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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第1章 アスタ・サーネス
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第39話 ゴブリンの集団の襲撃

諸事情により編集しました。

星暦2032年、冬の45日、土の日、真夜中


 俺の家を除きほとんどの家の明かりが消えて、ペレーハ村は夜の暗さと同化した。唯一村の中を照らしてくれる月の光も、雲により隠されている。酷く冷えた夜の風が村中を走った。

 村の門番は北東門と西門に2人ずつ警備している。3年前のゴブリン出現により多少の危機感を感じた村長が、その前日に人員を増やすことにした。武器は新しく街から門番の人数分発注して装備させて、警備を強化した。

 しかしあれから3年間、ゴブリンどころか魔獣の1匹すらこの村を近付いて襲おうとしなかった。それもそうだろう、ペレーハ村は魔除けの魔石が2つの門に埋め込まれているのだから。あの時のゴブリン集団が例外なだけであって、このあたりの地域でこの村を襲おうと思うモンスターは生息しない。

 今夜の門番たちは無駄口を話しながら長い夜を過ごしている。怠っている様にも見えるが何もない真夜中だから仕方がない。今日もペレーハ村は平和に一晩を過ごすと思っているのだから。


ドカーン


 突如村全体に地揺れと爆音が起きた。まるで何かが崩壊したかのようだった。


「えっ、なに!?」


「じ、地震!!」


 自室で談笑をしていた俺とナエナちゃんは地揺れと爆音を感じた。今まで体感したことない現象にすぐに理解できずに俺は固まってしまった。一方ナエナちゃんは何か情報を得ようとベッドから起き上がり、すぐさま窓を開けて村の様子を見始める。


バタンッ


「・・・ッ!!」


 彼女はあの光景を見ると絶句して、固まった。その様子に気になった俺は彼女の隣に立ち同様に窓の外を見てみると、彼女が固まった理由が分かった。俺たちの目に映ったのは、高く煙を上げて燃えている西門だった。炎は木製で出来ている門から両隣に繋がっている策へと燃え移り、徐々にその火の粉を広げ続ける。


 うそだろ・・・なんだよ、これ・・・?門が・・・燃えている?


 到底受け入れられないこの現状に言葉をなくす。先まで楽しかった感情は打って変わって悲しみへ、急な心境の変化に頭が働かなかった。しかし村に起きた異変は休めせてくれなかった。

 家から西門まで距離があるせいでよく見えないが何やら人影が見える。確認が取れないが恐らく今夜門番をしていた人たちだろう。しかしその人影の数はなぜかいつもより多く見える。毎晩2人がしているはずなのに炎から出てくる影は5人6人と増え続けた。


「うそ・・・あれって・・・!!」


 隣に立っているナエナちゃんは小さくそう呟く。その顔はまるで恐ろしいものを見えたかのように青くなっていた。彼女は何かを急ぐように部屋から飛び出して、屋根裏に向かった。丁度この部屋の真上で何やらドタバタと物音を立てている。

 彼女が一体何を見て動いたのか全く理解できず、もう一度燃えている西門に目を向けた。眼を離した隙にいつの間にか人影の数は20人以上増えていて、今もなお増え続けていた。明らかに門番ではなかった。その正体が気になり、何とか確認しようと眉間にしわを寄せて見た。

 そして燃える炎の光によって、やってその影の正体が分かった。ナエナちゃんが何故あんな顔をしたのか遅れてようやく理解できた。俺も彼女にようにすぐに理解するべきだった。炎の光で見えるその緑色の体を見た瞬間、俺の脳裏は3年前の出来事を思い出させた。その影の正体は緑色をした体を持った魔物、ゴブリンの集団だった。ゴブリンたちは見る限り全員何かしらの武器を装備しており、俺たちに対して殺意が感じられた。


 何で・・・何でゴブリンの集団がこの村に!?まさかあれ全部ゴブリンなのか!?どうしてこんな夜中に、どうやって炎を出した!・・・ヤバい、ヤバいヤバいヤバいヤバい!!


