6.ラティエルの両親
リヴィウスside…
ーーそういえば、私に回復術を教えてくれた先代の聖女様と、先代の剣聖様の息子の名前もラティエルだったような気がしますね。
ーーこれは気になります。それに先代は未だ行方不明、もしかしたら手掛かりになるかもしれない!
そう思い、私はラティエルさんの元へ向かいました。
「こんにちは、ラティエルさん。」
「あれ、リヴィウス。どうかしたのか?」
「ラティエルさんってお母さんはどんな人でした?」
私がそういうと、ラティエルさんは難しそうな表情をして、こう答えました。
「知らないんだよな。」
「知らない、と言いますと?」
「俺、孤児院生まれなんだ。院長が言ってたんだけど、俺の両親が、知り合いだった院長のところに、「私たちが死んじゃったらこの子をよろしくお願いします」って言って、どっか行ったらしい。」
ラティエルさんは淡々とそう言いました。
「悲しくはないのですか?」
私も幼少期に親を失ってしまったため、疑問に思いました。先代の聖女様は、私の母親のような存在でした。
「んー、俺の親って、孤児院の院長みたいな感じだからさ。あの人、いつもいってたんだよ。「孤児院の院長が、子どもの親みたいに支えになれなくてどうすんだ」って。あの人不器用だけど、いい人でさ。いつか恩返しをしたいなって思ってる。」
「そう、ですか。ちなみにラティエルさんの両親の名前って知ってますか?」
「ああ、母の名前がアスタルテで、父の名前がエルレインだ。」
「っ!」
間違いない。先代の聖女の名前は、『太陽の聖女』アスタルテ。そして剣聖の名前は、『無双の剣聖』エルレイン。
かつて、敵国に恐れられた、2人組のS級冒険者パーティ『陽双』。王国が誇る最強の冒険者。
片や神から『太陽』と、『聖女』の称号を下賜され、味方に太陽の加護を与えた王国の癒し手。
片や神から『無双』と、『剣聖』の称号を下賜され、大いなる剣『マグヌス』を振り続けた王国の剣。
恐らく、そんな伝説級の2人の息子だから、ハイゴブリンを一太刀で倒せたりするのかな。
「ラティエルさん、あなたの両親は…。」
「ん?俺の親がどうかしたのか?」
「ーーいえ、何もありません。」
私は思う。いつかラティエルさんと一緒にお二人を探しに行こうと。この思いを胸の内に秘めて、お仕事します‼︎
「あれ、新人さんかい?」
リヴィウスの後ろに男が立った。
「なっ、ギルマス⁉︎会議はもう終わったんですか?」
「うん、あのクソ大臣、ギルドに全部押し付けてきたよ。」
「押し付けてきたって⁉︎」
「うん、もうすぐで起きる、S級ダンジョンのスタンピード、ギルドで受け持つことになった。」
「なっ、そんな!このギルドは戦力が足りていません。今依頼を出すことが可能なS級冒険者は、『天風』と『泡沫』と『斬魔』だけですよ!」
「そうだよね、どうしようか。」
「あ!そういえば!ラティエルさんってハイゴブリンを倒したんですよね?」
「ん?……あぁ、あいつなら剣で倒したぞ。」
「ちなみに何発で?」
「ん?一発だぞ?」
「へ?新人が一発で?」
「はい、どうでしょうギルマス。私は彼も戦力として数えることをお勧めしますが…。」
ギルドマスターが顎に手を当て、考える。
「ない話ではない…か。そうだね、それじゃあ。」
「ただいま戻りましたっす!って、あれ、無能ギルマスじゃないっすか。」
「はあ?誰が無能ギルマスだよ!」
ミストの辛辣な言葉にギルドマスターが返答する。
「いやいや、王城会議の結果聞いたっすよ、あのクソ大臣に押し付けられたらしいっすね。」
「ーーで、それのどこが無能じゃないんすか?」
「いや、仕方ないだろう?アイツ、ユートが病気なのをいいことに、王命とか言ってきたんだよ。」
「しれっと、国王陛下を呼び捨てにしないっすよ!あんた、ちょっとは抵抗してくれっすよ!」
「いや…。」
「駄目ギルマスっすね、神から『駄目』と『無能』の称号でももらったらどうっすか?」
「酷っ…。ギルマス権限で冒険者ギルド出入り禁止にするよ?」
「そんなんしたら、あんたが罰されるっすよ!私情で、S級冒険者を出入り禁止にするのは法律で禁じられてるっす!」
「とりあえず、ギルドの今いるA級冒険者以上とB級冒険者パーティを集めて、今すぐ会議開くから。そこの新人くんも来て。」
「あ、ああ。」
ラティエルは珍しく追いついていないようだった。
「ーーあ、そうだ。僕の名前はライム。よろしくね。」
「ーーこのギルドのギルマスだ。」
「よろしく。俺はラティエルだ。」
「ラティエルね。」
「それじゃあ、先に執務室に行って呼び出すから。『通信』。」
ライムが詠唱をする。
「今、冒険者に念話で呼んでるから、先行っといてくれるかい。」
「かしこまりました。今すぐギルド内にいる冒険者を集めます。」
「ああ、よろしく頼むよ。今回は僕も出ないといけないかもしれないね。」
「ライムさんが出るんですか⁉︎」
「へえ、『神剣』が戦うんすか。面白くなってきたっすね。」
ミストは未曾有の危機を待ち侘びるかのように、不敵に笑った。




