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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第1章 アスタ・サーネス
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第25話 反省会

諸事情により編集しました。

 4日間眠っていても季節はまだ夏。部屋は微妙に暑く、さっき母さんに身体を拭いてもらわなければ今頃汗をかいていただろう。だけど今、暑さとは関係なく別の意味の汗をかきそうな状況になっている。母さんが言いそうなことを予想しながら話を聞いた。


「アスタ・・・何であの時“あんなこと”になっていたの?」


 やっぱりそれか・・・。まあ聞きたくなるのも当然か。俺もそっちの立場ならそれ聞くだろうし。


 母さんはいまだに真剣な目で見つめている。何となく予想していたがまさにその通りの事を質問してきた。それは“何故俺がゴブリンと一緒に倒れていたのか”という事。他にも聞きたいことはたくさんあるはずなんだろうが、病み上がりの俺に気を遣いあえて多くは聞いてこなかった。そんな母さんの心遣いに感謝して、怒られる覚悟で正直に話した。あの日の前日に常連さんから聞いた話の事、ゴブリンは魔獣ではなく魔物だから本当にいる可能性がある事、母さんに嘘をついて勝手に1人で調査に行った事など、何も隠さずにすべてを話した。オンさんとの話が終わったのか話しの途中で父さんが部屋に入ってきて、父さんも含めてもう一度いちから話した。延々と話しているが、両親の眼は全く疑っていなかった。最後に“3匹目を倒してからは覚えていない”と言って俺からの話を終わった。

 話しを最後まで聞いてくれた2人は信じられないと言わんばかりの表情で驚いていた。理由は分かっている。最初は無自覚だったとは言え、俺のせいで村を危険にさらした事だろう。怯えながら2人からの説教が来るのを黙って待った。しかし2人はそんな俺に失望したのか、なかなか口が動かなかった。


「・・・アスタ、自分が何をしたのか分かっているの?」


「・・・はい。」


 ここでようやく母さん話し出した。俺は怯えながら小さく返答する。


「本当に分かっているの!?あなた・・・もう少しで死ぬところだったのよ!!どうしてあの時、お母さんに話してくれなかった!!」


「え・・・?」


 母さんは激怒した。しかしその話の内容は俺の予想とは大きく違った。思わず戸惑いの声を出したが、母さんの話はまだ続いた。


「お母さんが弱いって思ったから?あなたの方が強いって思ったから?だから相談してくれなかったの?それじゃあ私は、あなたの親でいる意味がないじゃない!!あなたがずっと眠っていたこの4日間、どれほど心配したと思っているのよ!!あなたがもし死んだら・・・、私は・・・私たちは・・・、どうすればいいのよ・・・。」


 母さんは話しながら泣きだした。さっきのが喜びによる涙であれば、今回は悲しみによる涙。それを見て母さんの言っている意味をようやく理解できた。それは、俺が死んで悲しむ人の事を考えていなかったという事。あの時の俺は、俺が死んだ事を前提にして先の事を考えていたが、俺が死んだ時点の事を考えていなかった。


 そうだ・・・俺はこの家族のもとに生まれて本当によかったって思っていたんだ。それなのに・・・俺は自分から・・・この家族から離れた事を考えていたんだ。そんなことも気付かなかったなんて・・・俺は・・・。


「・・・ごめんなさい。本当に・・・ごめんなさい・・・!」


 自分の愚かさに気付き、また泣きながら謝罪をした。今度は自分の考え方に対し、何度も、何度も謝った。目覚めたばかりなのか、それともまたの号泣のせいか、目元が痛み出してきた。だけどそんなの関係なく泣きながら謝罪を続けた。


「本当に・・・無事でよかった・・・。」


 母さんはそう言いながらもう一度俺の額に自分の額を当てた。さっきはあまり気になっていなかったが、母さんの額から温もりを感じる。その温かさは、俺の心を和ませてくれた。


「アスタ・・・村を守ってくれたんだよな?ありがとう。母さんを守ってくれて、ありがとう。でも、もうこんな無茶をするんじゃねえぞ。」


「・・・はい!」


 次に母さんの隣にいる父さんが声をかける。俺たちにつられたのか父さんもいつの間にか泣いていた。そんな優しい言葉をくれた父さんに、強く返事した。

 そしてもう一度、家族3人でかたまって泣いた。サーネス家が水魔法の特化している家系のせいなのか今日はたくさん涙が流れた。例え理由がそうだとしても、こうして3人で一緒に面と向かい合って涙を流せることに、俺は生きている喜びを感じる。



