第12話 熟練度一覧
諸事情のため編集しました。
『水老亭』という名の飲食店で、注文の料理を待っている俺たち4人は、母親同士は世間話で時間をつぶし、俺たちはステータスウィンドの見せ合いをしようと話していた。
「ねぇねぇ、いいでしょう?」
「・・・うん、いいよ。」
何がそんなに気になるのか、ナエナちゃんは強く要求してくる。彼女らしいと言えば彼女らしい問いかけ方だ。当然特別に断る理由はなく、俺はそれを了承した。と言うより彼女がそう言い出すことは幼なじみの俺には予期していた。事前にステータスウィンドの隠蔽を練習しといてよかったと心底感じる。
「本当!?じゃあすぐにやろう!」
ナエナちゃんは返答を聞いて喜び、自身の席から立ち上がり俺の席の方に向かおうとした。その行動に悟って自分だけ座るのはまずいと考え、俺も席から立ち上がり彼女の方へ向かった。
「いいよ、座っていて。」
「・・・ありがとう!」
ナエナちゃんはお礼を言いながら自分の席に着いた。不意とはいえ、その顔が愛嬌ある笑みに、思わずかわいいと感じた。
ヤバい、また顔が赤く・・・!?落ち着け・・・落ち着け・・・!
「こっちの手で出そう!」
そういうとナエナちゃんは左手を俺に前に出し、それに合わせて俺も左手を彼女の前に出した。
「じゃあ、“せーのっ”で出そう!」
ナエナちゃんはまだかまだかと待ちわびた表情で俺を見て提案する。その目はまさに好奇心溢れる少女の如く輝いていた。
「うん、分かった。」
「じゃあいくよ!」
「「せーのっ!」」
あの“2つ”を隠すように意識して・・・。ステータスオープン!
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ナエナ・マーシェナ
種族:人族
性別:女
年齢:10
状態:健康
『称号一覧』
・冒険者の娘
・見習い戦士
・野原を駆ける者
『適性魔法一覧』
・火 ・木 ・雷 ・無
『熟練度一覧』
・剣術 13
・盾術 9
・杖術 8
・体術 9
・歩行術 14
・火魔法 9
・木魔法 5
・雷魔法 2
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お互いに同時に掛け声を言いながら、同じ言葉を心の中で唱えた。その瞬間、ナエナちゃんが出した左手に彼女のステータスウィンドが表示された。一部隠蔽している俺に対して、彼女は隠蔽の仕方も知らなければ、きっと知っていたとしてもする気がないだろう。そんな無邪気な彼女のステータスを拝見していく中、俺はその記載されている数値の高さに驚きを隠せなかった。
えっ・・・!?まだ10歳なのに熟練度レベル10以上が2つも!?剣術が13で歩行術が14って!?・・・まさかここまで上達していたなんて。
表示されたナエナちゃんのステータスウィンドに、俺にはなかった『熟練度一覧』という文字が載っていた。
『熟練度一覧』とは、例えばある者が初めて剣を握りそれを素振り等の練習をしばらくすることで、0だったレベルが1に上がり熟練度としてステータスウィンドに載るようになる。それは鍛錬を重ねることによってレベルは上がり続ける。つまりその者の技術の高さを表している。
これは6歳から訓練を始めたナエナちゃんと何もしなかった俺が同じ時間を過ごした結果の差。因みにレベルの数字には限度はなく、俺が読んだ本によればとある獣人族が、何の項目か分からないがレベル104まで極めたそうだ。
4年でこの差か・・・ヤバいなぁ。まあ当然か・・・毎日頑張っているナエナちゃんと俺とじゃ話にならないな。しかし『野原を駆ける者』って、確かにナエナちゃんに合う称号だな。
「・・・ふふっ。」
ヤバい、声が・・・。さすがに失礼だったかな。
ナエナちゃんに合ったその称号に俺は思わず笑みがこぼれり、口に出して笑ってしまった。失礼だと思いすぐに自分を落ち着かせて、少し緩んだ顔を元に戻した。自分の行動でナエナちゃんが不機嫌になっていないか気になり、彼女のステータスウィンドから顔を横にずらし様子を伺った。
ナエナちゃんは声が聞こえていないのか、黙々と俺のステータスウィンドを見つめていた。彼女の視線はまさに真剣。ただ真っ直ぐ俺のステータスを拝見している。まるで気になる項目が載っているかのように見つめている。
何をそんなに見つめ・・・・・まさかッ!?
