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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第2章 カナタ・タユーリ
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第54話 開幕 強欲な淑女

諸事情により編集しました。

 ここはファンタへルム。魔法、魔物、他種族、自身の状態を確認できるステータスウィンドなどが存在する世界。文化的な発展は地球と比べて劣っているが、それらを駆使してこの世界だけの生活をしている。

 ファンタヘルムには『五芒星勇者』と呼ばれる5人の勇者が存在する。それぞれ『星剣の勇者』、『星盾の勇者』、『星槍の勇者』、『星槌の勇者』、そして『星弓の勇者』と名乗っている。勇者は各大陸に1人づつ配属されており、人類の平和と安静を遂行しようと日々活動し続けている。勇者の存在はまさに、人類を魔の手から救い出す希望の光である。

 舞台はイースト大陸の北部、半径40キロに及ぶキキラ砂漠に唯一ある街、『キキラの街』。そこはファンタヘルムでは珍しく、他種族共同で暮らしている集落である。人口は約2万人以上、環境のせいでもあって王都ほど豊かな暮らしをしているわけではないが、住民同士で協力し合って平和に暮らしている。この街なら大丈夫だろうと考えた転生の神は、ある1人の魂をこの街に転生させた。


ヒュウ~


「・・・砂が眼に入っちゃった。」


 砂が混じった風が長い赤髪をなびき、街の門の向こう側を見つめる1人の少女がいた。そう、彼女こそが神によって転生した者である。後のこの者が果てしない遠い将来にて、人類史上初の『勇者殺し(ブレイヴスレイヤー)』という禁忌の称号を手に入れてることは、誰も予想していなかった。それまでの続く非常な運命もまた、神すら予期していなかった。


<カナタ視点>

星暦2019年、夏の32日、闇の日、朝


 私の名前はカナタ・タユーリ。再来週の火の日で7歳になる、ごく一般的な家庭の1人娘、

 前世は神那樹愛二として別の世界、地球で生きていたけど、若くして他界してしまった。だけど転生の神様のおかげで、こうして異世界で第2の人生を送れるようになった。最初、神様から異世界に転生すると聞いて時は心躍らせたけど、自分の足で出かけられるようになった今、また心を躍らせた。アニメ等でしか見たことない他種族、誰にでも扱える魔法、そして魔物と対峙する冒険者、ここはまさに私が思っていた通りに世界だ。だけどこの世界で生活をし始めて早くも7年近く経過した今、私の心境は少し変化していた。


「はぁ~・・・外の世界も見てみたなぁ・・・。」


 キキラの街の敷地は、比べる対象がなくて分かりにくいけど多分広い方なのだろう。しかし7年も在住すれば、街の隅々まで歩きつくして街並みにも見飽きていた。私たち人族以外の種族を見た時はもちろん嬉々として気持ちが高ぶったけど、正直毎日外出することでそれも見飽きていた。ここしばらくは魔法などの使用で気持ちを紛らわせていたけど、そろそろ他の景色が見たくなってきた。


「はぁ~、せめて街の外が砂漠じゃなかったらなぁ。毎日毎日服に砂は付くし、話しているだけで口の中に入るし、何でこんな場所に転生させられたんだろう・・・。」


 私は1人ぶつぶつと愚痴をこぼし始める。年相応の態度ではないけど、こんなことしないと溜まった鬱憤は晴らせないから。いや、強いというならもう1つある。


「ね~、あれカナタちゃんじゃない~?」


「あっ、ほんとだ!」


「カナタちゃん、こっちに着て一緒に遊ばない?」


 1人で門を見つめる私の後ろから同い年の子供の団体が来た。その子たちは鬼人族、鳥人族、獣人族、妖精族とそれぞれ種族が異なっているけど、他種族とか関係なく仲良く歩いていた。子供たちは手を振りながら呼び掛けて、それに私は満面の笑みで振り返って答えた。


