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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第1章 アスタ・サーネス
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第33話 ナエナの戦い

諸事情により編集しました。

 森から出ていた数は10体、偶然なのか3年前俺が倒したゴブリンと同じ数だった。しかし前回とはかなり異なっており、今回10体中ゴブリンは1体のみで残りは種類が異なる魔獣だった。魔物と魔獣は基本一緒に行動はしないはずだが、何故かここの草原では起こるはずがないことが起きてしまう。ケガをしているのかゴブリン一行は体を左右に揺らしながら村に向かって来ている。そんなゴブリン一行に対して、俺に“見てて”と一言を言ったナエナちゃんは、剣に手を添えていつでも抜刀できるように構えてゴブリン一行の方へ走り出した。


【スキル:俊敏化】


 は、速い・・・スキルか!?さっきの尋常じゃない脚力といい、やっぱりナエナちゃんは学校でいくつかのスキルを習得していたんだ!


 昼間のナエナちゃんの飛翔で薄々感づいていた。彼女はすでに冒険者として十分な力をつけて帰ってきたという事に。さっきまでそこにいた彼女はみるみる離れていき、ゴブリン一行に接触するまであと数十秒かからないほどだ。


(敵は10・・・ゴブリンにホーンラビット、グリーンラビット・・・パッと見は低レベルの魔物魔獣ばかりね。ゴブリンは何かしらの武器を装備する習性があるけど・・・あのゴブリンは何も持っていないわね。なら好都合、接近して火魔法で牽制・・・は草が燃えるからダメか。仕方ない、ならこの剣で・・・ん!?あいつら、もしかしてッ・・・!)


 残り十数メートルまで近づいたナエナちゃんだが、何故か右足を横向きで前に出して急ブレーキをした。立ち止まって今後はジッとゴブリン一行を見つめ始めた。


 どうしたの・・・何かあった!?あそこまで近づいて止まるなんて、何かが見えたのか?


(・・・やっぱり!なんでこんな奴らこの草原に!?・・・いいや、考えるのは後、どっちみちやることは変わりないわ!それに、後ろにはアスタくんがいる。このままじゃまた不安になっちゃうかもしれない。せっかく見てくれているんだ、かっこいい所見せないと!)


 しばらく立ち止まるとナエナちゃんはまたゴブリン一行に向かって走り出した。しかしスキルを解除しているのか、今後はさっきと比べてかなり遅い。


 なんでわざわざスキルを解除した・・・あの速度のままじゃ危ないから?もしそうなら・・・やっぱりあそこには何かあるんだ!


 ナエナちゃんの理解できない行動を見て不安を感じた。しかし不安を感じるだけでここから一歩も動けなかった。動くことにためらった。


 俺はどうすれば・・・、このままナエナちゃんを信じて見続けるのか?それとも村に帰って助けを求める?どっちもダメだ・・・結局ナエナちゃんが危ないのは変わりない・・・!俺は・・・俺は・・・。


 直立で立ちながら震える俺は、自分がどうすればいいのか分からなかった。どれが最善でどれが最悪なのか頭の中で考え続けた。だけど結論は出ずただ時間が過ぎるだけ。こうしている間に、彼女の戦闘が始まってしまう。俺はどうすればいいのか深刻に悩んだ。そんな時、突如頭の中である言葉が浮かんできた。“自分の今したい気持ちで動いたらいいじゃん!考える前に行動、だよ!”それは昼間に聞いたナエナちゃんの言葉だった。誰もが言ってそうな言葉、特に深い意味でもない言葉、説教でありがちな言葉、なのに、なぜか今の俺の心には響いた。その言葉が、ごちゃごちゃと考えている俺の頭を止めた。


<ナエナ視点>


 先頭にいるゴブリンまで残り10メートルきった。右手に力を入れてすぐに抜刀と同時に切りかかる準備をする。ゴブリンたちも私の存在はとっくに気付いている、全員の視線が明らかにわたしの方へ向けている。しかしそんな脅しにもならない眼差しに怯まなかった。