 他の家も先の地揺れと爆音で目覚めて、それが気になり家から出てき始めていた。不用心に何も持たずに、燃える西門に向かって歩き始めていた。


「アスタ、ナエナちゃん、大丈夫!?」


 両親が部屋に訪れてきた。この2人も他の住民同様に目覚めたのだろう。窓の近くに立っていた俺は両親の方を振り向くと、指を震えさせながら、西門の方へ指す。両親は誘導されて、部屋に入って窓に近付き、指の方角を見た。


「一体どうし・・・えっ。何よ・・・あれ・・・。」


「うそだろ・・・。」


 両親は先の俺たちの様に言葉をなくした。母さんは村の悲劇を目の当たりにして涙目になり、父さんは絶道のどん底に落ちたような表情になり絶句した。この反応は間違いなく門が燃えたことではなく、ゴブリンの集団の存在に気付いたのだろう。そんな固まった俺たちの耳に走る足音が聞こえてくる。


「アスタくんッ!それにおじさんにおばさんも!」


 ナエナちゃんが屋根裏から戻ってきた。その格好は初めて見る銀色の防具と昨日アンデッドを討伐した剣を装備しており、まるで今から戦闘を始めるかのようだった。


「ナ、ナエナちゃん・・・その格好は?」


「私がゴブリンたちを引き付けます、その間に北東門から出てこの村から逃げてください!」


 母さんの問いに対して彼女はとんでもない事を口発した。彼女はあのゴブリンの集団と戦うつもりだ。どう考えても無謀にも程がある。


「なっ、君を置いて俺たちだけ逃げろと言うのか!?そんなことできるわけないだろ!君も一緒に・・・。」


「私は冒険者です!この村の中で1番戦えるのは私だけなんです!集団相手には慣れています、だから私のことより先に逃げてください!」


 確かに彼女の言う通りだ。この村の住民はほとんどが農民、戦闘なんてできるわけがない。武器を持てば多少は戦えるかもしれないが、下級モンスターとは言え相手も武器を装備している、正直勝てる見込みがない。し村にある武器になるもと言えばせいぜいスコップやノコギリや果物ナイフぐらい、戦えるとは思えない。


「アスタくんたちは村のみんなを先導して隣の町まで避難してください。暗くて魔獣が出そうかもしれませんが、この周辺は下級モンスターしかいません。大人数で固まって移動すれば怖気づいて出て来ないかもしれません。後からゴブリンに追われたとしても分かれたりしてバラバラにならないでください。ゴブリンは少ない人たちから集中的に狙ってきます。そして・・・」


「ちょっと待って!後からゴブリンって、ナエナちゃんも・・・ちゃんと逃げるのよね?」


 ナエナちゃんが俺たちに住民の避難を任せて、それについて説明しているなか母さんが食い気味に質問した。当然だろう、あんな言い方をされればまるで、もしも自分の身に何かあった時みたいに聞こえるのだから。彼女は少し間を空けると、笑顔で返答してくれた。


「大丈夫です!私、これでも走るのは得意ですから!本当に危なくなったら退き際をみてちゃんと逃げます!さっきの言い方は勘違いをさせてしまいましたね。私も冒険者になれましたがまだまだ新米です。あのゴブリンたち全員の相手はどうしても無理かもしれません。だからもしも、取り逃がした奴らがいた時にために説明していたのです。」


 ナエナちゃんの冷静で自信のある説明に母さんは何も返せなかった。


「キャァァァァァァ!!」


「モンスターだ!モンスターが襲って来たぞぉぉ!!」


 外から叫び声が聞こえた。ゴブリンが住民たちを襲い始めたようだ。外を見るとゴブリンたちは、外出した住民たちを追いかけている。幸いまだ負傷者は出ていないが、このままじゃ時間の問題だ。