「行くぅ~!私も遊びた~い!」


 今後は年相応の態度を見せながら、誘ってくれた子供たちの方へ駆け寄った。またこうして子供たちと一緒に遊びに行くことで、私の鬱憤も発散させられる。子供の様な振る舞いをしているのは、変に大人びた雰囲気を見せるより親しみやすくするため。何よりこうしている方がよほど楽しく感じるから。



星暦2019年、夏の32日、闇の日、夕方


 空の色が赤色になると私たちは遊ぶのを止めて、その場で解散して各々の自宅へ真っ直ぐに帰った。自宅に到着した私は、家の扉前で軽く服に付いた砂を掃ってから、家に入り元気よく言った。


「ただいま~!」


 先と同様に引き続き年相応の態度で家の入ると、今生の私の両親が対応してくれた。


「おかえり、カナタ。」


「おかえりなさい、カナタ。ご飯までまだ時間が掛かるから先にお風呂に入っときなさい。」


「は~い!」


 私より先に仕事から帰って来ていた父は椅子に座って休んでいて、少し前から調理を始めていた母が明るく話しかける。私が子供の様に可愛らしく接しているせいなのか、両親もまたいつも笑顔で接してくれる。こんな無駄に広い砂漠にある町に生まれたのは確かに嫌々に感じるけど、この両親の下で生まれたことは何よりの幸福である。この両親の事を思えば、私の小さな鬱憤ぐらい我慢できる。



 母の指示通り軽く湯船に付いた後、私たちは母手作りの料理を食べ始めていた。当然日本食とは違って生モノはないけど、生まれてからずっと食べてきたせいかこの食生活にも慣れた。それに母の料理は手間をかけているおかげで、毎日味に飽きない。


「あぁ~、今日の仕事も疲れた~。俺ももう年かな・・・。」


「ふふ、何を言っているの。これから頑張ってもらわないと困るんだから。ほら、たくさん食べて明日も頑張って。」


 父の仕事は貿易の役所で荷物の整理、商品の点検、積み荷の移動などの主に力仕事をしている。ファンタヘルムは地球と違って化学が進んでいなくて機械などの、効率的尚且つ楽に作業できる道具が存在しない。だからそういった作業はすべて手作業だから、父は毎日重労働をしてきている。魔法が存在するのとは反面、そういった文明が進んでいないことは考え物だな。


「他の街町から人を雇いたいけど、砂漠のど真ん中のせいか、なかなか来てくれる奴がいないんだよなぁ。」


「そうよね~、ここに来る人なんてよっぽどのもの好きくらいかしら。」


 ここに住んでいる当に本人たちもここが不便な場所であることは自覚があったようだ。でも長年暮らしているせいかそこまで不自由さはない。


「・・・そういえばさ~、パパって元々他の所から来たんでしょ?何でここに暮らそうと思ったのぉ~?」


 聞いた話では父はもともと王都バースというこことは比べようがない程の都会に住んでいたそうだ。王都バースについては詳しくは知らないけど、きっと周りの環境面でも仕事の待遇もこの街よりかいいはず。今まで聞く機会がなかったけど、話題的にちょうどいいから聞いてみた。因みに母は私と同様にこの街生まれでずっと住み続けているそうだ。


「ん?え~となぁ、パパは最初この街と前に住んでいた所との交易契約をしに使者としてここに来たんだ。無事契約成立した後、俺は交易所の仕事周りのアドバイザーとして残ったわけだ。んで気づいたらここの住民になっていたわけ。」


「・・・それってつまり左遷じゃないの?」


「んなわけないだろ!?ちゃんとした仕事で・・・って、お前よくそんな言葉知っているな?」


 ヤバい、素の反応しちゃった!前世の職のせいかそう言ったことに少し敏感だからなぁ私。子供のように振舞わないと・・・。


「コホンッ・・・へ~、そうなんだ~。じゃあパパとママはどうやって出会ったの~?」


「こらこら、子供がそんなこと聞くんじゃありま・・・。」


「当時交易所の役員として雇われた母さんが働く俺の姿を見て一目惚れ、仕事初日の夜に告白されてそのまま結婚した。」


「お父さんッ!?」


 父がそう言った瞬間、普段物静かな母が机をたたきながら叫んだ。娘に知られたくなかった過去が暴露されたからだろう。余程恥ずかしかったのだろうか母の顔は赤面である。


 えっ、なにそれ、ママの行動早過ぎない!?えぇー今までのママの印象が一変したんだけど、てっきりパパの方から告白したのかと思っていた!人には意外な一面があるって言うけど本当なんだ。


