表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第1章 アスタ・サーネス
43/96

第42話 【スキル:狂人化】

諸事情により編集しました。

旧タイトル“『スキル:狂人化』発動”

 現在、ゴブリンとペレーハ村の住民が交戦の中、剣と農道具により鉄のぶつけ合いによる音が相次いでいる。カキンッカキンッと鳴り響く音はとても耳障りだけど、命のかけた戦いに文句は言えない。

 俺は戦いに巻き込まれないように上手く建築物や煙を使って、隠れながら戦地を離脱している。これから燃えている柵に魔法で消化しなければならない。もしゴブリンに見つかって戦闘が始まったら、俺は間違いなく魔法を使って応戦する。そしたら消火活動に間違いなく支障がきたす。住民が一丸となって頑張っているのに俺だけ何もできないのは嫌だ。ゴブリンに見つからないようにできる限り素早く移動して、北西付近へ向かった。


 少しでも身軽にしようと何も持たずに来たけど・・・何か武器になる物取ってくればよかった・・・。いやまぁ、戦うつもりはないけど・・・丸腰であのゴブリンの集団の中に突っ込むのはすごく怖かった!

 ヤバい、久しぶりにゴブリンあんなに近くで見たけど・・・すごく怖い!勢いに任せていったけどすごく怖かった!ナエナちゃんもそうでけど、村のみんなはよく突撃しに行けたなぁ。多少の勢い感はあったけど、怖くないの?・・・あれ、俺が臆病なだけなのか?


 自分は小心者だと自覚はあってけど、こうして比べる対象を見れたことでより底辺の小心者だと認識する。一瞬気が滅入る。その深さは最初に村が燃え始めた光景を見た時の同等のもの。



 何度も背後を振り勝って後を追われていないか確認して、父さんたちがいる北西付近に到着することが出来た。すでに消火活動は始まっており、たった数分の間で意外にも燃えた策の消化は進んでいる。最後にもう一度後ろを確認して父さんの下へ向かう。


「おっ、アスタ!よかった無事で・・・ってどうしたんだその汗は!?まさかゴブリンと戦って来たのか!?」


 到着時、俺の顔から信じられないほどの汗が流れていた。これは西門付近の炎による熱で流れたものではなく、ただ単に少ない体力で無理に運動して流れたもの。まさか早くも引きこもったツケがここに来るとは思わなかった。心配そうに聞いてくる父さんに息が切れながらも、なんとかこの発汗量について説明する。


「・・・本当にたったそれだけでそんな汗をかいたのか?」


「・・・はい。」


 それしか返答が出来なかった。事実なのだから。


「・・・ナエナちゃんはどうだった?」


「無事でした。加勢してくれた村のみんなと一緒にゴブリンを討伐したいそうです。あっちは人数的にももう大丈夫だと思います。」


 返答を聞くと父さんは嬉しそうな表情を見せる。彼女は無事、村は助かるという2つの意味で、その張り付くばった顔に笑みを浮かべる。


「よっしゃ!それは良かった!ならこっちもとっとと終わらせないとな!おーいみんな、あっちは何とか大丈夫そうだ!!俺たちもさっさと終わらせるぞ!!」


「おおー!!」


 父さんの大きな声による朗報と鼓舞がその場にいる住民たちを活気立てた。明らかに住民たちのやる気が上がり、消火活動も進んでいった。数年間引きこもっていて知らなかったけど、父さんはペレーハ村ではかなりのカリスマ性を持っていた。


「アスタ!どうしたのそんなに疲れた顔をして!?」


 何故か母さんまでここの消火活動に参加していた。最後に確認した時は子供老人たちと一緒に村長の家に避難していたはずなのに、何故かこんないつゴブリンが来てもおかしくない場所にいた。


「母さん・・・!?何で母さんもここにいるんですか!?」


「なによ、たかが火を消すだけなのにお母さんは来ちゃダメなの?」


 何か根本的に間違っているような気がする。今の状況を分かっているのだろうか。


「思いのほか火の回りが早いから女性のみんなにも手伝ってもらっている。」


 そう言われて消化活動している住民たちを見ると、確かに少ないが女性の村人も手伝ってくれている。気のせいだろうか、水魔法の水量が男よりも多いような気がする。普段農仕事している男よりも、家事などで魔法を毎日使い続けている女性たちの方が魔法の熟練度が高いのだろう。


「アスタ、お前無理して走ったから疲れているだろ?少し休んで・・・。」


「いいえ、大丈夫です。俺にも手伝わせてください。」


 食い気味に拒否した。せっかくの気遣いを無下にするようで失礼だと分かっている。こうしている間も村のためにナエナちゃんは戦ってくれている。俺だけ休むなんて絶対に嫌だ。じっと見つめ合うと、父さんは俺の気持ちを察してくれた。


