第13話 冒険者ギルド
諸事情により編集しました。
『水老亭』で昼食を食べ始めた俺たち4人は香ばしいにおいをただよらせる肉料理に、一同は満足して食した。特に俺以外の女性3人にかなりの好評。料理は1つ残さずきれいに食べた。店員の言うとおり確かに他の客が納得するような一品だ。満腹になった俺たちは会計をすませ店を出て、メインストリートの道中に立ち話をしていた。
それは次に俺たちはこれからどうするかという内容だった。母親同士に会話で今知ったが、どうやら俺たちは明日の早朝に出る馬車で一緒に乗り、『王都ウルンスト』から村へ帰る予定だそうだ。つまり観光は今日までという事。今はまだお昼過ぎ、宿屋に戻るのもまだ早いということで一緒にこれからどこかに行こうかと話し合っている。
因みに何で明日『王都ウルンスト』を出るのかと言うと、現在宿泊している宿屋が思っていたより値段が高かったため、お互い急遽明日村に帰ることになってしまったそうだ。つまり2人の母親はここに来て痛恨のミスをした。意外と抜けている俺らの母親に少し呆れた顔で見る。
いやいや、前もって調べておこうよ・・・。まあネットとかない世界だから仕方がないとしか言いようがないけど。
「・・・。」
そんな俺を後ろに立っているナエナちゃんが何故か黙々と見つめていた。理由は分かっている。『水老亭』の店中で俺とナエナちゃんが話している中、ナエナちゃんの質問に対して俺がまだ答えていないから。俺の返答待ちか、それとも無視されたと思って怒っているのか、ナエナちゃんは無表情のまま俺を見つめ続けた。
だけど俺は答える気はない。なぜなら・・・答えられないから。将来の夢、なりたいもの、俺はこれらを自分1人だけ考えて決めることはできない・・・。
俺の人生、いや前世は他人の意見を聞いて過ごしてきた。自分の意見はほとんど出さずに、ただその場の流れに身を任せてきた。そんな俺が自分だけで将来のことを決めるのは無理な話である。適当に嘘を言おうとも思ったが、いまさらになってとても言い出せない。自分の対応力のなさに失望している。ナエナちゃんの視線を気付いても、俺は振り向こうともせずにただ前を見ていた。
・・・嫌われたな・・・。
そう思っていても俺は答えなかった。そんな中、母親たちは俺たち2人をおいて話を進めていた。
「・・・それじゃあ、せっかくですし冒険者ギルドでも見に行きませんか!」
えっ、冒険者ギルド!?
唐突に俺の母さんがナエナちゃんのお母さんはとある場所に行こうかと提案した。その言葉を聞いた俺とナエナちゃんはたちまち目線を上げ母親たちの方を向いた。母さんが冒険者ギルドに行こうと言い出したのは、なんでもナエナちゃんのためらしい。ナエナちゃんが将来冒険者になりたいという事を知っていた母さんは、王都に来ているこの機会に冒険者の仕事場であるギルドを一目見に行こうと話した。最初は遠慮したナエナちゃんのお母さんだが、母さんも会いたい人がいるとかなり都合のいいこと聞くと、ナエナちゃんのお母さんは“じゃあ、お言葉に甘えて”と言い承諾した。
その話を聞いていたナエナちゃんは、さっきの無表情が嘘だったかのように明るい表情に変わっていた。それほどに冒険者になりたいという気持ちが大きいという事なんだろう。目的地を決めた母親2人は一応俺たちに行くか確認した。当然断る理由がない俺たちは“行きたい”とすぐ返答した。
こうして俺たちは王都にある冒険者ギルドへ向かった。しかし、親も含め王都に来たのは初めての俺たち。誰も場所は知らなかったので、母さんが近くにいる人に尋ねて場所を聞いた。人に教えてもらい場所を知った俺たちは、改めて冒険者ギルドへ向かった。
言い出しっぺなのに場所が分からないって・・・。ほんと意外と抜けているな・・・。
