第55話 パーティー結成
諸事情により編集しました。
旧タイトル“私たちのパーティー結成”
星暦2019年、夏の37日、氷の日、昼
ファンタヘルムの通貨は世界で統一されている。名前は“ストン”。前世の記憶のある私からしたら最初は違和感でしかない。
お金は硬貨と紙幣ともに5種類ずつある。硬貨は1ストン、10ストン、50ストン、100ストン、500ストンある。紙幣は千ストン、5千ストン、1万ストン、5万ストン、10万ストンがある。日本の円と少し似ているけど最高紙幣額の想像できないほど高い。流石は異世界だと実感した。
お金とはどの世界にとっても人々から欲せられる物。何故ならお金は己の欲を満たせられるから。人は誰しも大小なりの欲はある。その欲を手っ取り早く満たしてくれるのがお金である。それを前世で必死になって働いてその身で知っていた私は、現在建物と建物の隙間にある硬貨を、必死に手を伸ばして拾おうとしている。
「うごおおおおぉぉぉぉぉ!!届けええええぇぇぇぇ!!」
傍から観たらかなり無様な格好だけど、今の私にはそんなことはどうでもよかった。僅かながらの隙間に肩まで入れると、爪の先が効果に届いた。中指の力加減を調節して少しずつ硬貨を引っ張り、数分間による闘いにて私は見事1枚の硬貨を手にした。
「ぃよっしゃ!」
拾ったのは1ストン。日本で言う1円と同じ価値だけど、私にとっては1ストンでも大事なお金だ。言っておくが別に私は守銭奴ではない。ただ単に将来のためだと考えてこうしてお金を集めている。金銭に対してそこまで物欲があるわけでもない。
私の日課は基本、子供の権利を最大限利用してお昼過ぎまで熟睡して、かるく朝ご飯のような昼食をとり、外に出てキキラの街を徘徊しながら先の様に落ちてある金銭を見つけて拾う。拾った硬貨を軽く服で汚れを掃き、ポケットにしまった私はそのままキキラの街の徘徊を再開した。
「ん~~~!!」
この世界・・・最高!毎日お昼まで寝られるし、学校に行って嫌な宿題しなくていいし、魔法や剣があって楽しそうだし、まさに私が求めていた幻想的な世界!しかも前世の記憶があるおかげで人生経験がある分、他の同年代より少し有利に物事を運べられる。ああ、これで私もステータスウィンドが使えられたら文句がないんだけどなぁ~。
街の大通りを歩きながら背筋を伸ばし、前世の世界と比べてこの世界での気楽な生活に満足していた。思わず頬が緩み1人にやけ顔になるほどだ。そんな私の後ろから他の子供たちが駆け寄って来て話しかける。
「カナタちゃん、おはよ~。」
「あっ、キーちゃん!おはよう・・・ってもうお昼だからこんにちはだよ?」
「アハハハ、そうなの~?やっぱりカナタちゃんは頭が良いね~。」
黄色の髪の毛を持つ彼女は鬼人族のキーちゃん、私の親友である。人当たりが良く同年代の中で男子に負けないほどの元気がある。スキンシップで私によく抱きついてくる。しかもその際に姿勢を低くしてくるため、額に生えた小さな一本角が刺さってかなり痛い。そしてキーちゃんの後ろから、鳥人族のクアルくん、獣人族ケマくん、妖精族コルルちゃんもやって来た。みんな私の友人である。
「カナタちゃん、うぃっす。」
「うぃっす、クアルくん。今日もみんなで遊んでいるの?」
「うん、そだよ~。これからいつも所に行くところなんだ。カナタちゃんも一緒に遊ばない?」
「行く行くぅ~!私も遊びた~い!」
毎度の様に年相応な態度で誘いを受ける。前世でもそうだが私は誰かとこうして体を使って何かを遊ぶのか一番好きだ。私は友人たちと一緒にいつもの遊び場へと向かった。
◇
ここは街の端にある街の柵と建物の間にある空間。ここなら人気はなく遊んでも他の人に迷惑が掛からないから、私たちはいつもここで遊んでいる。
「カナタちゃんカナタちゃん、またあれやって~!」
「え~、キーちゃん本当に好きだね~。でもいいよ、ちょっと待ってて。」
遊び場につくとキーちゃんがまたいつものを頼んできた。私も別に悪い気はせずに喜んで承諾をして準備する。他の友人も私が動きやすい様に空間を作ってくれて、私はとある技を始めようとした。
「よ~し、いっくぞぉ~。」
私は全速力で走り出して、友人たちが作ってくれた空間を使って側転ひねり、2回連続後転飛び、最後に猫宙をする。そしてピクリとも揺るがない着地を決めた後、私は両手を上にあげて胸を張った。
「タッタララ~ン!」
「「「「おおおおおーーー!!」」」」
友人たちは私のパフォーマンスにたちまち拍手を送る。誰かからこうして称えられることにより出る高揚感にひたる。私も思わず満足気な表情を浮かべる。
ふふんっ、今日も決まった!前世ではあんなに苦労したのにまさかこの年で出来るようになるとは。まあ、その前世の記憶があったおかげで大体の感覚は覚えていたけど。いやそれでも7歳でこの技を習得するのは早い方よね・・・もしかして私、天才!?
