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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第1章 アスタ・サーネス
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第34話 怒ると怖い

諸事情により編集しました。

 ホーンラビットがアンデッド化したのは、どうやらアスタくんが原因らしい。3年前、森に入ってゴブリンの探索している時、彼は偶然このホーンラビットと出会った。しかし当時の彼は近づいてくる音だけ聞こえて、それがゴブリンと勘違いをしてしまい、持っていたスコップで攻撃してしまったそうだ。その際にホーンラビットの一本角を折ってしまい瀕死にしてしまった。確かにこのホーンラビットは角がない。

 そして私が最初に討伐したゴブリン、あれもアスタくんが殺してアンデット化してしまったそうだ。彼の話しでは、その後ゴブリンたちを見つけるが、実物を見て恐ろしく感じて逃亡した。その際に、片足を攻撃されて動けなくなり絶体絶命な状況になったそうだ。その時に牽制のつもりで発動した『アクア・ピストル』が運良く1体に命中して倒すことができた。そのゴブリンには決定的な証拠があり、私が切ったゴブリンの頭部を見てみると、額に魔法じゃないと開けられそうにない丸い跡があった。

 つまりこのアンデッド集団は、アスタくんが倒したモンスターが死体のまま放置されて、それが数年の時をかけてアンデッド化してしまい増殖していったことになる。全ての原因は俺だ、と彼自身が語った。彼が私に説明し終わると、この状況を作った原因である自分自身に後悔するかのように膝から地面に落ちて両手で頭を抱える。


 それでも私は、アスタくんが悪いとは思わないよ?だって・・・仕方がないと思う。その時のアスタくんは生きようと必死だったんだから・・・本当に仕方がないと思う。何も悔いる必要がないと思うよ?


 そう思っても口には出さなかった。こんな言葉でアスタくんが納得できるとは思えなかったから。私がそう考えると、彼はホーンラビットの腐肉に触れようとする。


「アスタくん触っちゃダメ!それに触ると腐食になっちゃう!」


 腐食という単語を知っているのかは分からないが、とにかく触るのを止めさせた。それを聞くとアスタくんは両手を止めると強く握りしめて、ゆっくりと自分の膝の上に置いた。


「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。俺のせいで・・・俺なんかのせいでこんな姿に・・・。本当に・・・ごめんなさい・・・。」


 死んで腐肉になったホーンラビットに涙を流しながら深く謝罪をする。何度も何度も謝罪して、自分を貶した。長い前髪でその表情は見えないけど、間違いなく後悔しているだろう。そんなアスタくんの背中を黙って見続けている私は、何も声を掛けられなかった。


星暦2032年、冬の43日、火の日、夜


 空が完全に暗くなった頃になると、アスタくんはようやく落ち着いた。まだ精神的に疲弊しているようだけど、それでも立ち上がってくれた。その後、彼に協力してもらって討伐したアンデットの腐肉を処理した。私の火魔法で腐肉を灰になるまで燃やして、周囲の草に燃え広がないように彼が水魔法で消化する。


「手伝ってくれてありがとう、アスタくん。助かったよ。」


 そう励ますつもりお礼を言ったけど、アスタくんは頷くだけで返答をしてくれなかった。腐肉が完全に灰になったのを確認すると、私たちはその場で黙祷をする。仕事で何度か討伐してその命を奪ってきたけど、今回ほど命の尊いと感じたのは初めてかもしれない。それが例えモンスターでも。黙祷を終えて、私たちは静かに西門の方へと振り返り村へ帰った。


 ここでちょっとした問題発生。村の西門に近づくと、門を閉まっていた。この時間になると門はいつも閉まり掟を完全に忘れていた。普通なら村に入れなくて大変だが、今の私には大した問題ではない。

 今朝と一緒で私の『筋力強化』を使ってアスタくんを抱えて、門の上まで跳ねるように飛んで村に入った。空が完全に暗いおかげで誰一人気付かれず家の屋根を伝って飛び移り、アスタくんの家の庭へと無事に到着する。庭に着地すると抱えたアスタくんをゆっくり下ろすと、彼は地面に足を付けると座り込んでしまう。立たない、立とうとしなかった。恐らくまだあのアンデット集団のことを気にしているのだろう。


「えっと・・・アスタくん、もう気にしない方がいいと思うよ?もう終わらったことだし、それに・・・いつまでもそうやって悩み続けると、きっとあのホーンラビットもちゃんと成仏できないと思うよ?」


 結果論で説得した。正直これでアスタくんが納得してくれるとは思えないけど、何も言わないよりかはマシだと思う。そんな時、彼はやっと何か言ってくれた。小さくつぶやいたその言葉は全く聞き取れずもう一度言ってもらった。


