第14話 『王都ウルンスト』 観光
諸事情のため編集しました。
旧タイトル“ウルンストにて観光”
クミル叔父さんのステータスウィンドを見せてもらった俺とナエナちゃんは、深く頭を下げてお礼を言った。一般的にステータスは一部隠蔽するのが当たり前だが、大胆にも叔父さんはステータスのほとんどを表示してくれた。もちろん本当に隠蔽していないとかは俺たちには分からない。だけど叔父さんは嘘をつく人とは思えない。俺は叔父さんをそう信じた。
称号が11個・・・一般的な数なのかな?自信家に、魔獣殺しに、美食家・・・確かに叔父さんのイメージどうりかな。
俺は叔父さんのステータスを見て、小さく笑った。叔父さんは俺たちに“満足したか?”と確認をすると、俺とナエナちゃんは一緒に首を縦に振った。それを見た叔父さんはステータスウィンドを閉じた。
大きかったステータスウィンドが無くなったが、俺たち2人の頭の中にはその文字が鮮明に残っている。
衝撃的だった文字の数と数値の高さ。人族でここまでの高さはすごいと思った。
「そういえば今日は恩恵の日だったなぁ。だから今日は妙に子連れ人が多かったわけか。義姉さんたちもアスタたちので王都に来たのか・・・でも何で冒険者ギルドの前にいるんですか?」
一段落が付いたと思い、叔父さんは母さんに質問した。腕を組んで俺の隣で待っていた母さんはギルドに来た理由を説明した。俺の隣にいるナエナちゃんが将来 冒険者になりたいことを叔父さんに話す。
「へぇー、君、冒険者になりたいんだ!だからステータスを・・・。じゃあ学校には行くのかい?」
「はい!2年後、王都の学校で学ぶつもりです!」
叔父さんの質問に対しナエナちゃんは元気よく答えた。ステータスウィンドで尊敬したのか敬語になっている。
この世界の俺たち平民は基本学校に通うことを義務付けられていない。幼少期から通い始めるのは貴族だけ。もちろん平民でも授業料さえ支払えば通えることができる。貴族が6歳からに対し平民は12歳から。両方ともに年が18歳を迎えたら学校を卒業できる。学校に通う者は主に冒険者希望がほとんど。
学業では勉学はもちろん武術や魔法などを習う。独学では学べない高い学力や武術、そして冒険者になった時の高い生存率が約束される。
ちなみに冒険者になれるのは10歳から。正確には恩恵を受けた子供から。毎年夏に行われる冒険者入団試験に参加し、学力、実技の合計点の高さで合否が決められる。仮に10歳から冒険者を始めれば、学校に通っている人との現場での経験の差を付けられるが、それ以上に学校で得た実力ですぐにその差は埋まってしまう。だから冒険者希望のほとんどが学校へ通う。ナエナちゃんもその1人だ。ちなみに俺がそれを知ったのは去年、いつも通り光の日にナエナちゃんと遊んでいる時だった。
「私、学校に行くの!」
唐突な報告であった。それを聞いて最初は驚いたがすぐに納得できた。冒険者になるため毎日稽古を頑張っているナエナちゃんにとって最良な選択だと。当時の俺はナエナちゃんに“頑張ってね”の一言を返した。いま考えれば少し短かった気がするが、心底思っている言葉だと受け取ったナエナちゃんは“ありがとう!”と素直に喜んでくれた。確かその後“一緒に学校に行かない?”と誘われたが、もちろん断った。その時のナエナちゃんの顔を俺以上の驚きを見せた。今でも印象残っている。理由を聞かれたが時は適当なことを考えて返答したから詳しくは覚えていない。ナエナちゃんはそれを聞いて納得はしてくれた。
思うとナエナちゃんは俺と一緒に学校に通いたかったのかな・・・。いや、俺以外に仲が良い子は他にもいるし、多分みんなにも声をかけているのだろう。・・・俺とだけ行きたいわけないか。
「そうか!じゃあ俺の後輩になるってわけか!アスタも冒険者になりたいのか?」
「え・・・?」
過去を振り返って考えている中、ナエナちゃんと話している叔父さんは唐突に話題を俺に振った。いきなりの事に俺は思わず変な声を出した。
「俺は・・・。」
対応力がない俺は当然戸惑い、すぐに返答できなかった。叔父さんは俺を見ている。ナエナちゃんも俺を見ている。しかし叔父さんは俺の返答待ちに対し、ナエナちゃんは心なしか期待の眼で見ている気がする。まるで俺に何かを言ってほしいかのように。
俺は冒険者になるつもりはない。これは俺がもっと小さい頃から決めていたことだ。自分が臆病だと知っている俺は冒険者には向いてない。3年前に魔力量が少ないと言われているからなおのこと。だから俺の返答は決まっていた。
「・・・俺は・・・冒険者には・・・なりません。」
少し時間をかけ俺は叔父さんに返答した。意外だったのか叔父さんは驚いた表情を見せる。一方ナエナちゃんは表情は変えなかったけど小さく“え?”とつぶやく。今は叔父さんと話しているからそれを気に留めないようにした。
現時点で俺の将来の夢は決めていない。しかし冒険者にならないのは確かだ。だから俺はそれだけをはっきり伝えたかった。
「そうか。まあその方が、兄さんたちが喜ぶしいいじゃないか!」
