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英雄たちが求めるエンディング  作者: 岩ノ川
第1章 アスタ・サーネス
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第21話 緑色の化け物

諸事情のため編集しました。

星暦2029年、夏の44日、水の日、早朝


少し長い夢を見ていた。夢というより、昔を思い出しという方が正しい。それは数年前、クミル叔父さんがこの村に来て、俺に攻撃魔法を教えてくれた記憶である。結局あの日だけでは叔父さんのような速い『アクア・ピストル』を撃つことができず、俺の魔力がなくなり練習が終わった。あの時の魔力無くなった時の苦痛は今でも思い出す。走り続けて体力がなくなり頭に酸素がいかなくなって頭痛するように、体内の魔力がなくなると気分が悪くなり船酔いしているような感じであった。本当に気分が悪く、初めての体験に一度座り込んだ体を自力で立ち上がることができなかった。

確かあの後、叔父さんにおんぶしてもらって村に帰り、家の自室で次の日の朝まで休んでようやく良くなった。『アクア・ピストル』を成功させたかった俺は“魔力の使いすぎに注意”というのを踏まえて、その次の日も叔父さんにご教授をお願いした。そのお願いした時の叔父さんの顔は、俺の意外な一声に驚きを隠せなかった。叔父さん曰く、初めて魔力喪失の苦痛を知ったらなかなかもう1回練習がしたいとは言えないらしい。だからそんな俺に対し叔父さんは“お前、ドⅯか?”の一言を言った。あの時はドⅯと思われるのが嫌だったから否定したが、確かにそう思われても仕方がないと思う。


そしてその日、次の日、さらに次の日と、俺は叔父さんの指導のもと攻撃魔法の練習に励んだ。そのおかげで俺はついに念願の攻撃魔法を完成させた。当然叔父さんのとは遠く及ばないけど、俺は満足していた。

叔父さんが村に来て6日後、そろそろ仕事に戻ると言って叔父さんは村から出る支度をし始めた。急な事に俺は驚いたが、叔父さんを止めなかった。その日の朝、俺たち家族は北東門にて叔父さんを見送りに行った。この5日間、俺のために村に来てくれたこと、俺に攻撃魔法を教えてくれたことを踏まえて、俺は叔父さんに深く頭を下げお礼を言った。そんな俺の頭を叔父さんは6年前と同じように撫でて、ペレーハ村を出て行った。


今クミル叔父さん、どうしているんだろう。まああの人のことなんだし、楽しくやっているだろう。・・・さて昔話を止めて、今の事を考えないと。


完全に頭がさえてきた俺は、昨日うちに来た奥様方が言っていたゴブリンについて考え、もう一度整理した。まずゴブリンは正確には魔獣ではなく魔物というのに部類に入る。だからこの村の2つの門の魔獣除けの魔石に影響を受けずに近づいて来れるはず。つまり、一昨日西門の門番がゴブリンを見たというのはあながち間違いではないと思う。