「あとはお願いしますッ!」


 悲鳴を聞いたナエナちゃんはその一言を残して部屋から飛び出して、階段を下り、家を出た。部屋の窓からその様子が確認でき、彼女はそのまま悲鳴の元まで走り続ける。

 確かにナエナちゃんの言うことは全くの正論。強いある者が弱い者の盾になる、他人行事で見れば素晴らしい判断だ。だけど、俺はどうしてもそんな眼で見ることが出来ない。

 ナエナちゃんが強いのは分かっている。ナエナちゃんが逞しいのは知っている。ナエナちゃんがいればこんな状況も何とかしてくれることも理解している。ただ俺は見てしまった。

 そんな彼女が家を飛び出す瞬間、この部屋では自信満々の笑顔とは裏腹に、かなり焦っている表情をしていたのを。あれほど人が危機を感じた顔を見たのは初めてだ。俺たちの前であんなことを言ってはいたけど、実際にナエナちゃん自身もこんな災害に直面したのは初めてだろう。

 それでも彼女は向かった。自分がこの村で1番戦えると分かっているから、彼女は勇気を持って俺たちの代わりに向かってくれた。彼女にとって俺たちは、言い換えればお荷物かもしれない。頭では分かってはいる、だけど、それでも、納得ができるわけがない。


「・・・父さん、母さん、お願いがあります。」


 ナエナちゃんが出て行ったあと、どうすればいいのか迷って困惑している両親に、俺はとある頼みごとをした。その時、俺は3年前のゴブリンと戦った時の様に覚悟を決めていた。



<ナエナ視点>


 思考を巡らせて、何故こうなったのか私なりに推測しながら走っている。昼から夕方にかけて走り続けて疲労している身体に鞭を撃つように動かして、必死に現地に向かっている。幸い先の悲鳴でゴブリンの襲撃と気付き始めて、民家から次々と住民が出てきて避難をしようとしている。どうにかゴブリンたちがここまで来る前に逃げ切ってくれるだろうか。

 アスタくんの家で確認したあのゴブリンの尋常ではない数は、間違いなく冒険者本部から報告があったゴブリンの集団。最近小さな村や町が頻繁に襲われ始めたからもしかしてと思い故郷に帰ってくれば、まさか予想通りになるとは。相手は下級魔物とはいえ全員何かしらの装備していた。普通の村人じゃあ太刀打ちできない。今この村で戦えるのは私しかいない、私がみんなを守るしかない。


 ・・・でも、アスタくんなら・・・一緒に戦ってくれたかな。いや、ダメ!それだけは絶対にダメ!せっかく恐怖を克服できたのに、“一緒に戦って”なんてお願いできない!


 確かに昨日のアスタくんの射撃術はすごかった。冒険者でもあれ程の正確に狙うのは至難の業。正直どうやってそこまで射撃術のレベルを上げたのか教えて欲しかった。でも、彼の話を聞く限り、またゴブリンとの戦闘の恐怖を思い出させるかもしれない。ただへさえあの日の戦いを教えてもらったのにこれ以上穿り返すわけにもいかない。

 アスタくんには笑顔でいて欲しい。小さい頃から彼はあんまり笑ってくれなかった。まるでこの世のすべてに対して恐怖を抱いているように、周りに恐れて素直になれなかったように見えた。

 そんな彼が今ようやく、私の前で笑ってくれた。笑顔を見せてくれた。もうこれ以上彼から笑顔を奪わせたくない。私は守る、この村も、彼の笑顔も。


 心の中で覚悟を決める頃に、ゴブリンの集団が見えてきた。悲鳴を上げた住民を助けようと周りを見渡すと、もう手遅れだった。もうすでに何人かの住民が殺されて、ペレーハ村の中で血が流れていた。ある者は切られ、ある者は刺され、そしてある者は引き千切られていた。その死体は老若男女様々、殺され方も様々だ。運悪く西門近くの民家に住んでいた家族が襲われていた。

 そんな住民たちの死体を見てゴブリンたちは満面の笑みを浮かべながら大きく笑っていた。人の死に対して楽しんでいた。それを見た私は、自分では抑えられないほど怒りが込み上げてきた。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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