 姿勢を低くしたまま剣の攻撃範囲ギリギリまで近づき、抜刀と同時に剣先でゴブリンの首を切った。狙った通りに軌道、文句なしの一閃、しかし手応えがあまりにもろい。半分しか切っていないのに首の切れ目は何故か徐々に広がり、ゴブリンの頭は後ろに落ちた。頭が無くなった胴体はそのまま前から倒れようとした、それに察した私は大きく2歩後ろに下がって、ゴブリンの胴体が倒れたのを見て確認する。間違いなく絶命した、これは狙っていない、こいつが勝手にこうなった。ゴブリンの死亡を確認したら、私は次にすぐ後ろにいる魔獣たちに剣を構えながら改めて確認で見た。


 あんなに簡単に首が取れたんだ・・・間違いない。こいつら、アンデッドだ!


 辺りが少し暗くて確証はなかったが、この距離になってこいつらがただの低レベルの魔物魔獣じゃないことに気付いた。アンデッドは魔物魔獣の死骸が肉や骨が残ったまま処理されずに放置されると生まれる、一種のモンスター。魔物魔獣の区別はそのもともとの死骸から別れるが、アンデッドは共通で魔法耐性がかなり上がって魔法の効果が効きにくくなる。だから西門の魔除けも効かない。だけど特定の魔法、火魔法や光魔法などがダメージを与えることができる。これらは学校で習ったから知っていた。だけど知っているからこそこの状況はまずいと分かってしまった。


 理由は2つ。

 まず1つ目は、ここが草原であること。運よく私にはアンデッドを簡単に討伐できる火魔法の適性はあるのだが、もしここで魔法による放火なんてすると、燃えたアンデッドが倒れてそこから火が草に移り、一気にここが焼け野原になってしまう。ここの草は密集して十分ありえる。もし手持ちに水筒または近くに川が流れていたらその水で消化できるが、あいにく近くに水なんてない。討伐した後に村に帰って水をもらっても、その間に火は広範囲に広がってしまう。私の好きな場所が私のせいで汚れてしまうなんて、それだけは絶対にいやだ。だからここで火魔法は使えない、剣で戦うしかない。


「うわっ!?えっ、ちょっ、まっ!」


 9体の魔獣たちはわれ先へと襲い掛かってきた。攻撃手段は噛みつくかひっかみのどっちらか、ホーンラビットはその鋭利な角で突こうとする。大したダメージにはならないと思うが、問題はその攻撃を受けた後だ。アンデッドは個体差によるけどその元々のモンスターより防御力と知能が低下する代わりに、攻撃力と攻撃速度が上がる。だけどそれ以上に厄介なのはアンデッドからの攻撃を受けるとステータスの状態が“腐食”になってしまい、攻撃を受けた個所から侵食して動けなくなり、最悪死ぬこともある。過去に私が冒険者として仲間と一緒に依頼で魔物を討伐しに行った時、たまたまアンデッドモンスターと出くわしてしまい、そのアンデッドも討伐できたが仲間の1人が腐食になってしまった。その仲間を急いで王都に連れて帰って、数十日間の治療のすえに無事に完治できた。しかし腐食中の仲間の顔は今でも覚えている。あれはまさに激しい苦痛を味わい続けるように顔だった。これがもう1つの理由、攻撃を受けてはいけないということだ。


 くっ、こいつら同時の攻撃もそうだし素早すぎて受け流すのに精いっぱい!ダメージ覚悟で攻撃して仕留めることができるけど、もしそれで傷でもつけられたら・・・。ペレーハ村周辺には腐食を治せる医者はいない、王都や街から要請しても早くて3日は掛かるって考えると、・・・間違いなく私は死ぬ。いやだ!確かにここは好きな場所だけど、まだ死にたくない!?・・・ここは一旦距離を取って一体ずつ相手にするしかない!