「カナタにはもう少し大きくなってから話すって言うって約束だったじゃない!」


「す、すまん、つい口を滑らせた。」


 母は頭を抱えながら席につき、呆れた表情を浮かべながらため息をつく。母にとって相当恥ずかしい事なのだろう。私はとてもそうとは思わない。むしろ女性として敬意を払いたくなる。


「はぁ~、言っちゃったもんは仕方がないわ。・・・そういえば、お父さん。私ずっと思っていたんだけど、カナタの神の恩恵を受ける場所、王都バースにしない?」


「・・・本気で言っているの?」


 私の純粋な瞳に動かされたのか、母は父にとある事を提案した。父はそれを聞くと食事の手を止めて明らかに嫌そう表情を見せる。


 神の恩恵?・・・あぁ~、ステータスウィンドを表示できるようになるって言うあれか!パパやママのを何度か見せてもらったけど、ゲームみたいですごかったなぁ。早く私も出来るようになりたいなぁ・・・確か10歳の時にその恩恵を受けられるんだっけ?今すぐに欲しい!


「ええ、本気よ。久々にお父さんのご両親に挨拶したいし、それに大きくなったカナタも見せてあげたいでしょ?」


「別に挨拶する必要も見せる必要もないだろ。わざわざ遠いし、王都メラルフ方に行った方がいいだろう、あっちの方が近いし?」


「駄目よ、ここ最近会っていないんだし、ちゃんと挨拶もしたいのに。それにお父さんの昔の友人たちに会えるのかもしれないのよ?」


「そいつらに会いたくないから言っているんだよ・・・。」


 なんかまた新しい地名が出て来た。まあ今の私はまだ子供だから知らないていでいても問題ないでしょ。これから色々と学んでいけばいいし。


「・・・カナタ、お前は王都バースに行きたか?あそこは夜でも明るくて、何処にいてもうるさくて、食べ物は全部ウェルダン・・・それでも行きたいのか?」


 すごい貶すなぁ、何でそんなに行きたくないの?っていうかパパのプレゼンで逆にもっと行きたくなってきた!これはあれかな、やるなって言われたら逆にやりたくなる心境と同じかな?


「うん!パパの故郷なんでしょ?すごく行ってみたい!」


 私は満面な笑みでそう答えた。それは見た父は心を打たれて母の提案を承諾した。


「ふぅ・・・分かった、いいぞ行こう。カナタのためにも一度くらい行った方がいいかもな。・・・あ~、また行くのかぁ。」


「ふふ、ありがとうお父さん。ほら、カナタも。」


「ありがとう、パパ!」


 本当に何がそんなに嫌なんだろう?強く止めないところを見る限り、私やママに何かしら害はないって考えた方がいいかな?まあ実際行ったら分かるか・・・っていうか、さっきからずっと笑って話していたせいか、頬が痛くなってきちゃった。子供ってこんなに笑う者だったっけなぁ・・・当立ちの雰囲気とか見て私も子供についてもう少し勉強しておこう。


 その後も何気ない談笑を続けながら夕食を食べ続けて、いつの間にか皿にあった料理がなくなっていた。何か特別に言い方をしているけど別に今日はいつも通りの日常だ。他者から見ても本当に何気なく、一般的な家庭のやりとりだけど、私はこんな風に“家族全員で食事する事”が大好き。こんな一般的な生活が前世の私は欲しかった。だから今でも心の中で言う、“神様、私を生まれ変わらせてありがとう”と。“幸せいっぱいの家庭をくれてありがとう”と、私は感動するたびに感謝している。そうしないとまた失った時に、一生後悔するから。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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