俺の考えすぎかもしれないけど、念のために・・・。・・・見に行くだけなら・・・大丈夫・・・。


そう考えながら俺は、朝食を食べるために部屋を出た。



「ごちそうさまでした。・・・母さん、少し相談があるのですが。」


俺が朝食を食べ終わると、俺の前に座って朝食を食べている母さんに話しかける。当然、いきなり改まったことに母さんは驚いた。


「どうしたの、急に?」


「実は今日・・・お店の方を母さん1人でお願いしたいのですが・・・。」


俺は今日一日中の店番を母さんやってくれないかと提案した。当然母さんは理由を聞いてきた。


「少し花の研究がしたいと思ったんです。いつも使っている草原の土だけじゃなく、奥の森の土も回収して試してみたいんです。」


これはついさっき思いついた方便である。流石に素直に“ゴブリンがいるかどうか探索がしたい”とは言えない。心配性な母さんだから俺を必死に止めてくるだろう。


「森まで行くの!?・・・休日まで待てないの?」


「はい、せっかく思いついたんですぐにやってみようかと。それに花の研究なので早いうちにやっといた方がいいかなと思って・・・ダメですか?」


母さんは一旦食事の箸を止め、深く考える。そして数秒後。


「う~~ん・・・しょうがないわね。その代わり、あなたが庭にある花たち全部に水やりしてよね!」


「分かりました!ありがとうございます!」


普段俺が店番をしている時に、母さんが1人で庭の花たちに水やりを代わりにするのを条件に、俺の提案を承諾してくれた。俺は食べ終わった食器を片付けて、そしてそのまま庭に向かった。ゴブリンのことは気になるが、俺の勝手な事情で花たちの世話をおろそかにはできない。一つ一つ丁寧に状態の確認をし、そして水を撒いた。ちなみに今日の水やりは補助魔法を使わず、普段端に置いてあるじょうろを使った。もしもの時に備えて俺は魔力を温存しときたかった。



 うちにある花は意外にも多く、全ての確認と水やりに数時間かかった。しかしこれで母さんに言われた条件を満たしたので、俺は身支度をして家を出ようとした。


・・・おっと、これを忘れていた。


 母さんには“土の回収”と言っているので、それっぽく家にある土を回収するためのスコップと麻袋を用意した。自分で言うのもあれだが、スコップを担ぐ姿は平民っぽく様になっていた。母さんに言ってから出ようと思い、店の方へ向かった。


「母さん、俺のお願いを聞いてくれてありがとうございます。じゃあ、いってきます。」


「いってらっしゃい!あんまり、森の奥まで行かないのよ!絶対に魔獣には近づいちゃだめよ!・・・まあ、あの子がそんなことしないか。」


 俺が手を振りながら家から離れると、そんな俺の後ろから母さんは見送ってくれた。最後に母さんは小声で何か言ったが、俺には聞こえなかった。



 村の西門から出てすぐの草原にいる俺は、森に向かって歩き続けている。平日とは言え、意外にも草原には誰もいなかった。てっきり子供や老人たちがいると思っていたが、辺りには誰もいない。森にはいる俺にとってはかなり都合が良い日だ。誰かに見られて村で変な噂されたら、おそらく花屋の営業に支障になるだろう。

 黙々と数十分間歩き続けると、ようやく森の手前に着いた。時間はお昼になり、太陽が真上まであるおかげで森の中は入る前から明るかった。ここまで冷静でいた俺だが、いざ森に侵入となると不安、緊張、恐怖の感情が出始めた。


 落ち着け・・・落ち着け俺・・・。もしゴブリンに出くわして、ヤバくなれば逃げればいい。攻撃魔法が使えるからと言って無理に戦う必要はない。俺はいるかどうか確認だけしに来たんだ。若い俺が言うんだ・・・きっと村のみんなも信じてくれる・・・はず。


 心臓の鼓動を深呼吸で少しずつ落ち着かせて、俺は森の中へ足を踏み込んだ。麻袋をズボンとベルトの間に挟み、担いだスコップを両手で持ち直し、森の奥へと進んで行った。



 抜き足差し足と草に音を立てないようにして俺はゆっくりと森の中を探索していた。ここの森は北東門を出てすぐの森とは違い、地面から根っこを出て通りにくく、木は一本一本太く、そしてその木の何本かには3本の長いかぎ爪の後があった。魔物について疎い俺でも分かる。これはゴブリンのものではないと。これを見た俺重大なことを忘れていた。この森はそもそも魔石によって草原に出て来れない“魔獣たちの住処”という事を。ゴブリンの前に魔獣に出くわしたまずいと考えた俺は、探索を中断し来た道から帰ろうとした。その瞬間である。


ガサガサッ、ガサガサッ


 遠くの方の草むらが揺れた。俺は咄嗟に近くにあった木に隠れ、息を殺す。草をまだ動いて音を鳴らしているが、俺はその音を鳴らしている者を見ようとはしなかった。理由は単純、俺の場所がバレたくないから。しかし隠れる際に草の音を立ててしまったせいか、草の揺れる音は明らか俺の方へ近づいて来ている。俺の心臓は今にも爆発しそうなくらい鼓動が早くなり、息も荒くなってきた。


 ヤバいヤバい・・・!魔獣か、ゴブリンか!?俺・・・食われるのか・・・殺されるのか!?・・・やるしかない・・・やるしかない!


