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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第58話 初日の出

諸事情により編集しました。

星暦2019年、冬の100日、無の日、夕


 次の訓練は春の3日と連絡を終えて、メンバーは遊び場から解散して各々帰宅しようとする


「さてと、今日も飛んで帰るか。みんな、またねえ!」


「僕はまだ全然動けるんだけどな~・・・せっかくだし走って帰るか!じゃあねえ~!」


「私はもうヘロヘロ・・・ゆっくり歩いて帰る。じゃあまたね。」


「私は特に問題ないから普通に帰る!んじゃ!」


「あっ、ちょっと待ってキーちゃん!?」


 私は少し気になることがありキーちゃんを引き留める。


「どうしたのカナタちゃん?」


「確かキーちゃんのパパって私のパパと同じ仕事をしているんだったっけ?」


「うん、そうだよ。毎日重い荷物運んで頑張っているんだ!」


 キーちゃんはいい笑顔で答えてくれた。鬼人族は他種族の中で一番の怪力と言われている。だからそういった系統の仕事に向いている。


「へ~そうなんだ~。実はねえ、今日ねえ、私のパパからねえ、キーちゃんのパパからキーちゃんが私に嫌々勉強を教えられているって聞いたらしんだ。」


「げっ!?」


 私は逃がさないようにキーちゃんの両肩を掴み続いて聞いてみた。キーちゃんはたちまち笑顔から不都合な表情へと変える。私の予想通り先の父との会話で父が言っていた仕事仲間とはキーちゃんの父親だった。私は少し暗い笑顔のままキーちゃんに問い続ける。


「へ~キーちゃん、私に嫌々勉強させられていたんだ~。ごめんね~全然気づかなくて~。」


「えっと、違うよカナタちゃん、聞いて!?確かに最初は嫌々だったけど、最近は勉強も悪くないなぁ~って思えて来たんだよ!?本当だよ?」


「でもあの言い方は良くないんじゃないの?まるで私がいじめているみたいな言い方じゃないの?」


 いつも無邪気で活気のあるキーちゃんが少しずつ肩身を狭める。私はそんなキーちゃんを見て、内心少し楽しんでいた。キーちゃんは徐々の涙目になる。


「えっと、あの、その・・・ごめんなさい!!」


 キーちゃんはそう言いながら私の胸に抱きついて謝罪する。当然額の角が私の胸に刺さすけど、いつものスキンシップとは違って今回のは強く抱きついて来ているため角が深く刺さる。あまりの激痛に私は悶え苦しむ。


「イタイイタイ、刺さっている刺さっているよ!?キーちゃん、角が刺さっている!!」


「ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」


「分かった、分かったから!私も言い過ぎたよ!?だから離れて!!」


 私はキーちゃんを引き剥がそうとするけど、鬼人族の力なのか一向に離れない。そしてしばらく抱きつくとキーちゃんはようやく落ち着き、私の胸から角を放してくれた。私があまりにしつこく問い続けたせいでキーちゃんはいまだに泣き止まない。子供相手に少しやり過ぎてしまった。そう反省しながらキーちゃんの頭を撫でながら他のメンバーに遅れて私たちも帰宅する。

 泣きじゃくるキーちゃんを家まで送るまでの間、私は何とか機嫌を戻してもらおうと必死に会話を盛り上げた。彼女は私にとって親友のような存在、私の意地悪したせいで絶縁なんかしたくない。

そう思いながら話していくと次第にキーちゃんは泣くのを止めて、やがていつものように笑顔を見せてくれるようになった。この喜怒哀楽の変化に流石は子供だと思った。そして無事笑顔のままキーちゃんを家まで送った後、私も自宅へ帰った。



星暦2019年、冬の100日、無の日、夜


 家に帰った私はお風呂と夕食を済ませて居間でくつろいでいる。母は私のそばでお茶を飲みながら新聞を読んでいる。そして父は、今は不在であった。


「・・・パパ、帰って来ないね・・・。」


 私が家に帰ってきた時にはすでに父は出かけていた。母曰く、何やらやり残したことがあると言って出掛けたらしいけど、空が完全に暗くなった時間になっても帰って来ない。今までの年末でこんなことはなかった。


「そうね・・・きっとやり残したものが大きかったんじゃないのかしら?さて、私たちはそろそろ寝ましょうか。明日の初日の出見なきゃいけないし。」


 母は新聞紙を折りたたみながらそう言って、寝室へと向かう。この世界では日本のように寺や神社へ初詣に行くとう似たような習慣があるけど、それは王都にある教会に限るらしい。だから街に教会がない私たち平民は、初日の出を代わりに祈願する。ちなみに私は7年間、親同伴で連続初日の出を見てきた。私にとっては毎回無理矢理起こされて、苛立った状態で祈願をしていた。私ももう寝不足で新年を迎えるのは嫌なので母に続いて寝室へと向かい、一緒に3人分の布団を敷く。


「ねえ、ママ・・・パパは今日中に帰ってくるかな?」


「さあねえ、こんなことママも初めてだから分からないけど、きっと初日の出までには帰ってくるわよ。」


 母はそう笑うだけであった。その顔に何も言えず黙々と準備が終わり、私と母は父の帰りを待たず先に就寝をする。


「お休み、カナタ。」


「・・・おやすみなさい・・・。」



 部屋の明かりが消えてもう1時間近くは立っただろうか、私は一向に眠気が来ない。原因は明白、父がいないというこの状況が気になり、頭が考えるのを止めようとしないから。


 もしかして、パパが返って来ないのはお昼の時にした、私との口論が原因ッ!?思い当たる事と言ったらそれしかない!でも何がいけなかったの・・・私が冒険者になるのが嫌だから?でもあの時は何も言わなかったしそれが原因とは・・・いや、可能性はある。それにあの言い方も良くなかった、あんなに強く言ったら誰だって不機嫌になる・・・私って本当にバカ。何で前にも犯した過ちを、また繰り返してしまうの・・・。