「・・・腹が痛い・・・。」


「・・・ん??」


 聞いたことがあるセリフだ。今朝アスタくんを運び終わった後に言った感想と全く一緒のセリフだ。よく見ると彼は立とうとしなかったのではなく、腹痛でお腹を抱えて立てなかった。先ほどの移動中も何も言わなかったのは、お腹に来る衝撃を我慢していたからだろう。


 えぇ~、そんな理由?!てっきりまだ気にしているのかと思っていたよ・・・。


「えっと、大丈夫?」


「うん、何とか・・・そういえば、何か言っていたよね?・・・あの魔獣のこと?」


 アスタくんはゆっくりと立ち上がりながら問い返す。痛みを苦しんでいてもちゃんと私の話を聞いていたようだ。私はそれに頷く。


「・・・確かにまだ少し気にしているよ。あのホーンラビットだけじゃない、アンデットになったゴブリンや魔獣たちのことも。・・・でも、もう大丈夫。正直まだ頭の中が整理できていないけど、それでもちゃんと前を向くよ。励ましてくれてありがとう、ナエナちゃん。」


 アスタくんは最後に小さく微笑んでくれた。どうやら私は彼を過小評価していたかもしれない。私が思っていた以上に彼の心は強く、逞しく、そして優しかった。家から出ている光で僅かに見えた彼の顔がカッコよく思えるくらいに。


ガチャッ


「アスタッ!?それにナエナちゃんも!?一体こんな時間までどこに行っていたのよ、心配したんだから!」


 家の扉からおばさんが出て来た。庭から私たちの話し声が聞こえて確認しに来たのだろう。確かに何も言わずに、しかもこんな時間になるまで帰って来なかったのはかなりまずい。とりあえずその場で頭を下げて謝罪する。


「ご、ごめんなさいおばさん!えっと、アスタくんと草原に行ってて、それでずっと話してて・・・。」


「話はあと、2人とも家に入りなさい!」


 おばさんは私たちの手首をつかんで家に入れた。入れると言うより引きずり込むに近い。普段手首をつかむ側だった私がこうして誰かに掴まれるのは初めてでかなり戸惑う。そして家に入ると私たちは正座させられた。


「2人とも何考えているの!?もう少し遅かったら村長に所に行くところだったんだから!全く、大人にもなって、まともに連絡1つもできないの!?そもそも朝から急にいなくなっていたじゃない、どういうことか説明しなさい!」


 アスタくんの家に雷が落ちる。雷魔法を使っているのかと思わせるほどの迫力ある、おばさんの説教が始まった。私たちの前で仁王立ちするおばさんはとても怖い。こんなおばさん初めて見た。討伐困難なモンスターと対峙している時くらい身震いする。これは余計なことを言うと更に雷が降りかかりそうだ。


「まあまあ母さん、こうして2人とも無事に帰ってきたじゃないか。そんな怒鳴らなくても・・・。」


「あなたは少し黙っててッ!!」


「すぅ・・・はぃ・・・。」


 え、え~~!?


 養護しようとしたアスタくんのおじさんだが、おばさんの圧に一瞬で沈黙した。そして1人テーブルで湯飲みを両手で持ってゆっくり飲み始める。見たくないサーネス一家の上下関係を見てしまった。


「全くもう!どうして私の周りの人はこう、いつも心配させるような行動をするのかしら。はぁ~、仕事している時より疲れるわ。」


 恐らく数年前アスタくんが大怪我した事も含んだ発言だろう。もしそんな事が過去にも度々何度かあったのなら、確かに頭を抱えてしまうほど疲れてしまう。おばさんは相当の苦労人なのだろう。


 っていうか・・・足が痛い!痛い、痛い、痛いよぉ・・・なんか足首辺りが変な感じがする!?


 普段地面にはあぐらで座っていた私には、少しの間の正座は十分な苦行であった。足首が痺れてきて感覚が麻痺してきた。だけどまだ足は崩せない、まだ説教が続いているから。こんな怖い顔したおばさんの前で正座を崩すことができない。歯を食いしばって我慢するしかなかった。

 そんな自分との葛藤している私とは対照に、隣にいるアスタくんは静かに、タイミングを見計らって口を開ける。


「・・・母さん、ごめんなさい。」


「「・・・ッ!?」」


 おばさんが説教をしている中、アスタくんが唐突に謝罪した。ここ数年間、会話をしなかった両親に対して、彼は勇気をもって言葉を発した。おばさん、そしておじさんはそんな彼の声を聞くと、まるで時間を止められたかのように硬直する。


「今日だけじゃない、ずっとずっと・・・本当に、ごめんなさい。母さんが心配していたのは知っています。父さんも俺の分まで頑張って仕事していることも知っています。本当はもっと早く言いたかった、話したかった、伝えたかった・・・でも、何でかあの日から人と話すのが怖くなったんです。こんな俺を大切にしてくれた2人に対しても・・・。2人には申し訳ないって思っています。本当に・・・ごめんなさい・・・。」