【スキル:俊敏化】


 スキルを発動して、魔獣たちに剣を向けたまま後方に下がった。走る速度を上げて魔獣たちを意識しながら離脱をした。魔獣たちは諦めず走って追いかけてくる。さっきまでは特に狙う獲物がいるわけでもなかったから歩いていたが、アンデッドは一度獲物を見つけると見失うまで追いかけ続ける。この性質は冒険者内で特に嫌われている。だけど俊敏化を使っている私には追い付くことができず、その差はどんどん広がっていく。魔獣たちの間にも体格の大きさからそれぞれ差ができてしまい、一回り体が大きいグリーンラビット4体が先になり、残り4体のホーンラビットが後ろになった。


 アンデッド・・・久しぶりに戦ったけど、やっぱりかなり脆い。腐食の特性はかなり恐ろしいけど、あの防御力なら火魔法もいらないわね。・・・よし、先頭のグリーンラビットからいい感じに距離が取れている。あともう少し離れて・・・今だ!


 走りながら剣に魔力を込めていた私は、先頭にいるグリーンラビットとの間に最善に間合いができたことを確認すると、すぐさま振り返って逆走して向かって来るグリーンラビットにその剣を振った。


【俊敏化:解除】

【剣技:ファイア・フォー・ブレード】


 銀色だった剣は赤色に変色しながら光り、微かな火を帯びて4匹のアンデッドに対して空を描くように4連撃する。剣がアンデッドに触れた瞬間、帯びていた火は大きく燃え上がり、切れた肉の断面を黒く焦がして、火は瞬く間に消えた。飛び込んできたアンデッドたちは綺麗に真っ二つにされて、1個体から2個の腐肉にされて、合計8つの腐肉が草原に転がった。腐肉にはもう生命、というより動く気配はなく、完全に絶命した。


 ふっ・・・決まった!久々にきれいに決まった!


 手応えが脆いとはいえ、私は久しぶりに剣を豪快に触れたことに爽快感を浸った。しかしそれもつかの間、後ろにいたホーンラビット4匹が私に向かって来た。もちろん私は油断していない、意識し続けていたのだから。


【剣技:ファイア・フォー・ブレード】


 向かって来たホーンラビットに対して、もう一度同じ剣技を使った。赤色に光りっぱなしの剣はグリーンラビットと違い、その小さな体に的確にまた真っ二つにした。ホーンラビットは体を半分にされて草原に転がった。更にできた8個の腐肉からは動く気配はなく、ホーンラビットたちも絶命した。


「・・・死んだみたいね。ふぅ~疲れた!流石にスキル3連続使用は疲れたなぁ~!」


 剣を鞘に納めて、私はその場で背筋を大きく伸ばして背伸びした。この瞬間、私は完全に油断した。4匹のグリーンラビット、その後ろの4匹のホーンラビット、そしてさらに遅れて後ろにいた1匹のホーンラビットに気付かなかった。そのホーンラビットは何故か角が折られており、体系もやや小さめで上手く草に隠れていた。その個体自体はそう考えていなかっただろうが、とにかく上手く隠れていた。私が油断したタイミングにそのホーンラビットは草から飛び出して、私の頭に目掛けて噛みつこうと飛んできた。


「ッ・・・!?」


 剣は完全に鞘にしまい、間合い的にもう無傷では助からないと誘った。私は攻撃を受けて腐食の状態になること覚悟をした。その瞬間、後ろから声が聞こえた。


「ナエナちゃん、左ィッ!!」


 その男の声を聞いて、私は条件反射で身体を少し左に傾けた。対処しようがないと分かっていても、私はその声を信じた。


【水魔法:アクア・ピストル】


 3つの水の弾が私の右側から通過して、1発は外れて残り2発は宙に浮いているホーンラビットに着弾した。体に穴をあけられたホーンラビットは弾の勢いで飛び出した勢いが空中で静止して、私に届かず地面へ落ちた。そして急な体重移動でバランスを崩した私も草の上にしりもちをする。


 今のは・・・『アクア・ピストル』ッ!?学校で他の生徒が使っているのを見たことがある!でも私が知っているのはもっと丸っこいような・・・いやそれよりもいったい誰が!?