 それからと言うと家族で話し合いをした結果、もう無茶をしないことを条件に両親から許しを得た。これからは両親に相談してから行動をしてほしいことだ。もちろんそんなこと言われなくても俺自身そうするつもりだ。もう両親の泣いた顔を見たくない。俺が両親の提案に了承すると、今まで気張っていた何かが取れて深く安どのため息をした。


グゥ~~


 ここで俺の腹が空気を読まず大きく鳴いた。気持ちが緩んだからだろう。改めて自身の身体を見ると、何せ4日間眠りっぱなしだったから身体は痩せ細いで何か食べ物を求めていた。だがまだ身体が上手く動かないうえに両手は包帯でぐるぐる巻きにされていた。とてもじゃないが1人ではまともに食事をとることができない。


 オンさん傷口や痛覚をなくしただけで、筋肉の低下までは治してくれなかったか。まあ流石にそこまでは都合よくないか。痛みが感じないだけ感謝しないと。・・・ってか何で右手にも包帯しているんだ?ケガしていたからか?右手も?ゴブリンに右手もやられたっけなぁ・・・?


 そう不思議に思ったが考えても仕方がないと思い、一旦その件は置いといた。今はどうやって食べるのか考える。空腹を感じ始めたせいか思考がうまく働かなくなってきた。

 そこで母さんの提案で、母さんにあ~んして食べさせてもらうことになった。さっきの身体を拭いてもらうよりかはマシだが、これも十分恥ずかしい。だけど本当に仕方がない。これしか方法がないのだから。そしていざ食べさせてもらうと、やっぱり恥ずかしい。母さんはスプーンで俺の口に食べ物を運んだあと“おいしい?”と聞いた。正直恥ずかしくて味なんてよく確認できないが、とりあえず頷いた。それを見た母さんは嬉しそうな表情を見せて、また俺の口に食べ物を運んだ。俺の腹が満たされるのに意外に時間が掛かり、その分あ~んしてもらう時間も長かった。


 俺・・・もう17なのに・・・。


 顔を赤くしながらその時間を過ごした。そして何度も言う、本当に恥ずかしい。


星暦2029年、夏の48日、雷の日、夜


 時間はあっという間に経ち夜になった。部屋は暗く僅かなカーテンの隙間から入ってくる僅かな月光だけが部屋を明るくしていた。重症の個所に巻いてあった包帯は両親に取ってもらい、今はベッドの上で大の字になって何の変哲の無い部屋の天井を見続けている。4日間も寝ていたせいかなかなか眠れず、ただただぼーっとしている。目元がまだ少し痛いのも理由だろう。ちなみに両親は自分たちの部屋で寝てもらった。最初は添い寝してあげると言っていたが拒否した。そこまで両親に負荷をかけたくなかったし、何よりもうこれ以上に俺自身が恥ずかしい思いをしたくなかったから。


 あ~、目が痛い。絶対に腫れているよな、これ。鏡があったらすぐに見てみたい・・・1階の手洗い場しかないけど。・・・それにしても、目以外どこも痛くない。本当にきれいに治っているなぁ。


 ふとゴブリンから攻撃を受けた左手を見た。麻袋を被っていて実際をどれ程かは分からなかったが、間違いなく傷跡が残るほどの重傷だった。だけど今の左手は痛み同様に何もなかったかのように元の状態であった。

 俺はベッドから起き上がり、他にも包帯を巻いてあった個所をもう一度見た。母さん曰く傷は全身にできてあって特に酷かったのが、顔に右側、左手の平、右手の人差し指、左脇腹、そして左足のふくらはぎの6か所だったらしい。どれもかなりの重傷だったようだ。

 左手とふくらはぎは覚えているけど・・・残りの3か所は全く身に覚えがない。いや身に残っていたから重症になっていたけど・・・どうにも思い出せない。せめてどんな傷だったのか見れたらなぁ・・・。

 しかし教えてくれた5か所には左手同様に、傷は全くなくきれいになっていた。流石は世界をまたにかける治癒師と言ったとこだろう。古傷どころか後遺症をも残さないなんて本当にすごい力だ。だけどそのおかげで思い出そうにもここまできれいだと手掛かりすらならない。詮索を諦めて少しは動けるようになった身体を起してベッドの上であぐらをかいて、眠れない時間にまたぼーっとした。


 ・・・本当に暇だな。本とか読みたいけど、もう暗いし眼とか悪くなりそう。4日寝ていたという事は・・・明日は風の日、平日か。父さんがいつまでここに残るかちゃんと聞いていなかったな。明日の店番は父さんがしてくれんか?いや、向こうの店もあるし流石に明日にはここを出るだろう。じゃあ明日は母さんが店番するのか?・・・そうだったら明日俺も働こう。いつまでも甘えちゃいけないな。少し頑張れば店番ぐらいはできるだろうし、いいリハビリにもなるかもしれない。多分母さんが止めるだろうけど、そこは自分の意思を貫き通さないと。・・・ってか今からやっといた方がいいかな?