「はい。・・・でも、やっぱり攻撃魔法は覚えたいです。叔父さんの見ていてカッコいいって思って。今度ペレーハ村に来た時に魔法を教えてもらってもいいですか?」
叔父さんが納得してくれて笑顔で話すと、俺はちゃんと思いを言えたせいか少し頬が緩んで返答した。そして俺の要求に対して“もちろん!”と叔父さんが軽々と承諾をしてくれた。俺は叔父さんとの約束で魔法を覚えられることに、今から心が躍りだしている。
「・・・クミル。ちょっと頼みがあるのだけど、いいかしら?」
今後は母さんが叔父さんに質問した。それに対応しようと叔父さんは振り向く。
「実は私たち・・・主に私だけど、あんたを探していたの。私たちこれから王都を観光したいのだけど、正直初めて来た場所だからどこに行こうか迷っちゃって。どこか良い所教えてもらってもいいかしら?」
どうやらさっき母さんが言っていた“会いたい人”とは叔父さんのことだったようだ。叔父さんが王都に住んでいることを知っていた母さんは、残り少ない観光時間を有効に使うため教えてもらいに来たそうだ。
母さんのお願いに対し“う~ん”と叔父さんは考え込んだ。叔父さん曰く、今日は恩恵の日のためウルンストのどこの観光スポットも人でいっぱいだそうだ。俺たちが待ち合わせとして集まったメインストリートにある噴水広場も観光スポットの1つらしいが、言われて思い出してみると確かに人が多かった。噴水広場であの人だかりだと他のスポットも何となくだが予想はできる。そんな人が多い中での観光なんてしたくないそうだ。少しずつ太陽が西に落ちていく中、叔父さんはどこか良い場所を考え続ける。
パチンッ
「そうだ!俺がオススメする美味しい飯屋なんてどうです!」
指を鳴らし叔父さんはとある場所を挙げた。しかし数時間前ご飯を食べたばかりと叔父さんに説明すると、叔父さんは分かりやすいくらい肩を落とした。しかしステータスに表示されてあった美食家である叔父さんがオススメするそのお店に興味を持ったのか、ナエナちゃんは晩御飯そこで済ましたいと提案を出した。ナエナちゃんの言い分に納得したのか母親2人は“いいわね”と息が合い承諾した。しかしまだみんなのお腹はいっぱいなのでそれまでの時間をどうつぶすかもう一度話し合った。
叔父さんと母親2人は散々話し合いをした結果、観光スポットを行くのは諦めることにした。どこの観光スポットもやはり人でいっぱいらしく、それなら王都の買い物をした方が有効的だと判断した。確かに無理して人の多い中歩きたくはない。母親たちに“今日はやめよう”と俺とナエナちゃんに説得してきた。
冒険者ギルドに来て見られたナエナちゃん、そして叔父さんと約束ができた俺はもう満足しているので、俺たちは文句を言わず承諾した。
こうして俺たちは叔父さんの案内のもと、王都の買い物めぐりが始まった。ちなみに道案内は叔父さんからすると言い出した。ステータスに“やや疲労”と載っていたのに、疲れた表情を見せずに進言した。冒険者だからか、それとも叔父さんだからか、とてもたくましく見えた。
◇
楽しかった観光はあっという間に時間が経ち、丸い太陽の半分沈み空が赤色から徐々に暗くなっていく。しかしそれをすぐに気づかない程夢中に楽しんだ。主に母親たちが。平民街にある服屋を巡り歩いた。母親たちは見るものすべてが新鮮に感じ、あれやこれやと大量の衣服を買い集めた。ナエナちゃんは人形のように様々の衣服を母親たちに着せられ、男の俺と叔父さんは両手に荷物を持たされた。明らかに不服そうな表情を見せるナエナちゃん。疲れた表情を隠しきれない俺と叔父さん。それを気付かず今もなお、楽しんで服を選び買い物を続ける母親たち。俺と叔父さんはそんな2人の背中を見ながら深くため息をつく。
「アスタ、女の買い物はこれからだ・・・覚悟しておけ。」
・・・帰りたい。
心の中で思うだけで声には出さなかった。叔父さんの予想通り、買い物はしばらく続いた。
◇
その後俺たちは叔父さんが言っていた美味しい飯屋に行って晩御飯を済ませた。流石美食家である叔父さんの一押しだけあってとても美味しく、全員が満足した。そして会計を済ませて店を出ると空は完全に暗くなっていた。区切りが良いと判断して俺たちはその場で解散してそれぞれの宿に帰った。一日中歩き回ったせいか俺と母さんは宿に戻るとすぐに就寝する。とても長かった1日がようやく終わった。
こうして俺たちは王都の観光を満喫し、次の日の早朝に出るペレーハ村行きの馬車に乗車して王都ウルンストを出た。今日俺たちが経つことを知っていた叔父さんは、俺たちを見送ろうと誰よりも早く王都の門で待ち続けてくれていた。俺たちは馬車に乗って王都から離れて行く中、叔父さんの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。そして3日の時間が経ち、様々な街々を経緯して無事にペレーハ村に着いた。
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