 静かな暗い部屋の中、眼を閉じる私はその不安を募らせる一方だった。自分の頭ではすぐに原因や理由を導くことが出来ないのに、ひたすらに思案を巡らせ続ける。そうしていくうちにようやく睡魔が襲い始めて、私は母に遅れてようやく眠りにつくことが出来た。そして偶然にもその瞬間に、時計の時針分針秒針が12時に同時に刺して、年を越した。



星暦2020年、春の1日、光の日、早朝


 掛け蒲団に抱きつきながら寝ている。そんな私に1人の男性が私の体を大きく揺さぶり起こそうとしてきた。


「カナタ、起きろ!もうすぐ初日の出だぞ!みんなで見に行くぞ!」


 覚醒していなくても私はその声の主が誰なのかすぐに分かった。昨晩どんなに待っても帰って来なかった父だった。


「ん・・・パパ・・・?」


「ああそうだ。明けましておめでとう。ほら、早く顔洗って支度をしなさい。」


 私は父の指示に従い蒲団から起き上がり、眼をこすりながら寝室を出て軽く顔を洗い、先に起床していた母がいる居間に向かう。


「あら、カナタ、おはよう。」


「おはよう、ママ・・・はぁ~。」


「おいおい一体何時まで起きていたんだよ?今年も寝不足顔で初日の出を拝みに行くのか?」


 口を大きく開いてあくびをする私を見て父が笑う。寝起きにせいか父の言葉に多少苛ついてしまう。


 ・・・いったい誰のせいだと思っているの。まあこうして帰ってきているから別にいいけど・・・ん?あれ、そういえばパパいつの間に帰っていたの!?


「・・・うん、空が明るくなってきた。2人とも、そろそろ出るぞ。」


 父がカーテンを開いて空の様子を確認すると、間もなく日の出だと予想して私たちは家から出た。昨晩の件について父に聞くタイミングを逃してしまう。また後で確認しよう。



 早朝の朝、太陽が出ていない空は少し暗めの水色だけど、それでも十分にキキラの街を照らしてくれている。現在、私たちは倉庫からはしごを取り出して家の屋根に上っている。今住んでいる家は屋根が三角ではなく平らで設計された家である。私たちは毎年この屋根の上から初日の出を見てきた。毎回快晴というのもあって、毎年初日の出が美しく見える。今年も快晴だから期待できるだろう。


「おっ、そろそろかな?」


「晴れていてよかったわ。今年もきれいに見られるわね。」


 キキラの街は高い外壁に囲まれており、私たちがこれから見る初日の出とは外壁からはみ出る様に出てくる太陽の事である。私たちは少しずつ明るくなる空、そしてそれを隠そうとする一か所の壁を見つめながら初日の出を待ち望んでいる。


 はぁ~、今年も日の出までが長いなぁ・・・。私はもう少しギリギリまで待ちたかったのに、何でパパとママはこう急いでくるんだろう?誰もこんなところ先に取りに来ないと思うよ、自分の家だから。まああとちょっと見たいだしもう少し待とうかな。・・・やっぱり暇だわ。


「・・・カナタ、少しいいか?」


 私は両親より少し前に座っている。そんな私の後ろから父が呼びかけられて、体ごと後方へ振り向く。


「ん、なに?」


「昨日、お前は冒険者になりたいって言っていたよね?くどい様だけど最後にもう1回だけ確認がしたい。・・・本気なんだな?」


 父は先日のお昼、私とその件について話し合った時と同じ真剣みのある表情で尋ねてきた。しかも今回は父の隣に母も同様の表情で私の返答に待っていた。次の私の質問で2人がどういう反応するのか私には分からない。それでも私は自分の意思を正面に真っ直ぐに言う。


「・・・うん、本気だよ。パパやママが心配するのは分かるけど、それでも私は・・・私たちは冒険者になりたい!これは一時の感情で思っているからじゃない、本気で考えた私の意思なの!」


 両親の眼を見ながらはっきりと答えた。私は次に何を言われるのか想像がつかず、心の中で身構える。しかし結果は身構える必要もなく、両親2人が笑ってくれた。


「そうか、分かった。父さんは応援するぞ。頑張れよ。」


「母さんもよ。でも嫌になったらいつでも言いなさいね?」


 2人の顔を見て無理に嘘を言っていないのが分かるくらい、2人は優しく微笑んでくれた。私はそんな両親の寛大な対応に心の底から歓喜した。自分のわがままをこうも優しく応じてくれたことに、私は嬉しくてたまらなくなった。眼から涙が出そうになる。


「おっ、日の出だ!」


 私の後方から激しい光が差し込む。振り向くと外壁から太陽が頭を出した、初日の出である。予想通りその日の出は美しく見られたけど、何故だか今年は神々しく感じられた。きっとつい先ほどまであった昨晩から積もり続けた不安がなくなったからだろう。私は目元に出て来た涙を拭きとりもう一度両親の方へ振り返る。


「パパ、ママ、本当にありがとう!私・・・頑張る!頑張るから!」


 両親は私に近付いて、父は私の肩をたたき、母は私の頭を撫でてくれる。そして最後にもう一度後ろへ振り返り、3人で初日の出に向かって祈願する。


 私のお願い、立派な冒険者になる・・・ってそれはまだ早いか。だったら・・・パパとママが期待してくれる以上に鍛えて、本当の意味で強くなる!うん、これがいい!!


 私は初日の出に向かってそう強く拝んだ。これ程強く祈願したのは今世で初めてかもしれない。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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