 そう考えた俺は仰向けになり、自分が覚えている限りのリハビリ的な事を始めた。リハビリというより軽めのストレッチと言った方が近い。両手を前に伸ばしてこぶしに力を入れたり抜いたり、膝を胸元まで上げて太ももの筋肉を伸ばしたりした。本当に軽めのストレッチだが、寝込んでいた俺の身体にはいい運動にはなった。意外な疲労感も感じ始めて、暗い部屋の中静かにストレッチを続けた。


 ・・・そういえばゴブリンに勝って生き残ったんだから、俺のステータスも何かしら変わっているのかな?アクア・ピストルたった数回しか使っていないけど。・・・試しに開いてみよ。


 気になった俺は横たわりながらストレッチをする中、顔の前にステータスウィンドを開いた。開いた瞬間、自分の眼を疑った。今まで見たことのない自分のウィンドの縦の長さに驚いたから。思わずストレッチを止めてベッドに起き上がってしまった。ステータスには明らかに新しい項目が追加されている。俺は新しく手に入れた項目だけを表示するように意識して、ステータスウィンドを開きなおした。


==============================

『称号一覧』

・見習い狂戦士


『スキル』

・【狂人化】


『熟練度一覧』

・剣術 2

・槍術 2

・射撃術 3

・水魔法 5

==============================


 新しく追加されたのは称号1つ、熟練度2つ、そして念願のスキルが1つ。まず称号は絶対にゴブリンとの戦闘で手に入れたものだろう。文字から察するに戦闘系の称号で間違いない。『見習い狂戦士』は正直納得はできないけど、よくよく思い出してみると確かに錯乱していた様な気がする。

 次に熟練度は、水魔法と射撃術はクミル叔父さんに魔法を教えてもらった時からあったから最初は気にしていなかったけど、そのレベルが何故か上がっていた。前のレベルと比べて両方とも2つずつ上がっていた。レベルは低いうちから上がりやすいが、これは明らかに異常だ。たった一戦でレベルが2つ一気に上がるのはありえない。理由を懸命に考えるが、結論は出ずに一旦保留にした。そして追加してあった『剣術』と『槍術』は少し心当たりがあった。恐らくゴブリンたちが装備していた武器を奪って戦ったからだろう。剣はともかく槍に関しては握った記憶はないが、ステータスウィンドに載ってあるから1回は握ったのだろう。たった1回装備しただけでステータスに出ないと思うけど、それも考えるのを保留にした。今度本で調べてみよう。

 最後にスキルだが、これは正直に喜べないモノを手に入れてしまった気がする。『狂人化』、名前からして間違いなく使ってはいけない気がする。載っている狂人化を意識すると、ステータスウィンドはそれに関しての情報を公開した。


==============================

・【狂人化】

発動した時点から自身の意識は無くなり、敵と認識した者と戦い続ける。発動中は身体向上されるが、痛覚、知能、状況判断が鈍くなる。発動した時点で自身に残っている魔力量が8割まで減ると解除される。

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 それを見て瞬時に理解した。これは絶対に使ってはいけないスキルだと。何故こんなスキルを手に入れたのかは分からないが、これは危険だとすぐに理解した。恐らくこれもゴブリンたちとの戦いで手に入れたのだろう。だけど本当にそれだけが理由だろうか。


 “見習い狂戦士”に『狂人化』・・・そんなに俺って情緒不安定だったのか。確かにあの状況は怖かったけど、そこまで錯乱していたのか・・・。俺って・・・何なんだ・・・。


 少し自分に不安になった。臆病だけではなく状況によっては発狂してしまうのかと。一旦すべてを忘れようとステータスウィンドを閉じて、俺はベッドに横になる。さっきのストレッチのおかげか、身体に疲労感で眠気を感じるようになった。やがて俺の中にあった不安が和らぎ始め、ゆっくりと眠りにつくことができた。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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