 淡々と、しかし気持ちのこもった謝罪の言葉を言いながらアスタくんは土下座をした。額が床に当たる程深く。これが彼にとって形に表せる最大の謝罪。それほどに彼の思いは本物ということ。そんな彼の事がを聞いて、真摯な姿を見て、おばさんは涙ぐんだ。ようやく向き合おう考えてくれた我が子に歓喜した。おじさんは席から立ち上がって彼に近づき、床に頭を付けている彼の肩をポンっと置いた。


「アスタ、顔を上げな。」


 アスタくんはゆっくりと頭を上げて、おじさんと目合わせた。


「もう、大丈夫なのか?俺たちのこと、もう怖くないのか?」


「はい。・・・今まで、すいませんでした。」


「・・・それは良かった!」


 おじさんはそう言いながら笑い出した。涙を流してはいないけど、きっと内心はおばさんと同じくらい歓喜している。私が思っていた通り、やっぱり許してもらえた。2人はきっと笑って許してくれると信じていた。いや、それだけじゃない。こうして許してもらえたのはアスタくんがちゃんと自分の意思で、正面に向かって謝ったからだと思う。


「・・・アスタ。」


 次におばさんが声をかけた。先まで怒っていたのが嘘の様に怒気が消えていた。


「はい・・・。」


「・・・明日からちゃんと“あはよう”から“おやすみ”までちゃんと言ってくれる?・・・前にみたいに?」


 おばさんの謎の要求に私とアスタくんは困惑した。意図が全く理解できない。そんな私たちとh反対に、おじさんは少し笑っていた。夫婦だからだろうか、おばさんの意図が理解したのだろう。アスタくんは疑問に思いながらも返答する。


「えっ・・・はい、もちろん言います。これからも、ずっと。」


「“おはよう”と“おやすみ”・・・こんな当たり前な挨拶、私たちはしなかったじゃない?私はもう一度あなたと言いたいの、家族なんだから、こんな当たり前な挨拶を。約束できる?」


「・・・正直に言うと、またいつ人を怖く感じ始めるのかは分かりません。・・・でも、その挨拶だけは毎日します。約束します。」


「分かった・・・。じゃあ、今日の所は許します!」


 アスタくんはこの場で誓った。ただの口約束の様にも見えるけど、彼の眼が良く見えていない私でもその本気は十分に伝わった。そんな彼は決意を信じて、おばさんは許してくれた。

 貰い涙なのか、それとも感動したせいか、そんな家族の横で私は思わず目元から涙が零れてしまう。


 うっ・・・涙が・・・。なんて感動の瞬間・・・!やっぱりね、うん、アスタくんのおじさんおばさんはやっぱりいい人だった!もう・・・涙が止まらないよ!もうこれ、私いらないよね?もう私邪魔だよね?こんな感動場面で私、どうすればいいの?


 袖で涙を拭く私は自分の微妙な立ち位置に、感動すると同時に不安になるという複雑な心境になっている。だから私は空気になるように静かにした。静かに涙を拭き、存在を消すように呼吸を整えた。


「さて、説教はもう終わり。もう遅いし早くご飯にしましょう。」


「ほ~い。待ってました!」


「分かりました。」


 パンッと手をたたいておばさんはそう言うと、自分の席にかけていたエプロンを着て調理場に向かう。それを聞いておじさんとアスタくんは立ち上がり、それぞれの席に向かった。私も空気になるのを止めて向かおうとするけど、立たなかった。


「ん?どうしたのナエナちゃん?」


 動こうとしない私が気になりアスタくんが声をかける。顔を下のまま答えるが、ちょっとしたプライドのせいで大きな声で言えず、彼の耳には届かなかった。


「・・・ごめん、よく聞こえなかった。なんて言ったの?」


「・・・痛いの・・・足が・・・!痺れて・・・動けない・・・!」


 涙目になりながらそう呟いて答えた。私は立たなかったのではなく立てなかったのだ。ほんの数分正座していただけで足が痺れたのだ。冒険者にもなって、こんなことで動けなくなるなんて。しかも引きこもっていたアスタくんがさらっと立ち上がったから、なお言い辛かった。


「・・・ふふっ。大丈夫?自力で・・・立てないか。手、いや肩を貸そうか?」


「ねぇ今、笑った?笑った?!私を見て笑ったよね!?」


 アスタくんだけじゃない、聞かれたのかおじさんおばさんにも笑われた。かなり恥ずかしかった、私の顔は真っ赤だ。まさか思いもよらない事で赤っ恥をかくとは。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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[気になる点] 誤字多すぎない? 文章の流れでわかるけどさすがに気になる。
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