見られたくないあの2つの称号の隠蔽に失敗して表示されていると思い、俺も自分のステータスウィンドを確認した。
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アスタ・サーネス
種族:人族
性別:男
年齢:10
状態:健康
『称号一覧』
・農民の息子
『適性魔法一覧』
・水・無
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・・・成功、しているよな?はぁ~よかった・・・バレたかと思った。いやまあ、仮に見られたとしても、ナエナちゃんならこんな落ち着いているわけがないか。きっと・・・“ねぇねぇ、アスタくん!?この称号って何なの!?神!?転生者!?アスタくんって、もしかしてとてもすごい人だったの!?ねぇねぇ、教えてよ~!!”って言って暴れそうだもんなぁ・・・。うん、確実に大暴れする。
でもそれじゃあ・・・一体、何をそんなに見つめているんだ?
自分のステータスウィンドが意識した通りに表示されていた事に安堵するが、それと同時に大きな疑念が生まれた。一体何がそこまでナエナちゃんを釘付けにしたのかと。彼女は俺の視線に気付かず、今もステータスウィンドを見続けている。まるで彼女の脳内で何か組み立てているかのように。
「あら!2人とも、もうステータス出せるようになっているの!」
貴様で世間話をしていた母さんたちが、ここでようやく俺たちがステータスウィンドの見せ合いっこをしている事に気付いて声をかけてきた。声が大きかったこともあり、ナエナちゃんも目を覚ますかのように意識を俺のステータスから他へと移った。
「本当だ!ナエナ、お母さんにも見せて?」
「アスタ、あなたのも見せてもらっていい?」
ナエナちゃんのお母さんと俺の母さんは子供の成長が嬉しいのか、今日一番のいい笑顔で頼んできた。どうしようかと考えた俺たちは、お互い一度向かい合う。
「・・・もう、いいよね。」
「・・・うん!ありがとう!」
ナエナちゃんは少し間を空けるとまたいつもの様に笑顔で返答してくれた。しかしその笑顔は先ほど見せたのとは少し違った。前のが元気に溢れた表情に対し、今のは心なしか少し暗かった気がする。だが確証はない、それを詮索する必要ない。何も言わなくていいだろう。
俺たちは見せ合いを止めて、ステータスウィンドを開いたままお互いの母親のもとへ近づく。先に子供のステータスを見て声を上げるのは、ナエナちゃんのお母さんだった。
「あら~!ナエナ、すごいわね!熟練度レベル14もあるじゃない!」
「えへへ!すごいでしょ!訓練とか勉強、頑張ったんだから!」
2人で楽しく談笑を始めた。去り際にナエナちゃんの顔をもう一度見た。そこにはまたいつも通りの笑顔で話す彼女の表情があった。やはりただのきっと気のせいだろう。
そう考えて先の暗そうに見えたナエナちゃんの顔を忘れて、母さんにステータスウィンドを見せた。
「ありがとう。え~と、どれどれ・・・あら~、やっぱりお母さんの土魔法は受け継いでなかったのねぇ。仕事とかで土を耕すのに便利なんだけど、まあ仕方がないか。」
母さんはステータスウィンドを見て少し残念そうに言った。普段母さんは、庭の土を魔法で手入れをしてくれていた。1階の窓から何回かその行動を見ていてかなり使い勝手がいいなと思っていた。魔法名は聞いていないが、いつも両手を地面につけて地面の中からえぐるように土を耕していた。
花屋としてあれができないのは確かに残念だけど・・・まあ家にはシャベルやスコップがあるし別に問題ないか。
「あとお父さんの火魔法もないわね。まあ、うちは花屋だから別にいらないけどね。」
ここで意外な事を知った。それについて聞いてみると、どうやら父さんには火魔法の適性があるようだ。全く知らなかった。しかしふと思い出してみると、確かに母さんの言うとおり花屋のうちでは火を使うことなんてない気がする。両親に目を向けていても、普段使わないのなら知らなくても当然だ。
「アスタ、もういいわよ。ありがとう。」