「何回見ても本当にすごいね~!」
「それ誰に教えてもらったの?」
「僕もやってみたい!」
「私も私も!教えて!」
友人たちは我先にと私に迫る。それもそうだろう、目前であんな大技を見せられたら自分も覚えてしたくなる。その気持ちすごくわかる、なぜなら私もこれらの技を覚えたいと思った動機でもあるから。
その後みんなの希望を叶えるため私は簡単な技から教えることにした。まずは側転からだ。指導者の立場になると一番になった気がして気分が良い。
◇
指導を始めて15分経過した。みんな連続でぐるぐると側転していたせいで大半は目が回って、今は休憩をとっている。加減を知らない辺り、流石は子供だ。
「うぇ・・・気持ちが悪い・・・。」
「頭が回るよ~・・・あれ、空が回っているように見える?」
「なんだよみんな、僕はまだまだできるよ!早くやろうよー!」
「「「無理~~~。」」」
唯一あれだけ練習しても平然と立っているのは獣人族のケマくんだけだ。種類は熊種だか、先ほどから本来の熊とは思えないほど俊敏な動きを見せる。獣人族は基本身体能力が高いと聞いていたけど、それは種類という境でも関係なかった様だ。
動物って基本、乗り物酔いしやすいってイメージだったけど、獣人族には関係ないみたい。やっぱり半分に人だから三半規管とかが強いんかな?・・・っていうかあの丸耳触りたい。
「うぅ~・・・カナタちゃん。気持ちが悪いよ、何とかしてぇ~。」
そう言いながらキーちゃんは私の背中にすがる様に抱きついてくる。当然彼女の額の角もその拍子で背中にグスッと刺さる。しかも強めに抱きついてくるから角もより深く刺さってくる。
「痛い痛い!?キーちゃん痛いよ!!離れて、ねー離れてってば!!」
思わず大きな声を出してしまった。その後、キーちゃんを何とか背中から離して、とりあえず仰向けに寝かせた。この中で一番側転を回り続けたのだから、その分酔いも人一倍なのだろう。
「カナタちゃん、カナタちゃん、早く次の技教えて!」
「落ち着いてよケマくん。みんな疲れているし、一旦休憩しよう。それにケマくんもそろそろ限界なんじゃないの?」
「僕は全然平・・・あれ?」
「ほらね。」
放している最中にケマくんは誰かに押されたかのように尻もちをつく。やはり我慢していた。表情から見るにあまりにも楽しすぎて無意識に我慢していたのだろう。ケマくんが尻もちをつくと休憩していた友人たちと一緒に大きく笑った。
それにしてもこの世界・・・いや、この街は人間関係に恵まれていてよかったなぁ。親に学校に行かなくてもいいって言われた時はすぐに気付かなかったけど、後々どうやって友達作ればいいのか本当に真剣に考えたな。普通は親同士の横の関係があったわけでもないのに、こんな風にたくさんの友達はできないよね?あぁ~、この世界に来て正解だった!