◇
ファンタヘルムに存在する王都は、大きく2つの区画に分けられている。
1つは平民街。町並みは前世の世界でよくテレビなどに映っているヨーロッパの風景に似ている。ここ住む住民はとても多く、種族差別もなく生活を送っている。ちなみに住民のうち人族は3、4割くらいらしい。他の王都と比べても普通くらいだそうだ。そして毎日多くも商人などの来客が来るため、店の種類が多く幅広く対応をしている。
もう1つが王族街。その名の通り名誉ある王族や貴族などしか住むことが許されない場所である。そこには王宮もあり、滅多なことでは平民である俺たちが入ることはない。そして王族街は剣術、魔法、体術などが優れている騎士によって守られている。その実力は冒険者を軽く凌駕するものだそうだ。
俺たちの世界では“貴族=プライドが高い・身分差別が激しい”とか悪いイメージがあるがこの世界は人たちどうなんだろう・・・。
当然これは『王都ウルンスト』も例外ではない。『王都ウルンスト』では、この2つの区画を高い壁で区切られている。更には年に1回の特別な日という事もあり通行人も多いため、今日の警備はより厳重になっている。唯一二つの区画をつなげる門さえ閉ざされてしまい、壁の向こう側を見ることはできなかった。この世界の王族貴族は人間国宝なみに重宝されているようだ。
冒険者ギルドに向かう俺たちは、王族街の壁に沿って歩いていた。10分位歩いただろうか、王都が広いせいでなかなかギルドには着かなかった。そしてようやく、白くて大きな建物が見えてきた。
「え~と・・・話ではここが冒険者ギルドらしいけど・・・。」
人に聞いただけで半信半疑の俺たちだったが何かを見つけたナエナちゃんがあるところに指をさし、それを見た俺たちは確信へと変わった。
『冒険者ギルド』
ここ・・・冒険者ギルド・・・。
冒険者ギルドと知った俺たちは改めてその大きな建築物をじっくりと見た。冒険者になる気がない俺にとっては無縁だが、隣に立っているナエナちゃんは感動しているのかその顔の頬が徐々に緩んできている。そしていつか自分が通うであろうこの場所を、その外観を見ていた。
「義姉さん!?それにアスタ!?」
俺たちが冒険者ギルドを眺める中、唐突に聞き覚えのある声が耳に入った。声の方へ振り向くと、そこにはクミル叔父さんが手を振っていた。ギルドの出入り口から出てきた叔父さんは、振り向いた俺たちの顔を確認して駆け寄ってきた。
「あら~!クミル、久しぶりじゃない!」
「お久しぶりです、義姉さん。」
駆け寄ったクミル叔父さんに対し母さんが軽く挨拶をすると、それに叔父さんは頭を下げて返答した。頭を上げる叔父さんは今度は俺と目が合う。
「ようアスタ、久しぶり!・・・お前、少し大きくなったなぁ。」
叔父さんは最後に分かれたあの日の様に俺の頭の上に手を置き、挨拶をしてくれた。
「お久しぶり、クミル叔父さん・・・。」
叔父さんとの再会に嬉しかった俺は、少し頬が緩んで返答した。3年前と変わらないその若々しい容姿に心のどこかで安心した。
身内の登場で置いてきぼりのナエナちゃん親子に叔父さんは父さんの弟だと紹介した。当然初対面だから互いに頭を下げて挨拶をした。
「・・・冒険者の人ですか?」
叔父さんに興味を持ったのか、ナエナちゃんは叔父さんに質問をする。初対面にもかかわらずちゃんと物事を言えるナエナちゃんに少し尊敬した。俺なら思うだけで到底できなかった。
ガチャッ
「そうだよ!これでも“そこそこ”強い方だよ!」
叔父さんは腰にある剣に手を置いて、自慢気な表情で自己アピールする。心なしか“そこそこ”という言葉を主張した。そんな叔父さんを見て俺の横にいる母さんは小声で“また出たよ”と呟いた。その表情は分かりやすいほど呆れていた。