「・・・分かった、じゃあ頼む。あそこの高い方に水をかけてくれないか?お前なら毎日の水やりで放水は慣れているだろ?」


 父さんはペレーハ村を囲む柵の最大の高さ、地上6メートルの高さで燃えている火に指をさして消火を頼んだ。あの高さでの消化は水魔法をホース代わりにしてやらないと正直きつい。現にあそこまでの高さを消化できているのは水魔法を使える住民しかいない。人数もそこまで多くないから下半分より上半分の方がだいぶ遅れている。


「いい、絶対に無理はしないでね?気持ち悪くなったらすぐに言うのよ?」


「はい、分かりました。それでは俺も手伝ってきます!」


 両親に一礼をして、頼まれた持ち場に向かった。疲労しきっている自分の身体を無理矢理動かして走った。眠気もあってかなり辛い。でも、こんな状況とはいえ家に引きこもっていた俺のこと信じて、作業に手伝わせてくれた両親に対応に感謝した。疲労どうでもいい程に嬉しかった。

 両親から少し離れて、少し高い場所で燃えている炎に人差し指を向けて魔法を発動する。水の出口を狭くして、高水圧で遠くに水を飛ばすことをイメージする。毎日水魔法を使っていることもあって、今の水魔法の熟練度はレベル10。いくら慣れていない高さでも容易にできた。


【水魔法:ザ・ウォーター】


 指先からイメージ通りに放水されて、6メートルの高さにある炎に命中。燃えている柵は水で濡れて、炎は拒まれるように消えていった。俺の前にあった炎がある程度消えると、指先を徐々に横をずらして別の場所での消火も始める。慎重に丁寧に焦らずに、ただ炎を消すことだけに集中して作業を進める。

 そんな中、長く燃え続けていたせいで柵の先端の一部脆くなり、高水圧での消化で崩れてしまった。この村も出来てずいぶん時間が経ったと聞いている。策自体もかなり老朽していたのだろう。


 ・・・何でゴブリンはここみたいな脆くなった柵から壊して侵入せずに、わざわざ明らかに見てわかるほど分厚い西門から来たんだ?草原から来たとしても少し回り込めばいい話なのに。深夜で突撃してきたと言うことはゴブリンの中で多少の計画を練ってきたのか?・・・何かがおかしい、何かが引っかかってしまう。


 考えるのに夢中になり、俺の魔法は無意識に止めてしまい考え込む。脳内で出来るだけの思案を巡らせて考えた結果、小さかった疑問にようやく気付いた。気付いたというより思い出したと言う方が近い。そう、最初のペレーハ村の西門から鳴った、地揺れと共にきた爆発音だった。


 ナエナちゃんの事や避難の事ですっかり忘れていたけど、あれは何だったんだ?まさか魔法?いや、ゴブリンは確か魔法が使えないって本に載っていた。じゃあは道具か?・・・いや、それも考えにくい。それだったらわざわざ西門まで遠回りして持ってきたことになる。てことは・・・魔法が使える奴がいる・・・。


 自分が勝手に考えた仮説で一瞬背筋が凍り、恐る恐る天高く黒い煙が上がる西門付近に見つめた。いつものように俺の悪い癖である確証もないただ妄想や思い込みだけかもしれない。自分でも何でこう悪い方へ考えてしまうのか分からない。だけど何か安心できるような、自分の考えを否定してくれるような、これ以上の恐怖はもうないと思えるような確実なモノを俺は求めていた。そう思いながら西門を見つめ続けると、突如と俺の仮説を決定的にしたモノがやってきた。


「ギィィィィアアアアア!!」


 それは化け物の咆哮。西門の向こう側から聞こえたその生物から出たとは思えないその鳴き声は村中に響いた。戦闘していた住民とゴブリン、消化活動していた住民、村長宅で避難していた住民の全員がその声を耳に入ると、ピタッと一瞬動きを止める。全員呆然とした表情で固まり何がなんだと全く理解できていないそぶりを見せるが、俺とゴブリンたちだけは違った。俺は的中された自分の仮説が的中されて顔面蒼白になり、ゴブリンたちは待っていた合図がやっと来たと言わんばかりの不気味な笑みを浮かび始める。


「お、おい・・・何だったんだよ今の・・・!?」


「サーネスさん、本当に向こうは大丈夫なの!?」


「なあ、今のってゴブリンなのか!?どう考えてもゴブリンの鳴き声じゃあなかったぞ!?」


 消火活動をしていた住民たちが不安をこぼし始めた。作業の手を止めて次々と両親の下へ集まってきた。流石の父さんでもあの声への動揺を隠しきれなかった。


「お、落ち着いてみんな!あんなのただでかいだけの声だ!?それに西門には大勢で向かってくれている!もし向こうで苦戦しているのなら俺たちも加勢しに行けばいい!」


 父さんは何とか住民たちの不安を取り除こうと必死に話すが、隠しきれていない動揺のせいで誰も落ち着けることはできなかった。そんな中、先の化け物の声の後に何やら風切り音が聞こえてくる。何かが近付いてくる音なのだが周囲を見渡しても何もない。音は徐々に大きくなり、住民たちは迫ってくる何かより不安を募らせた。