「・・・そういえばさぁ、みんなって将来の夢って決めているの?」
今聞くことではない気がするけど、私はふと思った疑問を休憩中の友人たちに聞いた。ファンタヘルムは前世の日本の様な義務教育は存在しない。つまり地球の子供と比べてこの世界の子供は将来の安定性が高いというわけではない。むしろ比べられないほどの格差はあるだろう。教養を得ていないことで自分の知る情報が少なすぎて“将来の夢”という対照が地域の者だけに限られてしまう。それを知っていて尚私は聞いてみた、どんな反応をするのか少し楽しみでもあったから。友人たちは互いに見合った後に返答してくれた。
「「「「冒険者ッ!!」」」」
「だよねぇ~。何となく分かっていた。」
少なくともこの街の中で聞いて見て最もカッコいいと思える職業は冒険者しかない。友人たちの親はそれぞれ立派な仕事をしているけど、誰一人その仕事をやりたいとは思わないそうだ。
「ちなみに理由は?」
「カッコいいから!」
「色々な物や場所を見てみたい。」
「色んな食べ物を食べてみたい。」
「誰かの助けになりたい。」
四者四様で返答が来た。どれも立派な動機だと思う。
「カナタちゃんは何になるの?」
「私は・・・私も冒険者になろうかなって思っているの。」
実は赤ん坊の頃からずっと冒険者という言葉を聞いた時からなりたいと思い続けてきた。動機は当然、前世のアニメの様な幻想的で刺激的な体験をしてみたいから。そして何より、仕事内容によっては6桁以上の報酬金が手に入るのだから。パートの給料でコツコツと稼いできた私からしたらまさに夢のような職業だ。
「それじゃあ私たち、みんなで冒険者になったらパーティーを組もうよ!絶対に楽しいと思うよ!」
私の返答を聞くとキーちゃんはたちまち起き上がり、何故か急にテンションを上げて提案を出す。その表情は先まで酔っていたとは思えないほど満面の笑みである。
「キーちゃん、パーティーって何?」
「えっとね~、大勢の人で一緒に依頼を受けたり、一緒にキャンプをしたり、一緒に冒険をする集まりの事だよ!」
なるほど、いわゆるチームというやつかな?確かに知らない人たちより見知った人達と組んでも良いかもね。・・・ただ、もしパーティーを組むとしたら自分より強い人たちだといいかなぁ。別にみんなと一緒に居たくないというわけではないけど・・・まだ子供だからか、どうしても頼りなく見えるんよね~。
「それいいね!俺たちで組めば最強なんじゃないの!?俺は翼があるから空から探索だね。」
「じゃあ僕は地上での探索!獣人族はモノを探すの得意だし、それにクアルと一緒にすれば無敵だね!」
「私は・・・回復かな?私たち妖精族は魔力が多いからいつでも傷ついたみんなを治したいな。」
「なら私は戦う担当!今はまだ筋肉ないけど、大きくなったらパパみたいに強くなるんだ!怪我したらお願いね、コルルちゃん。」
そう言いながらキーちゃんはコルルちゃんにもスキンシップで抱きつく。そして私同様に体に角が刺さり、コルルちゃんは痛がる。
・・・そういえばこのメンバー、今思うとキレイに種族がバラけているよね。鬼人族、鳥人族、獣人族、妖精族、そして人族。そういえば前にパパから人族は他種族に比べて身体的能力が低いって聞いたことがある。・・・もしかしてこの子たち、大きくなったら種族的に私より強くなっちゃうってこと?てことは・・・もし今から私がこの子たちを育成すれば、将来私の想像以上の有能な冒険者になったりするかも!?そうよ、自分の手で1から育てた方が後々から知らない人と組むより全然いいじゃん!
「みんなでパーティーを組む・・・いいかも!」
「でしょ、でしょ!絶対にその方が楽しいもん!そうと決まれば、全員集合!」
キーちゃんは休憩しているみんなを起こして、唐突に私たちで和をつくらせる。私も友人たちも何をするのか見当がつかない。
「じゃあみんな手を出して!今ここでパーティーを組みますって言う結成の合図でもしよう!」
「おお、いいね!・・・でもパーティー名はどうする?カッコいい奴が良い!」
「“ケマ小隊”っていうのはどう?カッコいいと思わない!」
「それじゃあ冒険者って言うより騎士団みたい。というよりも何でケマくんの名前が入っているの・・・ダサい、もっと他の名前が良い。」
「名前なんか後でいいじゃん。それよりもこうしてみんなでパーティーを組んだ方が大事でしょ。」
「「「「・・・確かにね!」」」」
和の中心の私たちはそれぞれ片手を出して交互に重ねて、今ここに子供だけの1つのパーティーが結成された。私はこの瞬間、みんなで冒険者になって旅をするのが待ち遠しく感じた。
不自然な点があれば、是非ご指摘してください。