 私は思っているが何となく分かっていた。ゆっくりと声がした方へ振り向くと、少し離れたところにアスタくんがいた。私との距離は相当あったはずなのに、そこにアスタくんがいた。彼はここから見て分かるくらい肩で息をして、呼吸が荒々しかった。恐らくは知ってきたのだろう、走って来てくれたのだろう。私はまた彼に助けてもらった、あの時のように。


「ハァ・・・ハァ・・・大丈夫、ナエナちゃん!?」


 アスタくんはまだ呼吸を整えていないのにまた走って近づいて来てくれた。彼はそう言いながら私に手を差し伸べてくれた。私はその手を取り立ち上がった。


「うん、何とかね・・・。」


 私はそう言ったまま何も言わなかった。他にも言いたいことはあった。しかしお互い心身共に疲れている、平常に話せられないくらいに。アスタくんに至っては私以上に疲れている。ずっと引きこもっていたのに無理して走った結果。恐らく心配してきてくれたのだろう、私のために。


「・・・あの魔獣は?見たことないけど・・・。」


 呼吸を整えたアスタくんは1匹の魔獣の腐肉に指をさす。


「えっ?あ~、あれはグリーンラビット。元々は緑色の毛をしたうさぎ。本来なら体に肉は少し硬くて切るのに手間取るけど・・・これはアンデッド化して色も防御力もこんなのになっちゃっているけど・・・。」


 アスタくんはグリーンラビットの腐肉をまじまじ見る。いくら本を読んでいる彼でも生を見るのは初めてだろう。ずっと村にいたのだから知らなくて当然。辺りが暗くなり始めているからそろそろ彼の家に帰るべきなんだろうが、今は特に他の所から気配が感じられないからもう少し彼の観察に付き合うことにした。


 もしかして・・・ここに来たのって魔獣を見るため?・・・いやいやいやいや、そんなことのためにわざわざあんなに一生懸命走ったりしない・・・よね?私のため・・・だよね?


「・・・この子はッ!?」


 今度は彼自身が倒したホーンラビットを指摘した。恐らく次はホーンラビットについて聞いてくるのだろう。自慢じゃあないが私も勉強はまじめにやって来た方だ、彼が望む答えを言える自信がある。彼の魔獣に対しての指示語が少し違和感を感じたが、とりあえず答えてあげる。


「それはホーンラビット。額に一本角を生やした・・・。」


「・・・それは、知っている。」


あっ、知っていたんだ。・・・ん?村に引きこもっていたのに何で知っているの?


 そう思って質問しようとしたのだが、ホーンラビットを見つめる彼の眼はとても悲しい気持ちにさせた。まるで罪悪感で心が締め付けられているかのようなその眼は、私の口を別のことに質問させた。


「どうしたの?その魔獣が殺したことを気にしているの?・・・もしそうなら気にしなくてもいいよ。その子は汚れから見て相当前に死んでアンデットになったみたいだから、アスタくんが気に病む必要はないよ?」


 そのホーンラビットは他の魔獣たちと比べて酷く汚れて、身体が腐っていた。私も見るのは2体目だから詳しくは分からないが、少なくとも3年以上前には死んでいる。元々死んでいたのだから本当にアスタくんが気にすることでもない。


「違う・・・俺なんだ。このホーンラビットを殺したのは・・・俺なんだ・・・!」


 アスタくんはまだ納得していないようだ。私がもう一度説得すると、何で彼がそんなにそのホーンラビットだけを気にしているのか話してくれた。どうやら私は勘違いをしていたようだ。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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