「みんな、上!上!」


 1人の住民が音の正体に気付いて空に指をさす。それに誘導されてその場にいる全員が空を見上げると、無数の火矢が飛んで来ていた。その数の多さは異常で、広範囲にペレーハ村の中心に向かって放たれていた。その範囲には現在俺たちがいる所も含まれていた。

 住民たちは火矢の存在に気付くと叫び、逃げようとするが、その尋常じゃない数が逃げきれない証明していた。何より気付くのが遅かった。火矢1本1本の隙間はまるで機械で放たれたかのように狭く、確実に息の根を止めにかかろうとしていた。それをすぐに理解した俺は、誰よりも早く自分の死を察した。


 もう、無理だ・・・あんなの、逃げ切れるわけがない。・・・何でこうなったんだ・・・。


 住民たちが慌てふためく中、俺は諦めて棒立ちになり、襲い掛かる火矢を待つような態勢になる。


「アスタァァァァァ!!」


 そんな俺に正面から父さんが全速力で突っ込んできた。父さんは俺を地面に押し倒して、守るように自分の体で覆い隠す。そして火矢が遥か高い上空からペレーハ村の地面へと降り注いだ。

 火矢が来た瞬間はまさに阿鼻叫喚。必死に足掻こうとする住民たちの悲鳴は、グサッと刺さる音と同時に一瞬にして無くなった。視界で確認できないが、間違いなく無数の火矢が住民たちの体中に命中したのだろう。

 あんな数から逃げ切れるわけがなかった。だけど、俺は何故か無傷だった。そう自分の頭で理解できるようになった瞬間、父さんが俺の上から倒れてきた。


「・・・父さん?」


 眼は開いている、しかし返答してくれない。恐る恐る父さんの重い体を横にずらしながらゆっくりと起き上がってみると、父さんの後頭部や背中に無数の矢が刺さっていた。


「父さん・・、父さんッ!?」


 頭では理解している。父さんは俺を庇った際に運悪く後頭部に矢が突き刺さり、絶命したと。だけど俺は現実を受け入れられずに、何度も動くはずもない父さんの体をゆすって問いかける。返答はなし、耳に入るのは自分の声だけだった。

 そんな動作を繰り返していく中、俺は母さんの存在をふと思い出した。涙目になりながらも周りを見渡して母さんは無事かどうか確認する。その際に矢の刺さった多くの死体が転がっているのを目視してしまった。そう、この場に生き残ったのは俺だけだった。


 いや・・・そんなはずがない!きっと、きっと何処かに母さんも・・・!


 そう信じながら立ち上がって母さんの捜索を始めた。だけど捜索はすぐに終わった。視界の端に横になっている母さんの姿が確認できた。2度見するようにもう一度その方角を向くと、そこには父さん同様に多くの矢が刺さった母さんの姿をあった。父さんは背中からに対して母さんは横から降り襲われて、その首には深く矢が刺さっていた。父さん同様に、母さんも絶命していた。

 俺はその場に膝から倒れて固まる。今の心境はまさに人生最大の絶望。無傷なはずなのに苦痛を感じ、これ以上の無いと言うほど孤独感を感じた。


「・・・何で、俺だけ生きているの?どうして俺なの?転生者だからなの?昔ゴブリンと関わったからなの?ねぇ、誰か・・・誰か答えてよ・・・。どうして・・・俺なんかがぁぁぁぁぁ!!」


 俺は理性を失い、完全に発狂しだした。何度も自身の頭をかきながら、この気持ちを発散させようと叫んだ。だけど全く無くならない。むしろより絶望感が増した。

 いつも明るくて勇気を持って行動した父さんは死んだ。いつも優しくて愛情をくれた母さんは死んだ。俺なんかより生き残りべき人物が、俺より先に死んでしまった。現実は時に残酷な景色を視界に映し、脳裏に焼き付ける。焼き付いた記憶は心を濁らせて、自分の中の枷を安易に外させる。


【スキル:狂人化】


 無意識にスキルを発動してしまった。使わないように決めていたのだが、俺の心にはもうそんな余裕はない。目の前で大切な人たちが失って何も考えられない。3年前、初めてゴブリンと戦った日のように、今の感情に身を委ねた。

 スキルを発動すると体中の魔力が分かるほど早く巡り始めて、青いオーラが全身を覆い、力があふれ出てきた。ただし代償として少しずつ意識が遠のいて行こうとしていくのも感じる。そして意識が消える瞬間、スキル発動中で戦う相手の選択を自分自身に迫ばれる。戦う相手は当然、この村及び草原にいるゴブリンの集団とあの大きな奇声を上げた化け物“全員”だ。そのイメージを狂人化のスキルに強く思いながら、俺の意識は静かに消えていった。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