「あの・・・ステータス見せてもらってもいいですか!」
「こら、ナエナ!?」
それを聞いたナエナちゃんは、大胆にも叔父さんにステータスを見せてくれとお願いをした。失礼と思いナエナちゃんのお母さんが注意した。これはナエナちゃんのお母さんが正しい。
ステータスとは言わば個人情報。適当魔法や熟練度レベルなどは他人に見られてもさほど問題はないが、称号は違う。称号はその者の長年の経歴や強い癖などを文字として表示する。ステータスウィンドは隠蔽できるが虚偽はできない。つまりはその者の正体を一目で理解できる。無理に一部の称号を隠蔽して、数が少ないことで相手に悟られて変に疑われてしまう。だからこの世界では、ステータスウィンドの表示の要求はあまり良いイメージをではない。
ちなみに俺やナエナちゃんみたいな今日からステータスウィンドを開けるようになった者はまだそういった称号は表示されない。1,2年後、ステータスウィンドに慣れてくる時に表示し始めるようだ。さすがの叔父さんでもこれには躊躇するだろうと思った。しかしその時の叔父さんの表情は少しも変わらず動じていなかった。
「まあまあ奥さん。いいですよ、それぐらい。ほれっ。」
叔父さんは簡単に承諾した。意外だったのか、それを聞いたナエナちゃん親子は“え?”と呟き呆然としていた。叔父さんは自分の前にステータスウィンドを開いて俺たちに見せてくれた。しかしそのステータスウィンドの大きさは俺たちのと比ではなかった。
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クミル・サーネス
種族:人族
年齢:25
状態:やや疲労 やや空腹
「称号一覧」
・水の剣豪
・元盾を習いし者
・火刀と水流の武闘家
・戦地を駆ける者
・水害を操作するもの
・中級冒険者
・自信家
・(弱)潔癖症
・魔獣殺し
・美食家
・武器にふれる者
「適性魔法一覧」
・火 ・水 ・無
「スキル一覧」
・所持数7つ
「熟練度一覧」
・剣術 42
・盾術 22
・槍術 3
・槌術 3
・斧術 3
・体術 37
・射撃術 9
・歩行術 46
・火魔法 16
・水魔法 38
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俺とナエナちゃんはそのステータスウィンドを驚愕した。数多い称号、高レベルな熟練度、そして今日初めて見た“スキル一覧”をまじまじと見た。
「仕事上でスキルや“色々”等は隠させてもらうよ。」
歩行術46・・・!しかも25歳!?その若さでここまで!
叔父さんはスキル隠蔽の理由を説明した。しかし俺たちはそれを気にしていなかった。
熟練度のレベルは小さいうちは上がりやすいが、段々レベルが上がるごとに次までのレベルが苦難になっていく。人族の寿命は他種族と比べて短く、長生きしてもせいぜい80歳前後。だからほとんどの人族の冒険者はレベル50~60で生涯を終える。高くても60~70が限界と言われている。
しかし25歳でレベル46は明らかに異常。俺たちが今まで学んできた常識を今この瞬間壊された気分だ。冒険者を目指すナエナちゃんにとって、これは大きな変化であった。そして、そんな叔父を持てたことに俺は誇らしく感じた。
「すごい・・・!」
「うん・・・すごいね!」
俺の横にいるナエナちゃんが小さく呟くと、同感した俺は無意識に口が動き呟いた。そして俺たちは同じことを思った。
これが・・・冒険者・・・!
(いつか私が目指すもの、・・・すごい!)
冒険者ギルドの前に立っている5人の人族。そのうち2人の子供は1人の冒険者のステータスウィンドを、その瞳を輝かして見続けていた。
不自然な点があれば、是非ご指摘してください。




