更断りづらいし・・・ごめんね。」


 というのもここ最近、母は何故か妙に毎日のように服の選別をしている。私の神の恩恵を受ける日が近付いているためなのか、理由は全く分からない。ただ本人が王都バースに行くことを楽しみにしているのだけは分かる。神の恩恵とは別に楽しみでもあるのだろうか。


「まあまあキーちゃん、俺も一緒に行くんだし、俺らは俺らで楽しんで行こうよ。」


「・・・。ねえカナタちゃん、お願いだから一緒に来てよ~。」


 あれ~、キーちゃん何でせっかく声をかけてくれたクアルくんに対してそんな対応するの!?ほら見てあげて、地味に無視されたクアルくん傷ついているから!


 私の体を揺さぶって要求し続けるキーちゃん。無視されて明らかにショックを受けるクアルくん。飛び火が来ないようにみんなより一歩下がるケマくん。訓練場でのやりとりを苦笑いで少し困惑するコルルちゃん。それぞれの気持ちはバラバラ、神の恩恵のために向かう王都もバラバラ、そんな私たちに対して時間は待ってくれず、明日はとうとう待ちに待ってこのキキラの街を出る。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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