表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第1章 アスタ・サーネス
27/96

第26話 あの日の戦い

諸事情により編集しました。

 自室のベッドに眠っていたはず。なのに何故か、俺は草原に立っていた。ここは間違いなくペレーハ村を出てすぐの草原。時刻は昼間、意識が戻った時には、俺は何故かそこにいた。

 何も力を入れていないはずなのに、ここに立ち尽くしている。奇妙な現象はそれだけじゃない。俺の視界に見えているのは、4日前、血を流している俺と7体のゴブリンである。


 なんだよ、これ・・・。夢、なのか・・・?


 今の俺の立ち位置は例えるなら、当時の戦いを第三者視点で見ているような感覚だ。そんな視界に映る光景は夢とは思えないほど生々しい。今の俺は立ってはいるけど、何故かそれ以上の行動は起こせない。動けない、話せない、視線を変えられない。まるで金縛りにあっているかのように。今はただ、これから起こる出来事に静観することしかできなかった。


 そうこう考えていると、当時おれは突如として少し離れている4体のゴブリンたちの元へ走り出した。その走り方は石槍で受けたはずの激痛を思わせない走りぶり。そんな走っている当時おれを見て気付いた事がある。当時おれはあれ程に恐ろしい表情をしていたのかと。錯乱している云々という話ではない。まるで狂人、狂っている。ただ暗くて恐ろしいものだった。

 向かい討とうとゴブリンたちは、1体の石槍を装備したゴブリンが当時おれに向けて石槍を投擲。祖手に対して当時おれは、石槍が真正面に飛んできているにもかかわらず、避けようともせずにただ真っ直ぐに走り続けて、そのまま体に突き刺さった。場所は左脇腹、母さんが重傷だと言っていた個所。


 なッ・・・!?さ、刺さっている!あんなものが俺の身体に・・・うぅッ・・・!?


 あまりの酷な出来事に俺は吐き気を催した。本来なら涙を流しながら発狂、最悪失神するほどの傷。だけど当時おれは平然と立ち止まり、麻袋を被せた左手でそれを体から引き抜き、何事もなかったかのようにその石槍を装備してもう再び走り出した。刺さった部位から痛々しく血が流れているのに、当時おれは表情どころか顔色すら変えなかった。

 当時おれの奇怪な行動を見て石槍を投げたゴブリンはその場で立ち止まって硬直する。流石のモンスターでも動揺したようだ。すると先ほど倒された仲間が持っていた剣を見つけると、それを拾おうと振り返り後方へ下がった。向かってくるゴブリンが4体から3体に減ったのは絶好の好機。だけど当時おれはそんなことは考えていないだろう。

 残ったのは、こん棒を装備している2体と石槍を装備している1体。この武器を活かすなら接近戦だと考えたのか、ゴブリンたちも当時おれの方へと走り出す。まずこん棒を持った1体が当時おれに向かって飛び込み、もう1体のこん棒を持ったゴブリンが当時おれの左側を当てようと少し右に移動して攻撃を仕掛ける。石槍のゴブリンはそのリーチを生かすためか少し後ろで待機している。第三者視点で見ている俺は当然危険だと感じた。だがそう思った瞬間、当時おれの動きに驚かされた。


 まず飛び込んで来たゴブリンに対して、あえて自身も空中へ飛び込み体当たりをする。急に距離を詰められて、ゴブリンはこん棒を振る余裕もなく体当たりを受けて、背中から地面に落ちた。その後、体勢良く着地した当時おれは、仰向けになっているゴブリンの腹の上に右足を乗せて動きを封じる。徐々に足に体重を乗せているのかゴブリンが激しく苦しめみだした。装備していたこん棒は倒れた際に手放してしまい、ゴブリンは当時おれの足をどかそうと空いた両手で必死に抗っている。後方にいた石槍のゴブリンはそんな当時おれと目が合い、怖気づいたのか武器を構えたまま動こうとしない。手元は微かに揺れて怯えているように見える。

 そんな見つめ合っている当時おれを隙ができたと思い、もう1体のこん棒のゴブリンが背後から攻撃を仕掛ける。当時おれはそれを横目で一瞬黙視すると、左手にある石槍のくるっと矛先を反対に向けて、そのまま後ろを向かないまま力強く肘を後ろに引く。すると同時に石槍が背後の迫って来ていたゴブリンに突き刺さる。距離からしてかなり危なかった。あと少し遅かったら、先にゴブリンの攻撃が当たっていた。ゴブリンは不運にも石槍が首に刺さり、深く刺さったのもあって酷く苦しみだす。微かに出ている声はかすれた感じで何かを告げているようだった。当時おれが石槍を離すとゴブリンは刺さったまま両手で首を覆い、そのまま倒れる。まだ息はあるが絶命するのも時間の問題。そんなゴブリンにそっぽを向けた当時おれは、次に前にいる石槍を持ったゴブリンの方を見る。

