4.歓迎会
「よう新人。改めて、俺の名前はカマセーヌ。カマセーヌさんと呼べ。」
「ああ、カマセーヌさん。ーーこんな殺伐とした場所で歓迎会をするのか?」
「ああそうだぜ。ここで歓迎会をするんだ。」
「ひゃっほーー!」
「久しぶりだな!」
「あんな弱そうな新人久しぶりだったからな!」
「さあ、歓迎会の相手は、Bランク冒険者パーティ『飢餓の灰狼』だ!」
「待ってましたー!」
禿頭の柄の悪そうな男が歓声をあげる。
「真ん中がカマセーヌ。左がザコモーノ。右がモブリンだ!」
「ーーやっちまえー!」
うーん…、よく分からんが、戦って歓迎するってことか…?
「本気でこいよ、新人。」
ーーなら、本気で行かないとな。
ラティエルのスイッチが入った。
「ーーなら、本気で行く。」
空気が変わった。風の流れが静かになる。
「ーーなんだ?」
カマセーヌが怪訝そうな表情をするが、ラティエルは構える。
「『空気』。」
ラティエルはイメージする。かつて、勇者と一緒に数多の敵を切り裂いた聖剣を。空気が固まり、その剣の形を模る。勇者が使った剣、故にその剣の銘は。
「ーー『聖剣ファルシオン』。」
「おい、何もないところから出したぞ。」
「アイテムボックス持ちか?」
「ーーへっ、新人、お前にはそんな高価な剣もったいねえよ!」
そう言って、魔術師のザコモーノが、中級魔術を放つ。
「全てを流し、呑む竜よ、顕現しろ。」
「ーー『水之竜巻』ッ!」
強烈な水流がラティエルを襲った。否、襲おうとした。
「『空気よ、壁となれ』!」
ラティエルがイメージした空気の壁は、何人たりとも通さない堅固な壁。
当然、ザコモーノの魔術がそれを打ち破れるわけもなく、勢いを失い、霧散する。
「ーーなっ、結界持ちか⁉︎俺の渾身の中級魔法が…。」
ザコモーノが驚愕する。
「ーーなら近接で攻撃すればいいだろ!」
「ーーッ!」
カマセーヌがラティエルに近づき、剣を振り下ろす。
「『空気』!」
ラティエルはイメージする。かつて勇者を振り回した破天荒な男の盾を。天から『不死身』の称号と『絶対防御』のスキルを下賜された英雄。その男の使った伝説の盾。
何者も通さない聖なる盾。空気が、盾の形を型取り、固まっていく。
「ーー『聖盾イージス』」
カキンッ!
金属音が鳴り響き、カマセーヌの剣が弾かれる。
「おい、またかよ…。」
「チッ、ならスキルを使うだけだッ!」
そういい、カマセーヌが走り出す。
「くらえ!『回転斬り』ッ!」
カマセーヌが回転しながら剣を振るう。
カンッ!
盾で、剣を受け止め、弾く。
「おい、モブリン!」
カマセーヌが合図をする。
「わかってる!ーー『身体強化』!」
「よし、これで戦ってやるぜ!」
「ーーそろそろ終わらせる。」
ラティエルは小さく呟いた。
「喰らえッ!」
「ーー『飛剣』。」
かつて、勇者も使ったとされる、剣を収めし者にのみ許された、魔法使い殺しの技。
ーー飛ぶ斬撃がカマセーヌを捉える。
「ーーおっと、それは危ないね。『泡沫』。」
何か、強大な意思が、ラティエルを見ているように感じた。
「ーー誰だ?」
「僕はフローリア。『泡沫のフローリア』だよ。」
「……。すまない、誰だ?」
ズコッ!
その場にいたほとんどの冒険者がこけた。
「ははっ、きみ、面白いね。」
面白くて仕方がないというふうに、フローリアが笑う。紋章が発現した最強の冒険者の一角は、普通の男性のように、心の底から笑った。
「おい、『泡沫のフローリア』があんなに笑ってるとこ見たことあるか?」
「ねえな。」
「珍しいな。」
「ーーちょっとあんたたち!何やってるんすか!終わりっすよ!」
遅れてミストがやってくる。
「『天風』だ!」
「本物だぞ。」
「Sランクがこの場に2人も…、すげえな。」
「あ、ミスト。このギルドいい人ばっかだな!」
「ーーはぁ、ほんと、悪意には鈍感っすねぇ。」
「ーー?」
「ま、無事なら何よりっす。」
ミストはそう安心した表情で呟くのであった。