母さんのその言葉を聞いてステータスウィンドを閉じた。それと同時にナエナちゃんたちの方も談笑が終わったのか、向こうもステータスウィンドを閉じていた。母親たちは今度は子供のステータスウィンドについて話し出した。そこに入る隙間はなくナエナちゃんはプラスチックのメニュー表で遊び、俺は自分の席に戻って料理を待つのと同時に今度について考え始める。
さて・・・どうしたもんか。ロップさんに“魔力量が少ない”って太鼓判を押されているからな。家業の手伝いにしろ、やっぱり今のうちに水魔法の練習しておこうかな・・・。
3年前ロップさんと別れた後、俺は魔力量が少ないことが気になり自分なりに魔力量について調べ続けていた。本によると魔力量は身体の筋肉といっしょで、使い続けることで大きくなり、逆に使わないと減っていく理論だそうだ。当時の俺は自分の適正魔法を知るすべがなかったから当然魔法の練習はできなかった。髪の色的に水魔法と分かっていても、危険だと両親に練習を止められた。その代わり神の洗礼を受けた後なら一緒に練習してくれると言質を取った。クミル叔父さんが来た時にという条件だけど。
何にしろ、やっぱり魔法は使えた方がいいよな。家業の手伝いのためにも。もしもの時のための自衛にも。まずは・・・クミル叔父が来るのを待つしかない。今更だけどまた来てくれるかな・・・あんな田舎に。普通だったら来ようと思わないよな・・・いろいろと発展しているこんな王都と比べれば。
今度について考えている中、自分の左側から視線を感じた。視線の方向に顔をずらすと、何時から見ていたのか視線の主はナエナちゃんだった。彼女は不思議そうに俺の顔を見続けていた。鬱陶しい程ではないにしろ、かなり気になり訊ねてみる。
「・・・ナエナちゃん?どうしたの?俺の顔、何か変・・・?」
「・・・ねぇねぇ、アスタくん。アスタくんって、将来何になりたいの?」
「えっ・・・。」
俺の、将来・・・?そういえば考えたことなかったなぁ・・・。
この世界に転生して10年、俺は初めて自分はどうなりたいのか考えた。俺の中の進路は花屋に生まれたから花屋になって一生を過ごすと無意識に未来図を描いていた。それがなりたいものかと聞かれたら、少なくともそうではない。だけどそれ以外の答えが思いつかない。
自分で考えて答えを言う、慣れないことに俺は硬直して、口元が動かなくなった。
「・・・アスタくん?」
ナエナちゃんは返答を待っていた。だけど俺は無言のまま目線を下げた。恐らく今この時が、この世界に生まれて初めて自分について真剣に考えている時間だった。
「お待たせしました!こちら『ブルーモンキーの焼肉定食』です!熱いので気を付けて召し上がってください!」
ここでタイミングよく先ほど注文を聞いてきた男の店員がやって来て、お盆に乗った4つの料理をテーブルに並べ始めた。店員は俺たちの前に料理を置くと速やかに去って行った。
前に出された料理は、前世でも見たことはある普通の焼肉定食。サル要素がどこにもない。
「あら~!うまそう!」
「そうですね!それじゃあ熱いうちにいただきましょうか!」
ナエナちゃんのお母さんと俺の母さんが話すと、俺たちは無言で終わった会話をやめて食事を始めた。
「「「「いただきます!」」」」
俺以外の3人はそれぞれうまそうに焼肉を食べ始める。本当に美味そうに。それを見て食欲がわき、肉を一枚食べた。
パクッ
・・・うまい。うん・・・普通にうまい、うまいんだけど・・・。お店の人に失礼だけど、叔父さんが狩ってくれた魔獣の肉の方が上手かった気がする。まああれは獲れたてだからだと思うけど・・・。
黙々と肉を口に運ぶなか思った。不味くはないがそれ以上の肉を前に食べてしまったせいで、俺の中の評価は低い。だけどこの評価の低さは料理のせいではない。別の事を考えているから、味に集中できていないからだ。俺は焼肉を食べながら今もナエナちゃんの言葉に頭を悩ませている。前世でも特になりたい夢がなく、時間はあっという間に経ち気付けば20歳になり他界してしまった。そんな俺が将来について聞かれてもすぐに答えれるわけがない。母さん、ナエナちゃんのお母さん、ナエナちゃんは笑顔で話す中、俺は黙々と食べながら今も考えていた。
「これ、おいしいですね!」
「そうですね!ナエナ、やけどしないように気を付けてね。」
「は~い!」
俺の将来・・・なりたいもの・・・か。
不自然な点があれば、是非ご指摘してください。