 再び当時おれと目が合った石槍のゴブリンはビクンッと体を跳ねる。同胞が目前で殺されたせいで、恐怖心がそう身体を動かしたのだろう。その後、覚悟を決めてたのか先ほど当時おれがやったように力強く石槍を前に突き出した。当時おれは少し体を横に動かして避けてると、麻袋を被った左手で石槍の先端部分を掴んだ。単純な構えからどこに来るのか第三者視点の俺でも予想は出来ていたけど、一歩も動かずに、しかも石槍を掴もうとは思わない。だけど当時おれはやった、やってみせた。石槍を掴んだ当時おれは右手を拳銃の形にして、距離が縮まったゴブリンの額に当てる。


【水魔法:アクア・ピストル】


 当てた瞬間、水の弾丸がゴブリンの額を撃ち抜いた。ゼロ距離だったおかげで片手打ちでも容易に当てられた。撃ち抜かれたゴブリンはそのまま顔から倒れる。脳を撃ち抜かれたのだ、間違いなく絶命した。第三者視点で見ている俺の気分が悪くなってきた。命を狙われたとは言え、ゴブリンの死に対しては爽快感より気持ち悪さだけが感じる。だけどそんな俺と同一人物であるはずの当時おれは、いまだに表情を全く変わっていない。そして次に、今も足で押さえ込んでいるゴブリンに、新たに手に入れた石槍を持ち換えて、ゴブリンの胸に目掛けて突き刺す。攻撃を受けたゴブリンは発狂するように奇声を上げるが、俺の攻撃はまだ終わらなかった。当時おれは刺した石槍に、更に上から力を加えてゴブリンの胸に深く入れる。最終的に力に負けたのか、耐久性の低い石槍は刃物と木の付け根が折れてしまった。その時にはすでに、ゴブリンは絶命していた。当時おれはゴブリンの死に気付かずに力を入れ続けていたのだ。


 嘘、だろ・・・。あれが・・・俺・・・?あんなことを・・・していたのか?


 俺は自分自身分からなくなった。あれは俺じゃないと思いたかったが、残念ながらあれは完全に当時おれだった。今までの出来事を見て、俺は忘れていたこの時の戦闘の記憶を思い出した。思い出してしまったのだ。今までの光景と俺の記憶は完全に一致してしまい、あそこにいる当時おれは完全に過去の自分だと証明された。

 武器を失った当時おれは近くにあったこん棒を拾って装備する。まだ微かに息が残っているもう1体の石槍を突き刺したゴブリンの方へ近づき、こん棒で上から頭部に目掛けて思いっきり振り下ろす。その瞬間、鈍い音が響き、第三者視点の俺はまた気分が悪くなり、身体が震え始める。これは恐怖による震え、自分自身に対しての恐怖だった。


 もう、嫌だ・・・。こんなのもう・・・見たくない・・・。


 視線をそらそうとするが動かせない。まるで現実から逃げてはいけないかのように、俺の視線は当時おれの姿しか向けられなかった。

 当時おれがたちゴブリンの死亡を確認すると、次の獲物を探すように周りを見渡す。左には先ほど奇襲を仕掛けてきた3体のゴブリンと最初の『アクア・ピストル』を食らって倒れている1体のゴブリンがおり、右には先ほど後退して剣を装備した1体のゴブリンと2発目のアクア・ピストルを食らって倒れている1体のゴブリンがいる。左右ともに動ける者は当時おれに向かって来ているが、警戒しているのかその足取りが重く、ほぼ歩いていた。3体も仲間が殺されたのだからそれなるだろう。最初はあんなに強気だったゴブリンたちも今ではかなりの慎重になってしまった。

 焦れったく感じたのか、当時おれは左右を確認するとすぐに動き出した。次の獲物は、右側のゴブリンたち。使い慣れてなく邪魔だと感じたのか、装備しているこん棒を捨てて全速力で走りだした。それに対してゴブリンはすぐに剣を構えた。剣先を俺に向け、間合いに入った瞬間切ろうと考えた。しかしその考えも無駄だった。


【水魔法:アクア・ピストル】


 当時おれは走りながら両手を『アクア・ピストル』の構えにして、再び魔法を発動した。当然走りながらだから最初の弾は大きく外れる。しかし数撃てば当たるという考えなのか『アクア・ピストル』を連発をする。出た数は合計で10発。どれも鋭く殺傷能力が高い弾だ。ゴブリンに命中したのはたったの3発だか、弱らすには十分だった。

 攻撃を受けたゴブリンは構えを解いて、剣を杖代わりに地面に突き刺して、必死に体勢を保とうとする。致命傷ではないとは言え3発も食ったのだから当然だろう。しかし当時おれの攻撃はまだ終わらなかった。接近した当時おれは倒れそうになるゴブリンの口に自分の右手を無理矢理押し込み、そこから魔法を発動した。


【水魔法:アクア・ピストル】


 ゴブリンの後頭部から水の弾が貫いた。絶命したゴブリンは当時おれにもたれながら、ゆっくりと地面に倒れた。その際にゴブリン口から当時おれの右手が出てくるが、その指先は何故か流血している。それはゴブリンの血によるものじゃなく、無理に魔法の連発の負荷による出血だった。だけど当時おれはそれを気にせず、ゴブリンが突き刺した剣を引き抜いて装備する。そしてもう1体の倒れているゴブリンの方へと歩み寄る。