 草の音はすぐそこまで来ており、半ばやけくそになって覚悟を決めた俺はスコップを力強く握り、来た瞬間振り下ろしてやろうと考えた。そして音は木の隣まできた瞬間、スコップを大きく上に振り上げた。


 ・・・今だッ!!


 目を強く閉じると同時にスコップを力強く振り下ろした。すると鈍い音と同時に、スコップから何かに当たった感触がした。しかしその物体はかなり低い位置にある。恐る恐るゆっくりと両眼を開くと、そこには小さな魔獣が瀕死になっていた。この魔獣の名はホーンラビット、本で知っていた。ウサギに鋭い角が生えた魔獣で、村人でも倒せるくらい非力である。俺の一撃のせいで瀕死になっており、その小さな身体をピクッピクッと小刻みに揺らしている。


 ヤバいヤバい、どうしよう・・・!?


 無関係な魔獣に攻撃してしまったと思い、俺は内心パニック状態だ。しかもホーンラビットの象徴である一本角が折れている、間違いなく俺の一撃のせいだ。根元から折れた角は地面に転がり、ホーンラビットの少し上の額から出血している。強く罪悪感を感じながら言葉が通じるか分からないが、とりあえず声をかけてみた。


「ごめん、だいじょぅ・・・。」


 そう言いながら隠れていた木から少し出てくると、ホーンラビットの後ろに緑色の体の化け物が立っていた。すぐ目の前だ、手を伸ばさなくても届く距離だ。俺はその化け物と目が合いと、驚き、恐怖し、そしてと一瞬理性が吹っ飛んだ。


「うわあああああああ!!」


 叫びながら手に持っているスコップを大きく横に振ると、化け物の額に強く当たった。向こうも油断していたのか、もろに一撃を食らった。化け物はあまりの痛さに奇声を上げながら額を両手で覆い、膝から地面に倒れこんだ。攻撃した拍子で俺の身体は完全に木から出てきた。その際に化け物の後方を見ると、確認する限り5体の仲間がいた。そしてその化け物たちも、俺の存在に気付いた。ここで俺はようやく脳は少し冷静になり、化け物について考え始める。


 初めて見たけど分かる、こいつらは・・・ゴブリン!いた・・・本当にいた・・・!


 そして手前のゴブリンに続き後ろのゴブリンたちとも目が合った。


 ヤバい、逃げなきゃ!


 俺はすぐさま自分の来た道に沿って森を全力で走り出した。そんな俺の姿を見たゴブリンたちは木のこん棒や石槍などを持ちながら追いかけた。仲間の仕返しのためか、それとも俺を食うためか、その目的は走っている今の俺には考える余裕はなかった。


 スコップを脇に挟みながら片手で持ち、空いた片手で草をはらいながらひたすらに走り続けた。ゴブリンの体格は17歳の俺のより一回り小さく、そのせいか少しずつ距離が離れてきた。だからといって俺が走るペースを落とすことはない。なぜならふと後ろ振り向くと、この状況を楽しんでいるのかゴブリンたちは不気味な笑みで追いかけている。何をされるのか分からないその不気味さに、俺はただ前に走った。


 全力で走ったおかげで森の出入り口、草原が見えてきた。俺は内心“逃げ切れた”と心のどこかで勝手に安堵する。しかしそれが命取りになった。草原に視線を取られ後ろの警戒を怠ったせいで、ゴブリンが投げつけた石槍に気付かず、俺の左のふくらはぎに深く突き刺さった。突然の激痛に俺は荒げた声を出しながら、前から倒れて左脚を抑えた。あまりの痛みに涙目になった俺は最初は何が起こったか分からなかったがすぐに石槍だと気付き、強く噛み締めながら激痛を我慢して引き抜いた。引き抜く方がより激痛に感じた俺は、その場に座り込み顔を下に向けて左足を強く抑える。そして顔を上げると、ゴブリンがすぐそこまで迫って来ていた。


 死ぬのか・・・!?俺はここで・・・死ぬのか・・・!?


 そう思いながら俺は今のこの状況に絶望した。しかしふと俺の視線は、迫ってくるゴブリンから自分の右手をいった。


 いや、まだ・・・これがある!


 座った状態のまま両手を肩の高さまで上げ『アクア・ピストル』の構えに入った。生存本能による悪あがきであった。

不自然な点があれば、是非ご指摘してください。

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