 それに対してゴブリンは、少しは痛みに慣れてきたのか、当時おれから離れようと地面に這いつくばって逃げる。だけど片足が使えないせいでその移動は当然遅く、すぐに当時おれに追いつかれた。いまだに必死に逃げ続けるゴブリンに対して、装備した剣でその背中に一撃を与えた。ゴブリンは奇声を上げるが、当時おれ止めようとせず何度も切り続けた。右から左に、左から右に、そして斜めから切っていくうちに、ゴブリンの背中は血まみれになった。最後に当時おれは両手で剣を持ち、力一杯にして首元に目掛けて振った。ゴブリンの首は見事に切れて、首と胴体が離れて少し先にその頭は転がっていった。


「・・・ふぅー・・・。」


 力一杯にしたから疲れたのか、俺はその場で深呼吸をする。初めて聞いた当時おれの声は、まるで別人の様にも聞こえる。

 6体目を倒した後、当時おれは再び次の獲物を探そうと後方へ振り向く。そこには当時おれの攻撃を受けて今も倒れている1体のゴブリンしかいなかった。先ほどは無傷の3体のゴブリンがいたはずなのだけど、また消えていたのだ。この時、第三者視点で静観していた俺は残りのゴブリンがどこへ消えたのか分かっていた。数秒後、当時おれも気づいた。そのまま左右を見ると、さっきと同じように3体のゴブリンが1対2に分かれてまた奇襲をしようとしていた。馬鹿の一つ覚えなのか、この方法が当時おれに有効だと思ったのか、また同じことをしている。

 左側にはこん棒を装備した2体のゴブリン、右側には剣を装備した1体のゴブリン。恐らく先ほどまで素手だったゴブリンが、向こうで倒した仲間の首に刺さった剣を抜いて装備したのだろう。ゴブリンたちの位置を把握した当時おれは、何故かその場に動こうとしなかった。恐らく疲労と痛みのせいで動けないのだろう。1対3だと流石に危ないと危惧した第三者視点の俺だったが、決着は意外にも早くついた。まず右側から来たゴブリンに対して、剣の間合いに入る前に素早く片手を銃の形にして、魔法を発動する。


【水魔法:アクア・ピストル】


 剣を装備したゴブリンは完全に油断していた。突如としてきた水の弾に避けることが出来ずにそのまま顔に命中して貫いた。動かなかったのはゴブリンに弾を確実に当てるためだったようだ。計画してやったのか、それとも本能で出来たのか、第三者視点の俺はそんな意外な行動に目を疑った。

 次に左側から来たゴブリンは、2体のうち1体が先走って当時おれの背後から攻撃を仕掛ける。それが見えていないはずなのに、当時おれは背中を見せている状態からそのゴブリンの首元目掛けて剣を振った。空気を切る音と同時に剣はゴブリンを切った。しかし傷はかなり浅い。タイミングを間違えたのか倒すことができず、そのゴブリンを後退させてしまった。だけど当時おれは諦めなかった。重症であるはずの自分の左足で強く踏み込み、後退したゴブリンと同じ方向へ飛び込み、剣で突き刺した。剣は見事に人族で言う心臓辺りに刺さり、ゴブリンは一瞬の奇声と共に背中から地面に倒れた。

 飛び込んだ際に当時おれも地面に倒れてしまいすぐに起き上がろうとするが、真横からもう1体のゴブリンにその太いこん棒で重い一撃を食らった。見事に当時おれの側頭部に当たり、ゴブリンは勝利を確信したのか思わず笑みを見せる。だけどそれは一瞬で消えた。一撃をもらったせいで当時おれの顔の方向こそ違うが、その視線の先はゴブリンを見つめていた。その眼のから伝わる感情は、全くの無。誰が見ても理解できそうもないような眼をしていた。それを見たゴブリンと第三者視点の俺は、背筋が凍り、思わず息をのんでしまった。


【水魔法:アクア・ピストル】


 当時おれは起き上がらず、そのまま素早く右手だけをゴブリンの方へ向けて魔法を発動した。角度的に水の弾はゴブリンの顎に着弾して、そのまま頭頂部から出て来た。ゴブリンはもう一度息を吹き返すことなく絶命。ゴブリンは前方の当時おれの方へ倒れる。生きていると思ったのか、俺は倒れてくるゴブリンを右手で強く払って、倒す方向をずらした。当然絶命しているゴブリンはその後も何も反応はなく、そのまま地面に顔をぶつけた。

 当時おれの周りには、緑色の草原が血で赤く染められて、いるはずもない魔物の死体が8体もあった。そして当時おれ自身は、普通に生活をしている村人にはありえない大怪我をしていた。返り血と出血により、その身体は部分的だが赤くなっている。大量出血のせいか当時おれは微妙にふらつき始めて、今にも倒れそうだった。しかしその眼は、決して疲労感を感じさせなかった。とても暗く、何かを目的がある様にも見える。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